あらすじ
風変わりなくまの絵柄の服に身を包む、芸術家気取りの英之。人生最大級の偶然に賭け、憧れのバンドマンに接近したゆりえ。舞台女優の夢を捨て、有望画家との結婚を狙う希麻子。ぱっとしない毎日が一変しそうな期待に、彼らはさっそく、身近な恋を整理しはじめるが……。ふる/ふられる、でつながる男女の輪に、学生以上・社会人未満の揺れる心を映した共感度抜群の「ふられ」小説。
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Posted by ブクログ
恋愛って他者への執着と願望の押し付けなような気もしていたけど、最初と最後に出てきた苑子を見て、少し印象が変わった。
キャリアも収入も人生になんも関係がないと言い切れる境地には、自分は至れない気がする。
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登場人物が人生の節々で必要な恋を必死に求める、というところが見どころだと感じた。特にフラれるシーンにおける感情は人間臭く描かれており、感情移入できリアリティがあるという理由から興味深かった。
章を跨いでフル側フラれる側両方の心情が描かれている点も斬新で面白かった。
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恋はそのときに必要だからするもので、辛いけど失恋もそのときに必要だったからするものなんだと思った。
恋は誰かが誰かより優位とかそういうことじゃなくて、そのときの仕事とかいろんなタイミングとか、とにかくその時、その人と接することで得られる何かが必要だからするのかなとおもった。
20代で読んでおくべき1冊だと思う。
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恋人を振った側の人が次の話では振られる側になる、という構成になっていて、最後まで読むと、別れを受け入れて前を向こうという気持ちが湧いてくる短編集です。
角田光代は数々有名な作品がありますが、個人的にはこの「くまちゃん」が一番好きです。
Posted by ブクログ
昔に読んだけど再読。
40代に入り読むとまた違った感想になるな。
短編集なんだけど、みんなが恋をしてそれぞれがフラれちゃう話。
登場人物がみんなつながっていておもしろい。
あとがきの角田さんの言葉で、フラれることは旅を一回するようなことくらいの良さはあると思う、とあって心に響いた。
旅から帰れば以前とは違う場所にいる自分にきづく。
角田さんの的確な言葉にハッとした。
フラれることってありえないくらい悲しくて痛くて辛いのにみんなまた懲りずに恋をする。
全ての失恋を糧にしていけたらそれでいいんだ。
そんな風に思える作品。
Posted by ブクログ
大号泣。良すぎた。
ネットで「失恋した時 小説」で検索して出てきたので読み始めたが(安直すぎて我ながら恥ずかしい)予想してたよりはるかに良かった。
淡々としてるんだけど人を好きになる気持ちとかつらさとかがひしひし伝わってくる静かでやわらかい文体で良すぎた。まったく大げさじゃないのになんでこんなに胸が痛くなるんだろう。
こういう、なんでもないようなことをさらっと上手く書けるのがいかにも文豪って感じする。
だって奇事を派手に書くのなんて簡単だもの。
キャラクターみんなにめちゃくちゃ共感できた。特に「何者かになりたい」「社会で普通の人として生きる流れに取り込まれることへのなんともいえない怖さ」みたいなものを抱えたキャラたち、すごく好きだった。
そのうえでの希麻子と黒田に対する槇人と久信とか、凡人と天才の残酷な対比も良かった。
成功なんてものは目指してどうこうなるものじゃないし、それはそもそも金とか知名度とかそんなものじゃないから、とにかく人間は目の前にある自分の課題を自分で見つけて片付けていくしかないし、いわゆる「成功」なんてその過程で意図せずに、気がついたら手に入れてるものだ……っていう、すごく冷めた天才の考えというか、どうしようもない凡人との器の違いみたいなものが作中で一貫してたと思う。し、それがまた正しいよなぁと思った。
そしてそれをよく理解してた久信が大好きな文太に対しては、成功もなにもわかっちゃいなかった学生の頃に抱いた羨望や尊敬だけを一方的にずっと向け続けちゃってたのがつらいなぁと。
月日が経って何もかも違ってるのに、「その頃」の力関係がずっと続いちゃうことってあると思う。
でももう「自分が好きになったその人」はいない。
結局、成功とか天才とか過去とか未来とか関係なく、人間には今しかない。今やれることをやるしかない。っていう、そこでも一貫した「天才のカラクリ」みたいなものが語られてた。
そして、苑子との語らいによって「自分の天才に対する見解」と「文太に対する変わらぬ期待」との間の齟齬に気がついちゃって、その瞬間に久信の中で昔のままの強い文太はもういなくなってしまって、おまけにそれを文太を奪ったダサい女に指摘されて、そんな色々な気持ちで涙が出たのかな。
希麻子と黒田もそうだと思う。昔の憧れのまま、力関係が変わらないままず〜〜っとその人のことをだらだら思い続けちゃう。
「黒田に勝った」って思うところ泣ける。今までずっと悔しかったんだもんねぇ。最後くらいはね。
いやぁ、つらいなあ。
でも希麻子はパワフルで、なんとなくこれからも大丈夫だよなって思えるラストで良かった。
ユリエも。二人はすごくガッツがある。
こうして書いてても希麻子と黒田、久信と文太の二組が一番刺さったかも。と思う。
乙女相談室も好き。
終わりの場面で、過去に必要としてた人が雑踏に消えていって光が一つ一つ消えていくのが悲しいけど別れってそういうものかと思ってなぜか受け入れられる不思議なラストで好き。
最後の章の主人公だけは前編から引き継がれてなくて、作中ではあくまで漠然とした「別れ」とか「恋愛」とかそういうものに対する彼女たちなりのアンサーが示されてるのは、この物語全体に登場してきた恋愛や別れの意義とか、そこからの立ち直りとかそういう総括みたいなものを小説世界の最後に与えたかったのかなとも。
なんというか、人を愛することへの絶望や悲しみだけでは終わらない感じ。
祝福だと思う。人生とか恋したことへの。
あとがきまで通して読んでそう思った。
なぜかあとがきでボロ泣きした。多分すごくあたたかかったから。
私も才能とか成功とかそういうことに悩まされてて、たぶん希麻子とか黒田側の人間で、ふるかふられるかではふられる側で、っていうか恋人いたことないけど、私これから大丈夫だよねってちょっぴり信じたくなるような切なくもしたたかなラストでめちゃくちゃ良かった。
大好き!
Posted by ブクログ
失恋って文字とは違って失うものも沢山あるけど得るものだって沢山ある。
ゆりえがまさにそうだったように、人を好きになるってことは好きになった人をを自分の理想や憧れってフィルターを通して見ることな気がする。
相手の本質が見えるにつれ自分のイメージとの違いに戸惑ったり、自分が何者にもなれないと藻掻いて焦る中で何者かの枠にしっかり収まってる相手と恋することで自分を落ち着かせたり。
恋は二人で、相手を想いやるものだけど恋ほど人間をわがままに利己的にするものもないな、
けどひとつの恋が終わって時間が経つとその時の景色や記憶が一気にズームアウトして色々なことを考えるきっかけになるだろうし、その中には失恋しなきゃ気づけないことも沢山含まれていると思う。
浮き草の話が一番すき。
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人が振られる、しりとり。
どの人の恋愛にも沢山のストーリーがあって。
でも、別れるたびに傷ついて、何年も引きずることもあるけど、でも、また恋をする。
よかった。
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言葉が刺さる。
成功がどんなものかはよくわからないが、しかし、何かをやりたいと願い、それが実現するときというのは、不思議なくらい他人が気にならない………
この部分、すごく痛いけど、すごく好き。
人のことをあれこれ言ったり考えたりしてるときって、その物事に夢中でない証拠だなと。努力より夢中や熱中が勝つってよく言うけど、おそらくそれと同じで、そして結構真理だと思う。ただ、この考えの下、自分の状態を厳しい目で見るのは、ひとつの捉え方として持っておくと良いと思うけれど、人が誰かの愚痴や不平不満を言っているときに、この考え方に偏りすぎないように、勝手に決めつけないようにできる人でありたい。それをやってしまったら、結局元通り。
あと、角田光代さんの他の本も読んでみたい。
Posted by ブクログ
面白かった。登場人物が繋がっていく所や、なんだかんだあるけど特別な事件事故に巻き込まれる事なく、大体に平穏な日々を過ごしていく登場人物。いい読書時間でした。
Posted by ブクログ
自分はあまり経験しなかったタイプの大学時代とか夢老い人との関係とか、擬似体験できておもしろい。ちょっとでも自分の経験に重なるところのある人にはもっと刺さるんだろうなと思った。
大人のある意味きらきらした青春って感じがした。
短編だけど登場人物が繋がってるところが好き。また読み返すと発見がありそう。
Posted by ブクログ
一つ一つの話が短くて読みやすい上に、繋がりがあった。失恋させる側もする側も経験してる登場人物が多くて、リアルだなと感じた。
「勝負恋愛」のゆりえの、相手に熱中してるからこそ気持ちを伝えるのを諦めてしまう気持ちが痛いほど分かった。私も、自分たちの関係性が壊れるかもしれないと少しでも思うと恋人に本音が伝えられなくなる。あとは自分の求めてる答えが返ってくるまで質問したくなってしまう気持ちにも共感した。その後の「こうもり」の話で槙仁がさよりとの会話を通して、ゆりえの寂しそうな様子に気づく描写が良かった。
「成功する時は周りの人間をこき下ろす気にならないくらい他人が気にならない」という言葉が心に刺さった。もう一回読むときもスイスイ読めそう。
Posted by ブクログ
タイトルや表紙からは想像のつかないほどの「フラれ小説」。ただひたすらに各章で誰かが「フラれる」。それも前の章で振った側が次の章でフラれる。なかなか斬新なストーリー展開で一気読み。振るのは何も痛みなどがないが、フラれるとなるととてつもない痛みが襲い掛かる。人間ならだれでも通ることで、フラれても懲りずに次に進む。あまりこういういい方は良くないが、人の面白い部分をうまく表現した作品だなと感じた。
Posted by ブクログ
一番好きな人の一番好きな人は
一番好きでいてくれてる人じゃない
寂しい話のオムバニズム。
あんまり幸せな気持ちにはならないけど、
とても良い恋愛本でした。
Posted by ブクログ
恋をして、ふられる。
ふった側が次にふられる側になる小説。
でも私も最近、仲良かった人とお別れしたので少し心が救われた気がした。
ここからは引用を含みます。
誰かと付き合うのって、その人に合わせて、自分の分身を1個作る感じ。
別れたり、振られたりすると、その自分をべりべりっと剥がされた気がするから辛い。
それは別れる痛み。ふる側もそりゃあ痛い。ふられる側は予知できなかった驚きも痛みに加味されるけど、ふる側もおんなじ痛みを味わってるもの。
人と関わることってこわいことだよ。
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失恋時に読む本をひたすら探してたどりついた。失恋した自分は励まされ次に進む一歩をもらえた一冊。また違った状況時に読んだら違う感想になるのかも。
Posted by ブクログ
自分を振った人は他の人に振られて、その人もまた誰かに振られてて…登場人物が繋がっていく短編集。古傷が掻きむしられるような共感はなかったけど、そこがかえってリアルだと思った。サクッと読めるし色々考えさせられるフレーズもあって面白かった。
Posted by ブクログ
この本には助けられた。短編のようになってるので、割とサクサク読める。くまちゃんから始まり、今と別れた相手のその後、そのまたその後とどんどん対象が変わっていく。この本のおかげで、想像力を鍛えられたかもしれない。
Posted by ブクログ
最後の乙女相談室が好きだった
こっぴどい失恋を少し前にして、街中にはその人との思い出が溢れてて外に出るのも辛くて毎日泣いてた日々だった
振られたんじゃなくてその恋愛はもうお互いにとって必要無くなったんだって、今は本当にちょっとだけそう思える、まだたまに悲しい日もあるけど
だけど、その人から振られなきゃ気付けなかったことが本当にたくさんあって、成長できた恋愛だったと思う
振られた時、これから先の人生どうしようって思ったけど選んだ道を自力で正解にするしかない
もう二度と傷つきたくないけど性懲りも無くまた人を好きになりたいし、なる予感
Posted by ブクログ
失恋のしりとり小説。
付き合う相手に合わせて自分を見失うという経験が昔のように自分と重なってあるあると共感した。
特に勝負恋愛のゆりえに共感した。
Posted by ブクログ
ふられ小説だとわかってからは読み進めるのが少し怖かった。自分の過去のことと照らし合わせたりして苦しくなった。
それでもヒロインはみんなそれぞれの形で前に進んでいてそれが励みになったりして
最後の角田さんの後書きを読んで安心した。この本を読んでよかった。
恋をするとかしないとか、それだけではなくて
自分に自信のない私にとってとても大切な本でした
Posted by ブクログ
角田光代の小説は面白い。著者48歳、独身女性って・・・本作品をよんで身につまされるわけである。女性ではない既婚男性のわたしが読んでも納得させる筆力はすごい。独身女のさみしい独り言っていう括りで終わらないのが角田光代小説である。現在適齢期の男女におすすめの一冊。
Posted by ブクログ
1話でaがbにふられ、2話でbがcにふられ…と続く連作短編小説。
特に3話目の「勝負恋愛」が好みだった。
恋愛小説だけど、ただ悲しい、辛いという感情だけでは無く、各話の主人公の視点を通して人生をいろんな角度から見ているような気分になった。
恋愛、仕事、日々の生活、人との出会いなど、人生は単純なようで複雑だなぁと感じさせられた。
Posted by ブクログ
自分が選んだ人には選ばれない恋の連鎖。
一方通行と分かっていても、僅かな希望に期待してしまう。冷静に考えると自分の言動が原因だったりするけれど、盲目なうちは考えにも及ばない。
Posted by ブクログ
失恋をテーマにした連作の短編集。久々の角田光代作品だったが読みやすく面白かった。
人それぞれに恋愛に対する価値観や想いがあり恋人関係の奥深さを感じた。恋愛が人生に与える影響は凄まじく仕事の恋愛がよく対比される理由が分かった。特に女性視点の失恋に感情移入できたのは良い体験だった。
Posted by ブクログ
★3.8
くまちゃんという男から始まり、振られる側に常に焦点を置きながら、振られる側が何を思ったのか、そしてその人を振った相手がが次の章では振られる側、、という面白い構成の本。
おもしろポイントは、同一人物のことを書いているのに、主観と客観でだいぶ印象が違う描かれ方なこと、その印象の違いは、単純に、主観客観だけの違いもあれば、時の経過や関わる人でその人自身が変化したことによる違いもあって、そこがおもしろい。人だな、と思う本。
ひとつの恋愛やその中で起きた事実でさえも、たくさんの見方、少なくとも自分の捉え方と相手の気持ちと2通りの見方があって、、改めて、人にはその人の事情やこれまでのその人を形成した歴史があるんだな、と思う。
_φ(・_・
自分の精神というものも入社時にぴたりと止まり、何も吸収しないまま伸びないばかりか、縮んでいくのではなかろうか、と時々考える
普通で平和な毎日が決してわたしをだめになんかしない。そういう日々の先に私にしか手に入れられないものがある。
大人になってよかったねと思わず抱きしめて頬擦りしたくなる
ずっと見ていたいというのは、美しいという言葉とおんなじだ
何かをやりたいと願い、それが実現するときというのは、不思議なくらい人が気にならない。意識のなかかから他人という概念がそっくりそのまま抜け落ちて、あとはもう自分かしかない。自分が何をやりたいしかない。