角田光代のレビュー一覧

  • トリップ

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    10篇のそれぞれの登場人物は、
    それぞれの居場所にずっと違和感を持っている。
    こんなはずじゃなかった。
    でも、あっという間にここまで来てしまった。
    そもそも、自分にここ以外の選択肢なんて
    なんにもなかったんじゃないか。

    こないだ読んだ荻原浩さんの「あの日にドライブ」では
    主人公は銀行を不本意に辞めて、
    タクシー運転手になった。
    あの人も、こんなはずじゃなかったと思いながら、
    最後にはこの場所で頑張ろう、と希望の兆しを見せて終わった。

    トリップの登場人物には、そんな希望はない。
    長く長く続く絶望。
    でも、現実はこんなものじゃないだろうか。
    絶望の中で希望を見いだせる人は、たくましいけれど。

    短編集 10篇
    光文社文庫 270ページ

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    2025年10月25日
  • なくしたものたちの国

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    すごく好き。
    「どんなこともいつか懐かしくなる日がくるわ」
    なんだか泣きたくなって、そんな気持ちになる自分が嬉しい。
    絶対また時間をおいて読み返す。



    超弩級の恋は足りないから超弩級になるんだと思う
    自分が好きだと思うのと同じだけを、相手がかえしてくれなくて、あるいはかえしてくれているようには思えなくて、それで、どんどんどんどん、好きが吸い取られていって、きづいたらとんでもないくらいの好きになっているんじゃないかな

    なくしたものばかりだ、と、二袋目の写真を見ながら、わたしは思う。落としてしまったもの、なくしてしまったもの、置き忘れてしまったもの、いなくなってしまったもの。写真はそれらで満ちている。
    ここで笑っている友だちと、連絡が途絶えたのはいつだろう?
    あんなに大事にしていたこのピアスを、どこで落としたんだっけ?

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    2025年10月23日
  • ゆうべの食卓

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    『食』にまつわる思い出って人それぞれ何かしらのエピソードがあるよなぁ。
    カタチあるものはいつか手放なくてはならない日が来るけれど、思い出はずっと心の中で生き続ける。
    イオクサツキさんの挿絵も素敵だった。

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    2025年10月19日
  • ご本、出しときますね?

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    BSジャパンのテレビ番組の書籍化。オードリー若林さんがMCする番組が好きな自分にとっては、読み進めてると声が聞こえてきそうな錯覚に陥った。作家の知らない一面が見えてとてもおもしろかった!読んだ章の中では村田沙耶香さんの変人度が群を抜いていた笑

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    2025年10月15日
  • ドラママチ

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    待つ立場、待つ環境、待つ時期。
    生きてる間に待つ瞬間は沢山あると思うけれど、私やっぱり動いていたい。それでもやる気が出ないとき、動きマチなり。

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    2025年10月15日
  • 銀の夜

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    キラキラした時代を引きずりながら、30代の今を悶々と生きる3人の女性たち。
    仲良し3人組のはずだけど、みんなそれぞれ他人に対する思いがあって、3人それぞれの思いも分かって(読んでると)、それがすごくいいなと思った。
    3人とも流されながら、時に無茶苦茶に生きてるんだけど、最後の最後で言葉を超えたところで分かってしまうのが良いよね。
    三者三様の生き方や思っていることに、ああ、これは小説でしか描けないよなぁと思いながら、一気に読んだ。

    あとがきに、これはずっと忘れられていた小説で、時が経ってしまってもう自分には直せないと思ったと書いていた作者に好感を持った。
    自分には、キャラクターが自由に動いたという経験がない、いつも悩みながらどうにか動かしている、と書いていた作者も好きになった。

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    2025年10月06日
  • 今日も一日きみを見てた

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    「明日も一日きみを見てる」の前作ということで、トトちゃんとの出会いからチビちゃんの時代のエピソード。

    特に印象的だったのは、トトちゃんと出会う前と後で自分が変わったというエピソード。私も愛猫を迎えてから同じような変化を実感しているので、とても共感できる内容だった。

    「猫は、全世界の猫となるのである。ノンフィクションの現在ばかりではなく、過去未来フィクションまで含む、全世界だ。一匹の猫によって、私たちは、全世界の猫の幸福を祈るに至る。たかだか一匹の猫なのに、その威力は、ものすごいのだなあとあらためて思う。」
    まさにその通りで、一匹の愛猫を慈しむ気持ちが、いつの間にか世界中の猫たちへの深い愛情へと広がっていく感覚は、飼い主なら誰もが経験することではないだろうか。
    私も愛猫に「うちにきてくれてありがとう。私に会ってくれて、ありがとう。」と声を大にして伝えたい。

    猫との出会いがもたらす人生の豊かさと、その存在がどれほど大きな影響を与えるかを改めて感じさせてくれる、温かい一冊でした。

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    2025年10月04日
  • ツリーハウス

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    今のZ世代は何不自由なく生活出来ている人が多いように感じる。その何気ない生活が、どんな想いで紡がれてきたものか垣間見ることができた。正直、先祖にたいしてなんとなくの敬いはあったが、具体的に敬うことはしていなかった。今の幸せを作ってくれた先祖、そして両親にもっと感謝して過ごしていきたい。

    また、逃げることの大切について。
    そのときは確かに恥ずかしさを伴う行為かもしれない。しかし、疑問を感じることに対して命がなくなるまで戦い続けるのもどうかと思う。だから、一旦逃げ、そして未来を頑張って生きて、逃げた過去に意味を持たせる。そうすることが重要なのかな。

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    2025年09月30日
  • タラント

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    撚り合わせた糸のような作品だと思った。

    みのりの現在、みのりの学生時代、清美の話、それぞれが層のように重なるのではなく、糸のように撚り合わさって最後のシーンに集約されていったと思う。

    すべての描写に無駄がなくて圧倒された。
    小説にここまで付箋付けて読んだのははじめてで、とにかく「ここ、覚えておきたい」「このシーンも後で読み返したい」のオンパレードだった。
    それは、私がみのりのように「何かしたほうがいいとは思ってるけど、なにもできない」と感じているからかもしれない。

    世界はきれいでもなければ、絶対的な正義も存在しない。目を背けたくなる現実ばかりだし、知らない方がよかったとも思うことがあふれてる。
    でも、それでも「なにかしなきゃ」って気持ちが持てるのが人間の希望だなって思う。

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    2025年09月29日
  • タラント

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    とても感動した。読み進むうちにも感動する。
    満員電車の中で大声で慟哭しそうになる。
    タイトルからして聖書にまつわる話、
    才能というかギフトの話?
    かと思っていたが、案の定その話なんだけど
    それだけじゃない、人間の想い、気持ちに通底する何かに
    触れている気がする
    そういう意味で、まさにバイブル。

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    2025年09月26日
  • 韓国ドラマ沼にハマってみたら

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    角田さんもコロナのパンデミックで韓流ドラマにハマったのかとまず嬉しくなる。そして、ネタバレは嫌なので、私も見たドラマの感想を書いている項を読んでいくと、自分では到底言語化できない感覚を見事に文章化していて流石ですっ角田さんっっと握手したくなる。特に、韓国ドラマにどハマりするきっかけとなった「マイ・ディア・ミスター」の良さを、項をまたいで高らかに述べ、ひいては、イ・ソンギュンの死が悲しすぎて、多分もう見返すことはできない、と語っているところに共感を覚え、角田さんついて行きますっ!と誓ったことでした。

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    2025年09月25日
  • Presents

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    親友が貸してくれた本です。
    すごい泣いた!
    どの話も宝物のように心に響いた。
    絵も紙質も素晴らしいし、
    もう一度自分でも買い直そ。

    今まで色んなプレゼントを私はもらってきたなって思い出したああああ!光代ねえさんの文章とか表現は本当に圧巻させられる。


    名刺にしたい本リストにランクイン。

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    2025年09月22日
  • 世界中で迷子になって

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    旅行に飛び回る理由にとても共感できる。
    物に関するエッセイは、角田さんの少しケチな感覚が似ていてめちゃくちゃ刺さる。形から入るところ、長く使える良い物を選ぶか、一回くらいしか使わないから適当な物を選ぶかの葛藤があるのも、すごく共感。何回でも読み返したい、

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    2025年09月21日
  • 森に眠る魚

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    ネタバレ

    面白かった〜!!徐々に5人の関係性が壊れていく感じがとてもゾクゾクしました。そのゾクゾクが朝比奈さんの解説で的確に言語化されていたのがすごくよかったです。
    最終章の手前の章は、読み始めた時は特定の誰かを指しているのかと思っていましたが読み進めるうちにそうでないことに気づいてうわ〜〜ってなりました^^
    解説の『描かれなさこそがこの世界における「母親」の存在の仕方であり』の部分が特に印象に残りました。

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    2025年09月15日
  • わたしの容れもの

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    年をとると、こんなことが起こるんだ、って思った。今は思春期で自分の見た目に納得いかないことがたくさんあるけど、ある程度の年に行くと、自分の容れ物を大切にしてあげることが大事なんだなと実感。自分の体を大事にしたい!

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    2025年09月08日
  • ツリーハウス

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    「帰りたいよぅ」
    祖父が死んだあと、祖母が子供のような声で言った。ここから、中華料理店を営む親子三代の“根っこ”を探す旅が始まる。

    祖父母は自分が生まれた時から“おじいちゃん、おばあちゃん”であり、両親は“父さん母さん”で、性の意識すら無い。
    でも、間違いなく男女であり、自分と同じ年齢を経て今に至る。

    人生は“簡易宿泊所”のようだ。
    なぜここにいるのか、いつまでいるのか、ここを出てどこへいくのか……

    「だってあんた、もし、なんてないんだよ。後悔したってそれ以外にないんだよ、なにも……」
    その言葉は妙に重い。

    「翡翠飯店」は世紀を超えて紡いでいく。
    根など無くても紡ぎ続けることはできる。

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    2025年09月02日
  • 坂の途中の家

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    親子や夫婦間でさりげなく相手をコントロールしようとする姿がリアル。
    これはもっと幅広く色々な人間関係で行われている気がする。
    それが恐ろしくて絶望的な気持ちだったので、電車内の迷惑カップルに励まされた。

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    2025年09月01日
  • しあわせのねだん

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    角田光代さんの(ご本人曰く)家計簿エッセイ。
    どれも面白かったけれども、最後の2つの章「記憶」「一日」が印象的だった。
    親と子の役回りは年を追うごとに交代、若しくは受け継がれていくものだし、二十代でお金を使ったもので三十代の自分は形成されていると感じる。今の時代、貯蓄に目が向きがちだけどこれからも興味のあることにもお金を使っていきたい。
    (併せて20年前のエッセイなので、今との物価の違いをひしひしと感じた……)

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    2025年08月29日
  • 私はあなたの記憶のなかに

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    「今、ひとりだとしても、あるいはだれかを失ったとしても、ぼくらの抱えた記憶は決してぼくらをひとりにすることがない。」
    今は孤独でもきっと大丈夫、生きていけると思える本だった。私はおぼろげな記憶の中のあたたかなひとたちのおかげで生きていける。

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    2025年08月12日
  • 異性

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    角田さんも穂村さんも大好きで興味を持った本。
    角田さんは女性として、穂村さんは男性としての意見を交互にやりとりして進んでいく。
    こういう女性が多いかもしれないけど自分は違うとか、もてる男性はこうだが自分にはできないとかいう話題も出てきて、男女の違いを紐解くという面白さももちろんあるけど、ただ角田さんと穂村さんが恋愛観について意見を交わし合うという意味でもすごく興味深かった。

    特に印象に残ったのは次の二つ。

    一つ目は、「もてる」というのは対人的な「スペース」、つまり「隙」が関係しているのでは?という考察。

    隙、確かに大事だよなぁ、わかるわかる。
    学生の頃からもてるのは、狙った獲物は逃さないようなギラついている子より、「なぜか可愛く生まれちゃったの」と言わんばかりに無垢を武器にしている子だった。
    男子の場合は、「もてたい」を全面に出してもてる子もいたけど、それは自分の欲を露わにして腹を見せることで生まれるオモシロ系の隙によってもてていたんだと思う。

    以前穂村さんの作品を読んで、「穂村さんって年を重ねるごとにもてる気がする」みたいな感想を書いたのだけど、それも完全に「隙」だ。
    もてたい!という必死感が年を重ねるごとに薄れていって、いざ好かれると、こんな自分の何が良いの?って不安に感じてしまいそうな穂村さんってめちゃくちゃ隙がある。好き。笑


    二つ目は角田さんの「自分をふった恋人が別れた後、幸せになって欲しいか、不幸になって欲しいか」という話。
    角田さんは不幸になって欲しいと思ってしまうという話から、以下の文章が続く。

    『私にとって、小説を書かせている部分と、その、ふった恋人の不幸を願う部分は、かかわり合っているというだけのことだ。自分でもうまく説明できないのだが、私が小説を書こうと思い、書き続け、なお書きたいと願う、その核の部分は、きらきらしたまぶしい正のものではなくて、黒くてゆがんで湿った負のもの、という気が、どうしてもしてしまうのである。』(p129)

    ここを読んで私はため息をついた。
    私が角田さんの小説を好きな理由がここに全部つまっている気がする。
    角田さんの胸の内に渦巻いている負の部分が原動力になって生み出された小説、そして今後生まれる小説。
    まだ読んでいない作品も含めて、これからたくさん読むことができるって幸せだなぁ。

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    2025年08月10日