無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
文芸業界の性、権力、暴力、愛。戦慄の長篇
性加害の告発が開けたパンドラの箱――
MeToo運動、マッチングアプリ、SNS……世界の急激な変化の中で溺れもがく人間たち。対立の果てに救いは訪れるのか?
「わかりあえないこと」のその先を描く、日本文学の最高到達点。
「変わりゆく世界を、共にサバイブしよう。」――金原ひとみ
文芸誌「叢雲(むらくも)」元編集長の木戸悠介、その息子で高校生の越山恵斗、編集部員の五松、五松が担当する小説家の長岡友梨奈、その恋人、別居中の夫、引きこもりの娘。ある女性がかつて木戸から性的搾取をされていたとネットで告発したことをきっかけに、加害者、被害者、その家族や周囲の日常が絡みあい、うねり、予想もつかないクライマックスへ――。
性、権力、暴力、愛が渦巻く現代社会を描ききる、著者史上最長、圧巻の1000枚。
『蛇にピアス』から22年、金原ひとみの集大成にして最高傑作!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
著者本人がこの作品について紹介している映像を見て興味を持った作品。相変わらずの内面描写の濃さよ。よくこんなにたくさんの登場人物の関係性を管理し内面を描き分けられるなと、感嘆しながら読んだ。人間心理の解像度が高い。おそらく著者自身とはかけ離れた登場人物もいるだろうに。凄まじい観察眼と解釈・分析力だ。
本作は出版業界における性加害を巡る物語(と括って良いかいささか迷う)。出版社の社員、作家、その子どもたち、恋人、作家になれなかった作家志望の者、など、様々な人物が出てくる。一章ごとに違う人物が語り部になり、その人物の生活や心の内が描かれ、ある事件があぶり出されてゆく。
この事件とはなにかというと、編集者が作家志望の女子大生に対して過去に働いたセクハラを、何年も経って本人(元女子大生)に暴露され、世間を巻き込み大炎上するというものだ。表に見えるのは言葉にするとそういうことになるのだが、立場や思想の異なる登場人物を通して様々なことが見える。読者としては事象には反吐が出るものの、悪がなんなのかがわからなくなる。
女性である自分は、社会における性加害にはかなり関心がある。社会が成熟し、自身の認識も成熟し、それに伴いある日ふと過去に自身が受けた行いが性被害だったのではないか?ということに思い当たり、時を経て初めて傷つき悲しみ怒りが湧くという経験は、多かれ少なかれ女性は共感するのではないか。
一方で、SNSを使うことで人はすぐ訴え・訴えられることができ、それにより人はいとも簡単に社会的に抹殺される。自身の過激な思想には見知らぬ無責任な応援者がつき、ますます思想と正義感はよりシャープになり、自身は非寛容になる。
ラスト、加害者とされていた編集長の男と、この物語の狂言回しの役割だった著名女性作家は、それぞれショッキングなラストを迎える。章を重ねて様々な登場人物の内面描写を夢中で渡り歩くなかで、一瞬でもこんなラストを迎えるとは果たして予想していたか。否。
否?いや、していたかもしれない。
Posted by ブクログ
ニュースなどを見るにつけ、実社会でも性欲がかなりのドライバーになっている人(で、制御に失敗する人)がなんと多いことか。
その性欲基準、性暴力ありきの世界で、女が危険な目に遭わずにすむよう肩身狭く生きているのは、今も昔も大して変わらないように思う。本当に腹立たしいし、悔しいが。
「日本文学の最高到達点」とは思わないが、読ませる推進力がすさまじかった。
誰に自分を重ねて読むかは、人それぞれ。
2つの家庭の問題について、到達点からの振り返りが断片的だったように思うので、もう少し情報がほしいなとも思ったが、語り手の視点から考えると、それぞれのパートナーの深い感情は「藪の中」ということなのだろう。
このあと、『イン・ザ・メガチャーチ』と、立て続けに、ある程度の社会的地位を得て稼ぎはあるが人生にしくじった自覚のある孤独な中年男が出てくる小説を読んだ。いずれも少し下の世代の作家による、残念な中年男たちの描写は、まあまあ容赦ない。
中年は人生の成果が出揃ってくる時期なので、お金以外何も残っていない自覚がある人が「そういうあんただから、そうなってるんだよ」と突きつけられて、ゾッとする話にゾッとする。中年たちは、ただただ凍りつく以外に、しなやかに、血の通った人生を取り戻していくことができるのだろうか。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。