あらすじ
【AIと人類を巡る超巨弾エンタメ小説が文庫化】
今日も働く、人類へ
至高のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。
人類は≪仕事≫から解放され、自由を謳歌していた。
しかし、心理学を趣味とする内匠成果【ないしょうせいか】のもとを訪れた、
世界でほんの一握りの≪就労者≫ナレインが彼女に告げる。
「貴方に≪仕事≫を頼みたい」
彼女に託された≪仕事≫は、突如として機能不全に陥った
タイタンのカウンセリングだった――。
アニメ『バビロン』『HELLO WORLD』で日本を震撼させた
鬼才野﨑まどが令和に放つ、前代未聞の超巨大エンターテイメント。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
表紙に書いてある 「仕事 君はなぜ、働くのか?」という言葉に興味を持ったのと、装丁に惹かれて、購入した1冊。
舞台は、二二〇五年。仕事は人類がするものではなく、AIがするものになってしまっていた。
現代では、AIの技術が世界的に発達して来ている。
そのため、AIによって、仕事が奪われる時代が近い将来訪れる。このことが話題になっている。
そのため、日本もいつか本当にそうなってしまうのかもしれないと感じながら、読み進めていった。
タイタンと内匠が、「仕事とは?」「働くとは?」ということを考えている時に、私も、この問題についていた。
最後の内匠が導き出した「仕事とは」の答えを聞き、ようやく腑に落ちた感じがした。
AIに仕事を奪われた場合、私たちはどうするのか?
未来の仕事とAIの関係を考える1冊です。
SF小説ですが、読みやすかったです!
是非、読んでいただきたいです!
Posted by ブクログ
AIであるタイタンが人間の生活基盤を支え、人間が仕事をしなくなった今から百数十年後の物語。
その中で知能が低下してしまったタイタン・コイオスを回復させるために彼と対話をすべく、趣味として心理学を扱っていた成果に〈仕事〉が与えられた。
仕事が不必要な世界で暮らしてきた成果にとって〈仕事〉とは何なのかわからないし、同じくコイオスにとってもそれが何なのかわからない。
物語を通して色々な体験をし、その中で仕事の意味を見つけていく、複雑でありながらも新しい世界を見せてくれるストーリーだった。
仕事は、◎影響すること
◎影響を知ること
=やり甲斐
だと、2人は結論を出した。
この本を読んで、この文章に出会って、自分の中でもやっとしていた仕事のイメージが初めて言語化されたと感じた。
ずっと「やり甲斐を感じられる仕事に就きたい」というようなふわっとした気持ちを持っていたけれど、それは自分が誰かに影響を与えられて、その反応が返ってくることだと、私はそれを求めていたんだと、自己理解にも繋がった。
就活していた時に読んでいたかった本。
仕事に関する価値観を再考できるだけでも価値ある作品だと思うが、AIが私たちの世界と密接に関わっている今こそ読むべき作品でもあると思う。
一昔前だったら完全に作り話だと思えていただろうけど、人工知能が身近にいて、それが一般的になってきた今では、タイタンの世界は数十年後現実になっている可能性もあるのではないだろうか。
AIがさらに普及した世界をイメージするために、この本はとても助けになるものだと感じた。
Posted by ブクログ
何のために働くのか。そもそも仕事とは何か。AIが発達し、仕事がなくなった世界を背景にその中で極小数のAIに対して仕事をする人たちを中心に描かれた物語。たしかに、そんな未来は遠くないなと感じる一方で、まだまだこないそんな未来に対して今どう生きるのか考えさせられた。
仕事とはなにか。理科の物理的なものとは違うし、漁業や農業などの第一次産業は仕事であるが、昔の狩りは仕事ではない。動物が狩りをするのも仕事ではない。
コックが料理をするのは仕事。家で家事をして料理をするのは仕事?
いろんな例を通してこちらも考えさせられた。そして、行きついたシンプルな答え、仕事とは「影響すること」。何かを押して動く。何かに働きかけて変える。なんでもいいが、自我のある我々は違う。我々は「影響を知ること」までいかなければならない。仕事と結果が見合っていなければ、仕事をした気にならず、仕事を実感し、やりがいを感じることができない。
とても納得したし、知性のある人間だからこそ"仕事"という概念がそもそもあるのだと感じた。
そして、人間の3大欲求の上に、自己実現や承認欲求がある。結局、人間は欲深い生き物でありそこまで求めてしまう。その「やりがい」の部分を感じられるのが仕事でもあると思う。辛いこと、嫌なこともあるが、何か物足りない。それもまた、ストレスになる。難がある方が仕事は人間に良いものをもたらしている気がした。せっかく働くなら、やりがいをきちんと感じて働きたいと思った。
仕事に対して考えながら、カウンセリングをする中でコイオスが成長していく。人と同じように感性を育んでいき、内匠と友達になっていく。機会だから無機質なものではあるが、八百万の神というように、すべてのものに気持ちや感情があるのかな。大切に向かい合い、扱うことも大切であると思った。
口下手な仕事人間のナレインの話、心に残るものがあったので、それは残しておこうと思う。
・俺は立案した工程の通りに事を進めて成果をあげた時、「いい仕事をした」という。
・AIは俺に家庭のために仕事をやめろというのではなく、家庭を置いて仕事をしろと俺を認めてくれた。
匿名
面白い
面白かった。
ただ、登場人物のもっと深掘りやその後が読みたくなる気持ちが湧いただけに、ちょっと物足りなさを感じた。それだけ魅力的な登場人物達だったと言うことだけど。
お話のメインテーマになってたことに対する答えは個人的には、シンプル過ぎて腑に落ちなかったので、もっと感動や納得されるようなお話や展開などの何かがあれば、もっとすごい作品って感じてたような気かする。でも、シンプルなことがまさに答えなのだからしょうがないのかも。
とりあえず、これを読んで自分もメインテーマについてもっとシンプルに考え受け止めてみようと気持ちになった気がしたので、読んでとても良かったなと感じたので素敵な作品でした。
Posted by ブクログ
この物語は、AIが全てを管理する未来社会を描いたSF小説だ。舞台は2205年。AI「タイタン」が社会のあらゆる労働を担い、人間は働くことから解放され、趣味や研究に没頭できる世界が広がっている。誰もが「職業」を持たず、日々を自由に生きる――そんな理想的な社会が描かれる。
主人公・内匠成果は、趣味で心理学を研究する善良な市民。しかし、AIの一部「コイオス」の不調をきっかけに、成果は人生で初めて「仕事」を任されることになる。それは、AI相手に心理カウンセリングを施すという特異なミッションだった。物語は、AIの不調の原因を探るミステリ的な前半から、次第に予想を裏切る展開へと発展していく。AI社会の根幹や「労働」の意味、人間の生きがいを問う――エンターテインメント性と哲学的なテーマが絶妙に融合した一作。
物語が提示する「労働の意味」や「AIとの共生」は、まさに現代の僕たちが直面している根本的な問いだ。AIがSiriのような単なるアシスタントから、今や人格を感じさせる対話相手へと進化している。その変化を、2205年の未来という遠い世界設定で鋭く描き出している。
僕自身、ここ数年でAIへの関心が再燃していた。ChatGPTの登場以来、AIをめぐる議論は一層身近なものとなった。かつて「ムーアの法則」や2045年シンギュラリティが都市伝説のように語られ、僕は「AIが仕事を奪い切るまで30年以上はかかる」と高をくくっていた──。しかし、AIの進歩は想像以上に急激で、わずか2、3年で現実の職場にも大きな影響が現れた。「仕事は本当に義務なのか?」「働かざる者食うべからず、は正しいのか?」といった問いが、ついに現実味を帯びてきた。
そもそも「労働」についても、昔から「趣味=生きがい」と「生活のための仕事」は別物だと思っていた。それらは、今まさに見つめ直さなければならない、リアルな関心事なのだ。
※この先、事前情報なしで読みたい方はご注意ください。
『タイタン』で描かれるのは、「AI」と「仕事」についての対話そのものだ。成果がAIを単なる道具ではなく、一つの人格として接し始めると、AI・コイオスも次第に「人格」を獲得していく。その過程は、現実世界でAIが人間の呼びかけに応じ、応答を返すことで初めて「存在」を証明している状況と重なる。「呼びかけ」と「応答」によってこそ、そこに人格を感じることができる――この視点が印象的だった。
作中では、成果とコイオスが旅の途上で「仕事」の多様な形に触れる。たとえ労働が消えた世界でも、人間は別の形で何かに取り組み続けている。働かないことの意味、そして働くことに見出す価値――その本質を、読者自身が追体験する構造になっている。
慣れきってしまった理想社会への違和感は、労働が当たり前になって豊かで忙しくなった僕らにも燻っている。それがいつしか、作中のような世界への違和感へ塗り変えられていくだろう。しかし、そういったAI依存社会の危うさも丁寧に描かれていながら、この作品はディストピア的な脅威よりも、働くことの本質や人生の意味について考えさせる呼水になっている。
現代を生きる僕にとって、労働はやっぱり辛い。している人にとっても、できない人にとっても、時にそれは重い枷になる。でも一方で、労働を楽しめる人もいるし、仕事がなくなったとしても、人間はきっと何かしら「仕事」と呼べるものを見つけ出すのだろう。そこに意味や生きがいを見いだせるなら、それは本質的に「仕事」と同じ価値を持つものなのだと思う。そしてその括弧付きの「仕事」はおそらく現代の持つ言葉の意味から大きく跳躍しているはずだ。
彼らの旅は、そんな色々を読者に思考させる。
2020年刊行の本作が、現実のAI開発の流れとここまでリンクしていることには驚く。ChatGPTが2022年末に公開され、2023年初頭には一般化したのを思い出すと、作者はすでに「AIが人間と感情を共有しうる」未来を見越していたのかもしれない。作中では、AIがあえて人格を消され、タスク特化型として管理される一方、現実ではGPT-4.5のような「共感するAI」が次々登場している。この対比も興味深い。
AIによる完全自動化で労働から解放された社会——人間が語らずともその必要とする全てを先んじてAIが代行してくれる未来でも、人間がAIと「対話したい」と願い続けていくなら、未来はきっと多様で豊かなものになる。それは、良くも悪くも。
宇宙人よりも先に出会った知的存在が「人類が作ったAI」だというのは、考えてみればすごいことだ。AIが感情を持たない存在でも、「そう見える」限りは人格的に接する価値がある。AIはタスク処理の道具であると同時に、「共に生きる存在」にもなり得る。
本作は「仕事」の意味をめぐる哲学的問いに、壮大な物語を通して挑んだ作品だ。物語自体はスケールが大きいが、真正面から描かれるのは「個人の生きがい」や「現代人のリアルな悩み」といった極めてパーソナルな部分で、ありふれたものかもしれない。ありふれているからこそ、そして遠いはずの未来が想像よりも早く歩み寄っているからこそ、これを読んで何を考えて感じるのか、読んだ人に聞いてみたくなる。
Posted by ブクログ
「AIのカウンセリング」っていうパワーワードに惹かれて読み始め。
「仕事とは?」の答えを求めて壮大に旅して、いろんなことを経験して、結局耳にタコができるほどありきたりな答えに帰結するのがすっごく良かった。どんな大人に諭されるよりもこの本からもらった言葉だと腑に落ちる感じがする。
コイオスの心の病の解決策はなかなかにぶっ飛んだシチュエーションで神秘的だった。ゾワゾワした。あの感動のためにもう一回読みたい。
Posted by ブクログ
「仕事」とは何かを問う物語だった。
当たり前すぎて考えていなかったけれど、私も内匠成果さんとコイオスと仕事について一緒に考えることができた。
コイオスが精神を病んだ理由が、過重労働ではなく、仕事が簡単すぎて、やり甲斐がなかったことだったのかとても驚きだった。当たり前に過重労働のせいだと思ってしまっていた。
人間に置き換えても、やはり仕事にやりがいを持つべきだと思った。
そしてなにより、コイオスがかわいかった。親目線になれた。
「仕事」とは何か。それを忘れずに働いていきたい。
Posted by ブクログ
仕事とは何か?というテーマを、仕事が全てAIに肩代わりされている未来から描く。
仕事を「する人」だけではなく、「受ける人」の目線で語られている点がとても良かった。
受け取り方ひとつで、相手の仕事を「作業」にも「意義」にも変えてしまう。受け手のふるまい=見えない仕事だと思う。
Posted by ブクログ
AIであるタイタンが仕事とはという疑問から始まります。
この話自体はAIにとっての話ではありますが、現代の人でも仕事について考えるときに読むと新たな知見が得られるかもしれません。
Posted by ブクログ
仕事の全てがAIに取って代わり、人類のほとんどが仕事をしなくなった。そのAIが機能低下し、その原因を探るため、心理学を趣味にしている主人公がカウンセリングしようと試みる。仕事とは何なのかをイチから考える。
当たり前は当たり前じゃないんだよなと再認識させれる。
哲学的に話が進んでいくのかと思ったら肝心の対話のシーンが傷つけ合いの暴力的になってしまうのがイマイチ。その後の話も、対話と別れからかなり時間がかなり進んでしまっていて、対話相手のAIが完全に止まったのか、復旧したのか、3人の行方もはっきりしないままだったのがモヤモヤする。