あらすじ
作家として、母として、個人として――
金原ひとみ 魂の遍歴
希死念慮に苦しんだ10代、デビュー作による芥川賞受賞、
結婚、出産、孤独で自由なパリでの生活、
かけがえのない子供たち、離婚、そして新たな場所へ。
『蛇にピアス』から『マザーズ』と経て、
『アンソーシャルディスタンス』『YABUNONAKA-ヤブノナカ-』へと結実した
小説家の軌跡。
朝日新聞掲載からSNSで拡散され大きな話題となった
「『母』というペルソナ」ほか、
作家生活20年にわたって書き継がれたエッセイ&掌編小説を完全収録
感情タグBEST3
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変わらないもののないこの世界を生きるのは苦行に等しく、これは変わらないという何かを信じたい気持ちに、常に誑かされ続けている。
私はこの子に他者という存在を教えられたことを実感する。
否定も肯定もなく、すぐそこに自分とかけ離れた他者が存在するという事実に、私はどれだけ苦しみ、どれだけ救われてきたか分からない。
最高すぎて、泣いた。泣きながら、読んだ。あの日、泣く我が子を抱きながら恐れおののいたこの子を生かしていく事はできるのか?という恐怖は今も忘れられない。また、思い出して、泣いた。そして成長していく頼もしい我が子に、私も救われている。
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エッセイ?小説?となるようなものが混ざりきってるからどれが金原さん自身の話なのかわからなくなって混乱する、私小説?と思っちゃうようなものもたくさんあるから。
最初の母親というペルソナがやはり素晴らしい。私も1人の子の母になったから尚のこと響く。それからずっと死にたい死にたいというエッセイが続き、元夫と別れまで怒涛のように駆け抜けてる。この人ほんとどうなるんだろ
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読んで確信。金原ひとみさんが好きだ。
初っ端から『「母」というペルソナ』に撃ち抜かれる
初期の繊細で孤独で自分を傷つけようとするエッセイも、出産子育てで惑い癒しを求めて創作するような感覚も、自分を取り戻しつつ昔の苦しみに再び対峙する現在も、金原さんの価値観が好きだ。
同時代を生きる同世代の同性として、生き方は違っていても、あるがまま生きていくしかないっしょ!って居酒屋で友達と話していると錯覚する
高らかに人間讃歌をするわけでもなく、そこにいるお互いとして色んなことを抱えながら生きるリアルが好き
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本当に好きなタイプの本。
特に現代の母親にはものすごくささると思うし、あの時間をこんなにも言語化してくれて、本当に素晴らしいと思う。
掌編小説もパラパラと好きなところから読み出せるし、この本はずっとずっと大切にしたい。
欲をいえば、あとがき、みたいなものを期待してしまったけどないほうが、やっぱりいいのかなとも思う。
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名文のなかの名文「母」というペルソナで始まる構成がにくい!全人類に刺さるところがあり、当時妊娠中に朝日新聞掲載のこの文章を読めた私は、産後も事あるごとにこの文章を繰り返し読んでは救われてきたので、本という形に残ってくれて感謝の気持ちでいっぱい
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嘘とかいい加減な言葉がないように感じられるから、金原ひとみの書くものが好きだ。デビューの頃の文章はだいぶ今とは雰囲気が違うけど、最初から筆一本で生きてきたんだなとその迫力が伝わってくる。客観的にもお父さんの存在は大きいけど、学歴も経歴も何もないのにひたすら本を読むこと、全身でいろんなことを受け止め(あるいは流して)感じることで、こんなに骨太な文章を書けてしまうんだもんな…、だから作家なんだな…。
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感受性豊かな、己に正直で飾り気のない人柄と文章に惚れ込む。著者の経験が活かされる物語は、心に響く。幼き頃、小説に救われた著者がいた。そして今、彼女の物語に救われている読者がいる。素敵なバトンパス。
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毎日少しずつ、ご褒美のように読んだ。
金原さんの2003年から2025年までのエッセイと短編小説たち。(贅沢!)
これはエッセイ?それとも小説?という境界が曖昧なものもいくつかあり、答えが示されていないのがなかなか珍しい作り。何かのインタビューで、金原さんは小説とエッセイをあまり区別して書いていない、というようなことを仰っていたのが腑に落ちる。
2章以降、書かれた年代順に並んでいて、若い頃の金原さんの文章はやっぱり今と少し違っていて、それも面白かった。私からすれば破天荒とも言える暮らしをし、恋愛と小説を人生の真ん中に置き続けてきた人生を、少しだけ覗かせてもらえる。
「母」というペルソナ はいつか、救いになる文章かもしれない。忘れないようにしたい。
金原さんの書く小説は、金原さんの見てきたこと、経験してきたこと、思ったことにこんな風に影響を受けているんだな、と改めて思う。小説が生まれるキッカケになったエピソードが興味深かった。
大切なものを手にしているという確信と、それでも消えない鮮やかな痛みの両方を背負い、それ以外に道がないからと進む。言葉があっているのか分からないけど、やっぱり金原さんはかっこいい人だなと思う。ダウナーで、でも鋭い眼差しにどうしても憧れてしまう。
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・今回読んで強く印象に残ったのは、文章うまっ、っという事。
・金原さんという作家を語るポイントって色々あると思うんだけど、文章の上手さについて語られているのは、あまり読んでない気がする。
・構成も面白かった。エッセイや小説、時系列も特に明記される事もなくシームレスに並んでいて、その落ち着かなさが、何つうんだろ、ランダムに時間旅行して知らない人の生活を覗いている、みたいな。(ちょっと違うか)
・エキセントリックな所を捉えて語られる事の多い人だと思うけど、「作家」としてめちゃめちゃちゃんとしている、と読んで感じた。
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ロックだ。
金原ひとみさんが作家生活20年に渡って書き継いで来たエッセイと掌編小説が完全収録された本作。
既読の小説で感じた熱量と破壊力はエッセイでも寸分違わない。
金原さんと殆ど共通点がない私だが、冒頭の「『母』というペルソナ」に共鳴し、その言語化能力に痺れる。
彼女から紡がれる言葉は生命力に溢れ、鋭利な刃物のような時もあれば慈悲深さを感じる瞬間もある。
幼い頃から消失願望を抱えていたと知り、時折感じていた刹那感の正体を垣間見た気がした。
彼女しか書けないエッジの効いた文章が堪らなくいい。
書く為に生まれて来た人だ。
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著者の2冊目のエッセイ。
普段は電子で購入しているが、この本の白の装丁がお洒落で本棚に置きたかったので、物理で購入。
前作のエッセイと比較すると、より長いスパン(渡仏する前から?)で書かれてる。所々に短編も入ってるスタイル。
前半から後半にかけて、徐々にポップで軽量な文章から、重めの文体になってく感じもあった。
フランスで牡蠣食べたくなった
「書くことで生き延びてきた」金原氏の文章を読むことで、一読者である自分も救われてる。
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他者の存在に怒り、押し付けられた苦しみに死を思い、それでもなお他者とあることを諦められない命の話。あらゆる二項対立のあわいに私はあるのだと再認識する。
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金原ひとみさんのエッセイと掌編小説。
掌編小説というものを今作で初めて読みましたが、短編やショートショートより短い小説です。
エッセイなのか小説なのかわからない作品もあり、それを含めても金原さんらしさを感じるものばかり。
特に『お腹』という作品と『スパーク』という作品が好きでした。
『形のない未来とあわい』という作品の中で、グッときた一文。「あらゆる逡巡の後に今の自分はあって、でもいま大切なものを手にしているという確信もあって、それでも消えない鮮やかな痛みもあって、共に生きていくには重すぎるそれらと、重みに軋む体と、こうして生きていくしかないという諦めとを全部背負って、それ以外に道がないからという理由で、私はきっと飛び立つのだろう。」
金原節、たまらんです。
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金原ひとみが作家生活20年にわたって書かれたエッセイと掌編小説を収録した1冊。
金原ひとみのエッセイは初めて読んだけれど、この人は小説を書くことでしか生きることができない人なのだと知った。
ずっとあり続ける希死念慮の中、小説だけが現実から一瞬目を背けさせてくれる。
そんな彼女は、小説家になるべくしてなったとしか思えない。
冒頭の『「母」というペルソナ』に鷲掴みにされた。
金原ひとみという人は、傷つきやすく、傷つくたびに心の声に耳を澄まし続けたから、こんな本質ともいえる叫びを文章として表現できるのかもしれない。
エッセイや掌編小説の明確な記載がなく、まるで白昼夢を見ているかのような感覚になった。
Posted by ブクログ
エッセイと掌編がごちゃ混ぜの構成で、エッセイ?小説?とどちらとも取れるような内容のものもあった。
それだけエッセイと小説の雰囲気が似ている。
とにかく感情が勢いのまま溢れ出しているみたいな文章。
恋愛感情も、嫌い、嫌だという感情もすごく豊かな人なんだなあと感じた。
わりと淡々と物事を受け止めてしまう私と、対極にある人だなと思う。
物事に対する考え方とか姿勢、行動のパターンというのか、とにかく私と全然違う。
でも自分の内なる感情をこんなに分かりやすく言葉にして伝えるって凄いことだよなぁ…と感心した。
『「母」というペルソナ』に共感する人も多いみたいだが、これも私にとっては、斬新というかなるほどというか、考え方の違いに驚かされた。
元々タバコや酒、派手なファッションや夜遊びみたいなことに興味がなく、子育てによって制限や我慢させられることがなかったというか、私にとっては元々の個性を捻じ曲げるほどのものがなかったからか。
私はどちらかというと「母」という鎧を手に入れたように感じていた。
他にも、自分と全然違う人間が紡ぎ出す言葉の数々に、なんだか圧倒させられた。
金原さんの小説を読むとぶっ飛んでるなと思う人や場面に多く出くわすのだが、金原さん自身がめちゃくちゃ感情の起伏が豊かな人だからこそ書けるんだろうなと感じた。
Posted by ブクログ
金原ひとみさんのデビューから直近に至るまでの自身のエッセイ。
様々な社会情勢の中、変化の中を彷徨い、生きづらさとともに苦しんでいた。苦しみながらも生きている姿は美しくも儚い。
生きていくしかなかった、ときの人の底力は計り知れない。
絶望を共有することで希望に変わるのだろう