【感想・ネタバレ】YABUNONAKAーヤブノナカーのレビュー

あらすじ

文芸業界の性、権力、暴力、愛。戦慄の長篇
性加害の告発が開けたパンドラの箱――

MeToo運動、マッチングアプリ、SNS……世界の急激な変化の中で溺れもがく人間たち。対立の果てに救いは訪れるのか?
「わかりあえないこと」のその先を描く、日本文学の最高到達点。

「変わりゆく世界を、共にサバイブしよう。」――金原ひとみ

文芸誌「叢雲(むらくも)」元編集長の木戸悠介、その息子で高校生の越山恵斗、編集部員の五松、五松が担当する小説家の長岡友梨奈、その恋人、別居中の夫、引きこもりの娘。ある女性がかつて木戸から性的搾取をされていたとネットで告発したことをきっかけに、加害者、被害者、その家族や周囲の日常が絡みあい、うねり、予想もつかないクライマックスへ――。

性、権力、暴力、愛が渦巻く現代社会を描ききる、著者史上最長、圧巻の1000枚。
『蛇にピアス』から22年、金原ひとみの集大成にして最高傑作!

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Posted by ブクログ

カンブリア宮殿。村上龍と小池栄子が、経営者にインタビューする番組。
テレビ東京で20年続いている。私も、20年とは言わないが十数年見続けてきた。
それが、2026年4月から変わるという。
最近めっきり老け込んだ村上龍に代わって、金原ひとみがパーソナリティになる、
というのだ。相変わらず絶好調な小池栄子さんも代わる。残念。
金原ひとみ、、、蛇とピアスは読んだはず。あまり理解できなかったと思う。
番組、一度は見るけどそのあとは離脱かなあ、と思っていた。

が、この小説を読んで認識が変わった。
凄い作家だ。
YABUNONAKA 芥川龍之介の「藪の中」が下敷き。
殺人事件に対し、証言がことごとく食い違う。
「真相は藪の中」の語源。映画「羅生門」のもとにもなっている。
羅生門では殺人事件にレイプも重なっていたが、
この小説は性暴力がこれでもかこれでもかと出てくる。
そして、加害者、被害者それぞれがそれぞれの立場で語ることが小説になっている。
目次がこれ。入れ代わり立ち代わりのべ14人が語る。

1 木戸悠介
2 長岡友梨奈
3 五松武夫
4 橋山美津
5 横山一哉
6 安住伽耶
7 越山恵斗
8 安住伽耶
9 横山一哉
10 橋山美津
11 五松武夫
12 長岡友梨奈
13 木戸悠介
14 リコ

作家志望の大学生に手を付ける×2の文芸インポの初老の編集者
夫にレイプされ離婚を求め若い男と同棲している正義感の塊の小説家
性的に病んでいる編集者
編集者におもちゃにされ告発した作家志望の女子大生
小説家と学生時代から同棲している男
小説家に家を出られ父親と生活している引きこもりの女子大生
作家志望の女子大生に告発された編集者の息子
編集者の息子の彼女

若い女性は性的に搾取され、性暴力の餌食になるのが当たり前のような、、

1章を読んだときは編集者の悲哀が伝わって、なんともいい感じ、と思っていたが、
2章からどんどん凄惨な世界に入っていく。
語り手は変わるが話はつながっていく。
編集者におもちゃにされた別の女子大生が自殺して、
登場人物たちが揺れる。話が飛躍していく。
そして想像しない結末が、、、

500ページ以上の大著だが、全く飽きさせない。
よくぞこれだけの人間を描き分けるものだ。

こりゃシン・カンブリア宮殿、期待できるかも。

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2026年02月06日

Posted by ブクログ

ものすごく興味深い物語だった
現代の思想を描いた物語だった
男性と女性それぞれの思考がリアルに描かれていた
令和という時代がそっくりそのままそこにあった

読むとめちゃくちゃ疲れます笑
熱量がすごいです
作者の伝えたいことが雪崩のように脳の中に押し寄せてきます
痛くて苦しくて共感したい気持ちが溢れてきて窒息しそうになります
読後感は全力疾走したような気分です

私は女性であり、しかも社会人としてそれなりに長くこの世を生きているのでめっちゃ共感できました
男性が本作を読むとどんな感想を抱くのか興味深いです
それぞれの年代の主人公がいるので、どの人物に共感するのかによってその人自身の人間力が明るみに出そうです笑

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2026年02月05日

Posted by ブクログ

取引先の30代の女性が言っていた。「あそこの社長は本当にイケメンなんです。」その話を同僚の女性にしたら「いや本当にカッコいいのよ。ヤバいの」と。

2026年現在、多くの男性はもう取引先の女性のことを美醜で形容しない。
「取引先のあの子めっちゃ可愛い。」これ男性言ったらセクハラだし、気持ち悪い奴扱いなんです。


ゲイの綺麗な男の子だけが集まった恋リアを女性が見ている。

逆の恋リアがあったら?レズの超可愛い女の子が恋をしたりキスしたりするんだ。これをNetflixで俺が夜な夜なチェックして、毎週火曜の配信を楽しみにしてたら?

ちなみに誤解なきよう申し上げるとBOY FRIENDはチラ見しただけだけど、番組自体を批判する意図はなく、むしろ面白そうなので全部見たいと思っている。あくまで対比。(などという煩わしいエクスキューズも大切だ)


さて、本作について。

「どうしてわかってもらえないんだろう。」
そんな態度をとることが間違いだ。わかってもらおうとするのは気持ち悪いし、気持ち悪いおじさんは無視したほうがいい。

いまから直したって遅いんだ。あの人の腹の虫の居所が悪くなると、もしかしたら過去の行いの償いのために暴力に晒されるかもしれない。いやだってあのとき暴力をふるったでしょ?と。

時代の空気によっておじさんは最早わかられるような行動をとってはいけないし、わかられようとしてもいけないんだ。

近年、女性に対して立場ある人が性的搾取をしていたという告発は後が絶えない。搾取は犯罪になり得る行為で当然あってはならないことである。

その前提に立ちながらも敢えて批判的な目を向ける。

本当に純粋に搾取した相手を糾弾したいのであれば、告発という形をとる必要はあったのだろうか。
何かそこに後ろ暗い背景はないだろうか。
そう考えてしまう自分がいる。

いや、そんなことさえおじさんは口にすることはできないし、口にしようものなら社会から抹殺されるだろう。いま口にしてるが。

おじさんは本当に気持ち悪い。実際に五松のように女性を扱う人間もいる。おじさんも五松もみんな気持ち悪い。視姦だ、ハラスメントだ。
イノセントなのは少年とメロい男子だけ。

いやでも待てよ、と。女性に対してそういう目を向けることは搾取なのに、イノセントな少年やメロい男子に熱をあげることは搾取じゃないのか?

五松は気持ち悪いけど晒されるほどのことをしたのだろうか。性的同意とは何なのだろうか。


歴史的に間違いなく男性は女性を搾取してきた。いまも搾取し続けている。そして同時に今見直されつつある。男性は女性への向き合いを改めている最中だ。

未来のある時点から、今の2020年代前後のこの空気感を見た時、男性が女性への向き合い方を改めたことと男性やおじさんが急速に「気持ち悪い」ものとして扱われ始めたモメンタムをきっと観測できるだろう。

搾取の議論を越え、存在そのものに対する疑問や無差別的な暴力をいつなんどき突きつけられるかわからないのが現代のおじさんの位置付けだ。仕方ないよね、気持ち悪いのだから。

晴れて、女性に暴力を振るい続けてきた男性は遂に女性からの暴力に怯えることとなった。

木戸のように好意で始まったとして、一時の感情で相手を乱暴に扱ってしまえばあとはいつでも(親友が作品賞を受賞したときのような最悪な気持ちの時に)、まともだったバックグラウンドを「気持ち悪い」ものに変容させて、無茶苦茶にしてやっていい、サンドバッグにしていい、そんな暴力を感じてしまう。例えその男と良い時間があったとしても。

告発しながら作中の女性は何もせず怠惰に暮らしたり、若い男に手を出したりしている。何が違うのだろうか。なんで女性は気持ち悪くはないのか。

そんな思考実験を延々考えさせられる大作。
そして昨今の性的搾取の問題に切り込みながら、男性も女性も圧倒的に主観的なアニマルとしての存在そのものがエグいということを突きつけ、金原作品に通底する人間の孤独と狂気を抉り出した怪作。

長岡の、連帯すれども同じ景色をみることはない、との一節は味わい深い。絶対的に孤独であることを受け入れないと、私たちはいつまでも誰かに依存し続けるのだ。

長岡と橋山は瞬間的に同じ景色を見たものの、結局長岡は木戸の景色を垣間見る。それは長岡もまた搾取する側であり、後ろ暗い橋山の意図が見えたのだろう。

凪良ゆうの流浪の月にも似た第三者の見る世界と一人称二人称の世界がアシンメトリであることを再認識する。

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2026年02月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この作品は、読み進めるほどに「まとめること」を拒否してくる小説だった。
群像劇という構造の中で、誰か一人の話を聞けば、その人に感情移入してしまう。だが別の視点に立てば、また違う感情が生まれる。その繰り返しの中で、「誰が正しいのか」「何が真実なのか」が分からなくなっていく。

性加害の問題について、被害者に寄り添うべきだという思いは、自分の中で大前提として揺るがない。これは今後も変えるつもりはない。しかしこの作品を読んでいて、そして現実の出来事を考える中で、もう一つの感情が浮かび上がってきた。それは、被害者の話を聞いているその最中でさえ、一瞬だけ「それは被害妄想なのではないか」と思ってしまう瞬間が、人の心には生まれてしまうということだ。

自分は被害者に寄り添う立場でいたいと強く思っている。それでもなお、無意識のうちに疑いの視線がよぎる可能性がある。その事実が、とても怖いと感じた。正しい立場に立っているつもりでも、人は完全に偏りや疑念から自由にはなれない。その脆さを、この物語は静かに突きつけてくる。

この物語を通して、「真実は一つではない」という感覚がより強まった。主観で語られる真実もあれば、客観的に整理される事実もある。そのどちらも完全ではなく、もしかしたら“唯一の真実”など存在しないのかもしれない。

印象的だったのは、恋愛関係の中で描かれる「盲信が一気に冷める瞬間」だ。
一回り以上年上の女性と交際している男性が、ある瞬間、相手を恋人ではなく「母親のように」見てしまう。その描写には強い違和感があり、ゾッとした。しかし興味深いのは、その後に嫌悪や別れといった明確な結論が描かれないことだ。その感情はなかったかのように、物語は淡々と進んでいく。

やがてその女性は突然亡くなってしまう。彼は突然大切な人を失った衝撃から、難聴のような症状を抱えるが、その姿をどこか俯瞰して見ると、「本当に純粋な悲しみなのか」「どこかで演じている部分はないのか」と疑ってしまう自分もいた。それは決して肯定されるべき感情ではないし、愛する人を失えば深く傷つき、病を抱えても何ら不思議ではない。それでも、冷めてしまった瞬間が確かに存在したこともまた、嘘ではない。

悲しみと違和感、共感と疑念。
人は矛盾した感情を同時に抱えながら生きている。その事実を、この物語はごまかさずに描いているように思えた。

事件は時間とともに風化していく。第三者にとっては過去の出来事でも、当事者はその物語を背負ったまま生き続ける。生きていく以上、他人の物語をすべて背負うことはできない。それでも、その断絶が確かに存在していることを忘れてはいけないと、この作品は訴えてくる。

日本社会、とりわけ芸能界を含む権力構造の中で、性加害や「合意」の捉え方は、まだ大きなアップデートが必要だと感じた。形式的な合意があったかどうかではなく、権力や立場の非対称性が存在する中で、その合意は本当に自由なものだったのか。その認識を社会全体で共有していく必要がある。

答えは出ない。
だが、考えることをやめさせない。
被害者に寄り添いたいという思いと、その途中で生まれてしまう疑念。その両方を抱えたまま、人は考え続けるしかないのだと思う。
簡単な結論ではなく、考え続けるための違和感を残すこと。その力こそが、この作品の一番の価値だと感じた。

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2026年02月03日

Posted by ブクログ

それぞれの気持ちが登場人物ごとに書かれてておもしろかった。でも内容が重くてすごく疲れたのも事実。
私達が生きている今を映し出してる。行きにくい世の中だし、昔と、今ではモノの捉え方も考え方も違う。アップデートについていけない人間は自分の気持ちを押し殺していくしかないのかな。

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2026年02月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

圧倒された。
性加害とか、性的搾取とか、読むのは苦手な分野にも関わらず、一気に読み進めさせられた。
しかも話の中身は苦手な部分を凝縮させたような内容なのに。

まず長岡友梨奈が嫌いになった。自分の正義感をそこまで(自分の娘や恋人にまで)押しつけないでも良いのではないかと。

そして長岡の恋人の横山一哉に一番(長岡友梨奈に魅力を感じること以外概ね)共感した。

各登場人物の視点で順番に物語が描かれており、読者は物語を通して、人はこんなにも分かり合えないのか、ということをまざまざと見せつけられる。

最後の盛り上がりどころとして、長岡友梨奈の死という場面がある。このとき長岡のこれまでの活動が世間にヒロイックにウケるのだが、自分もこのとき受けた印象は木戸祐介と同じ、長岡の人物像と違う、だった。

人は自分の主観の世界のなかで生きられないことを考えると、本書を含め、色々な小説を読み、多様な考え方を自分のなかに情報として持つことが、他者理解の一助になるのかなと考えた。

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2026年02月01日

Posted by ブクログ

答えなんかないのが、リアルでよかった。

善悪は、時代とともに変わるし、受け取り手によっても変わるから、すごく不確かなものだと思った。

今は年齢的に時代に乗りやすいけど、今後は時代に遅れていってしまうと思うから、気をつけようと思った。でも、必要以上に時代に合わせなくてもいいのかも。


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2026年01月28日

Posted by ブクログ

色々な人物の視点で物語が書かれており、それぞれが「自分にとって都合の悪いことは忘れている」というのが語りに表れているのが本当に面白い。最後まで読んでも、結局何が正しいのかわからず、物語の真相を藪の中にしている。ただ、自分は誰の視点に立って物語を読んでいるのかというのが強制的に突きつけられる。

10年前の恋愛関係が告発の対象になる是非は、人によって意見が分かれるテーマだと思う。編集者の木戸は確かに社会的な立場を利用して女子大生である橋山と関係を持ったという側面がある。ただ、自由恋愛として付き合っていたということも事実であり、社会的に制裁されるような告発を受けるべき人物だったのかはわからない。年齢差や権力差のある恋愛がそもそもグレーであり、今はそれが正しくない時代になりつつあるということかもしれない。

友梨奈の主張は全て正論である。セクハラをはじめとしたハラスメント、立場を利用した性加害などは許されるべきものではないし、個人的にも性欲をコントロールできない男は嫌いだ。一人一人が意識をして、有害な人物を排除したり断罪し続けなければ世界は良くならないと言う主張は正しい。しかし、友梨奈のパートナーである一哉や、娘の伽耶のように、友梨奈と同じレベルで社会の理不尽に怒り、行動できるわけではない人がいることも、彼らの視点を読んで強く思った。全ての人にそれぞれの立場があり、正しくないことが起こる背景があり、友梨奈のように間違っていることに怒れる人ばかりではないのだと思う。そして、正しくあることを強要することは、各々の立場や背景に対する想像力がないということでもあるのだと思った。「圧倒的なまともは狂気と紙一重」というのがどういうことなのか、彼女の言動を見ていると良くわかる。
数いる登場人物の中でも、友梨奈視点の語りは特に危ういと感じた。正しくないことを許せない彼女は、正しくなかった過去の自分に対する認知を歪めていそうだ。世界が正しくないことを嫌悪している一方で、他人の容姿を馬鹿にしたり、15歳年下の19歳と不倫をするなどの乖離があり、彼女の視点がこの物語の真相をさらに藪の中にしていると思った。

同じ男であり自分と一番年齢の近い五松は、基本的には最低なやつではありつつ、「こいつ最低だな」と言ってしまうと自分に跳ね返ってきそうで怖くなる人物だった。女性を見下しつつも表面上はそれを出さず無難に接し、マッチングアプリで女性を漁りつつセフレがいる、性的に少しだらしない軽めのミソジニストではあるが、性犯罪を犯したりDVを振るったりしているわけではない。木戸のような孤独で見窄らしいおじさんになりたくないと思い、おじさんになることへの恐怖に抗いたいという気持ちはすごく理解できてしまう。

橋山に共感できなかったのは、自分が男性だからだろうか。彼女が世間知らずの大学生であったが故に40代のおじさんに職業上の利を生かして性的に搾取されていたことを、10年経った今屈辱的な気持ちになることは理解できるが、やはり10年前の時点ではお互いに合意の上で恋愛していたわけで、ネガティブな部分だけを論って告発するのってどうなの?という気持ちにはなる。一方で、こんな感想を彼女に持ってしまうことが男性的であるのかもしれないと、自分に対して嫌な気持ちにもなる。
友梨奈が橋山を頭が良くないと評した通り、彼女は彼女の苦痛を理解してもらえるような言語化ができていないのかも、と思った。友梨奈が彼女の告発文に赤入れしているように、感情的な人間の言葉は聞いてもらいづらい。

個人的に一番共感したのは伽耶だった。「自分ごとかどうか」「自分にとって得か」という個人主義的な考え方は現代的だなと思う。そもそも「社会を良くしたい」なんて思えるほど、社会に期待できる世界ではないのかもしれない。

「有害な男性性」に傷つけられてきた多くの女性がいるからこそ、「自分は有害な男性である」ということを自覚する男性の息苦しさを書いてくれたのがよかった。世の中に有害な男性が存在し続ける限り、男女ともに苦しみ続ける世の中ではあるが、女性だけが苦しめられていた過去に比べれば前進しているのか…?

金原ひとみの本は初めて読んだが、汚い言葉の選び方がユーモラスで秀逸だなと思った。橋山のうんこの件はちょっと笑ってしまった。
生々しい性描写が多いので、電車で読んでいたのを勝手に気まずくなって中断したこともあった。

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2026年01月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本作には多種多様な人物が登場するが、そのどれもが驚くほど解像度が高く、読者は誰か一人に自分を投影してしまうだろう。
作中の人物たちは、私たちの身近にいる人間、あるいはTwitterで見かけるような人間だ。
彼らの言動を「こういう人もいるよね」と切り捨てず、執拗なまでの観察眼で描き切る筆致には、小説家としての類まれなるセンサーの精度を感じざるを得ない。

​本作は「性加害問題」を主軸としているが、単なる「フェミニズム文学」という枠に矮小化して語るのはあまりにも惜しい。
これは性加害の是非を超え、高度な人権意識を求められる現代社会の窮屈さ、認知の歪んだフェミニスト、加害者として糾弾される男性、そしてアンチフェミニズム的視点までもを網羅した、極めて多角的な人間ドラマである。

以外は各登場人物への感想である。

〇長岡友梨奈
リベラルで差別や性加害を断固として許さない彼女だが、その実、内面には深刻な矛盾を抱えている。
・「男性に対する容姿(ハゲ、臭い等)への侮辱を笑う」
・「15歳年下の19歳の青年と不倫する」
・「女性の容姿を嘲笑する」
といった、人権意識に欠けた差別的な考えを持っている。
これらは彼女が忌み嫌うはずの「人権意識に欠けた差別的言動」そのものである。
彼女自身、自身の正義を「ダブスタ」だと認めつつも、女性蔑視と受け取った言葉には異常なまでの攻撃性を示す。
いわゆる「言葉狩り」である。
私は常々、人権意識を他者に強いる人々は、自分自身がその刃の対象になる可能性を想定しないのかと疑問だった。
彼女は己の正義の殻に閉じこもり、思想を同じくしない者を排斥・矯正しようと試みる。
多様性を謳いながら、その実、極めて排他的なのだ。
彼女は「自分と同じ高い人権意識を持つ人間だけの世界を作り、それ以外を処分すれば平和が訪れる」と主張する。
しかし、作中で示唆される通り、思想はグラデーションだ。
選民思想によって純化されたコミュニティであっても、そこには必ず新たな対立が生まれる。
「地上の楽園」など存在し得ないのだ。

〇木戸悠介
性加害者として告発された彼もまた、「弱音を吐く男は恥」という性別の固定観念に囚われた犠牲者と言える。
昨今「フェミニズム」という言葉が、非常に恣意的に使われていると感じる場面を度々見かける。
本来のフェミニズムとは、男女双方がこうした固定観念から解放されることを目指す体系のはずだ。
しかし本作では、「色気がある」や「臭い」といった発言が、男性から女性へなら糾弾され、逆ならギャグとして消費される。
木戸は最後まで、自分がなぜこれほどまでに糾弾されるのかを真に理解できず、ただ批判の嵐に身をすくませている。
物語終盤、木戸の視点から語られる交際生活では、彼もまた彼女の言動に傷ついていたことが明かされる。
木戸と橋山美津、どちらの証言が真実かは判別できないが、おそらく「どちらも真実」なのだろう。
同じ時間を共有しても、認識の違いによって見ている景色は全く異なる。
私たちはどこまで行っても他者と心から分かり合うことはできない。

〇橋山美津
私はこの人物が嫌いである。
恋愛の傷心は普遍的なものだが、彼女は「ミソジニー」という名の免罪符を手にしてしまった。
他者への嫉妬や自身の苦しみを直視する代わりに、歪んだ理論で脳を塗りつぶしてしまったのだ。
​木戸と交際していた当時、彼女がどれほどの強制力を感じ、それが本当に搾取であったのか。
それは後になって彼女がどう解釈するかでどうとでも変質してしまう。
​実際、長岡が夫から受けていたとされる性暴力の主張も、具体的な描写や客観的な根拠を欠いたまま語られる。
筆者はあえて詳細を伏せることで、その主張の不透明さを際立たせているように感じてならない。
​「被害」という言葉を盾にすれば、過去のあらゆる力関係を遡及して塗り替えることができてしまう。
その真偽が霧の中にある以上、私たちは誰が真の被害者で、誰が加害者なのかを断定する術を持たないのだ。
彼女の告発文には客観的な証拠は何一つない。
しかし、刺激を求める大衆にとって、それは格好の「暇つぶし」として機能する。
そこには論理の整合性も、真実の探求も必要とされない。
彼女が創作に対する熱意が欠けていて、勉強不足な点も気に入らない。

〇安住伽耶
私が最も感情移入したのは彼女だ。
長岡と口論する場面で、長岡が「政治的正しさ」を武器に理論武装してくる様は圧巻であり、同時に恐怖を感じた。
正論で追い詰められる伽耶の姿に、自分自身が「間違った、思慮の浅い、最低な人間」として人格否定されているような感覚に陥り、涙が溢れた。

〇安住克己
彼は長岡の言う「愚かな人間」に分類されないよう腐心するが、結局はそのカテゴリーに放り込まれる。
私が本作を手に取ったきっかけは、YouTubeチャンネルの『TBS CROSS DIG with Bloomberg』で金原ひとみ氏が、現代のサバイバル術として「同じレベルで怒ってくれる人を見つけること」と発言していたことだ。
本作において、克己は長岡の怒りに共感しきれなかった。
その結果、「世界中の差別主義者を一掃するための共闘の信念がない」と一蹴されてしまう。
その断絶が、あまりにも冷酷でリアルだ。
だが実際、思想の違いというのは「価値観の違い」「金銭感覚の違い」と同じ程度、もしくはそれ以上に人々の間に隔絶を容易に生むのではないだろうか。

余白が足りないため主要人物に絞って感想を述べたが、本作には他にも唸らされる描写や、胸に深く突き刺さる一文が数多く存在する。
現代を生きる私たちが目を逸らしてきた「正義という名の暴力」と「対話の不可能性」を、これほどまでに残酷に描き出した作品は他にないだろう。

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2026年01月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

著者の作品が好きなので年下彼氏がいる友梨奈には心当たりがあり深く考えなかったけれど、友梨奈の場合はどうなのかという流れが新鮮だった。
どの人物も親近感が湧いたり想像しやすいタイプなので友梨奈の長い台詞だけ異様に思えて、去っていく伽耶に共感する。

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2026年01月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

・登場人物に、ちゃんと嫌悪させられる。そういう物語はあまりない。普通は、「悪」にはもっと弁明の余地があったりする。でもこの作品は生々しい。とてもリアルで、心当たりがあって、それ故に嫌悪する。顔を顰めながら読まされてしまう。圧巻。

・こんなにも書いていいのか!と勇気づけられる。映像や、音楽に触れていると、語られない美学というものは自明であるとつい思い込んでしまう。でも、小説だからこそ、こんなに書けるのか!と思う。この人は、何に怒り、何に苦しみ、何に悩んでいるのか。日常の細部から、心の機微をこれでもかと文字に起こされていく。その様は読んでいてとても気持ちが良い。だからこそ、これだけの衝撃と、読後感を与えられるような小説になったように思う。

・わからない語が、適度に出てくる小説が好きだ。少し立ち止まって検索して、こんな言葉あるんだなあと思う瞬間が楽しい。

・最後の章に、リコを持ってくるのズルい。ずっと、暗いなにかに囚われている人たちの視点が描かれつづけていたのに、最後の最後にあんな最強女子で締めるのか。ニクいなぁ。

・長岡さんの、「世界が正しくないことを嫌悪する」姿勢にはあまり共感できなかった。でも、自分なりの「こうあるべき」という理想像に囚われて、そうではない現実への怒りにはとても覚えがある。だからこそ、対比として一哉のような、目の前にある幸福をしっかりと認識して、それを大切にできる人のことを尊く思う。嫉妬すら覚える。一哉のような強い男性で在りたい。一哉、どうにか幸せになってくれ。

・西山さん、序盤から名前が挙がり、ずっと気になる存在として描かれていたのに、とうとう彼女の視点はないまま作品が終わった。「こんなに書いていいのか!」と感動させられる小説だったが、そこには「みなまで語らぬ美学」までが共存していた。すごい。最後に二人が抱き合っていたのはなに?どんなやり取りがあったの?

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2026年01月18日

Posted by ブクログ

500ページ越えの大作。

今後、数回は読み直す作品であると感じた。
時代は移ろいゆくからこそ、この作品を何度も何度も読み返したくなる、そんな気がした。

あと一手先でいい。一手先のことを考えること。
相手を思いやる深度を一つだけ進めること。
それだけで少しは違う景色が見えてくる気がする。傷つかない人が増える気がする。

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2026年01月17日

Posted by ブクログ

金原ひとみさんの作品は初読みでしたが、圧巻でした。
人と人が完全に分かり合えることはない。それを容赦なく、徹底的に書ききった凄まじい作品。

帯やあらすじにもあるように、性搾取の告発を中心に物語が展開していくのですが、でも性加害や性搾取の悪辣さを知らしめることや、それを断罪したり怒りの感情を発露したりということはあくまで作品の中の一部分のように感じられるというか……。性加害・搾取という問題を通して「分かり合えない」ということをとことん直視させられ、痛感させられたという印象の方が強かったです。
性搾取した人と、性搾取された人。世の中に対して許せないことがある人、許せないことがないという人。男と女。母と娘、父と息子。世代の違いや、セクシュアリティの違いなど。作中には対比になるような関係性や価値観がふんだんに散りばめられており、その誰もが誰一人として誰かと「分かり合えた」と満足出来ることはない。
読み進めるほどに、「人は分かり合えない」という事実を突き付けられ、実感させられる。
295頁にある『私たちは同じ世界の住人でありながら、同じ世界の住人では全くない。同じ世界を生きながら互いが互いを透明人間のようにすり抜けていく。私たちは永遠に交わらない。』という言葉が否が応でも腑に落ちるような、フィクションなのにゾッとするほど現実的な物語でした。
また作中に出てくる10〜50代の男女それぞれの言動や思考は見ていて嫌になるくらいに赤裸々に書かれており、生身の人間臭さがすごくて…。それがより作品のリアリティを強めていましたが、そこまで分析して俯瞰して書ける著者に畏怖を覚えます。人間を書くのが上手すぎる。
また明け透けなくてリアルゆえに、登場人物たちの感情や考え方に共感出来る部分も随所にあって、読んでいて面白さを感じつつも、でも物語に感情を引っ張られることもまあまあ多くて読み進めるほどに疲労感が積もって行くような心地でした。終始気持ちのいい話ではないので、メンタルが元気でない時に読むことは控えた方が良さそう。
でも個人的には読後感は不思議と悪くなくて、誰かと完全に分かり合えることがなくても生きていけるというか、生きていかなきゃだしな…と、どこか晴れ晴れした気持ちになれました。
読むのに時間や気持ちをゴリゴリ持ってかれる、ページ数も内容もヘビーで強烈な一冊。とてもオススメの作品です。

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2026年01月18日

Posted by ブクログ

めちゃくちゃ面白かった。すごい本を読んでしまった。

登場人物の視点が順を追って進んでいき、またその、逆順で折り返していく構成で、その人の視点で物語がどのように綴られていくのか気になって、どんどんページが進むし、
周りが語る人物像と渦中の人物の心境やスタンスが全く違っていたり、そもそも切り取るべきところが異なっていて、こんなの現実世界そのままじゃん、と何度もなった。

伝えたいストーリー、主張されているトピックは明瞭なものがあるわけではないのかな、告発文を基軸に進むストーリーであるものの、個々人の信念や置かれた環境、たどってきた人生の遍歴で、章によって全く違う主題が書かれてるようにも感じた。とにかくすごい。

個人的には、「昨日まで大丈夫だったものが、いつ反転し、大丈夫じゃなくなるのか分からない」「普通にライブハウスに来てる人たちの何て普通じゃないことか(すごいことか)」という人生が転落することの怖さを語っていた伽耶さんの話に共感するところが多かった。

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2026年01月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

令和の『藪の中』を生きる、剥き出しの正義と多面性の終焉

金原ひとみ『YABUNONAKA』は、芥川龍之介の『藪の中』を現代の地平で再構築した群像劇だ。物語は、出版社に勤める木戸という編集者が、元恋人の美津から10年越しの性的搾取を告発されるところから動き出す。そこから派生する様々な人物たちの視点が重なり合い、性加害という深刻なテーマを軸に、現代特有の「真実の不透明さ」が描かれていく。
本作で圧倒的な存在感を放つのは、木戸の元担当作家・長岡友梨奈である。彼女は強固な自らの正義を信じ、他者をねじ伏せる力を持つ人間だ。かつての彼女は、自身の中に宿る「乖離性」を武器に、物事の多面性を描く小説家としてバランスを保っていた。しかし、娘の友人の自殺という悲劇が、彼女の古傷を抉り、その乖離性を消失させる。
壊れた友梨奈が選んだのは、ペンではなく物理的な暴力による制裁だった。人々の多面性を描くことが小説家の矜持であったならば、単一の正義を振りかざして暴力に走った瞬間、彼女は表現者として「死」を迎えていたのかもしれない。彼女の死の直前、別の雑誌で執筆を再開しようとしていたのは、乖離性を失った「新生・長岡友梨奈」としての模索だったのだろうか。その真実は、彼女が交通事故でこの世を去ったことで、まさに「藪の中」へと消えてしまう。
物語の構造も巧妙だ。木戸、美津、恵斗、一哉、五松、伽耶。それぞれの立場から語られる性的搾取の記憶は、主観的な事実に満ちている。そこには個人の後悔や言い分がある一方で、それらを「善悪」として裁くのは、その時代の社会が醸し出す「空気」だという冷徹な事実を突きつける。
バブル期の無自覚なハラスメントと、過渡期にある現代の価値観。木戸、一哉、恵斗という三世代の男性像は、それぞれの時代の価値観を背負った象徴として描かれている。34歳の私が、その中間に位置する一哉に共感してしまうのは、私自身もまた、今の時代の空気によって形作られた人格であることを突きつけられたようで、ひどく身につまされた。
この物語を読み終えて、我々は問い直される。社会を多面的に見ることは可能なのか。それとも、特定の立場からの怒りこそが唯一の正義なのか。他の読者がこの作品をどう受け取るか、その反応の違いすらも、今の時代を映し出す巨大な『YABUNONAKA』だ。

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2026年01月17日

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情報処理するのに時間がかかった。今の社会を表すストーリー。

最近思うのは、「自分は被害者側だ」と言える人は実は強い。「自分は何か悪いことをしてしまったかもしれない」「こんなことを言ったら言い訳になるかも」と思って行動できない人の方が弱い。言い訳をしない美学が、時に人を強く見せるようで、人を追い詰めてるんじゃないか。物事に真剣に向き合う人ほど社会に押しつぶされているような気がする。

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2026年01月13日

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やりがい搾取とか性的搾取とか

人をコントロールするのが上手い人がいる
都合よく使われているとも知らずに頑張っている人がいる

自分がしていることが正しいと思っている人がいる
押し付けられる考え方・生き方に溺れそうになる人がいる

きつい内容でした。

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2026年02月06日

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世代性別も異なる複数の人物の視点から見る性加害に関する小説。話題になっていたので読んでみた。
世代的に近い木戸に感情移入する部分があった。
何か誰も結果としていい結果ではなかった。
善悪という視点からだけではとらえられない気がする。
これは私が男性だからかもしれない。

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2026年01月31日

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ネタバレ

一巡目、ずっと動揺しちゃって、それは多かれ少なかれ登場人物それぞれの愚かさが自分とリンクしたり、単純に出来事のエグさだったりで、ちゃんと読めてない感じがしてすぐ二巡目へ。次は登場人物ごと、若い順に読んだ。ちょっとは冷静に深く読めたかなぁ。リコに救われたし、リコでやっとほっとして号泣。リコになりたいけどね〜

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2026年01月28日

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当然フィクションではありますが、物語に入り込みすぎてリアルとの境界線が曖昧になり登場人物に怒りや気持ち悪さを感じるほどでした。こんなことは滅多にないです。

各人物は複数の視点から描かれることでページをめくるたびに印象が変わり、一体何が彼ら/彼女らの本当の姿なのかが分からなくなってきます。
それは最後までヤブノナカだったような気がします。

高校生から中年の男性/女性に至るまでそれぞれの人物の心情の移り変わりも、それぞれに固有の文体を通して表現されていて非常にリアルに感じられました。

性描写がそれなりに激しかったり、感情がかなり揺さぶられるので読むだけで体力と精神力を使いますがさすが金原ひとみでした。

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2026年01月23日

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初の金原ひとみさん作品。宇垣美里さんによると、金原さんの作品は、アゲアゲな方とサゲサゲの方の二種類に大きく分けられるとYouTubeで言ってましたが、本書は完全に後者です。
性加害がテーマで、色々な人の視点で描かれる群像劇の形式で進んでいきますが、誰が言ってることが真実かという事ではなく、悪を完全に叩きのめす強硬派と、悪を受け入れて人生に折り合いをつけて生きていく穏健派の二項対立で苦しむ人々が描かれてますが、本当にこれ全員想像上の人?っていうくらい、生々しい発想と思考回路が緻密に描かれていて、金原さんに脱帽です。
金原さんマジックというか、誰の言うこともその通りだよねー、みたいに共感できる主人公が毎回章が変わる度に現れるという不思議な体験ができる本でしたね。
ワードチョイスとうか、パワーワードの嵐で笑いながら読み進めちゃいますね、話はめちゃくちゃエグいですが。
性描写も乱発されるし、読むのにメンタル整っていないといけないので、万人にお薦めという感じでは無いですが、稀有な読書体験という事で星4つ。

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2026年01月23日

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ネタバレ

芥川龍之介の『藪の中』を現代に蘇らせた本作は、ある編集者への告発をきっかけに、8人の視点が入り乱れる極上の群像劇に仕上がっている。
​「ハラスメント」という現代的なテーマを扱っていながら、単なる社会派小説に留まらないのは、著者のストーリーテリングの手腕ゆえだろう。
ある章では「加害者」に見えた人物が、別の章では「被害者」の側面を見せる。視点が切り替わるたびに、善悪の境界線が揺らぎ、見えていた景色がガラリと変わるスリル。この複雑に絡み合った糸を解きほぐしていく過程に、ページをめくる手が止まらなかった。
​古い価値観にしがみつく男、正義を暴走させる女、それを冷ややかに見る子供たち。
全員が自分なりの「正義」や「事情」を抱えており、誰一人として完全な悪人もいなければ、聖人もいない。その人間臭いドロドロとした感情のぶつかり合いこそが、この作品の最大のエンターテインメントだ。
​タイトル通り、真実は最後まで「藪の中」かもしれない。
しかし、その不透明さすらも楽しませてくれる、小説の醍醐味が詰まった一冊だった。

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2026年01月20日

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各キャラクターの考えについて、どれも理解できるし、共感もできる。人によって物事の捉え方は変わるのは当然だ。加えて、時代の価値観によっても変わってしまう。この2軸の価値観の掛け合わせが、より世界を複雑にしてるのかなと思った。
カロリー使います。

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2026年01月17日

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ネタバレ

いやー。すごいね。金原ひとみ
こんなん書いて本人はメンタル大丈夫なんかな?
と心配になるくらい力作

長岡友梨奈の「自分が世界一正しい」
みたいな感じが後半かなりイライラ
伽耶がかわいそすぎる

でも「最強メンタル」の時って
そうなんかもなぁ

私も正論で戦う派なので
わからなくはない

でもさ、自分の事、棚に上げすぎやないか?
旦那が別れてくれんにしても
一応、自分も不倫やん?
木戸さんも自分と比較してたけど。

19や20から28歳まで友梨奈と
暮らしていた一哉
友梨奈に死なれ、突発性難聴になって
今後もずっと友梨奈を引きずって
生きてくわけやん?
伽耶も、きっとそうやん?
かわいそすぎるよね

難聴や心の傷をリコが言うてるような
「友梨奈につけられた最後の傷」なんて
ロマンチックな感じでは
生きていけんやろ

友梨奈、正論振りかざして生きるなら
自分の事にも、もっと疑問を抱いてほしかったな

ちなみに五松さんは、似てる男が浮かび
「五松さんは自分が大好き。自分大好きも才能
孤独を受け入れその才能を
1人で伸ばしていけ」みたいな
友梨奈の発言に、めっちゃ共感!
思わずメモったわ
避妊しない男は、いつか痛い目に
あってしまえと私も強く思う!

長い小説だったけど、色々思い出したり
考えたりしながら読んでいて
どっぷりはまれて良かった

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2026年01月17日

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ネタバレ

ずっと読みたかったけど、いやー思ったより難しかった。
よくもこんなに考えの違う人たちの心情や行動を細かく描けるなーってすごくすごく感心してしまった。笑

この作品って圧倒的、女性味方目線というか。
これは男性が読んだらどう感じるのか興味がある。

男女差別とか、男女格差とかって
いつになったらなくなるのかな?
もうこれは世の中に違う性別がいる以上なくならない?
塩田武士さんの「踊りつかれて」にもあったけど
"礼節を重んじるあまりに、自分を押し殺す。"
違和感があっても
夢を壊されるかもしれない
周囲から孤立するかもしれない
環境から追い出されるかもしれない
そういった危機感が先に立って、相手を断罪できない人たちなんて、五万といるんだろうな。
だからこそ、自分の立場や関係性をダシに誰かを搾取しようとする人間は、私は許せない。
長岡さんの行動力には勝てないけど。笑


しかし、一方で。
"正しさで追い詰める"っていうのもあるのかもしれない。
世の中の多くの事柄は、倫理的に"正しい""正しくない"で分けられるはず。
だけど、それがその瞬間、その人への最適解かと言ったら
はい、そうです。とは言い切れないのかもしれない。
正しさを盾に戦うことで、周りがよく見えず大切な人を傷付けてしまうこともあるんだろうなあ。

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2026年01月17日

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金原ひとみ作品、初読。まずはその「言葉の量」の多さに辟易し、閉口してしまった。
内面を正直に語ろうとする姿勢には、確かに誠実さを感じる。
ただ、その正直さが文章の密度として前面に出ていて、個人的にはかなりうるさく感じられた。
感情が休みなく続くため、読む側が一息つける余白がほとんどない。

読みながら、金原ひとみの作品には、救いを強く求め続ける姿勢があるように思えた。
比喩表現に逃げず、剥き出しの感情をそのまま「ぶつけてくる」ような筆致。美しく飾られた文学というよりは、生々しい独白を延々と聞かされている気分だった。これが彼女のスタイルなのか。正直、今の自分にはあまりに熱量が強すぎて、読後感はかなり重い。

彼女とは、しばらく距離をとりたいと思う。

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2026年02月05日

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「YABUNONAKA」というタイトルが意味深で。芥川龍之介の「藪の中」を思い起こす。

正直、この手のモノは現実社会でも、物語としても今は溢れていて、少し食傷気味で疲弊した。
序盤に現れる「文学◯ン◯」という強烈な言葉には笑ったが、終盤にかけて笑えなくなる。
それでも心理描写が非常に巧みで、現れる登場人物たちの強烈な個性も際立っていた。物語として綺麗に円環として繋がっているも、個々の登場人物同士が大なり小なりすれ違い、誤解し、時には畏怖し、完全に繋がりそうで繋がらない。そこが肝だと感じた。
個人的にはどの登場人物にも少なからず心情移入できるも、非現実的で相容れないと思う部分も多く、本の長さよりもそちらの方が重かった。
狂気じみた女性作家の最後、期待していたが少し肩透かしを食らった感じもした。あのような形で良かったとも思うが、どうせなら女性側の男性性の搾取の問題をもう少し深掘り出来たのではなかろうか?とも。
その点では「日本文学の最高到達点」などと銘打たれていたが、著者はこの先もっと素晴らしい作品を生み出すのではなかろうか。

十年後、五十年後に「これ古すぎ」、と笑われていれば著者の勝ちで、この作品に共感する人間がまだまだ多ければ現実世界は歪な形をしているのだろう。芥川は過去を書いたが、著者は今を丹念に描いた。「わかりあえないことのその先」の未来は、まさに「藪の中」だろう。

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2026年02月05日

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読むのにエネルギーが必要だったなと思ったら、チラホラ疲れたと言ってる人がいて、そう作られてるのかとなった。

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2026年01月25日

Posted by ブクログ

おもしろかったー!けどどっと疲れた……。
性や権力にまつわる加害や搾取の構造を芥川龍之介『藪の中』スタイルで描いていく。
この作品を読んでいると、「本当の自分」や「真意」なんてものはそもそも存在せず、人は曖昧な自他評価とグラデーションでできている、と思わされる。

様々な世代や価値観の人物が登場し、どの登場人物にも共感できる部分とできない部分が設定されている。登場人物の言説へのリアクションで自分が解剖されていくように感じる。一番属性が近いはずの長岡友梨奈は、毎度推敲された文章のようなせりふを長尺でしゃべるので、一番読みづらく、逆に木戸悠介の虚無的な語りが一番読みやすかったりするので、自分がこわくなる。一番きらいなのが五松で、一番すきなのが優美(邪悪なセフレ)かな?

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2026年01月20日

Posted by ブクログ

女性作家が男性を描くとき、男性作家が女性を描くとき、の違和感が全くなく、すごい観察眼だと思いました。

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2026年01月19日

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