角田光代のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレだいぶ読み応えがあった。
読んでいたのはたったの2日だったのに、時代を越えて、生死を越えて、何十年もの月日を越えて彼らの人生を上から見守っていたような感じで、まるでこの一族の守護霊か何かになったような気分だった。
私自身が最近自分の家族に対して感じていた、なにかを受け継いでいる感覚、なにかが繰り返されている感覚、ばらばらでもなにかで繋がっている感覚。その“なにか”がなんなのかはまだはっきりとは掴めていないが、そのなんとなくだが神秘に溢れた感覚を、この本を通して改めて強く感じ取ったように思う。
祖母が、木や植物を見たときに感じた、「大丈夫だよ」と背中を押されるような感覚。自分の選択に何故か強く確信を持てる“あの瞬間”を、わたしもよく知っているな、と思った。ああやってふとしたときに垣間見る“希望”に、私たちは生かされ続けている。
終盤で、良嗣はかつての祖母と重なるように窓の外の景色を眺める。そして、眠りにつく微睡みの中で頭にふと降りてきた「“希望”が全ての始まり」というメッセージ。
私も、ふと意識が緩むようなときに、時間も生死を飛び越えて、糸の結び目のように絡まり合っている私たちという存在の神秘さに、なぜかとてつもなく魅了される瞬間がある。
また、その意識の緩みは、たしかに自然物と対峙したときや、入眠の意識から無意識に入る境目なんかに開きやすくなるよな、とも思った。
ルーツがないように思えても、どこにも属していないように思えても、たった今自分が踏みしめているこの大地が自分の居場所であり、自分が今まで辿ってきた道のりが自分のルーツになる。
そして、そんな私たちをいつでも支えてくれているのが、“希望”であるということ。
逃げてもいい、流されるな。
「逃げる」を自分の選択として選び取って行動するというのは、ひとつの抵抗のかたちでもあると言える。
逃げた先に何があるのかは分からない。
けれど、「ここはなんか違う」「逃げたい」という本能的な衝動は、他者によって抑え込めるものでもないのだろう。
自分のツケはあとから必ずまわってくる。
後悔したって、仮定の世界は存在しない。
それでも、そんな過去があったから今があるわけで、だからこそ「やっぱりこれしかないんだな」「これで良かったな」と思える。
私はこの本に、いや彼らに、人生をかけて大切なものを思い出させてもらったような、そんな気がする。
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Posted by ブクログ
恋愛っていうのが 根源的なところで生殖本能と 不可分で、必然的に「排他性」やら「独占欲求」やらがセットでついてくるものである以上、恋に落ちた人がエキセントリックな行動に走るのは むしろ自然なことって僕には思える。最近 現実生活において は 人と人との出会いまでが システム化・マニュアル化されているかのように僕には感じられ、恋というものから その「病性」ないし「毒性」みたいなものが 漂白されて まるでニンニク抜きの餃子みたいだし わさび抜きの寿司みたいな一抹の物足りなさが そこら中にあって、そのせいか こうして小説の中で 恋に中毒し 自己抑制も客観性も理性も失って 闇に落ちていく人に出会うと なんだかとてもうれしい。
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Posted by ブクログ
前半は、ワンオペ育児に疲弊した経験がある私でもくどく感じるほどの育児の孤独、大変さが続く。
後半からからラストにかけ、どんどん引き込まれた。
裁判が進むに連れ、里沙子が水穂に自分を重ねるように、私も里沙子に自分を重ねてしまった。
「憎しみではない。愛だ。相手をおとしめ、傷つけ、そうすることで、自分の腕から出ていかないようにする。愛しているから。」
水穂も里沙子も、幼少期の環境(特に母親)がこのような状況だったのに、夫もこのタイプを選んでしまう。
電車の中で暴言を浴びながらも小さな声でしつこく言い返し続ける夫婦との対比もいい。角田さんは女性の
描き方が繊細で深く、見事だと思う。
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Posted by ブクログ
ネタバレタイトルを見てまず「どういうこと?」と思いました。
納得いく診断を求めて医者を渡り歩くことをドクターショッピングといいますが、その行動になぞらえて納得いく(?)神様を求めてあちこち行くことを本書ではそう呼んでいるということのようでした。なるほど。
全8話の短編は全て世界のあちこちへ神様を求めて行くお話。その動機や場所や神様はそれぞれだけど、やむにやまれず求めに行くのは同じ。
信心深くなくとも神様なんて信じてなくても、生きてたら何かにすがりたくなることはままあります。そういう時神様は確かに都合がよい。
寄りかかることもお願いすることも非難することもできる存在ってそうそうない気もするし。
本書を読むと「そんなところが世界にはあるのか」というようなところも出てきます。落ちそうで落ちないぴかぴかの岩とか。
話は創作だけれども出てくる場所はきっと本当にあるところなのではと思いました。確認したわけではないんですが、角田さんはものすごく海外を旅してこられた人だから。
神様に祈るその願いが欲そのものであるのは誰しも当然としても、それぞれの短編の主人公たちが願う願い事の内容が、ほとんど人には言いたくないような、あるいは絶対に言えないような後ろ暗いものが多いところが、とても面白さを増しているポイントのように思います。
清々しくないのがいい(笑)
人が普段直視したくないところを微細に描き出すのが本当に手練れ。
「モンゴルの蓋」が好きですね。
でも気持ちがよくわかるのが「絶望退治」かなぁ。切りたくても切れない縁というものに自分も悩まされてきたので本当にその絶望感よくわかる。「聖なる濁った川」は作中にも出てくるけれども遠藤周作先生の「深い河」を思い出します。ガンジス川に頭まで潜ったあと熱出したと書いてたのはどの作家さんだったろう?などと思い出しつつ日本人にはハードル高いなと思いました。信仰の力があれば潜れてしまうのだろうか…。
全部創作というわけではなくて、どれか一編や二編くらいは全部本当に角田さんが体験した実話なんてはないか、なんて思ってしまうほどそれぞれに描かれた心情はリアル。充実の読後感でした。