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作家として、母として、個人として――
金原ひとみ 魂の遍歴
希死念慮に苦しんだ10代、デビュー作による芥川賞受賞、
結婚、出産、孤独で自由なパリでの生活、
かけがえのない子供たち、離婚、そして新たな場所へ。
『蛇にピアス』から『マザーズ』と経て、
『アンソーシャルディスタンス』『YABUNONAKA-ヤブノナカ-』へと結実した
小説家の軌跡。
朝日新聞掲載からSNSで拡散され大きな話題となった
「『母』というペルソナ」ほか、
作家生活20年にわたって書き継がれたエッセイ&掌編小説を完全収録
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
同年代なんだよなあ、色んな意味でパンチ効いてるよな。本屋で冒頭の母というペルソナを読んでパンチ食らった。みんなそれぞれのペルソナを被らされてる。私も社会人としての、ペルソナを被ってて、お茶目な自分となかなか出会えない。
P10このまま昼寝でもしてしまおうかと思ったその瞬間、唐突に郷愁を感じて文字を追う視線を宙に泳がせた。
「そうか、わたしはこんな感じだった」
そう気づいて、何かが胸から全身に広がって行くのを感じた。それまでと少しずつ戻りつつあったのだろうけど、はっきりと認識したのはこの日が初めてで、それはつまり「子供を産む前の自分」と邂逅した循環だった。
もう会えないのかと思ってた。全然変わってないね。ていうかまだ生きてたんだ。
P20今回の事で、私は拘束や干渉をされるのが本当に苦手なんだと再認識した。
P72こちらを子供扱いしているかのような口調に、不意に体が軽くなった。社会も、周囲の人々も、大人であることを強要する。二十代半ばにもなってそういう当然の事がとてつもなく辛くて、本当は全ての責任から逃げ出したくて、でも逃げられないという事は自分自身も大人としての責任を認めているのだろう。誰かにスポイルされたい。甘やかして甘やかして、駄目にしてほしい。私から、自立心という泥水を抽出して、どろどろの砂糖水で私の自由を奪ってほしい。大人になんてなりたくない。10代の頃は脳から直で、口にできたその悩みが今はもうとても口にできない。
P101黙って本の文字を目で追う人がなぜあんなにも美しいのか、それは彼らが何よりもその瞬間、この世のあらゆるものから自立し、1人で謎と対峙しているからだろう。
P100読書というのは、そんな果てしない謎の中に生きる自分自身と向き合う行為ではないだろうか。謎を解くため、答えを探すため、そして何よりも謎の中に生きる自分の輪郭をしかと見極めるため、人は本を読むのではないだろうか。
P209この後も私はいくつかの飲食店でバイトをした。どこも楽しかった。何より全てのバイトたちが、嫌になったら辞めればいい、という感覚で所属しているため、明日には会えなくなるかも知れないという可能性を孕みつつ、誰かが困っていたら手を貸したり、でも貸さなくてもよかったり、何とかしてあげたいと思ったり、どうでもいいやと思ったり、そういう思い思いに人間関係を構築できる空間が、小説と恋愛以外の世界を持たなかった私には新鮮だった。
P214しかしその晩長女に聞くと、え、行くよ、と当然のように答えた。大丈夫?と聞くと、やってみる、という至極真っ当な言葉が返ってきた。
P240小説を読んでいる間、息ができた。それまでずっと低酸素状態にあったのが、唐突に肺の隅々にまで酸素が行き渡るのを感じられた。自分が今生きている世界だけが、世界ではないのだと思えた。それまで一つしかないと思っていた世界が、物語の数だけあると知った瞬間だった。踊り場の君。
P261学生となり三人目の子供のような存在となった元夫との関係は悪化の一途を辿り、一人で家族を養わなければならないプレッシャー、心を支えていてくれていた人の病状悪化、元夫は学生のため戦力にならず、育児家事に終われ思えように仕事ができない焦りの中で、押しつぶされそうだった。
Posted by ブクログ
金原ひとみやっぱりいい。いつも金原さんの言葉に救われてる。
パリの砂漠、東京の蜃気楼は比較的短期間のパリと東京の生活を綴ったエッセイでそれはそれで好きだった。一方、本作は20代前半から書きためた作品を掲載していて、私自身それは10年ぐらい前に同世代として経験したことだったり、経験しようがないことを共有してくれていて、単に他人の話ということじゃなく×世代の違いのようなフィルターを通して新鮮な気持ちになりっぱなしだった。
記憶を遡る気持ちがして人が歳をとって変わってく過程の立体感のようなものを感じた。
正直でいいな。そうゆう孤独な目線での誰かの日々の心の動きがら知りたかった。
Posted by ブクログ
金原ひとみさんの作品は、ミーツ・ザ・ワールドが初でした。すごく好きな世界観で、私が今まで読んだ作品の中で、この世界観に出会ったことがなく、すごく感動したのを覚えています。
そこから金原さんのことが気になっていたのですが、この本を読んで自分とは生きてきた環境が全く違うことが分かり、自分と生きてきた環境が違う人がこんなに素晴らしい作品を作ってくださって、私は金原さんの小説を読むことができている、そして、作品に出会わせてくれた縁に心が震え、生きていてよかったと思えました。
この本を読んで、絶望と衝撃と光が文章に組み込まれているというか、言葉で表すのが難しいのですがそう感じました。
Posted by ブクログ
金原ひとみさんの、20年分のエッセイ。
まだ尖っていて不安定な若者時代もいいし、育児とフランス生活にがむしゃらな30代もいいし、子育てが落ち着いて離婚して、好きな人と奔放に暮らす40代もいい。
作品を含め全てが魅力的な金原ひとみさん。
シトロエン公園について語った部分の表現が、妙に納得して好き。
「乖離なく生きているという実感」「土を触ったり雨に濡れたり、生き物を殺して捌いたり、何かを育てて収穫してりといった、生々しい体験に近い生活を送れる」
シトロエン公園は行ったことないけど、日本の特に都会で、何の役に立っているのかよくわからない仕事に追われているときに、海外ののんびりした所に行くとこういうことを感じる。
Posted by ブクログ
「今自分は理想の状態にあると感じていますか?」
と聞かれた時に戸惑う人がいること、考えてみたこともなかった。
「そうざるを得なかった」から今のように生きて、書き続けてきたと仰る金原ひとみさん。「理想を持ち理想に向けて邁進してきた人」ばかりではない。逆にそんな風に生きてこられた人の方が少ないのではないか。
そういう私だってそうです。
生まれた家から始まって、その他の置かれた環境で(保育園、学校、友人、先生、家族や大切な人や自分の健康などに振り回されながら)自分の身を守りながら、身を委ねながら、「そうざるを得なかった」という中で生きてきてる人の方が本当は多いけど、特に成功者である著名人は理想に向けて邁進してるかのように思われがちですよね。
スティーブ・ジョブズはそうなのかもしれないし、宮崎駿もそうなのかもしれないけど、多分金原ひとみさんが言いたいのは、ご自身はそういう訳ではないということ。
そこに今回一番ハッとさせられました。
今回金原ひとみさんのエッセイを初めて読みましたが、エッセイなんだけど、途中小説のような感じで、でもこれはフィクションではなく1人の作家さんの辿ってきた道なんだと思いながら読むと、衝撃や尊敬を強く感じました。
こう言った形で一つの本として世に出すために、削ったところも沢山あると書かれていたけど、それでもとっても赤裸々に書いていると思います。
どうしてそうなったのか、明確に書かれていないところ(書けないだろうところ)ももちろんあり、分からないこともあるけど、とにかく金原ひとみさんは「そうざるを得なかった」からここまで生きてきた。
そしてそんな人が紡ぎ出す言葉、そこから生み出すエッセイ、小説だからこそ、金原ひとみ作品からだけ伝わってくる叫びみたいなのがあるのではないのかな。
そしてそして、最後に。
金原ひとみさんの母になった瞬間からの感情全てに同意できて、私だけじゃないという気持ちで、同志のような気持ちで読めたことがすごく嬉しかったです。
Posted by ブクログ
小説を書くことで生き抜いてきた(生計を立てるの意ではなく)筆者の、まさに「生きた証」が山のように積まれていて、そこから放たれる力強さと繊細さに夢中になってしまったエッセイ+短編集。もし自分が感じたことや経験したこと、考えたことをつぶさにアウトプットしたとしても、こんな純度にはならないでしょう。この本を表現するときに「面白い」とか「赤裸々」とかいった、方向性は間違っていないけど、まったくドンピシャではない言葉しか自分の中から出せないのが非常にもどかしくてならない。。
有名な「母というペルソナ」はもちろん、他も代弁者のような文章がたくさんあって深く理解できた箇所多数。実は自分は「蛇にピアス」も結局読んでいないようなめちゃくちゃ初心者で、もちろんパブリックイメージは知っていたけど、こんな世界が広がっていたとは。他の作品読まねばです。
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