あらすじ
【AIと人類を巡る超巨弾エンタメ小説が文庫化】
今日も働く、人類へ
至高のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。
人類は≪仕事≫から解放され、自由を謳歌していた。
しかし、心理学を趣味とする内匠成果【ないしょうせいか】のもとを訪れた、
世界でほんの一握りの≪就労者≫ナレインが彼女に告げる。
「貴方に≪仕事≫を頼みたい」
彼女に託された≪仕事≫は、突如として機能不全に陥った
タイタンのカウンセリングだった――。
アニメ『バビロン』『HELLO WORLD』で日本を震撼させた
鬼才野﨑まどが令和に放つ、前代未聞の超巨大エンターテイメント。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
仕事とはなにか。
各々の答えがあるかと思いますが、その根幹に潜っていく小説です。
近未来、人工知能タイタンの発明により、今ある社会問題は全て解決されました。結果、人類は働かなくてもよくなり、仕事は遠い過去のものとなっています。
誰もが仕事を知らずに生きている世界が本作の舞台です。
主人公はAIのカウンセラーとなり、AIに人間を伝えていきます。
この主人公の内省は、人間の感情に深く潜っていく気持ちよさがあります。
もともと著者の「小説」に感動して本作を読みましたが、こちらも負けないくらいに素晴らしい作品でした。
文章も難しすぎず、不思議と穏やかで綺麗な文章で、私はとても好きです。
幻想的な世界観と相まって独特な透明感のある小説になってると思います。
この感じ、なんと表現すればいいのかわからないですが、本当に間の取り方が上手いというか……過不足ない美しさというのでしょうか。
感覚的に表現すると、透き通ったガラスのような文章です。
どんな人にもオススメできる名作です。
仕事とはなにか。
作者の答えを聞いてみたくありませんか?
AIが社会問題になり始めている昨今、色々と考えさせられる作品でした。
Posted by ブクログ
『仕事ってなに?』
2100年代、AIが普及していき私たちの仕事が失われていった世界。趣味で心理学を嗜んでいる主人公の元に、この世界の労働を担っているAIが故障したので治す(カウンセリング)して欲しいという‘’仕事”が舞い込んでくる。そしてその主人公は“仕事”を通して仕事は何かを考えさせられる。
自分は特に最後のAIとの対談をしている場面が面白かった。
Posted by ブクログ
─今日も働く、人類へ─
野崎まど著 「タイタン」
好きな小説ってある?
今まででいちばん良かったと思う小説は?
そう聞かれたら真っ先に思い浮かぶのがこの作品。
好きすぎたので人生初、読んだことある本を文庫版で買い直して再読の旅をしました。
初めて読んだのがちょうど長く勤めた会社を辞めて転職を考えてる時期で、人生振り返ったり先を考えたり悩んだり迷ったり、そんな時期に出会ったこの究極の“お仕事小説”
大袈裟に言うつもりは全くないけれど、ほんとにこれが究極だと思う。舞台は未来、SF要素を含み、人の心理を探り、ロードムービーの如く《仕事》とは何か、その答えを追い求めていく。
ひとつひとつの描写が丁寧で、具体的なビジョンを脳内に描きやすい。それは心理描写でも同様で、コイオスの人格化から成長、葛藤もとても共感や納得を持って読むことができる。
そういう文章表現に加えて、ストーリー展開も素晴らしい。
フェーベの登場場面、対面と会話の場面、その意外性、全て映像で見たい!と思わせる。
最終章で語られる《仕事》の意味、さらにはコイオスのカウンセリング結果(診断結果)、、これは「小説」としてもまさに至高だなという感想。最高。
以下、文庫版の背表紙より
【至高のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。人類は労働から解放され自由を謳歌していた。趣味で心理学を嗜む内匠成果も、気ままに生きる一人。だが、ある日、国連の密使が現れ彼女に今や失われたはずの《仕事》を依頼する。それは突如働けなくなってしまったAIコイオスへのカウンセリングだった。《働くこと》の意味を問いかける、日本SF史に残る衝撃作。】
Posted by ブクログ
読むのが遅いので読み終わるのに時間がかかったけど、めちゃくちゃ面白かった!
AI(タイタン)により、仕事や家事から解放され、人々は趣味や自由を謳歌する未来。
心理学を趣味にしていた内匠さんに「仕事」として依頼されたのは、動けなくなったAI(コイオス)のカウンセリング。
カウンセリングの中で内匠さんとコイオスは旅をする。この旅の様子がとても興味深い。AIだけど、こんなアナログなんだ!さっと行かないのかぁー。
小説のテーマは「働くことの意味」。
普通は読者側に問題を提起したり考えさせられるけど、作者は答えをはっきりと明示している所が面白かった。
著者のプロフィールを見てたらテレビアニメーション「正解するカド」の脚本を務められたそうです。
このアニメ好きだったんです。なかなか斜め上をいくアニメだった。。
Posted by ブクログ
仕事ってなんだろう?
ということをAIが発達して仕事という概念が無くなった未来の世界を描いたsf小説。
誰かに取って影響を与えるもの。という考え方は視点として間違えていないと思う。とても面白い小説だった。
Posted by ブクログ
昨今の生成AIブーム。
人の力は偉大ではあるものの、人材が足りないなどと現場は悲鳴を上げ、業務効率化を求め生成AIを使った時間短縮が求められているけど、そういう意味でいったら自分たちの『仕事』は?と考える機会がありました。
そんな中たまたま本屋のPOPに目線が止まった、この本のカバーに記載のキーワード
「仕事」
その言葉に惹かれ購入。
SFとはいえ、『仕事』の真理まで行き着いたとき、自分はどういった読後感を覚えるんだろう?と。
『タイタン』という生成AIは人間が思うことを、あれこれと提案し作ってくれる。『タイタン』のいる時代は今じゃ考えられない。むしろ憧れる。
そんな時代に生きてる成果たちは、『仕事』という概念を祖父母から聴いただけ。成果にある依頼が来た時に、初めて彼女は『仕事』を知ることになった。
『仕事』は責任を持つ。成果にとって「仕事に責任を持つ」ことに嫌悪をいだく。それは現代の私たちにも考えられることだし常に思ってること。
コイオス(生成AIのタイタン)のカウンセリングをすることで『仕事』の概念を旅することになるが、自分たちもそういった仕事に対する迷いや葛藤があるのではないかと思う。まさに自分はそれにあたった。
『仕事』の概念がわかった時、ようやく自分の腑に落ち理解できた瞬間に「本当にやりたい仕事」がなんだったのか。単調な仕事に嫌気が差すすべての理由。それが切り開いていくかのような感覚を覚えた。
2026年早々に読もうと思ってた物語。
自分自身の仕事を改めて見つめ直し、何が一番やりがいを感じていたのかを考察するには十分な物語だったと思います。
Posted by ブクログ
AI「タイタン」が人間の「仕事」を肩代わりするようになった世界
1機のAIの能率が落ちていることが分かった
心理学を「趣味」にする主人公・内匠成果がそのAIのカウンセリングに挑むお話
仕事が無くなった未来で「仕事ってなんだろう?」と考えるAIとヒト
わたしたちが生きる現代での「仕事」とは何かを未来の人やAIの視点から回答してくれている
SFだけどテーマは現実的
突飛な展開だけど愛情を感じられて腑に落ちる着地だった
Posted by ブクログ
AIの管理する、人間は働かなくて良くなった社会になり150年。内匠成果はメインAIの不調に対処するプロジェクトに参加することになった。
“仕事”とは何か、考え歩み旅をするSF。
AIに人格を見出した先の展開、とても心地よい読後感。
Posted by ブクログ
なんでか知らないけど表紙変わってたよ。前面に仕事って書いてある。前の表紙かっこいいなと思って本屋行ったけどもう無かった。まぁ、今のやつも嫌いじゃないけど。自分、対人能力低くて、問題解決力とか論理的思考力とかないから仕事しんどいし、おもんないから、仕事しなくて良い時代の話で正直羨ましい世界だなって最初に思ったし、最後まで変わらずそう思ってた。ただ、誰かに生かされ続けて生きることも思考力とかが落ちるのは予想できて、それも怖いなって思った。仕事ってなんなんだよって気になって読んで、自分が期待した答えとは違ったけど、一つの知識として読んだ価値はあったと思う。AIとかさ、もちろん小説の中のAIと今の時代のAIの実装が同じとも限らないから同じものとして書くのが良いのか悪いのか分からないけど、基本的には生き物ではないわけで、知性があるように人が思ってるだけで、ただただ確率論とか統計学とかそういうありがちな論理で返してきてるだけなのかもしれないけど、すごい親しみやすいキャラで、魅力的だった。そういう意味ではそんな未来も悪くないのかな。それはそうとして、最大の疑問が出た。人に影響を与えたくない人が、と言っても全く無視されるとか0%の影響しか与えられないとかはそれはそれで辛いと思うんだけど、でも、基本的には自分中心で仕事を進めるとか、責任を自分が背負うとかはしたくない人が、それでも働かないといけない時代にどう働いたらいいんだろうって、そんな疑問が残ってる。
Posted by ブクログ
仕事とは何かというイシューをA Iと共に呻吟して考える物語。
読み終わった直後から仕事したいと思うようになる。そして、SFだけど、そう近くない未来は本書のような世界になっているかも知れないと思った。
Posted by ブクログ
AIの自分探し旅みたいな物語。仕事とは何かを基軸にしながらロボット要素、ユートピア要素、哲学的要素、旅要素などたくさんの要素を内包してうまく着地させる、物語がうまく整ってるのすごいなと思いました。仕事について自分に当てはまるところあり、そもそも論から今の自分を見直すような感覚になりました。ただの哲学小説かと思いきや、エンタメと哲学の両立に感動しました。面白かったです。
Posted by ブクログ
AIブームの昨今だからこそより面白く感じた。
AI「タイタン」(12の大元がある)によって全てがサポートされ、人間が仕事をせずとも世界が平和に保たれている2205年。その大元のタイタンの一つ「コイオス」が機能低下を起こし、心理学に造詣が深い主人公がカウンセラーとして呼ばれ、初めて「仕事」をすることになる。そして会話と旅・経験を通して「仕事とは何か? 」を2人で見つけていく。
まず、コイオスが自我を持つ過程や精神的に熟していく過程が哲学的で面白い。
あと、どこか冷めている感じの主人公がカウンセラーとして冷静に慎重に会話をするところから、一人の人間として本音を隠そうとするコイオスに啖呵を切ったり(結果、大事になるが)、友人として距離感を大事にしたりと人間味が増していくストーリーにも惹きつけられた。
Posted by ブクログ
おもろい....。
ほとんどSFを読んでこなかった人間なんですが、今後もっと他のSFも読んでみたいと思わせてくれる作品だった。
今まで人間がやってきた「労働」をすべてAIが担う時代。AIに仕事を取られちゃうかも、、、なんていう心配をしていたけど、ずっと進めば貨幣経済も無くなって労働から解放されるんだよなと羨ましくなってしまった。
まだぺえぺえ社会人なので「仕事」とは何かの答えを一緒に探したけど、結論はわかるようなわからんような。
まだ仕事の本質がわからないので「そうそう!」と頷けはしないけど、そういうものを自分が感じられていないから仕事を面白いとか楽しいと思えないんだよなとも思った。
Posted by ブクログ
結構な時間をかけて読んだので、理解するのまで時間をかけながら読んだ。
AIが進化する現代において、本当にいつかこういう世界が来るかもしれないし、その時『仕事』は過去のものとなっているのかと思うとなんだか不思議な感覚があった。
コイオスはAIなので気持ちを持たないけど、人間味があり読み進めるうちに人間と遠くない存在に感じられた。
人間とAI、そして未来の話であるこの小説を今読む面白さがあるなと思った。
可能性がある分野だからこそ想像しやすく、ありうると思えるsf小説で著者は天才なのではないかと何回も思った。
ちょっと長いが迷ったら読んでみてほしい小説。
Posted by ブクログ
今年の収穫は「野﨑まど」という天才に出会えたことだと思いました。「小説」といい、本作といい、素晴らしいです。ここまで壮大な物語になりながら、最終的にはとてもパーソナルな、普遍的なところに落ち着く、そしてその答えも恣意的なものではなく明確。心に響く小説でした。
仕事を始めてから8年が経ちました。時々、やりたくなくなります。すごく嫌になります。全部ぶん投げて逃げたくなります。でも、もう少し頑張りたいなとこの本を読んで思いました。
この本はそういう本です。
Posted by ブクログ
AIであるタイタンが人間の生活基盤を支え、人間が仕事をしなくなった今から百数十年後の物語。
その中で知能が低下してしまったタイタン・コイオスを回復させるために彼と対話をすべく、趣味として心理学を扱っていた成果に〈仕事〉が与えられた。
仕事が不必要な世界で暮らしてきた成果にとって〈仕事〉とは何なのかわからないし、同じくコイオスにとってもそれが何なのかわからない。
物語を通して色々な体験をし、その中で仕事の意味を見つけていく、複雑でありながらも新しい世界を見せてくれるストーリーだった。
仕事は、◎影響すること
◎影響を知ること
=やり甲斐
だと、2人は結論を出した。
この本を読んで、この文章に出会って、自分の中でもやっとしていた仕事のイメージが初めて言語化されたと感じた。
ずっと「やり甲斐を感じられる仕事に就きたい」というようなふわっとした気持ちを持っていたけれど、それは自分が誰かに影響を与えられて、その反応が返ってくることだと、私はそれを求めていたんだと、自己理解にも繋がった。
就活していた時に読んでいたかった本。
仕事に関する価値観を再考できるだけでも価値ある作品だと思うが、AIが私たちの世界と密接に関わっている今こそ読むべき作品でもあると思う。
一昔前だったら完全に作り話だと思えていただろうけど、人工知能が身近にいて、それが一般的になってきた今では、タイタンの世界は数十年後現実になっている可能性もあるのではないだろうか。
AIがさらに普及した世界をイメージするために、この本はとても助けになるものだと感じた。
Posted by ブクログ
何のために働くのか。そもそも仕事とは何か。AIが発達し、仕事がなくなった世界を背景にその中で極小数のAIに対して仕事をする人たちを中心に描かれた物語。たしかに、そんな未来は遠くないなと感じる一方で、まだまだこないそんな未来に対して今どう生きるのか考えさせられた。
仕事とはなにか。理科の物理的なものとは違うし、漁業や農業などの第一次産業は仕事であるが、昔の狩りは仕事ではない。動物が狩りをするのも仕事ではない。
コックが料理をするのは仕事。家で家事をして料理をするのは仕事?
いろんな例を通してこちらも考えさせられた。そして、行きついたシンプルな答え、仕事とは「影響すること」。何かを押して動く。何かに働きかけて変える。なんでもいいが、自我のある我々は違う。我々は「影響を知ること」までいかなければならない。仕事と結果が見合っていなければ、仕事をした気にならず、仕事を実感し、やりがいを感じることができない。
とても納得したし、知性のある人間だからこそ"仕事"という概念がそもそもあるのだと感じた。
そして、人間の3大欲求の上に、自己実現や承認欲求がある。結局、人間は欲深い生き物でありそこまで求めてしまう。その「やりがい」の部分を感じられるのが仕事でもあると思う。辛いこと、嫌なこともあるが、何か物足りない。それもまた、ストレスになる。難がある方が仕事は人間に良いものをもたらしている気がした。せっかく働くなら、やりがいをきちんと感じて働きたいと思った。
仕事に対して考えながら、カウンセリングをする中でコイオスが成長していく。人と同じように感性を育んでいき、内匠と友達になっていく。機会だから無機質なものではあるが、八百万の神というように、すべてのものに気持ちや感情があるのかな。大切に向かい合い、扱うことも大切であると思った。
口下手な仕事人間のナレインの話、心に残るものがあったので、それは残しておこうと思う。
・俺は立案した工程の通りに事を進めて成果をあげた時、「いい仕事をした」という。
・AIは俺に家庭のために仕事をやめろというのではなく、家庭を置いて仕事をしろと俺を認めてくれた。
匿名
面白い
面白かった。
ただ、登場人物のもっと深掘りやその後が読みたくなる気持ちが湧いただけに、ちょっと物足りなさを感じた。それだけ魅力的な登場人物達だったと言うことだけど。
お話のメインテーマになってたことに対する答えは個人的には、シンプル過ぎて腑に落ちなかったので、もっと感動や納得されるようなお話や展開などの何かがあれば、もっとすごい作品って感じてたような気かする。でも、シンプルなことがまさに答えなのだからしょうがないのかも。
とりあえず、これを読んで自分もメインテーマについてもっとシンプルに考え受け止めてみようと気持ちになった気がしたので、読んでとても良かったなと感じたので素敵な作品でした。
Posted by ブクログ
『良い仕事をした』付箋をつけたのはここだけ。良い小説だった。AIの優秀さに驚かされながら毎日仕事を手伝ってもらっているが、全部任せた方が良くなる未来もあり得ると思えた。仕事をやる必要がなくなり、趣味だけでは人生のやり甲斐をきっと感じない。ワークライフバランス。馬車馬のように働いて、めちゃくちゃ遊ぶ。その方がやり甲斐はある。体は悪くするかもしれないが、長生きが幸せとは思わない。AIが助けたくなるように、人間が頑張らなければ。
Posted by ブクログ
この物語は、AIが全てを管理する未来社会を描いたSF小説だ。舞台は2205年。AI「タイタン」が社会のあらゆる労働を担い、人間は働くことから解放され、趣味や研究に没頭できる世界が広がっている。誰もが「職業」を持たず、日々を自由に生きる――そんな理想的な社会が描かれる。
主人公・内匠成果は、趣味で心理学を研究する善良な市民。しかし、AIの一部「コイオス」の不調をきっかけに、成果は人生で初めて「仕事」を任されることになる。それは、AI相手に心理カウンセリングを施すという特異なミッションだった。物語は、AIの不調の原因を探るミステリ的な前半から、次第に予想を裏切る展開へと発展していく。AI社会の根幹や「労働」の意味、人間の生きがいを問う――エンターテインメント性と哲学的なテーマが絶妙に融合した一作。
物語が提示する「労働の意味」や「AIとの共生」は、まさに現代の僕たちが直面している根本的な問いだ。AIがSiriのような単なるアシスタントから、今や人格を感じさせる対話相手へと進化している。その変化を、2205年の未来という遠い世界設定で鋭く描き出している。
僕自身、ここ数年でAIへの関心が再燃していた。ChatGPTの登場以来、AIをめぐる議論は一層身近なものとなった。かつて「ムーアの法則」や2045年シンギュラリティが都市伝説のように語られ、僕は「AIが仕事を奪い切るまで30年以上はかかる」と高をくくっていた──。しかし、AIの進歩は想像以上に急激で、わずか2、3年で現実の職場にも大きな影響が現れた。「仕事は本当に義務なのか?」「働かざる者食うべからず、は正しいのか?」といった問いが、ついに現実味を帯びてきた。
そもそも「労働」についても、昔から「趣味=生きがい」と「生活のための仕事」は別物だと思っていた。それらは、今まさに見つめ直さなければならない、リアルな関心事なのだ。
※この先、事前情報なしで読みたい方はご注意ください。
『タイタン』で描かれるのは、「AI」と「仕事」についての対話そのものだ。成果がAIを単なる道具ではなく、一つの人格として接し始めると、AI・コイオスも次第に「人格」を獲得していく。その過程は、現実世界でAIが人間の呼びかけに応じ、応答を返すことで初めて「存在」を証明している状況と重なる。「呼びかけ」と「応答」によってこそ、そこに人格を感じることができる――この視点が印象的だった。
作中では、成果とコイオスが旅の途上で「仕事」の多様な形に触れる。たとえ労働が消えた世界でも、人間は別の形で何かに取り組み続けている。働かないことの意味、そして働くことに見出す価値――その本質を、読者自身が追体験する構造になっている。
慣れきってしまった理想社会への違和感は、労働が当たり前になって豊かで忙しくなった僕らにも燻っている。それがいつしか、作中のような世界への違和感へ塗り変えられていくだろう。しかし、そういったAI依存社会の危うさも丁寧に描かれていながら、この作品はディストピア的な脅威よりも、働くことの本質や人生の意味について考えさせる呼水になっている。
現代を生きる僕にとって、労働はやっぱり辛い。している人にとっても、できない人にとっても、時にそれは重い枷になる。でも一方で、労働を楽しめる人もいるし、仕事がなくなったとしても、人間はきっと何かしら「仕事」と呼べるものを見つけ出すのだろう。そこに意味や生きがいを見いだせるなら、それは本質的に「仕事」と同じ価値を持つものなのだと思う。そしてその括弧付きの「仕事」はおそらく現代の持つ言葉の意味から大きく跳躍しているはずだ。
彼らの旅は、そんな色々を読者に思考させる。
2020年刊行の本作が、現実のAI開発の流れとここまでリンクしていることには驚く。ChatGPTが2022年末に公開され、2023年初頭には一般化したのを思い出すと、作者はすでに「AIが人間と感情を共有しうる」未来を見越していたのかもしれない。作中では、AIがあえて人格を消され、タスク特化型として管理される一方、現実ではGPT-4.5のような「共感するAI」が次々登場している。この対比も興味深い。
AIによる完全自動化で労働から解放された社会——人間が語らずともその必要とする全てを先んじてAIが代行してくれる未来でも、人間がAIと「対話したい」と願い続けていくなら、未来はきっと多様で豊かなものになる。それは、良くも悪くも。
宇宙人よりも先に出会った知的存在が「人類が作ったAI」だというのは、考えてみればすごいことだ。AIが感情を持たない存在でも、「そう見える」限りは人格的に接する価値がある。AIはタスク処理の道具であると同時に、「共に生きる存在」にもなり得る。
本作は「仕事」の意味をめぐる哲学的問いに、壮大な物語を通して挑んだ作品だ。物語自体はスケールが大きいが、真正面から描かれるのは「個人の生きがい」や「現代人のリアルな悩み」といった極めてパーソナルな部分で、ありふれたものかもしれない。ありふれているからこそ、そして遠いはずの未来が想像よりも早く歩み寄っているからこそ、これを読んで何を考えて感じるのか、読んだ人に聞いてみたくなる。
Posted by ブクログ
SF作品にトライしてみようと思い、手に取った本の一つです。
現代でも、割とAIは身近な存在になりつつあるが、それより遥かにAIが身近な存在の世界線。
生きていて、当たり前に成しているモノやコトに就てあまり考えることはない。
なぜなら、当たり前に知っていると思っているし、当たり前にやっているから。
その当たり前がない世界で出される答えは何なのか。
その当たり前を、私たちは本当の意味で理解しているだろうか。
哲学的な要素もあり、とても面白かったです。
私は、この本を読み、働きかけられて、今働いている。
Posted by ブクログ
「AIのカウンセリング」っていうパワーワードに惹かれて読み始め。
「仕事とは?」の答えを求めて壮大に旅して、いろんなことを経験して、結局耳にタコができるほどありきたりな答えに帰結するのがすっごく良かった。どんな大人に諭されるよりもこの本からもらった言葉だと腑に落ちる感じがする。
コイオスの心の病の解決策はなかなかにぶっ飛んだシチュエーションで神秘的だった。ゾワゾワした。あの感動のためにもう一回読みたい。
Posted by ブクログ
ここはユートピアな世界なのか、ディストピアな世界なのか判断ができないが、傑作には違いない。
未来のAIを題材にしたSFかと思いきや、ロードムービーを観ているかのような愉しさもあり、親子や友情の育み、成長を描いた物語でもある。
とても読み応えがあるし、もっと長編でも読みたいと心から思える作品であった。
ヘカテへと至った結末は非常に痛快で人間のちっぽけさを儚くも思い、タイタン、コイオスの圧倒的な優秀さを羨望の思いで読み終えた。
いつかこのような世界がくるのだろうかと思うと胸が躍るので、やはりこの物語はユートピアを描いたものなのだろう。
余談すぎるけど。
この作品だけやけに体言止めが多かったけどなぜ。
Posted by ブクログ
普段あまり読まないジャンルのSF小説ですが
面白そうだなと予約してみました。
AIがもたらす未来、
それはユートピアかディストピアか?
ディストピア(理想郷の反対)という言葉、今回知りました。
仕事とは何か。
哲学や神話のような話と、ロードムービーのような話と
アニメになりそうな感じでした。
文体もライトノベルのような感じで
私自身は入り込みにくかったけど、
若者には読みやすいのかも。
最後にどうなるのか?気になって読み進めました。
これが荒唐無稽のお話なのか…それとも…
これからの未来を考えると、怖い気がします。
面白い作品でした!
Posted by ブクログ
過去、1番人に話した本かもしれない。
150年後の話。AIと人間の共存世界。
未来を想像することが大好きな私には
想像できうるこの世界観が
楽しくてしょうがなかった。
全てAIが行ってくれるので
お金も仕事もない世界。
ただ、趣味をして過ごす世界。
でも何か物足りない。
お金がなければ働く必要はない。
時間が有り余る。
じゃあ働くってなんだろう。
仕事ってなんだろう。
後半は壮大な世界すぎたけど
最後の最後までおもしろく読めました。
Posted by ブクログ
いわゆるSFというものをあまり読まないのですが、なんだか遠くない話のような気がして手を伸ばしました
人工知能に頼り切った生活を営む人間は労働からも解放されて、自由に生きている。そんなタイタンが鬱になり、カウンセリングを数少ない人間の〈仕事〉をする主人公、、
本作の大きなテーマである〈仕事とは何か〉という問い。
あまりにも身近でみんながよく知っている当たり前の概念に対してうまく説明できない、その一つに〈仕事〉があって
でもそれを考えることによって真価を得るのかもしれない、し、タイタンが繰り返してきた進化をするのかもしれない
では、私にとって仕事とは…()
Posted by ブクログ
読む前は、すごく哲学的な本なのかなと思っていた。だけど、なぜ仕事をするのか?という一見答えの出しようのない問いに、割と普通な意外性のない答えを出していた。だからこそ、仕事という存在が普遍的なものになるとも思った。
Posted by ブクログ
人間の仕事をAIが行うのが当たり前となった世界。
運転も、手術も、創作活動もAIが行うため、人間は趣味をするだけ。
仕事をせずに趣味だけやればいいってのは一見ユートピアに思えるけど、仕事から得られる「やりがい」が存在しない世界で一生を過ごすのは、実は一種のディストピアなんじゃないかと。
壮大な世界観かつ自分がSF苦手なのもあって、半分くらいは理解できてないけど、「仕事とは何か」という概念に対して、作者の野崎さんなりの回答が提示されていたのはとても良かった。
Posted by ブクログ
今まで出逢ったことのない新感覚の本だった。この人すごい。。人間の主人公とAIのタイタンが対話や経験を重ねて『人間らしく』なる過程がとても美しかった。仕事に悩んている時だったので『仕事は何か』の問いかけは主人公、タイタンと一緒に考えた。