あらすじ
文芸業界の性、権力、暴力、愛。戦慄の長篇
性加害の告発が開けたパンドラの箱――
MeToo運動、マッチングアプリ、SNS……世界の急激な変化の中で溺れもがく人間たち。対立の果てに救いは訪れるのか?
「わかりあえないこと」のその先を描く、日本文学の最高到達点。
「変わりゆく世界を、共にサバイブしよう。」――金原ひとみ
文芸誌「叢雲(むらくも)」元編集長の木戸悠介、その息子で高校生の越山恵斗、編集部員の五松、五松が担当する小説家の長岡友梨奈、その恋人、別居中の夫、引きこもりの娘。ある女性がかつて木戸から性的搾取をされていたとネットで告発したことをきっかけに、加害者、被害者、その家族や周囲の日常が絡みあい、うねり、予想もつかないクライマックスへ――。
性、権力、暴力、愛が渦巻く現代社会を描ききる、著者史上最長、圧巻の1000枚。
『蛇にピアス』から22年、金原ひとみの集大成にして最高傑作!
感情タグBEST3
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読み終わってすぐのシンプルな感想は「こんなにも色んな目線を1人で書いたのか、すげえな」だった。
結局人はみんな主観の中で生きているんだな、ということを実感させられると共に、エンタメとしてのこの物語の面白さに夢中になった。
Posted by ブクログ
すごい小説だった!
この小説は男性の加害性、それによる女性の苦しみの話から始まっていくけども、そこから時代の変化にどう向き合っていくのか。人の苦しみへの共感や連帯と、自分の人生の両立。そういったことが書かれているように思った。これは私にとってもホットトピックで、登場人物を理解したり、全然理解できなかったりしながら、自分と向き合うハードな時間を過ごし、最後のリコの言葉で少し救われ、読後感は予想外に爽やかでめちゃめちゃ良い読書体験でした。
Posted by ブクログ
この本のテーマ:老害、男の加害性、悲劇のヒロイン体質な女、平和主義・穏健派の若者など
登場人物の気持ちに感情移入して読んでいたら、次の章で他の人目線でディスられる。
特に、長岡友梨奈の思想は共感し、登場人物内で一番近い人間だと考えながら読んでいたのに、彼氏である一哉や娘の伽耶目線では苦手意識を持った。
金原ひとみの思想はどこにあるのだろう、長岡友梨奈なのかと思っていたけど、誰とも重ならないのかもな。
登場人物それぞれの論理・思想があって、他の人目線のその人を書けるのがすごいなと単純に思ってしまう。
みたいなことを思って読みすすめていったら次のような記述があった。
「武夫まじ普通に真っ当。までも私イエニスト茂吉好きは私ですちゃんに会ってさ、あの子もまあ普通に真っ当だなって思ったわけ。でもああやって食い違っちゃうわけじゃん?それってなんか、出来事としておもろくない?二人とも真っ当なのにお互い何こいつってなってさ、なんか裏切りとか嘲笑的な?になるわけでしょ?」優美(五松武夫のセフレ)の台詞。私が言いたかったのはこういうことで、この小説自体がこの言葉の通りになっている。
そして、これを書ける金原ひとみがすごい。
文庫化したら買いたい
ーーーー引用あらすじーーーーー
文芸誌「叢雲(むらくも)」元編集長の木戸悠介、その息子で高校生の越山恵斗、編集部員の五松、五松が担当する小説家の長岡友梨奈、その恋人、別居中の夫、引きこもりの娘。ある女性がかつて木戸から性的搾取をされていたとネットで告発したことをきっかけに、加害者、被害者、その家族や周囲の日常が絡みあい、うねり、予想もつかないクライマックスへ——。
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Posted by ブクログ
文芸誌の元編集長がかつて交際していた女性から、「10年前に性的搾取をされていた」とSNSで実名告発されたことをきっかけに、年代も性別も違う複数の人たちが、いろいろな視点からそのことについて語る作品です。世代間の意識や考え方、価値観の違いが描かれていて衝撃的な作品でした。
語り手は、性加害の当事者である文芸誌の元編集長で今はもうすっかり枯れてしまった無気力状態の50代の男性、正義感が暴走気味で古い価値観に抗う40代の女性小説家、その女性小説家の担当で異常な性癖をもつ30代の男性編集部員、この男性編集部員とセフレの関係にある女性、女性小説家と一緒に暮らす16歳年下で一途に相手を愛する20代の恋人(パートナー)、性加害のもう一方の当事者で小説家志望の女子大生の時に当時まだ編集部員だった元編集長と知り合いその後も交際していた女性、女性小説家の娘で母親とは別居し父親と同じ家に暮らしてはいるものの引きこもりで休学中の女子大生、告発された元編集長の息子で高校生の男子学生などです。
加害者の立場から、被害者の立場から、その家族の立場から、周囲の関係者の立場から、性加害の意識なくそのような行為をしている立場から、それぞれ自己都合的な主張をしたり、行為を正当化するなど、時代に適用できず旧態然とした価値観のまま取り残されていく人間と、時代にアップデートしていく人間の姿が、それぞれ対比的に描かれていました。
また、大人世代と若者世代との意識のギャップや、告発した側がSNSで多くの中傷を浴びるという善悪や正義が分からなくなってしまう歪んだ世の中など、決して小説の中の話だけとは言えないリアルな現代社会が描かれていました。
それぞれ自分に都合の良い独善的な主張が交錯し、善悪がそして正義が曖昧に思わされていく過程は、まさに証言の食い違いで真相が不明瞭になる芥川龍之介の短編小説「藪の中」を想起させるもので、タイトル通り、現代版「YABU NO NAKA」と言えるのではないかと思いました。
ストーリーとは離れますが、この作品を読んでいて感じたのは、登場人物の感情や思いを分かりやすく言語化されていることでした。例えば、
『私はくだらない男だ。くだらなくて、情けなくて、何の情熱もなくて、誰からも愛されない、誰も愛さない。その事実が、もう悲しくともなんともない。枯れた木や花を見るように、心中は見渡す限り凪だ。』
『勉強ができず苦労した学生生活、パッとしなかった私自身と、希薄な友人関係、ゼミに入りようやく同じ趣味の人たちと知り合えたものの、陰キャばかりで卒業と同時にほぼ無くなってしまったコミュニティ、雑巾みたいな扱いをされる会社、見るたびに悲しくなる給与明細、・・破綻したそういう最悪な全てがのしかかってきて万力にかけられた風船のように心がパチンと弾け飛んだ気がしました。』
最後に、グサっと心に刺さった台詞をふたつ紹介して、終わりたいと思います。
『彼もまた、私に搾取されたと感じていたのかもしれません。自分はお金をかけた、時間をかけた、労力をかけた、と。ですが人は好意を持つ相手との関係には、その三つを自然にかけるものなのです。かけたものを「かけた」と相手に発言するかどうかで、その人の人としての器が測られるのだと思います。』
『そんな古い価値観押し付けないでください。老害です。』
Posted by ブクログ
カンブリア宮殿。村上龍と小池栄子が、経営者にインタビューする番組。
テレビ東京で20年続いている。私も、20年とは言わないが十数年見続けてきた。
それが、2026年4月から変わるという。
最近めっきり老け込んだ村上龍に代わって、金原ひとみがパーソナリティになる、
というのだ。相変わらず絶好調な小池栄子さんも代わる。残念。
金原ひとみ、、、蛇とピアスは読んだはず。あまり理解できなかったと思う。
番組、一度は見るけどそのあとは離脱かなあ、と思っていた。
が、この小説を読んで認識が変わった。
凄い作家だ。
YABUNONAKA 芥川龍之介の「藪の中」が下敷き。
殺人事件に対し、証言がことごとく食い違う。
「真相は藪の中」の語源。映画「羅生門」のもとにもなっている。
羅生門では殺人事件にレイプも重なっていたが、
この小説は性暴力がこれでもかこれでもかと出てくる。
そして、加害者、被害者それぞれがそれぞれの立場で語ることが小説になっている。
目次がこれ。入れ代わり立ち代わりのべ14人が語る。
1 木戸悠介
2 長岡友梨奈
3 五松武夫
4 橋山美津
5 横山一哉
6 安住伽耶
7 越山恵斗
8 安住伽耶
9 横山一哉
10 橋山美津
11 五松武夫
12 長岡友梨奈
13 木戸悠介
14 リコ
作家志望の大学生に手を付ける×2の文芸インポの初老の編集者
夫にレイプされ離婚を求め若い男と同棲している正義感の塊の小説家
性的に病んでいる編集者
編集者におもちゃにされ告発した作家志望の女子大生
小説家と学生時代から同棲している男
小説家に家を出られ父親と生活している引きこもりの女子大生
作家志望の女子大生に告発された編集者の息子
編集者の息子の彼女
若い女性は性的に搾取され、性暴力の餌食になるのが当たり前のような、、
1章を読んだときは編集者の悲哀が伝わって、なんともいい感じ、と思っていたが、
2章からどんどん凄惨な世界に入っていく。
語り手は変わるが話はつながっていく。
編集者におもちゃにされた別の女子大生が自殺して、
登場人物たちが揺れる。話が飛躍していく。
そして想像しない結末が、、、
500ページ以上の大著だが、全く飽きさせない。
よくぞこれだけの人間を描き分けるものだ。
こりゃシン・カンブリア宮殿、期待できるかも。
Posted by ブクログ
ものすごく興味深い物語だった
現代の思想を描いた物語だった
男性と女性それぞれの思考がリアルに描かれていた
令和という時代がそっくりそのままそこにあった
読むとめちゃくちゃ疲れます笑
熱量がすごいです
作者の伝えたいことが雪崩のように脳の中に押し寄せてきます
痛くて苦しくて共感したい気持ちが溢れてきて窒息しそうになります
読後感は全力疾走したような気分です
私は女性であり、しかも社会人としてそれなりに長くこの世を生きているのでめっちゃ共感できました
男性が本作を読むとどんな感想を抱くのか興味深いです
それぞれの年代の主人公がいるので、どの人物に共感するのかによってその人自身の人間力が明るみに出そうです笑
Posted by ブクログ
取引先の30代の女性が言っていた。「あそこの社長は本当にイケメンなんです。」その話を同僚の女性にしたら「いや本当にカッコいいのよ。ヤバいの」と。
2026年現在、多くの男性はもう取引先の女性のことを美醜で形容しない。
「取引先のあの子めっちゃ可愛い。」これ男性言ったらセクハラだし、気持ち悪い奴扱いなんです。
ゲイの綺麗な男の子だけが集まった恋リアを女性が見ている。
逆の恋リアがあったら?レズの超可愛い女の子が恋をしたりキスしたりするんだ。これをNetflixで俺が夜な夜なチェックして、毎週火曜の配信を楽しみにしてたら?
ちなみに誤解なきよう申し上げるとBOY FRIENDはチラ見しただけだけど、番組自体を批判する意図はなく、むしろ面白そうなので全部見たいと思っている。あくまで対比。(などという煩わしいエクスキューズも大切だ)
さて、本作について。
「どうしてわかってもらえないんだろう。」
そんな態度をとることが間違いだ。わかってもらおうとするのは気持ち悪いし、気持ち悪いおじさんは無視したほうがいい。
いまから直したって遅いんだ。あの人の腹の虫の居所が悪くなると、もしかしたら過去の行いの償いのために暴力に晒されるかもしれない。いやだってあのとき暴力をふるったでしょ?と。
時代の空気によっておじさんは最早わかられるような行動をとってはいけないし、わかられようとしてもいけないんだ。
近年、女性に対して立場ある人が性的搾取をしていたという告発は後が絶えない。搾取は犯罪になり得る行為で当然あってはならないことである。
その前提に立ちながらも敢えて批判的な目を向ける。
本当に純粋に搾取した相手を糾弾したいのであれば、告発という形をとる必要はあったのだろうか。
何かそこに後ろ暗い背景はないだろうか。
そう考えてしまう自分がいる。
いや、そんなことさえおじさんは口にすることはできないし、口にしようものなら社会から抹殺されるだろう。いま口にしてるが。
おじさんは本当に気持ち悪い。実際に五松のように女性を扱う人間もいる。おじさんも五松もみんな気持ち悪い。視姦だ、ハラスメントだ。
イノセントなのは少年とメロい男子だけ。
いやでも待てよ、と。女性に対してそういう目を向けることは搾取なのに、イノセントな少年やメロい男子に熱をあげることは搾取じゃないのか?
五松は気持ち悪いけど晒されるほどのことをしたのだろうか。性的同意とは何なのだろうか。
歴史的に間違いなく男性は女性を搾取してきた。いまも搾取し続けている。そして同時に今見直されつつある。男性は女性への向き合いを改めている最中だ。
未来のある時点から、今の2020年代前後のこの空気感を見た時、男性が女性への向き合い方を改めたことと男性やおじさんが急速に「気持ち悪い」ものとして扱われ始めたモメンタムをきっと観測できるだろう。
搾取の議論を越え、存在そのものに対する疑問や無差別的な暴力をいつなんどき突きつけられるかわからないのが現代のおじさんの位置付けだ。仕方ないよね、気持ち悪いのだから。
晴れて、女性に暴力を振るい続けてきた男性は遂に女性からの暴力に怯えることとなった。
木戸のように好意で始まったとして、一時の感情で相手を乱暴に扱ってしまえばあとはいつでも(親友が作品賞を受賞したときのような最悪な気持ちの時に)、まともだったバックグラウンドを「気持ち悪い」ものに変容させて、無茶苦茶にしてやっていい、サンドバッグにしていい、そんな暴力を感じてしまう。例えその男と良い時間があったとしても。
告発しながら作中の女性は何もせず怠惰に暮らしたり、若い男に手を出したりしている。何が違うのだろうか。なんで女性は気持ち悪くはないのか。
そんな思考実験を延々考えさせられる大作。
そして昨今の性的搾取の問題に切り込みながら、男性も女性も圧倒的に主観的なアニマルとしての存在そのものがエグいということを突きつけ、金原作品に通底する人間の孤独と狂気を抉り出した怪作。
長岡の、連帯すれども同じ景色をみることはない、との一節は味わい深い。絶対的に孤独であることを受け入れないと、私たちはいつまでも誰かに依存し続けるのだ。
長岡と橋山は瞬間的に同じ景色を見たものの、結局長岡は木戸の景色を垣間見る。それは長岡もまた搾取する側であり、後ろ暗い橋山の意図が見えたのだろう。
凪良ゆうの流浪の月にも似た第三者の見る世界と一人称二人称の世界がアシンメトリであることを再認識する。
Posted by ブクログ
この作品は、読み進めるほどに「まとめること」を拒否してくる小説だった。
群像劇という構造の中で、誰か一人の話を聞けば、その人に感情移入してしまう。だが別の視点に立てば、また違う感情が生まれる。その繰り返しの中で、「誰が正しいのか」「何が真実なのか」が分からなくなっていく。
性加害の問題について、被害者に寄り添うべきだという思いは、自分の中で大前提として揺るがない。これは今後も変えるつもりはない。しかしこの作品を読んでいて、そして現実の出来事を考える中で、もう一つの感情が浮かび上がってきた。それは、被害者の話を聞いているその最中でさえ、一瞬だけ「それは被害妄想なのではないか」と思ってしまう瞬間が、人の心には生まれてしまうということだ。
自分は被害者に寄り添う立場でいたいと強く思っている。それでもなお、無意識のうちに疑いの視線がよぎる可能性がある。その事実が、とても怖いと感じた。正しい立場に立っているつもりでも、人は完全に偏りや疑念から自由にはなれない。その脆さを、この物語は静かに突きつけてくる。
この物語を通して、「真実は一つではない」という感覚がより強まった。主観で語られる真実もあれば、客観的に整理される事実もある。そのどちらも完全ではなく、もしかしたら“唯一の真実”など存在しないのかもしれない。
印象的だったのは、恋愛関係の中で描かれる「盲信が一気に冷める瞬間」だ。
一回り以上年上の女性と交際している男性が、ある瞬間、相手を恋人ではなく「母親のように」見てしまう。その描写には強い違和感があり、ゾッとした。しかし興味深いのは、その後に嫌悪や別れといった明確な結論が描かれないことだ。その感情はなかったかのように、物語は淡々と進んでいく。
やがてその女性は突然亡くなってしまう。彼は突然大切な人を失った衝撃から、難聴のような症状を抱えるが、その姿をどこか俯瞰して見ると、「本当に純粋な悲しみなのか」「どこかで演じている部分はないのか」と疑ってしまう自分もいた。それは決して肯定されるべき感情ではないし、愛する人を失えば深く傷つき、病を抱えても何ら不思議ではない。それでも、冷めてしまった瞬間が確かに存在したこともまた、嘘ではない。
悲しみと違和感、共感と疑念。
人は矛盾した感情を同時に抱えながら生きている。その事実を、この物語はごまかさずに描いているように思えた。
事件は時間とともに風化していく。第三者にとっては過去の出来事でも、当事者はその物語を背負ったまま生き続ける。生きていく以上、他人の物語をすべて背負うことはできない。それでも、その断絶が確かに存在していることを忘れてはいけないと、この作品は訴えてくる。
日本社会、とりわけ芸能界を含む権力構造の中で、性加害や「合意」の捉え方は、まだ大きなアップデートが必要だと感じた。形式的な合意があったかどうかではなく、権力や立場の非対称性が存在する中で、その合意は本当に自由なものだったのか。その認識を社会全体で共有していく必要がある。
答えは出ない。
だが、考えることをやめさせない。
被害者に寄り添いたいという思いと、その途中で生まれてしまう疑念。その両方を抱えたまま、人は考え続けるしかないのだと思う。
簡単な結論ではなく、考え続けるための違和感を残すこと。その力こそが、この作品の一番の価値だと感じた。
Posted by ブクログ
それぞれの気持ちが登場人物ごとに書かれてておもしろかった。でも内容が重くてすごく疲れたのも事実。
私達が生きている今を映し出してる。行きにくい世の中だし、昔と、今ではモノの捉え方も考え方も違う。アップデートについていけない人間は自分の気持ちを押し殺していくしかないのかな。
Posted by ブクログ
圧倒された。
性加害とか、性的搾取とか、読むのは苦手な分野にも関わらず、一気に読み進めさせられた。
しかも話の中身は苦手な部分を凝縮させたような内容なのに。
まず長岡友梨奈が嫌いになった。自分の正義感をそこまで(自分の娘や恋人にまで)押しつけないでも良いのではないかと。
そして長岡の恋人の横山一哉に一番(長岡友梨奈に魅力を感じること以外概ね)共感した。
各登場人物の視点で順番に物語が描かれており、読者は物語を通して、人はこんなにも分かり合えないのか、ということをまざまざと見せつけられる。
最後の盛り上がりどころとして、長岡友梨奈の死という場面がある。このとき長岡のこれまでの活動が世間にヒロイックにウケるのだが、自分もこのとき受けた印象は木戸祐介と同じ、長岡の人物像と違う、だった。
人は自分の主観の世界のなかで生きられないことを考えると、本書を含め、色々な小説を読み、多様な考え方を自分のなかに情報として持つことが、他者理解の一助になるのかなと考えた。
Posted by ブクログ
文学業界の話
語り手が次々替わり、ひとつ事にも見え方が異なり
言い分も違う
発端となるのは、作家志望だった30歳の女性が、10年前に受けた性的搾取の加害者を、ネットで実名告発したこと
告発されたのは、50代大手出版社の文芸誌、元編集長、木戸悠介
2度の離婚で、ひとり暮らし
作家として登場するのは、長岡友梨奈42歳
娘、夫とは別居中
20歳の娘は2年間引きこもり中
離婚したいが応じてくれない夫と娘は2人暮らし
友梨奈は、愛する娘との関係もうまくゆかず、分かり合えずに苦しむ
社会の出来事に対する憤りで気分が悪くなる事は確かに有る
しかし友梨奈の「正義感」はあまりに強烈すぎて、本人も抑えが効かず、辛いストレスだらけの中で生きているのだろう
友梨奈の担当編集者 五松武夫
付き合う女性にはパワハラ、セクハラ満載で
手ひどくネット告発される
五松の視点で、特に気になったのは
p394
50代以上の人には特有のスマホ慣れてなさ を感じる
ちょっとした指遣いなんだろが、猿が機械持たされているような不自然さで、惨めだ!
世の中を、女性をナメているとんでもない男
全528ページ
1ページの中に描き込まれている内容が濃すぎて
じっくり向き合わないと、理解が追いつかない
ザッーとよ読むのはもったいなくてずいぶん時間がかかって読み終えた
自分では気づかず相手を傷つける事はあるだろう
むずかしい!
Posted by ブクログ
友梨奈個人の幸せはあるはずなのに、社会が思い通りにならないから死んでもいいと思っている正義感の強さがしんどかった。
時代の物差し(ルールや罪、常識)は数十年経てば別のものになっているから時代に取り残されない大人になりたい。
印象に残ったことば
「時代の要請」時代が小説を必要としている
自分のことが大好きなのも才能のひとつ
Posted by ブクログ
他人を理解したいと思うほど、逆に深まっていく隔たり。
そのどうしようもなさが、静かに、でも確実に胸に残る小説だった。
誰かの言葉や態度の裏にあるものを、私たちは本当に見られているのか。
読み終わったあとも、答えが出ない問いだけが残る。
Posted by ブクログ
長かった‥
ずっと同じようなテーマの周囲を登場人物目線でグルグル。
それでも最後まで読もうと思わせるのは、いわゆる「藪の中」スタイルで視点を変えながら、何が正しいのか正しくないのか読者を惑わせ、自分を省みたりして、答え合わせをしたくなるからかな。
性搾取をキーとしながら、それを取り巻く社会、時代の変化、価値観のアップデート、分断、などを、登場人物を通して見つめていく。
変化に対応する人もできない人もいて、あるいは所詮人と人はわかり合えないって事はデフォルトな前提として、じゃあどうやってこの先、何らかを共有できるような共同幻想とも言える社会を作っていくのよ?という作者の問いかけだろうか。
変化の中で未来に糾弾される事を見越して今を律するような生き方なんて普通はできないし、あるべき未来はこうだ、なんてわからないのが普通だけど、そこに囚われてしまった長岡さんの生き様は痛々しい。
時代に取り残され老害扱いされるオヤジ達も悲しい。
男と女、老いと若さ、などを対比しながら、最後は若者に未来への希望を託すような終わり方でまとめていたが、それだけではどうしても釈然としないものは残ってしまう。
Posted by ブクログ
そんな分厚くないのに500ページ超えなことに読み終わってから気づいた。笑
救いようがなく重たい。。欲望に負けたり社会的に立場で苦しくなる男たちよりも、歪んだ正義感のような長岡友梨奈が一番怖いなと思った。
私は、まだ自分たちより下の大きな時代は生まれてないから、時代の変化を体系的に捉えられない。
時代の変化で正しさや許されるかどうかが変化するって恐ろしいんだろうな。
分かり合えないけど、1人の力じゃどうしようもないこともたくさんあって、どこかで線を引かないといけない。でもその価値観も人によって多様で。。。
Posted by ブクログ
「ある編集者に性的搾取をされた。」と告発された中年男性を軸に、息子や強キャラ小説家、性的クズ編集者、陽キャ引きこもり少女の思いと生活を描く。性描写が至る所にあって、「多様だな性は」なんて、作品の陰鬱な部分とは乖離した感想をもつ。二人の中年男女の鬱な部分に触れると、いつか自分もこんな灰色な生き方になる気がする。いろんな強い感情が描かれる作品だけど、読んだ後は「灰色の本」て印象。
Posted by ブクログ
言葉一つ一つが強くて、文章の圧に圧倒されながら一気読みできずに少しずつ読み進めた。大きな展開が起こるでもなく、視点を変えながら物語が進むが、誰にも共感できない中で一際、長岡友梨奈をどう扱ったら良いのか最後までわからなかった。関わりたくないといえばそれきりだが、私には全くない貫かれた強さと正しさがあり、必要な人なのだと思う。性加害をテーマに読み進める中で考えさせられることがたくさんあったのに上手くまとめられずもどかしい。
Posted by ブクログ
気持ちがゆれる。ゆらぐ。読み切ってもなお不規則に揺らぎ続けているような気分。この作品に潤いや救い、そして美しい結末を求めても報われない。そういうものではない。
一向に同じテンポでは読み進めさせてくれない。それほどにそれぞれの登場人物ごとに没入感を感じられるように描かれていて、巧妙だった。
これでもかとリアルで、令和の現在地が濃縮されていて、末恐ろしさと「これは人ごとだ」と逃げたくなる気持ちを抱えながら向き合わなければならなかった。そうしてバリアしながら読まなければ、自分の過去の経験や何を悪と感じているかという多くのものと真っ向から向き合わねばならなくなりそうだからだ。
この世代・性別・立場も痛みも、全てがちがう人たちをこれほどに解像度高く内側から描きって、しかもだれにも歩み寄り切らずにおわる金原ひとみさんの帝王感よ。長岡さんが金原さんに近いのかな、と途中まで思ってたけど最後のリコを読んで覆った。リコだ。きっと金原さんはリコだね!
心がぐぎゅぎゅとなるのは大抵長岡さんの章で、泣けたのはまさかの木戸さんの章だった。読むたび変わりそうだからまたいつか読み直してみたいな
Posted by ブクログ
レビューを読んでいると、自分と違う意見を持っている人がいて面白い。正解がないのが前提だけれども、自分はこっち派だな、というのは合って、でもレビューでは私と逆の立場の人もいて面白かった。
伽耶と友梨奈の言い合いのシーンが一番しんどかった。
あの場面は①人の苦しみに対する正義感 と、 ②人は分かり合えるかどうか の二つから見れると思っていて、
①については友梨奈と恵斗、一哉と伽耶が同じ意見を持っていると思う。
p293 友梨奈「怒りと悲しみを(省略)後世に継承してはならない(省略)。その継承に加担しないように、私たちはそれについて考える義務がある」
p292 恵斗「どこかで責任を感じるんだよ」
⇒義務感の重いかるいはあれど、伽耶の同級生のレイプ問題について二人とも気にしてる。なんとかできたのでは、するべきだったのでは、と。あと、p287のやり取りを見ても二人の考えは似てるように思う。
一方で伽耶と一哉について。伽耶は少し他人事のように思っている。
p261「正直もうどうしようもないことではあって」
p263「あのお母さんだって大人なんだからやりたければじぶんでやるでしょ」
一哉もp306「俺にとっては他人事でしかない」
「世界のあちこちで起こる問題を自分事として関われないのは当たり前じゃないか」
と似た考え。特に一哉にとっては美優莉は一切の面識がないし年代も違うのでより他人事感が強い。
②人と分かり合えるかどうか、については友梨奈と一哉、伽耶と恵斗が同じ考え。
p289で友梨奈は「わかるよね?」と、二回も自分の意見が他人も持っているものだという前提で話す(p291で伽耶も「思うよね?」と言っているが、こちらは確認ではなく共感を求めているので友梨奈の発言とは意味が違う)。
一哉もp300「ちゃんと話せば分かると思う。」と発言。
これに対し恵斗はp300「どうなのかな。」「多様性の時代とか言いますけど、越えられない壁が高くそびえたってるのがわかって、これは乗り越えられないねって、みんながあきらめるフェーズにはいったんじゃないかって」
伽耶もp298で「世界にはわからないことで満ちている」発言。
なので、①の考え方も②の考え方も共有できていない伽耶と友梨奈は当然お互いに異物扱いするなと思った。考えすぎかもしれないけれど、一哉と恵斗も①と②に関してお互いの考えを共有していないから共感できるところがなく、二人の会話シーンも少なめなのかなと思った。
Posted by ブクログ
やりがい搾取とか性的搾取とか
人をコントロールするのが上手い人がいる
都合よく使われているとも知らずに頑張っている人がいる
自分がしていることが正しいと思っている人がいる
押し付けられる考え方・生き方に溺れそうになる人がいる
きつい内容でした。
Posted by ブクログ
芥川龍之介の藪の中のように、様々な人物の視点による語りで同じ人物や事象が全く違う捉えられ方をされ、真実が有耶無耶となっている。
久しぶりの金原ひとみだったが、相変わらず切れ味の鋭い文章。
性的描写も本作では少ないながら、これこれ〜、と言いたくなる独特の生々しさと痛々しさがある。
登場人物は全員思想に偏りがあり、ほとんど誰にも共感できない。(唯一伽耶ちゃんくらい)
結局みんな自分に都合いいように物事を解釈して生きてるんだなと。
Posted by ブクログ
全体的にしんどい本だったけど、なんとか読んだ。お互いに分かり合えないのが藪の中みたいってことで、このタイトルなのかな。最後が結構リアルで、割と好きだった。誰がいつ死ぬかなんて分からない、そして、人は死ぬまでは生きていかないといけないんだなと思った。
長岡友梨奈がとにかく怖くて気持ち悪い。嫌いなタイプ。特に友梨奈と恵斗が仲良くなっていったのは個人的に一番嫌な展開だった。
五松や木戸は、そこまで徹底的にやられなくてもいいじゃんと思って、モヤモヤした。一方で、最後に出てきたリコは、ほんとに新しい存在って感じがした。
いろいろ成り行きで変わるところもあったり、やりすぎたり、やられすぎたり、それがすごく人間臭いなと感じた。
Posted by ブクログ
どの登場人物も多弁な上に口語的な文章が多いので色々な思想の人のTwitterを読まされている気分になる。みんなうっすら嫌な奴なのだけど全員少しずつ理解ができるから、この世の人って実際みんなうっすら嫌な奴しかいないのかもしれないと思った。
SNSには長岡さんのような何かを憎悪して戦い続けることに側から見れば異常に見えるほど熱を注いでいる人、恵斗のようにまだ人生道半ば以下で全て悟った顔してスカしてる子供、とにかく被害者に回ったら勝ちと言わんばかりに晒しをする人や強い思想や問題から逃げ続ける現代人がいっぱいいる。
なんとなくSNSという窓を通して見る人間観という感じがした。Twitterぽい。
Posted by ブクログ
金原さんの作品は初めて。
面白いけど、一文が長くて、情報量が多いので、一気読みは難しかった。内容も重くて1章読むごとに休憩。me tooの話なので一方的に男性が断罪される話かと思っていたらそうでもなく。作家の女の人が受け付けない、、な。
Posted by ブクログ
ある女性による男性編集者の性加害の告発を発端に、色々な立場から語られるストーリー。
加害者と言われる人にもその人なりの見え方があり、それが別の視点からだとまた違って見えてくる。
個人と社会、過去と現在、時代によっても正しさが違ってくるということがはっきり突きつけられる。
また、SNSによる拡散も今の社会ではよくあることだが、それも物事の一部だったり捻じ曲げられていたり…というのも実感した。
色んな視点があり、それぞれの考え方があるというのは理解した上で、中心人物である作家の長岡のパートを読むのがめちゃくちゃしんどかった…。
あんなに叩きつけるような攻撃的な話し方するの、本当無理…。
本人はそれが正しいと思い込んでいるから救いようがなくて。
一哉や周りの人間がどこに惹かれ、なぜ一緒にいられるのか不思議。
私から即距離置くなー、と。
金原ひとみさんの小説ってすごくエネルギッシュなんだけど、その分読むのに気力が削がれるというか。
ボリュームもあったので、読み切ったときは「疲れた…」がまず最初にきてしまった。
ストーリー自体は面白かったが、登場人物が多くあちこちで繋がっていくから、読んでいるうちに個々のエピソードが薄まってしまった印象。
Posted by ブクログ
ひとまず読み終えた達成感。かなり抉られた本だった。後半のいくつかの章は一部飛ばしてしまった。早く読み終わりたい、読み終わりたくないの狭間を行ったり来たりしながら、なんとか読み終える事ができた。前半は色々とメモを取りながら読み進めていたが、後半はひとフレーズずつに向き合う覚悟はなかった。怖い、自分の無知を自覚しながらの読書はかなり怖かった。他の方の感想や解説を見て、少し落ち着きたい。
金原さんがこの物語に込めたかったものはなんだったのか。私には内容が大きすぎて、伝えたいことのほとんどを受け取れなかった。
Posted by ブクログ
全体を通し、怒りを感じた作品だった。
人間のエゴにまみれた社会の中で、それは時代がどうのこうのじゃなく生じてしまう歪。
その中で私達は生きて行かなくてはならない。
動物ではない、人間として生まれてしまったからこその苦悩と共存しながら。
真相は藪の中、相手があってこそ起こる不協和音、気持ちの不一致、人と人が通じ合うことなど不可能で、だからこそ、これからの時代に小説は必要なのだと筆者は訴えているように思った。
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P88
現実に顔を突き合わせる人たちと、人はどのように生きるべきか、罪とはなんなのか、貧困とどう向き合うべきか、なんて真面目に語り合うシーンはあまりありませんよね。だからこそ、考えざるを得ないシチュエーションと、多様な意見が取り入れられている小説には大きな存在意義があると私は思っています。
P457
この世には正しい心理や間違っている心理、適切な心理や不適切な心理、色々な心理があって、その中で多くの心理に触れ、把握できるかが重要なんだ。結局のところ我々はどうしたって、混ざり合うことのない生き物なのだから。
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同じ女性だけれど、友梨奈は最後まで生理的に受け付けなかった。正義を振りかざせば何をしても許されるのか?ロジハラが酷く、暴力的で視野が狭い。だから実の娘ともうまくいかない毒親。ついていけない時代からうまいこと勝ち逃げした感じがいけ好かない。
馬鹿みたいに死に損なった木戸の方に、なんだか共感出来た。ラスト、「何か」ではなく「誰か」の為に活力が漲る場面での人間臭さに救いを感じた。
女性は弱者というゾーンから一歩踏み出す時代に、でもやはりその盾を使い、被害者ぶる演者も存在するわけで、だから善悪の付け所は難しい。
Posted by ブクログ
金原ひとみ作品、初読。まずはその「言葉の量」の多さに辟易し、閉口してしまった。
内面を正直に語ろうとする姿勢には、確かに誠実さを感じる。
ただ、その正直さが文章の密度として前面に出ていて、個人的にはかなりうるさく感じられた。
感情が休みなく続くため、読む側が一息つける余白がほとんどない。
読みながら、金原ひとみの作品には、救いを強く求め続ける姿勢があるように思えた。
比喩表現に逃げず、剥き出しの感情をそのまま「ぶつけてくる」ような筆致。美しく飾られた文学というよりは、生々しい独白を延々と聞かされている気分だった。これが彼女のスタイルなのか。正直、今の自分にはあまりに熱量が強すぎて、読後感はかなり重い。
彼女とは、しばらく距離をとりたいと思う。
Posted by ブクログ
「YABUNONAKA」というタイトルが意味深で。芥川龍之介の「藪の中」を思い起こす。
正直、この手のモノは現実社会でも、物語としても今は溢れていて、少し食傷気味で疲弊した。
序盤に現れる「文学◯ン◯」という強烈な言葉には笑ったが、終盤にかけて笑えなくなる。
それでも心理描写が非常に巧みで、現れる登場人物たちの強烈な個性も際立っていた。物語として綺麗に円環として繋がっているも、個々の登場人物同士が大なり小なりすれ違い、誤解し、時には畏怖し、完全に繋がりそうで繋がらない。そこが肝だと感じた。
個人的にはどの登場人物にも少なからず心情移入できるも、非現実的で相容れないと思う部分も多く、本の長さよりもそちらの方が重かった。
狂気じみた女性作家の最後、期待していたが少し肩透かしを食らった感じもした。あのような形で良かったとも思うが、どうせなら女性側の男性性の搾取の問題をもう少し深掘り出来たのではなかろうか?とも。
その点では「日本文学の最高到達点」などと銘打たれていたが、著者はこの先もっと素晴らしい作品を生み出すのではなかろうか。
十年後、五十年後に「これ古すぎ」、と笑われていれば著者の勝ちで、この作品に共感する人間がまだまだ多ければ現実世界は歪な形をしているのだろう。芥川は過去を書いたが、著者は今を丹念に描いた。「わかりあえないことのその先」の未来は、まさに「藪の中」だろう。