小説・文芸の高評価レビュー
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ネタバレ上巻は概ね映画と内容がリンクしていたが、下巻は映画には無かったエピソードが沢山あり読み応えがあった。自分ではどうにもならない理不尽な環境に直面したり、挫折や偶然的な成功等、様々な経験を通しても一貫しているのは、喜久雄の歌舞伎に対する執念に近い熱量だと感じた。ただただ歌舞伎がしたい、舞台に立ちたい、もっと上手くなりたいと願った行動のせいで、周りの人を不幸にすると言われることがのは、少し同情してしまうが、その経験ですら歌舞伎への執念をより一層強くする糧になっていた。
印象的だったのは藤娘の演目で観客が舞台上に上がってきた場面。映画では喜久雄が狂気に満ちて踊るシーンに繋げる為の場面だと感じたが、小説 -
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絶望の先に希望はあるのか、
ネガとのぞみはあまりにも周囲の大人に恵まれなさすぎた。中学生なんて周りの大人が全ての世界。
貧困でそれでも親が福祉に助けを求めない、理由をつけて働かず子どもに働かせる。そんな大人が親になっていいはずがない。私自身思っていることだけれど、「まともな家庭を知らない」人間が家庭を築いていいはずがない。
まともな家庭を知らない人間がまともな家庭を築けるはずがないのだから。
私も父親がいる世界を知らない。父と母と3人で旅行に行った記憶がない、家族全員で食卓を囲んだ記憶がない。それどころか、父親の顔もわからない
そんな私は恋愛ができない。相手がまともな家庭で育った人なら尚更 -
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ネタバレ話題作なんだな〜まぁ粗暴肉体派と華奢なお嬢様の組み合わせなんて絶対好きなやつ〜くらいのふわっとした気持ちで読み始めたけど、予想というか想定を超えた展開でした。彼女達の40年を想像して、寄るべない気の抜けない「綺麗な地獄」の生活でもお互いに寄り添い合った一番幸せな時間だったんだろうなとも思い…
依子が襲われた時尚子が「あんな酷いことは無いでしょう」「私は許せない」と本気で憤っていたのは、ヤクザとはいえ箱入りで、意に沿わない性行為なんて良くないと教えられ大事に育てられてきたからなのかな?と最初なんとなく思ってたんだけど、父親から常習的に被害を受けてたんだもんね。それなのに、自分だってやられてること -
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「黒髪の乙女」に恋焦がれる「先輩」は、彼女を追って京都を西へ東へ。
夜の木屋町を皮切りに、古本市に学園祭と追っては行くものの、乙女は「奇遇ですねえ」の一言。
そんな中で出会う、正体不明な老人に自称天狗の樋口さん、大酒吞みの羽貫さんに、象のお尻の精巧なオブジェを作る女性、果てはその名も強烈なパンツ総番長と、奇妙奇天烈な登場人物たち。
そんな彼らが居合わせるのだから、起きる出来事も珍事件ばかり。
はてさて、先輩の想いが彼女に届く日は来るのだろうか。
「キュートでポップな恋愛ファンタジー」とあるものの、ただの恋愛小説ではない。
先輩は恋焦がれているものの、その好意はストーカーと紙一重。
むしろ登場 -
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冴えない大学生の主人公が、バラ色のキャンパスライフを求めてサークルに参加するも、悪友や謎の自由人に振り回されて全くの逆方向に進んでしまう。そんなお話。
入学時にどのサークルを選んだかで、それぞれどんな経緯を辿って行くのか、それを独特の語り口で進めていく。
映画サークル「みそぎ」、「弟子求ム」という奇想天外なビラ、ソフトボールサークル「ほんわか」、そして秘密機関「福猫飯店」。
これらサークル名を並べただけでも、すでに言葉のチョイスが普通じゃない。
それら奇妙なサークルを選択したのをきっかけに、別れた同一世界観での平行世界を描いたお話。
例の独特の語り口かつ圧倒的な語彙を用い、1つの選択に -
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ネタバレ古川日出男ってノンフィクションも書くんだ。
そう思ったのだが、これが初めてということ。
そして、東日本大震災によって変化を余儀なくされた、福島の出身者だというのだ。
日本中を震撼させた大災害ではあったが、いや、大災害だったからこそ、テレビやニュースは刺激的でドラマティックなものを優先的に放送した。
だから私は、関東にも影響があったというのを知ったのは、それから6年後の関東に転勤になったからだ。
当時夫が関東にいて、「俺は無事だよ」と連絡をくれたのを、ずっと「ふざけるな!」と怒っていたのだ。
だって、テレビはずっと東北ばかりを映していたから。
私は仙台にいる長男のことしか心配しなかった。
私 -
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たかが納豆されど納豆である。
これは納豆の研究論文と言っても過言でない。
以下ネタバレ注意。
納豆、醤油、味噌はどれも大豆から作られるが、日本では3つとも作っているメーカーが無い。例えば、キッコーマンは納豆を作らない。これは、納豆は納豆菌、醤油と味噌は枯草菌と、それぞれ発酵させる菌が異なるからだ。
しかし、韓国ではチャングッチャン(納豆)もコチュジャン(味噌)も同じメーカーが作る。これは後者が枯草菌と納豆菌の両方を使って発酵させているからだ。
アフリカとアジアには納豆があるが、なぜか中国圏には納豆がない。あるのは豆豉(枯草菌で発酵させた大豆)だけ。中国圏が納豆のミッシ