あらすじ
【AIと人類を巡る超巨弾エンタメ小説が文庫化】
今日も働く、人類へ
至高のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。
人類は≪仕事≫から解放され、自由を謳歌していた。
しかし、心理学を趣味とする内匠成果【ないしょうせいか】のもとを訪れた、
世界でほんの一握りの≪就労者≫ナレインが彼女に告げる。
「貴方に≪仕事≫を頼みたい」
彼女に託された≪仕事≫は、突如として機能不全に陥った
タイタンのカウンセリングだった――。
アニメ『バビロン』『HELLO WORLD』で日本を震撼させた
鬼才野﨑まどが令和に放つ、前代未聞の超巨大エンターテイメント。
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Posted by ブクログ
AIがさらに進化した後の話。
本当にそうなるか?という要素はたくさんありつつも、興味深い設定も多かった。
タイタンが全ての「仕事」を代行することで資本主義が破壊される。
→そうあるべきだと思うと同時に、あと100年では厳しいとも思う。たぶん、人間の倫理が追いつかないし、それをよしとできるほどの知性にもたどり着けない。
仕事をする、という概念がなくなる。その上でどう生きるのか。何が価値なのか。
→これは誰しもが考えておかないといけない問題かもしれない。仕事はある意味で土台だから、土台ありきで私たちは自由でいられる。だから、それがなくても土台をもてるか、支えられるかはどこかで考えなくてはならない。
人間が増えると、仕事が増える。
→それはそう。影響を与えることが仕事なら、影響を与えることを恐れて決定ができない人は不用である。
AIに判断能力が多少なりとも移管されはじめている昨今、人間が邪魔と言われるのも時間の問題である。
AIの故障、停止
→私たちは、携帯電話がなかった時代の仕事をほとんど知らない。高校生の頃から携帯電話が当たり前、就職する頃には99%がスマホ、これが止まる未来は想像できない。一方で作中のAI停止はこれに近いかさらに酷い規模…恐怖や。
仕事とはなにか
→人に影響を与え、そして実感すること。これまで仕事をする中でたくさん悩みもがいてきたけど、苦しい時ほど実感ができない時が多い。本当に役に立っているのかわからなくなった時、やることは難しく大変なのになんの新しい価値にもなっていないと理解しているとき、そして会社の評価は「価値のあるもの」に加点される方式だから、影響が実感できず見えにくいものほど評価の形での見返りもない。
ちなみに結局どうすればいいんだろう。作中だと、新たな「やりがい」に辿り着く。でも実際は?新たなやりがいへ進むしかないのか?
そもそもやりがいとはなにかも???となりながら、悶々とした読み終わりだった。
Posted by ブクログ
三年前に読んでいたのに途中まで気づかなかった。ナレインあたりで「あれ?」と思い出し、コイオスが出てきて「あ、読んだやつだ」となったが、読み終わるまで結末はすっかり忘れていた。
前回の感想同様、主人公の内匠成果の性格から感じる自分に酔ってるヒロイン感がどうにも苦手で、コイオスのカウンセリングプロジェクトに参加するまでは、他の一般人同様にAIによる豊かさを享受しきって生きている凡夫だろうに、急にキャリアウーマンみたいになって影響が大きそうなことも独断行動してしまう変貌っぷりがどうも納得いかない。コイオスと普通にデートしてるようなパートもちょっと読んでいて辛い。
AIの進歩によるユートピア社会の描写は上手いなと感心させられ、そういう時代の空気感や流通や仕事が存在しない世界や、ナノテクノロジーの進歩具合も上手く書けてるなと感じました。その部分はSF小説として楽しめましたし、プラスアルファで巨大タイタンが動き出すぶっ飛んだ要素を加えたことも小説として面白かった。
AIやMIが進歩しすぎて、人間の消費だけではAIが仕事として満足できず、消費専用の構造物「ヘカテ」を内緒で海底に作ってるのは、一年前なら笑いとばしてたかもしれないが、今考えると、未来ではあり得るなと思えてしまう。
Posted by ブクログ
遠い未来、人類誰もが「仕事」をする必要がない時代、人類の生活を守り司るAIタイタンの一部に不調が生じる。その原因究明と解決のために、主人公が臨床心理士として、タイタンと対話を行う物語。
物語は終始、「仕事」ってなんだろうという問に対する主人公とAIタイタンの一部であるコイオスの対話が主体となって、その周りの人々の思想などのスパイスが加わって展開します。その意味では、SFというよりも啓発本に近い様相を帯びます。実際読みながら、「自分が日々行なっている会社員としての「仕事」とは何だろうか」、「意味があるのだろうか」など考える良い機会となりました。この本の結論は「影響を与えること」が「仕事」。その影響と結果が見合っていると知ることが「やりがい」だと語っています(と私は捉えました)。私個人の感覚として、ほぼ一緒の感想でした。自分がやりがいを感じた仕事は、学生のころ塾講師をしていましたが、影響と結果がダイレクトに数字として出てくるのでとても楽しくやりがいを感じました。私の周りで、販売促進をする営業という仕事を好きな人は多いですが、同じ理由かと思います。
「社会に対しどう影響を与えたいか」、「どう結果を知りたいか」の2つが、資本主義における社会人生活を送るうえで肝要になってくるのでしょうね。最近は、ワークライフバランスといって家族との時間を大切にして仕事はそれなりにしようという考え方が浸透してきているように感じますが、せっかく人生の三分の一(睡眠8、仕事8、その他私生活8の超ざっくり計算)を費やす「仕事」ですから、もっと本気にもっと真剣に向き合う必要があると感じました。
星を一つ減らした理由は、人間を超越するAIをテーマとした割には、そのAIから発される言動が私の想像を超えてこなかったからです。ただ、最後のAIの不調の原因については意外でなるほどと思いましたし、終始面白く読み進められました。東京→大阪の片道でほぼ読み終えるくらい読みやすく、集中できるくらい面白かったです。
Posted by ブクログ
なんでか知らないけど表紙変わってたよ。前面に仕事って書いてある。前の表紙かっこいいなと思って本屋行ったけどもう無かった。まぁ、今のやつも嫌いじゃないけど。自分、対人能力低くて、問題解決力とか論理的思考力とかないから仕事しんどいし、おもんないから、仕事しなくて良い時代の話で正直羨ましい世界だなって最初に思ったし、最後まで変わらずそう思ってた。ただ、誰かに生かされ続けて生きることも思考力とかが落ちるのは予想できて、それも怖いなって思った。仕事ってなんなんだよって気になって読んで、自分が期待した答えとは違ったけど、一つの知識として読んだ価値はあったと思う。AIとかさ、もちろん小説の中のAIと今の時代のAIの実装が同じとも限らないから同じものとして書くのが良いのか悪いのか分からないけど、基本的には生き物ではないわけで、知性があるように人が思ってるだけで、ただただ確率論とか統計学とかそういうありがちな論理で返してきてるだけなのかもしれないけど、すごい親しみやすいキャラで、魅力的だった。そういう意味ではそんな未来も悪くないのかな。それはそうとして、最大の疑問が出た。人に影響を与えたくない人が、と言っても全く無視されるとか0%の影響しか与えられないとかはそれはそれで辛いと思うんだけど、でも、基本的には自分中心で仕事を進めるとか、責任を自分が背負うとかはしたくない人が、それでも働かないといけない時代にどう働いたらいいんだろうって、そんな疑問が残ってる。
Posted by ブクログ
AIブームの昨今だからこそより面白く感じた。
AI「タイタン」(12の大元がある)によって全てがサポートされ、人間が仕事をせずとも世界が平和に保たれている2205年。その大元のタイタンの一つ「コイオス」が機能低下を起こし、心理学に造詣が深い主人公がカウンセラーとして呼ばれ、初めて「仕事」をすることになる。そして会話と旅・経験を通して「仕事とは何か? 」を2人で見つけていく。
まず、コイオスが自我を持つ過程や精神的に熟していく過程が哲学的で面白い。
あと、どこか冷めている感じの主人公がカウンセラーとして冷静に慎重に会話をするところから、一人の人間として本音を隠そうとするコイオスに啖呵を切ったり(結果、大事になるが)、友人として距離感を大事にしたりと人間味が増していくストーリーにも惹きつけられた。
Posted by ブクログ
AIであるタイタンが人間の生活基盤を支え、人間が仕事をしなくなった今から百数十年後の物語。
その中で知能が低下してしまったタイタン・コイオスを回復させるために彼と対話をすべく、趣味として心理学を扱っていた成果に〈仕事〉が与えられた。
仕事が不必要な世界で暮らしてきた成果にとって〈仕事〉とは何なのかわからないし、同じくコイオスにとってもそれが何なのかわからない。
物語を通して色々な体験をし、その中で仕事の意味を見つけていく、複雑でありながらも新しい世界を見せてくれるストーリーだった。
仕事は、◎影響すること
◎影響を知ること
=やり甲斐
だと、2人は結論を出した。
この本を読んで、この文章に出会って、自分の中でもやっとしていた仕事のイメージが初めて言語化されたと感じた。
ずっと「やり甲斐を感じられる仕事に就きたい」というようなふわっとした気持ちを持っていたけれど、それは自分が誰かに影響を与えられて、その反応が返ってくることだと、私はそれを求めていたんだと、自己理解にも繋がった。
就活していた時に読んでいたかった本。
仕事に関する価値観を再考できるだけでも価値ある作品だと思うが、AIが私たちの世界と密接に関わっている今こそ読むべき作品でもあると思う。
一昔前だったら完全に作り話だと思えていただろうけど、人工知能が身近にいて、それが一般的になってきた今では、タイタンの世界は数十年後現実になっている可能性もあるのではないだろうか。
AIがさらに普及した世界をイメージするために、この本はとても助けになるものだと感じた。
Posted by ブクログ
何のために働くのか。そもそも仕事とは何か。AIが発達し、仕事がなくなった世界を背景にその中で極小数のAIに対して仕事をする人たちを中心に描かれた物語。たしかに、そんな未来は遠くないなと感じる一方で、まだまだこないそんな未来に対して今どう生きるのか考えさせられた。
仕事とはなにか。理科の物理的なものとは違うし、漁業や農業などの第一次産業は仕事であるが、昔の狩りは仕事ではない。動物が狩りをするのも仕事ではない。
コックが料理をするのは仕事。家で家事をして料理をするのは仕事?
いろんな例を通してこちらも考えさせられた。そして、行きついたシンプルな答え、仕事とは「影響すること」。何かを押して動く。何かに働きかけて変える。なんでもいいが、自我のある我々は違う。我々は「影響を知ること」までいかなければならない。仕事と結果が見合っていなければ、仕事をした気にならず、仕事を実感し、やりがいを感じることができない。
とても納得したし、知性のある人間だからこそ"仕事"という概念がそもそもあるのだと感じた。
そして、人間の3大欲求の上に、自己実現や承認欲求がある。結局、人間は欲深い生き物でありそこまで求めてしまう。その「やりがい」の部分を感じられるのが仕事でもあると思う。辛いこと、嫌なこともあるが、何か物足りない。それもまた、ストレスになる。難がある方が仕事は人間に良いものをもたらしている気がした。せっかく働くなら、やりがいをきちんと感じて働きたいと思った。
仕事に対して考えながら、カウンセリングをする中でコイオスが成長していく。人と同じように感性を育んでいき、内匠と友達になっていく。機会だから無機質なものではあるが、八百万の神というように、すべてのものに気持ちや感情があるのかな。大切に向かい合い、扱うことも大切であると思った。
口下手な仕事人間のナレインの話、心に残るものがあったので、それは残しておこうと思う。
・俺は立案した工程の通りに事を進めて成果をあげた時、「いい仕事をした」という。
・AIは俺に家庭のために仕事をやめろというのではなく、家庭を置いて仕事をしろと俺を認めてくれた。
匿名
面白い
面白かった。
ただ、登場人物のもっと深掘りやその後が読みたくなる気持ちが湧いただけに、ちょっと物足りなさを感じた。それだけ魅力的な登場人物達だったと言うことだけど。
お話のメインテーマになってたことに対する答えは個人的には、シンプル過ぎて腑に落ちなかったので、もっと感動や納得されるようなお話や展開などの何かがあれば、もっとすごい作品って感じてたような気かする。でも、シンプルなことがまさに答えなのだからしょうがないのかも。
とりあえず、これを読んで自分もメインテーマについてもっとシンプルに考え受け止めてみようと気持ちになった気がしたので、読んでとても良かったなと感じたので素敵な作品でした。
Posted by ブクログ
この物語は、AIが全てを管理する未来社会を描いたSF小説だ。舞台は2205年。AI「タイタン」が社会のあらゆる労働を担い、人間は働くことから解放され、趣味や研究に没頭できる世界が広がっている。誰もが「職業」を持たず、日々を自由に生きる――そんな理想的な社会が描かれる。
主人公・内匠成果は、趣味で心理学を研究する善良な市民。しかし、AIの一部「コイオス」の不調をきっかけに、成果は人生で初めて「仕事」を任されることになる。それは、AI相手に心理カウンセリングを施すという特異なミッションだった。物語は、AIの不調の原因を探るミステリ的な前半から、次第に予想を裏切る展開へと発展していく。AI社会の根幹や「労働」の意味、人間の生きがいを問う――エンターテインメント性と哲学的なテーマが絶妙に融合した一作。
物語が提示する「労働の意味」や「AIとの共生」は、まさに現代の僕たちが直面している根本的な問いだ。AIがSiriのような単なるアシスタントから、今や人格を感じさせる対話相手へと進化している。その変化を、2205年の未来という遠い世界設定で鋭く描き出している。
僕自身、ここ数年でAIへの関心が再燃していた。ChatGPTの登場以来、AIをめぐる議論は一層身近なものとなった。かつて「ムーアの法則」や2045年シンギュラリティが都市伝説のように語られ、僕は「AIが仕事を奪い切るまで30年以上はかかる」と高をくくっていた──。しかし、AIの進歩は想像以上に急激で、わずか2、3年で現実の職場にも大きな影響が現れた。「仕事は本当に義務なのか?」「働かざる者食うべからず、は正しいのか?」といった問いが、ついに現実味を帯びてきた。
そもそも「労働」についても、昔から「趣味=生きがい」と「生活のための仕事」は別物だと思っていた。それらは、今まさに見つめ直さなければならない、リアルな関心事なのだ。
※この先、事前情報なしで読みたい方はご注意ください。
『タイタン』で描かれるのは、「AI」と「仕事」についての対話そのものだ。成果がAIを単なる道具ではなく、一つの人格として接し始めると、AI・コイオスも次第に「人格」を獲得していく。その過程は、現実世界でAIが人間の呼びかけに応じ、応答を返すことで初めて「存在」を証明している状況と重なる。「呼びかけ」と「応答」によってこそ、そこに人格を感じることができる――この視点が印象的だった。
作中では、成果とコイオスが旅の途上で「仕事」の多様な形に触れる。たとえ労働が消えた世界でも、人間は別の形で何かに取り組み続けている。働かないことの意味、そして働くことに見出す価値――その本質を、読者自身が追体験する構造になっている。
慣れきってしまった理想社会への違和感は、労働が当たり前になって豊かで忙しくなった僕らにも燻っている。それがいつしか、作中のような世界への違和感へ塗り変えられていくだろう。しかし、そういったAI依存社会の危うさも丁寧に描かれていながら、この作品はディストピア的な脅威よりも、働くことの本質や人生の意味について考えさせる呼水になっている。
現代を生きる僕にとって、労働はやっぱり辛い。している人にとっても、できない人にとっても、時にそれは重い枷になる。でも一方で、労働を楽しめる人もいるし、仕事がなくなったとしても、人間はきっと何かしら「仕事」と呼べるものを見つけ出すのだろう。そこに意味や生きがいを見いだせるなら、それは本質的に「仕事」と同じ価値を持つものなのだと思う。そしてその括弧付きの「仕事」はおそらく現代の持つ言葉の意味から大きく跳躍しているはずだ。
彼らの旅は、そんな色々を読者に思考させる。
2020年刊行の本作が、現実のAI開発の流れとここまでリンクしていることには驚く。ChatGPTが2022年末に公開され、2023年初頭には一般化したのを思い出すと、作者はすでに「AIが人間と感情を共有しうる」未来を見越していたのかもしれない。作中では、AIがあえて人格を消され、タスク特化型として管理される一方、現実ではGPT-4.5のような「共感するAI」が次々登場している。この対比も興味深い。
AIによる完全自動化で労働から解放された社会——人間が語らずともその必要とする全てを先んじてAIが代行してくれる未来でも、人間がAIと「対話したい」と願い続けていくなら、未来はきっと多様で豊かなものになる。それは、良くも悪くも。
宇宙人よりも先に出会った知的存在が「人類が作ったAI」だというのは、考えてみればすごいことだ。AIが感情を持たない存在でも、「そう見える」限りは人格的に接する価値がある。AIはタスク処理の道具であると同時に、「共に生きる存在」にもなり得る。
本作は「仕事」の意味をめぐる哲学的問いに、壮大な物語を通して挑んだ作品だ。物語自体はスケールが大きいが、真正面から描かれるのは「個人の生きがい」や「現代人のリアルな悩み」といった極めてパーソナルな部分で、ありふれたものかもしれない。ありふれているからこそ、そして遠いはずの未来が想像よりも早く歩み寄っているからこそ、これを読んで何を考えて感じるのか、読んだ人に聞いてみたくなる。