あらすじ
【2020年本屋大賞受賞作】【映画化決定 2022年5月公開 監督・脚本 李相日 出演 広瀬すず、松坂桃李、横浜流星、多部未華子ほか】最初にお父さんがいなくなって、次にお母さんもいなくなって、わたしの幸福な日々は終わりを告げた。すこしずつ心が死んでいくわたしに居場所をくれたのが文だった。それがどのような結末を迎えるかも知らないままに――。だから十五年の時を経て彼と再会を果たし、わたしは再び願った。この願いを、きっと誰もが認めないだろう。周囲のひとびとの善意を打ち捨て、あるいは大切なひとさえも傷付けることになるかもしれない。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。本屋大賞受賞作。/解説=吉田大助
「せっかくの善意を、わたしは捨てていく。
そんなものでは、わたしはかけらも救われない。」
温かい両親の元で幸せな暮らしを送っていた家内更紗(かないさらさ)は
ある事情で両親を失い、伯母の家に引き取られることになった。
自分の居場所がないと感じるようになった更紗は、ある日公園で一人の青年・文(ふみ)に家に来ないかと誘われーー……。
男と女。大人と子供。加害者と被害者。
人をカテゴライズし、勝手な解釈で物事を把握してしまうことの危うさに気づかされる作品です。人を「かわいそうな人」だとラベリングし、保護しようとすることが本当に正義なのか。善意は無条件に正しいものなのか。当事者たちにしかわからない「本当」があるのではないだろうか。
主人公二人の静かな幸せを祈りたくなるような、そんな一冊です。
ぜひ読んでみてください。
感情タグBEST3
文が警察につれていかれる時に泣き叫ぶ更紗の声が脳内で再生されるようでとても辛かった。文の家に転がり込んだ傍若無人な更紗に文が少しでも救われていたならよかった。梨花が2人の良き理解者になってくれてよかった。最終的に亮と完全に関係を終わらせることができてよかった。一筋縄ではいかないけど、更紗と文がまた一緒になれてよかった。いろんな感情がごちゃ混ぜになって、ひどく悲しくもどかしく、悔しく、じれったかったけど、これは悲しみの行き場のない女の子と男の子の美しい話だった。
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本当に傑作小説。それしか表しようがありません。
終始物語が醸し出す雰囲気にどこか懐かしさを覚え、自分の子供時代を見ているかのような親しみが忘れられませんでした。ずっとずっと、どこかで知っているような気がしたのです。
作中の表現はひとつひとつが美しく、愛おしい。
最後にはうんうんと頷きながら涙を流していました。
ずっとこの作品の中に入りたい、包まれていたいと感じた一冊。
小児性愛、いわゆるロリコンは犯罪なのでしょうか?大人の人間を愛せないのは果たして悪なのでしょうか。そういうあなたはロリコンという高い高い壁を抱えた人生を送ったことがあるでしょうか。
それでもわたしはあなたといたい。
わたしが傍にいたいあなたとは、、わたしが9歳の時、2ヶ月間も見ていた長い長い夢の中にいたあなただったのです。
新しい人間関係を美しく描いた傑作小説です。
2人の未来に幸あれ。
Posted by ブクログ
凪良ゆうさんの作品を初めて読みましたが、一発でファンになりました。一文一文が比較的短く、主人公の呟きを聞いているような感じ。読みやすくて自分の中にスッと入ってきました。
特に私が好きなのは最初の方の、更紗の幼少時代のシーン。周りから見たら「変わってる家族」だけど、そんなことを気にせず幸せに暮らしている様子がとてもいい。あと、子供特有の全知全能感を感じられる文章も好き。少し尊大で、でも大人から見たらまだまだ幼くて可愛らしい。そんな子供の目線で描かれる文章が大好きで、それを目一杯感じられた。
読みながら、将来何度も読み直すんだろうなと思った。傑作。
Posted by ブクログ
よすぎる。
この本を読んでから、他人に優しい言葉をかける前にためらうようになった。
事実と真実が、私には見えていないのでは、と考えることが増えた。
自分の価値観に、生活の中に、じわじわ影響が及んでいる。
自分の中に新しい感覚を増やすことができた。しかも読んでいて面白いなんて、最高の本。
Posted by ブクログ
さらっと手に取った小説にまたもややられる。凪良さんの小説は、メンタルが整った時にしか読めないからタイミングを見計らうのだが、やってしまった。"事実と真実は違う" 自分が見たものが本当に真実とは限らないからこそ、自分の普通を相手に押し付けてはいけない。それは分かってる。ただその押し付けかたが、"優しさ"として気付かぬうちに誰かへの刃にはなっていないだろうか。怖い。そういえば、私がふいに嫌悪感を抱く時も、そういった優しさのフリをした事実だけを救ったものだったりする。
普通に一個だけ言わせて欲しい。更紗はもうちょいはやめに真実を話していたら何か変わっていた気がする。事実に押しつぶされて、自分の中の真実を曲げることは私もしたくない。
Posted by ブクログ
事実と真実は違う。そのことをぼくという当事者以外でわかってくれる人がふたりもいる。
文の言葉にもあったように、世の中が事実としていることでももしかしたら真実ではないのかもなと考えさせられた。
今の時代、人からの評価は避けても通れないもので、図らずとも気にしてしまうけど、自分らしく生きれたらいいな、と思った。
登場人物のセリフひとつひとつが心に残っていて大好きな小説です!
Posted by ブクログ
大事なものは目に見えないし、真実は1つじゃない。分かってもらえなくていい、でも誰かに認めてもらいたい、何かを信じたい、拠り所が欲しい
人間ってそういう生き物だよなぁ。
Posted by ブクログ
究極の生きづらさを抱えた二人の物語。
誰からも理解されない辛さ、誰にも守ってもらえない子ども時代。
世間は何て身勝手に、見せかけの優しさと中途半端な正義感を押し付けてくるものなんだろうか?
自分の行いが善意であり、正しいと疑いもしない。
こんなにも心抉られるのに、スラスラと読み進められるのは、著者の文章にリアリティが含まれているからか。
読後に、この二人に永遠の安住の地が訪れますようにと願ってしまう。
Posted by ブクログ
経験上、社会は時に思ったよりも優しくて、手を差し伸べてくれる人も仕組みも実はたくさんあるものです。
しかし本作の更紗ほどではなくても、「そんなところに手を出されても自分の手は届かない」という思いをした人は私を含め多いのではないかと思います。
その手の持ち主は自分のことを思ってくれている。完全に善意に基づく行動だ。その想いが分かれば分かるほど絶望感も深くなる。その辛さと言ったら…もう体験したくないですね。
本作の登場人物のひとりは、私にある人を思い起こさせます。
私が手を差し伸べたかった人。
私が手を差し伸べられなかった人。
自分の手が届くか分からなくても、奇跡に賭けたかった。
その人が今どこで何をしているかは分かりません。それでも願わくば幸せに暮らしていて欲しい。更紗にとっての文の、文にとっての更紗の手のような存在に出会えていて欲しいと祈らずにいられません。
Posted by ブクログ
この本に出会ったのは3ヶ月も前だけど未だに内容を鮮明に覚えてます。人によって幸せは違い価値観も異なっていて、それが周りに理解されないのが苦しくて辛くて私も似たような経験をした事があるからこそ登場人物の気持ちがよく分かりました。
決してハッピーエンドとかそういう物語じゃないけどこの本に出会えて良かったと初めて心から思える本でした。
Posted by ブクログ
人から見える真実と本物の真実の違いが苦しかった。
いろんな愛の形があるんだなと思った、
この著者の本を読むといつも、苦しい経験をしたからこそ本物の愛に出会えるのかなとも思う。
見えているものだけが真実じゃない。
目に見えるものだけで、誰かを理解したつもりになってはいけないなと思わされた1冊。
Posted by ブクログ
テーマがはっきりとしていて、且つ描写力も高く作品の世界に引き込まれてあっという間に読み終わってしまった。事実と真実との間の葛藤を割とメジャーなシチュエーションの、誘拐犯との恋愛(作品を読むと果たして恋と言えるのか?とはなるが確実に愛であったとは思う)を通じてしっかりと描いていて、実力をひしひしと感じた。大人とは何か、大人になっても人は成長すること、自由とは何か、正義の行き違いと優しさ。そしてデジタルタトゥーやインターネットの普及による人間の醜い部分の露呈。メインテーマ以外にも普遍的な葛藤に対する描写が多々あり、ただ大衆小説として片付けることはできないとも思った。
タイトルもとても良い。『流浪の月』。物語の最後2人は文字通り流浪しながら暮らしていく。物理的には流浪しているが、2人の心の中では互いの側こそが居場所だと分かっている。ここにも事実と真実とのギャップが表されているのではと思う。そして月、月は新月から満月へ何度でもサイクルを繰り返す。それはいつまでも何度でも2人が新たな人生を始めるメタファーかもしれない。そして月の模様は国によって見え方が変わる。うさぎだったりカニだったりに。月が輝いているという事実に、さまざまな見え方、つまり真実がある。これもこの文章のテーマである事実と真実を表しているのではないか。
Posted by ブクログ
小説を自分の意思で買ったのはいつ振りだろうか。家にある小説を消費するばかりで、気づけば自分が読みたい小説を買ったことはほぼなかった。
この小説は映画をきっかけに知った。読んだ後、フィルマークスを見返したら、「原作を読んでから観なかったのちょっとミス」「種田陽平」とレビューしていた。すっかり忘れていたが、過去の自分もこの小説を読みたいと思っていたのだった。種田陽平は、私の好きな美術監督であったためメモしたまでだ(映画『思い出のマーニー』の美術も担当している。)
映画を観ていたため、小説を読んでいても頭に映像が流れる。映画の中の文は、細く力がなさそうで、どちらかと言えば色黒であった気がする。小説を通して想像する文は、映画よりももっと色白で、すらっとした人物だったが、映画に登場する文も小説通り表情の変化が少なく弱々しい点、適役だったように思う。
男と女であるものの、「恋愛」では括れない二人。いわゆる「普通」ではない二人だが、案外、そんな人は沢山いるのだということ。この小説は、そんな人たちの救いになるのではないだろうか。
以下、印象に残った箇所。
・今すぐ九歳に戻りたい。文の望む姿になって、文がしたいことを全部一緒にしたい。くちづけたいなら、すればいい。身体にさわりたいなら、さわればいい。抱きたいなら、抱けばいい。
わたしはそれらが好きではないけれど、文がしたいなら喜んですべてを捧げる。恋でも愛でも快楽でもなく、それでもわたしはそれを行えるはずだ。わたしが心地よく感じるものは、肉体から遠く離れた場所に置かれていて、文だけがそこに触れてくれるのだから。(p225)
・「そうだよ。でも、やっぱり、ひとりは怖いから」
ひどく素直な告白だった。ひとりのほうがずっと楽に生きられる。それでも、やっぱりひとりは怖い。神さまはどうしてわたしたちをこんなふうに作ったんだろう。(p252)
・物怖じしない手間のかからない子に見えるけれど、そうではない。この子は、つらいことをつらいと言えないだけだ。(p254)
・『流浪の月』においてフォーカスされた言葉は、優しさだ。優しさは、人間関係を営むうえで重要な感情だ。しかし「普通」を自任する人々の多くは、まさにその優しさ、善意や良心、道徳心から「よかれと思って」、自分の目から「普通」ではないと思われる人々に対し、「普通」を突き付ける。それは刃であり暴力であって、突き付ける側は相手を殺める危険性を秘めていることに気付いていない。(p352)
・〈白く味気ない廊下を歩きながら、目に見えなくて、どこにあるかもわからなくて、自分でもどうしようもない場所についた傷の治し方を考えた。まったく痛まない日もあれば、うずくまりたいほど痛い日もある。痛みに振り回されて、うまくいっていたことまで駄目になる。/唯一の救いは、そんな人は結構いるということだ。口にも態度にも出さないだけで、吹きさらしのまま雨も風も日照りも身に受けて、それでもまだしばらくは大丈夫だろうと、確証もなくぼんやりと自分を励まして生きている、そんな人があちこちにひそんでいると思う〉
人は誰もが何かしらの秘密を抱えて生きている。「普通」じゃないのは、自分だけじゃない。そう思えば、自分の手にした「命綱」を握る力がかすかに強まるはずだ。その感触を他者もきっと感じているはずだと思う時、本当の優しさが生まれる。(p355)
人はみな弱さを抱えて生きている
めちゃくちゃ情景が思い浮かぶいい表現をするんだけどそのせいでものすごく心の内側に感情や心象風景が入り込んでくる
だからかなりしんどい気持ちとめちゃくちゃ羨ましいなという気持ちになった心に残る1冊
考えさせられる
実際に自分を投影できるような内容では無いが、人間関係、大切にしたい人、その人にとって本当に良い対応をできているのか、幸せとはということを再度考えさせられた。LGBTQについても自分には関係ないからと思っていたがこれからの人間関係において少し考えてみようと思った。
Posted by ブクログ
一気読み。すごく好きだ〜。しかも読みやすい。
自分の認識と他人の認識は異なるし、きっと完全にわかってもらうなんて難しい。周りから見えておかしなことでも、当人にとってはそうでもなかったりする。この頃よく考える“常識”とか“普通”って何だろうということ。そんなのその人の主観だよね。どうしたって人は見たいように見るし、きっと気をつけているつもりでいても自分だって同じことをしていると思う。
複雑な関係性だけどたしかな絆があって、それは共有した時間や思い、救われたという感情が生んだものなんだろうな。
事実とは
凪良ゆうさんの作品は初読。更紗や文の気持ちや言葉が丁寧に書かれていて、繊細さとか、儚さをすごく身近に感じた。映画公開時に簡単なあらすじは知っていた。読もうがどうか迷っていたが、読んでよかった。事実を知ってどうなるのか?それを伝える意味はあるのか?色々、考えさせられた。
深い
読んで良かった。
当事者にしか分からない真実が、上手く伝わらなく、真実ではない事が事実として広まっていく辛さが読んでて少し苦しかった。
最高でした…!
凪良ゆう先生は美しい彼きっかけで読み始めるようになったのですが、この本もめちゃくちゃ良かったです。本当にこの作者の本はハズレがないです。更紗と文の物語が実際に身近で起きているかのように感じられ、何度も感情移入し、感情を揺さぶられました。紡がれていく文章がとても美しく、読んでから一日だった今でも、いくつか好きな文章を思い出せるほどです。非BLで激しい内容も少ないため、他人に気兼ねなくおすすめしやすいところも良いです。
一人一人の荷物
「彼女の話Ⅱ」、「彼の話Ⅰ」までを
一気に読んだ。
こういうことかと思った。
私たち人間は一人一人が自分にしか
上手く扱えない荷物を持っている。
自分の弱さが相手を傷つける。
だが、そうそう荷物に見合った力が
与えられる、あるいは力があることに
気づけるものでもない。
この話には、一番意地悪なめぐり合わせがある。
でも、一面では最上の相手に会ったともいえる。
結末は明日読もう。
更紗の思いや事件の真実が、世の中に受け入れられず違った解釈のままである事に対してもどかしさを感じると同時に、これが現実なんだというやりきれない思いで複雑な心境になった。
そんな事件を経験した後で、共に生きて行くという選択をした2人を誇りに思う。
堂々と生きていって欲しいと願う。
良い作品と出会えました
真実を聞いてくれる誰かが現れないか、この2人が自分らしく生きることは許されないのか、読みながらとにかくもどかしくて苦しい気持ちでした。自身の物事の見方や考え方、受け取り方を考えさせられる場面が幾度もあり、また、言葉選びに良い意味で何度も衝撃を受け、読了後は何とも言い難い気持ちになりました。良い作品に出会えました。
せつないけど優しい
優しかった世界に、近づいてきた黒いもの。そこから逃れようとしても落ちていく闇。ただ静かな場所に居たかっただけなのに許されなくて壊される。
最後に辿り着いた場所はいつまで優しく静かにいられるのだろう。
そんなことをしみじみおもいました。
流浪の月
文と更紗、お互いが支えとなり生きてこれた事、2人の思いが同じだった時、ホッとし泣きそうになった。世間の目は辛いものだったけど。
読み終わるのがもったいなくて途中で読むスピードをゆっくりにした。凪良ゆうさんの他の作品も読んでみようと思う。久々にハマった作品でした。
Posted by ブクログ
誰か一人でも、理解し合い寄り添う人がいれば、深い安心と希望を持つことができる。世間に勘違いされてかわいそうな2人の話が続いて辛いが、最後は救われる終わり方。
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Audibleにて。
世間の正しさや可哀想という押し付けが、どれほど当事者を追い詰めるか。読んでいる最中は、正直怖ろしく、胸が苦しくなったけれど、読み終えた今は不思議とあたたかく、すっきりした気持ちになった。
Posted by ブクログ
「事実と真実は違う」
当たり前のことで、理解してるつもりだけど人は自分が知った情報で勝手に想像して話を作り上げる。
この作品では、当事者しか分かり得ないことを他人が言いたい放題言っていいことはないと改めて感じさせてくれた。
Posted by ブクログ
自分にとっての常識は、他人にとっての常識ではない。自分の軸を持つことは大事だけど、それを他人に押し付けるべきではない。当事者にしか分からないことだってある。本を読むことで色々な価値観を知れて楽しい。
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幼少期に性的虐待を受け、家出した更紗と、彼女を匿ったことで誘拐犯とされてしまった文の物語。
事実が捻じ曲げられて世間から後ろ指をさされるところは『俺ではない炎上』にも似たところを感じました。でも本作は被害者を守りたい、正しいことをしたい、困っている人を助けたいという気持ちが、当事者の現実を見えなくしており、より根が深い感じがします。悪意による攻撃なら、少なくとも「攻撃している人が悪い」という構図を作ることができますが、善意による介入の場合、介入する側は自分を加害者だとは思っていません。自分は正しいことをしていると信じているからこそ、相手が苦しんでいると訴えても、その言葉を受け入れにくい。僕たちは小さいころから困っている人を助けるべきという教育を受けているので、こうした問題は起こりやすい構造になっていると思います。
この物語は当事者の視点で描かれているから、人々の優しさがお節介だということがわかるのだけど、現実は当事者の心の内が見えないから、自分の経験に当てはめて想像して他人をわかった気になってしまいがちになる。一番気を付けたい部分ですね。
たとえば異性同士が恋愛感情一切なく一緒にいたいと思うことについてはにわかに信じがたい気持ちはあるけれど、そう考えてしまうところが偏見とか事実の捻じ曲げにつながってしまうんだろうなと。
たとえ理解できなかったとしても相手が大切にしているものを尊重する。
世間と彼らとの間に地球と月ほどの隔たりがあったとしても、決してその距離を縮める事だけが正解じゃない。せめて自由に流浪することに幸せを見いだせる彼らが非難されない世の中であってほしいと願います。
重く苦しいテーマでしたが、時間を忘れてのめり込める作品でした。
Posted by ブクログ
『流浪の月』 凪良ゆう
以前から読んでみたいと思っていた作品。凪良ゆうさんの小説を読むのは今回が初めてだった。
まず惹かれたのが、文章の表現。感情や情景の描写がとても詩的で、どこかヘルマン・ヘッセを彷彿とさせるような感覚があった。こういう表現はかなり好きだなと思った。
特に印象に残っているのが、文と再会した更紗が、文は自分のことを覚えているのだろうかと考える場面。
目の前には池があり、水面が午後の光を反射して光っている。人の気配や笑い声、風が吹いて頭上で葉が擦れる音。音は溢れているのに静かだった。
周囲には人もいて、音も聞こえている。それなのに、自分の内面に入り込んでいるせいで、外の世界が遠く感じられる。自分の主観的な世界と、周囲に広がる世界。その対比を表現する言葉がとても印象的だった。
愛についての言葉も心に残った。
世の中に本物の愛なんてどれくらいあるのだろう。よく似ていても、少し違うもののほうが多いのではないか。それでも、自分が手にしたものを愛だと定め、そこに向き合おうと決める。それが結婚なのだという考え方。
人は本物の愛を求めるけれど、理想どおりの関係がそう簡単に見つかるわけではない。理想を追い求めるあまり、目の前にある関係を受け入れられなくなることもあるのかもしれない。そんなことを考えさせられた。
もうひとつ印象に残ったのが、バイト先の店長との関係。店長は優しい人で、更紗にも親切に接してくれる。それでも、優しくしてくれることと、本当の意味で分かり合えることは違う。優しい人と一緒にいても、埋められない溝がある。そのことに悲観するような描写も印象的だった。
そして、この作品を読んで考えたのが、世間が人間を理解しようとするときの難しさ。
文と更紗の関係を、世間は「被害者」と「加害者」という枠組みで捉えようとする。文は小児性愛者だと決めつけられ、更紗の気持ちもストックホルム症候群という言葉で説明される。
世間は、自分たちが理解しやすい言葉や概念に当てはめることで、人間の関係を理解しようとする。でも、実際の二人の関係や、それぞれが抱えている感情は、そうした言葉だけでは説明できない。
もちろん、私たちが他人を理解するときに、既存の言葉や概念を使うこと自体は自然なことだと思う。一人一人の内面に深く向き合い、その人が何を考え、何を感じているのかを理解するには、時間も労力もかかる。だからこそ、分かりやすい言葉に当てはめて理解しようとしてしまう。
ただ、言葉によって理解したつもりになっていても、実際にはその人のことを何も分かっていない可能性もある。
このあたりは、以前読んだリチャード・ローティの哲学ともつながる部分があると感じた。私たちは言葉を使って世界を認識するけれど、その言葉が必ずしも目の前の現実を正確に表しているとは限らない。
世間に理解されなくても、更紗と文はお互いの存在によって救われている。二人が分かり合えているのなら、それでいいのではないかと思う。
ただ、社会の中で生きていく以上、周囲に理解されないことの苦しさは残る。二人の間では理解し合えていても、社会はそう簡単には受け入れてくれない。その切なさも、この作品の印象的なところだった。
人間を理解するために言葉は必要だけれど、言葉だけですべてを理解できるわけではない。そんなことを考えさせられた作品だった。
Posted by ブクログ
真実と事実は違う。周囲から見れば歪な関係だとしても当事者にしかわからないことだってある。第三者の目で判断した物を正当化される恐ろしさを感じた。また、他人の価値観だけでは測れない複雑な人間関係の難しさが印象に残る話だなと思った。全体的に重い話だが、心理描写が上手で読みやすかった。誰にどう言われるかより自分の信じたい道を歩いていきたいなと思った。自分にとっての命綱になるぐらい大事にしていた人や記憶がある人はぜひ読んでほしい。
Posted by ブクログ
親切という名の、お節介
心配という名の、束縛
憐憫という名の、軽蔑
ざっくばらんという名の、無神経
更紗は、もともと亮には惚れてなかったのだ。
亮は、日本語のチョイスが絶望的に下手だ。
私もあのような言葉を使う人は苦手だ。
しかし亮の言いたいことはわかる。
深掘りして解釈すると、言葉が微妙にずれているのだ。
一方で、文の受け答え、いいよなあ。
亮の不器用な愛情表現の言葉尻をあげつらい、
いちいち反応する更紗。そこに反応してしまうなら、もうダメだろうと思った。
亮を人生の伴侶として生きていく覚悟があるなら、許容できたであろう。
暴力さえなければね。どんなに更紗が大事でも決して許されることではない。
児童相談所でのやりとりや、警察とのやりとりで、真実を明かすためには大切なことを言わなければならない。それを言えない更紗にどうしょうもなく歯痒さを感じた。
特に、成人してからの亮がらみの警察沙汰では「どうして言わないの?」と腹正しかった。言わない理由。それは優しさとは違う。何か自信のなさや自己肯定感の無さからくるものだと感じる。
多数派からはみ出ている人に対して、多数派が「これが普通」と思い込んで投げかける言葉。
多数派とそうじゃないこの話の登場人物たち。その対比が際立っていた。著者さんのこだわりなのかと思った。
Posted by ブクログ
定番の展開なのかなと思っていたが、文とサキの2人のエピソードだけではなく、文の恋人やサキの恋人、その他大勢の一般論も2人の関係に大きく関わっており、面白かった。2人の気持ちがつながっていて、その世界さえあれば、それで充分であるという、理想系の形に落ち着いていて羨ましい。朝井リョウの正欲もその系統であったが、正欲とは違い、理性的に繋がったというより、深い心の部分で繋がっている感じが凪良ゆうっぽくて好きだった。
Posted by ブクログ
『せっかくの善意を、わたしは捨てていく。
そんなものでは、わたしはかけらも救われない』
幼い頃に傷ついた経験がある人たちにとって、安全に退行できるというのは、回復における大きなステップであるということが、とある精神科医の先生の著作の冒頭で紹介されていた。
退行と呼ぶのかどうかはわからないけど、主人公の二人が二人にしかわからない秘密を共有したのも、回復につながっていると思う。
秘密には官能的な響きが伴う。
時として癒しにも官能的なものがあるのだと、性的な描写はほぼない本書に、そう感じた。
それは私が成人しているからなのかもしれない。
Posted by ブクログ
二人とも心に孤独を抱えていたが、最終的にお互いがお互いの心の居場所になれたのは良かった。
真実は事実ではない。真実は当事者にしか分からない。 だから大事なものは目でみえないものだなって心から思えた。
Posted by ブクログ
自分が見ているものだけが確かではないということは頭では理解しているようで、みんなできていないのかなと思った。親切や優しさから来ている言動も全てはそんなフィルターがかかって自分の解釈でしかなく、当事者の本当の気持ちを理解しようとしなければいけないと思った。
しんどい描写もあるのだけれど。
とても滑らかな文体で、また表現される心の細かな描写に引き込まれる。こんなふうに表現できたら、この気持ちの表現を知っていたら、もっと相手に優しくなれたかもしれない。自分にも。言葉で人を傷つけることは少なくなるのかもしれない。。。そう思った。心配して声をかけることも、無神経にしないかもしれない。事実と真実は違う。私を取り巻くニュースや出来事をそのまま受け取ることを躊躇してしまいそうだ。でもそういう人が増えたら、心無い振る舞いや発言、言葉ははもっと減るかもしれない。読んでいてしんどい描写もあるのだけれど、読み終わって少し優しい気持ちになれた気がする。
映画を先に観ました。
映画で理解できなかったところなどの答え合わせがしたくてこちらを読むことにしました。私の中では映画より活字でのこちらが深く心に刺さりました。
良作です
現実に対するもどかしさは残るものの、そこはリアリティーとして受け入れれば良作だと思います。
でも思う。
「それでは世界はあまりに救いがないではないかと」
切実な女の子の話を読んで
文章が優しめな表現によって構成されているため非常に読みやすい。主人公の心情描写にも心惹かれるが、彼女を取り巻く人間関係にも注目して欲しい。
居場所
居場所がどこにも無い、二人の物語。心の置き所や平穏な生活を与えられない二人の行き着く先はお互いを理解し、赦しあえばそこが二人にとっての安住の地であり最良の居場所を見つけた二人の物語。
Posted by ブクログ
特殊な嗜好を持つと見なされている男性と彼と関わりを持った複雑な境遇を持つ女性の物語。
社会には物語のテンプレが溢れており、誰しもが他人を理解するために、それを利用していることが描かれていた。他人が作った紋切り型の物語に自身が当てはめられ、苦しんでいた主人公の女性が、自身が大切にしている男性に対して、結局、同じことをしていたという構成が非常に印象に残った。
話は変わるが、誰が悪いとかいう小説ではないと知りつつも、無責任すぎる主人公の母親に大分モヤっとした。。
Posted by ブクログ
『普通』ってなんだろう。守らなければならないルールってなんだろう。
事実と真実との違いは本人たちにしかわからない。
周りの目や迷惑を、気にしないで、(子どもに)好き勝手させている・している親を見ると腹立たしく感じるし、知っている人なら恥ずかしく思う。
でも、『私の普通』と『誰かの普通』は当たり前だけど違うはずで、子どもを無意識に『私の普通』で束縛してしまっているんだろうなぁ。
レールを敷きたいとは少しも思っていないけれど、子どもたちを自由に育てられてはいないんだろうな、と自分の生活や子どもとの接し方を省みるきっかけになった本。
Posted by ブクログ
とても重い話。
いつ救いがあるんだろと思いながら呼んでたらあと10ページになっちゃった
私がこの本で感じ取ったことは、社会のニュースとか、噂とかは全て表面的でその事実を知ることは不可能というか、当事者に何を言われても私たちが大衆の意見に流されて、信じられないんだなと思った
あとは、どんなに辛い状況でも自分のことを信じてくれる人間が1人いるだけで、救われるんだなってこと。
悲しくて切ないが、すがすがしい
かなり特殊なシチュエーションだが、15年後のいろんな展開の中にあっても、更紗のフェアな考え方がすばらしい。
匿名
本屋大賞だから買ってみたけど
私は夢中になって読むことはできなかった。途中で真面目に読むのをやめた。登場人物の行動や思考の流れに共感することはできずなんでそうなるの?と疑問が湧いた。思ってたのと違う方向に進んでいく物語は読むことに疲れた。多数派の感想が面白いと支持してる内容なので面白いのだろうと期待していたが勢いで購入して後悔を感じ泣きたい気持ちになった。私は少数派の読者だった模様。本屋大賞が面白い本ではなく売りたい本を推すということであればこれを売りたいという事なんだろう。今後本を選ぶ時は受賞作品よりも自分の信用に値する人の声を参考にしようと思う。この作品がつまらない訳ではなく自分には合わなかった。それだけです。人にはオススメしない泣ける作品