あらすじ
「角田光代の隠れた傑作」といわれる、
不完全な恋人たちの、キュートでちょっと毒のある11のラブストーリー。
リョウちゃんは、あたしのたいせつな恋人は、
あたしの前で口を開いた洞窟なのだ。
そうしてあたしは未だその入り口で立ちすくみ、
その一番奥に何があるのか見極めるための
一歩を踏み出せないでいる。
──「お買いもの」より
ハッピーエンドから始まる恋人たちの幸せな日常。
どこにでもいるようで、でもちょっとクセのある11組の恋人たち。
買い物依存症、風呂嫌い、万引き常習犯、迷信好き……。
この恋愛短篇集は、極端な恋人たちを描きながらも、
いつしか、読む者の心の奥に眠らせていた記憶を呼び覚ます。
文句なしの面白さと怖さに震える、長年偏愛されてきた傑作です。
「だが、だからこそ、物語が進むにつれて、そのおかしさが物悲しさへと変わっていく。
どうして、この人は、このままで許してもらえないのだろう。
どうして、最初は許されていたものが、許されなくなってしまうんだろう。(中略)
相手の中の「どうしても許せない部分」が、自分の過去、コンプレックス、傷、そしてそれらに飲み込まれずに生き続けるためにまとってきたたくさんの鎧と関係していることに気づいていくのだ。
作中で「裸んぼで暮らせたら問題なかったんだろうな」という言葉が出てくるが、この物語たちは、裸んぼではいられない、過去を、痛みを、コンプレックスを、すがるものを切り離せずに着膨れながら生きていくしかない人間のかなしみを見つめた作品なのだ」(解説より 芦沢央)
※この電子書籍は2007年6月に文藝春秋より刊行された文庫の新装版を底本としています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
30代、大人のカップルの大きなすれ違いを描く短編集。こんな大きな違いを受け入れてやっていける人たちもいれば、すでに崩壊してしまっている関係もあり、長続きの秘訣は何なのだろうと考えさせられた。
気に入った短編を記す。
「57577」
これが一番気に入った。なかなか言えないことを、頭の中で57577の短歌にしてしまう男。指折り数える文字数を気にしながら読んでいると、文の全てが57577に見えてくるから面白い。
その他も気に入ったが、食の趣味、旅先での金銭感覚の違いなど、起こり得そうなすれ違いが描かれていて、少し怖かった。
Posted by ブクログ
同棲してる、しようとしてるカップルたちの短編集
どの話もすごい良かった!
その人それぞれの習慣、性癖のせいで愛とか平和な状態に亀裂が入っていく
カップルの言い合いとか毎回どっちも間違ってないから人間関係ってややこしいなぁってなった
どんどん読み進めたくなる文章力で日常のことが書かれてるのがすごい
また絶対いつか読み返したい
Posted by ブクログ
11人のカップルが出て来る。ありそうな事からぶっ飛んでいる事まで、角田光代さんのほんわかした顔が何故か頭から離れない。凄い事考えるんだ、考えられるんだと。ちゃんと働いているのに万引きがやめられない、それを喜んだ彼がいたからやめられないのか、言い訳も同じ店ではやらないとか言う。お菓子が主食の仁絵もダイエットが成功した方法のお菓子に支配される。 ◯◯だからやめなよは伝わらないんだなー。今度言われたら出て行く事考えていたと本当に出て行くのが印象的だ。出だしの匂いが1番残るなあ、走って追いかけるとか
Posted by ブクログ
「角田光代の隠れた傑作」なんて書かれたら、そそられる。
何かにちょっと極端な男女を描く短編集。
どの話も面白い。
買い物依存症、風呂嫌い、万引き常習犯、記念日好き、などなど。
でも男女間で問題が起きるのは、もうお金か、食か、価値観かとか。自分は『うーん』と思う事をどこまで受け入れて認めていくか。この『うーん』が極端だから面白い。
「旅路」は笑った。
心の中のセリフのやりとりに吹き出した。
日常ではとても仲良くやっていたのに、まさかこんな事で⁈ということで、相手が嫌になることあるある。自分の方が正しいと思っちゃうことあるある。思い知らしてやろうとすることあるある。
角田さんのお話は読みやすくて、物語の中にすんなり入れてくれるから好きだ。
この間まで、活字が読めなくてなかなか読書できずにいたけど、この本読めてまた楽しむ事が出来そう。
私にとっては太陽でした。
Posted by ブクログ
ズボラで風呂嫌いな彼女
買い物依存症な彼氏
万引き癖のある恋人・・・
幸せでいるようでいて、実は内部に問題を抱えた
カップルたち。
だんだん感じ始めた違和感や不信感。
許す方が楽か。離れたほうがいいのか
個人的には「別れろ!」派でした(笑)
Posted by ブクログ
最初の1ページ目を読んだだけで、ああ、やっぱり面白いと思ってしまう。
俺は角田光代の文章が本当に好きなんだとあらためて実感する…
旅行やら出張に出かけて池袋(個人的に思う場所ですが)に着くとものすごく安心して、帰ってきたんだけと感じるのと同じ感覚だと思います。笑
11の様々な恋人たちのとてもリアルな関係が描かれていて、自分の今までの恋愛と共感する部分も沢山あってとても面白かったです。
この小説の帯に芦沢央さんが書いている
「じぶんの欠片たちが口々に騒ぎ始める。
これは私のための物語だ、と。」
さすがですね!まさにこの言葉がこの小説という
感じでございます♪
「サバイバル」の中で
俺たちは何がほしいんだろう?
俺たちって、健吾や俺だけじゃない、目の前の女の子たちも、北原すま子も、あのセンスのぶちこわれた彼女も、いったい、何がほしくて人を好きになって、恋人なんかつくって、いっしょにいようとするんだろう?
この言葉は、彼女がいる時には全然考えないんだけど、しばらく彼女がいない(現状…)に考えてしまうんですよね、見た目の美しさ、可愛らしさ、ファッションのセンス、笑いのツボ、嫌いなものが一緒、
何をもって人は人を好きになるんでしょうかね…
最近本当にわからなくなってきました。
40歳もすぎたので、恋愛ぐいぐいって感じでも無くなってるのは勿論ありますが、
「二者択一」の中で
サラダ油に酢を入れて、ぐるぐるかき混ぜる。
なかなか混じり合わない両者は、数秒でちゃんと融合してどろりと白濁したドレッシングになる。
三十四、五年で培ってきたそれぞれの生活は、
油と酢のようにくっきりと独立した何かで、両者を混ぜ合わせるにはそれ相応の気負いと行為が要る。
けれど白濁したドレッシングを放置すればまたすぐに分離してしまう。
譲歩も変更も、新しい習慣も入り込む余地のない何かを、私たちはそれぞれ相手の中に見つけ出してしまう。新鮮で興味深い新発見の連続ののちに、
さほどよろこばしくもなくどちらかというと厄介な新発見が、さらに発掘され続ける。
誰かと暮らすとは、そういうことらしい。
とても長くなってしまいましたが、この部分は
三十代以上の人なら納得のいく真理みたいなものだと思ったので、抜粋させてもらいました。
また、しばらく角田光代から離れて他の作家さんへの旅に出ようと思います。
すぐに安心できるホームに帰れるようにちゃんと
積読してありますので…
Posted by ブクログ
もれなくすべて
「別れたほうがいいんじゃない」
と思う恋愛小説というのが面白い
彼女がお風呂ギライで不潔 とか
記念日に執着する とか
旅行中にけち臭い男とか
買い物依存 とか
そりゃね 愛の前では
些細なことかもしれませんよ
愛してるなら受け入れるべき
いあいあ そうとも限らない
やっぱり 受け入れられない
許せないことだってあるんです
Posted by ブクログ
この作品のあらすじを見てみると、
“一見幸せそうに見える二人に、ふとした瞬間に訪れる微かな違和感や不信感”
“不完全な恋人たちの、キュートでちょっと毒のある11のラブストーリー”
くぁぁぁぁぁーー!
これだけでビール3杯はいける。
また、帯にはこうある。
“大好きなのに、どうしても許せないことがある”
くぅぅぅぅぅーー!
レモンサワー追加だ。
芦沢央さんの解説の言葉をお借りすると、ここに詰まっているのは、「ドレッシングが分離した後、互いに混ざり合わない存在として向き合わざるを得なくなった油と酢たちの物語なのだ」。
この、「ドレッシング」を使った表現は、本作品の中の「二者択一」に出てくる表現だ。主人公が35歳でわたしと同年代というのもあり、この「混ざり合わない存在」同士で生きていくことの難しさの表現として、群を抜いているように思う。
好きだー!って気持ちで付き合い始めたものの、一緒にいると、付き合いたてでは見えてこなかった様々なことが見えてくる。
・風呂に入らず、腋毛も剃らずに生活することが平気なキタハスマコとその彼氏おれの章「サバイバル」
・記念日フェチのクマコと記念日大っ嫌い彼氏おれの章「昨日、今日、明日」
・買い物依存症のリョウちゃんと折り合いがつけられない彼女あたしの章「お買いもの」
・公表していいことと悪いことの区別がつけられず、なんでも人にぺらぺらしゃべってしまうナミちゃんと暮らす彼氏ぼくの章「57577」
・ハルっぴの迷信に振り回されて、過去の罪悪感と向き合い続ける彼氏おれの章「雨と爪」
・”たかだか”野球の一勝に生活の全てを支配される木幡敦士と彼女あたしの章「100%」
・万引きをやめられないカナエと、それを認めていくべきかどうかで揺れ動く彼氏ぼくの章「共有過去」
・お菓子を食べ続ける仁絵と、”たかが”お菓子につっかかってしまう彼氏ぼくの章「糧」
・下戸の上野くん(34)と酒豪の私(35)の章「二者択一」
・長年付き合っていた者同士が嘘みたいに海外旅行でいがみ合う章「旅路」
・周囲に反対されながらもいわゆるダメ男ミネオと付き合い続ける彼女私の章「未来」
この11編、順序なんてつけられないほど、ひとつひとつが愛おしくて痛々しい。大切な人と一緒に生活をするということ。そこにあるのは決して、嬉しい、楽しい、大好き!だけじゃない。同時に、たくさんの違和感と傷つき、不信感も同居している。それらは、P295「できうる限り好意的に解釈して受け入れようとする。だが、時間が経ち、激情が薄れ、相容れないものが日々の生活にじわじわと入り込んでくる中で、その受け入れがたさが浮かび上がってきてしまうのだ。」
わたしには11編全部別れちまえ!と思えたけれど、それは、わたしの器の小ささなのだろうか?
嫌だって気持ちとそれに対して器が小さいと思うことは別のこととして考えるよう、先日カウンセラーの先生に言われたけど、わたしの中に存在する理想の自分が、誰かを受け入れられないことを許せない。
この、他人を受け入れられない自分を許すとするならば、わたし自身がP201「世界で一番自分が正しいと思って」いる、「ナルシストでファシスト」であることを認めることなのかもしれない。
そこで顔を出すのは「他人を受け入れる仕事をしている自分」である。その自分は、小さなことを許せないわたしを、はるか上空から見下(くだ)している気がするのだ。“そんなことも許してあげられないの?”と。わたしは、他人との距離感を考える前に、自分の中にある正論(理想の自分)と、上手に距離をとることができていない。人生に折り合いをつけて生きていく前に、まずは自分の中で折り合いをつけることが必要なんだろうか。
お菓子、お酒、野球…
他人からしたら笑ってしまうような、バカバカしいものたち。
たったそんなことで。人は言う。だから「たったそんなこと」と、その時は思う。小さな違和感なんて、見て見ぬふりをしてしまう。
けれど、2人で過ごす日常の中にどっしりと横たわるそれらを、どうしても見て見ぬふりはできない。
これは、受け入れていくべきものなんだろうか。それとも、受け入れられなくとも、仕方のないものなんだろうか。その答えは、個人の中にのみ存在するし、出した答えが、個人の中の答えと合致するとは限らない。
Posted by ブクログ
角田光代の描く11組のラブストーリー。
きっと一癖も二癖もある男女の恋模様が読めるのだろうなと思って手に取ったが、見事に期待を裏切らない作品でした。
好きだから何でも許してしまう面もあれば、好きだからこそ許せないこともあったり。
『太陽と毒ぐも』とはよくつけられたタイトルだなと思いつつ、世の中のカップルを表すぴったりの表現でもあるな。と思わされました。
Posted by ブクログ
かなり前の短編集。
角田さんのイメージは、最近では事件を扱ったような社会的な長編も多く、過去にはこんな感じの恋愛小説系がよくあった。
この短編集、さすが角田さんと思った。
心理描くの、うまい。
途中から坂道を転がるように加速して悪化していく感じ。これは今も変わらない。
恋人同士が、お互い完璧な相手だと思いながら続けていくのは難しい。
妥協が必要だ。
他の人から見たら、そんなヤツとは別れた方がいいって思っても、人によって許せるところ、許せないところは違うのだ。
1番共感できたのは『旅路』
共感できるから、なんだか最後に椅子を譲ってくれた青年の優しさと自分の狭小な気持ちが情けなくて、泣けた。
普段の生活なら、この相手は間違いないって思てたのに、旅の仕方の違いで、その旅行のスムーズにならない環境下でお互いがイライラして、相手を責め立てるような気持ちで充満する。
最近、読んだ短編集で、ウィリアム・トレヴァー『異国の出来事』の中の『三つ巴』でも、夫婦の旅での苛立ちが書かれていて共感できた。
旅は計画的に余計なイライラをしないように準備しておきたい派と、行き当たりばったりになってもそれを楽しむ派に分かれる。
私は計画派で、行き当たりばったりになってイライラして時間を無駄に過ごしたくない。お金を無駄にしたくない。
でも、行き当たりばったりで旅を楽しむのも楽しそうだとは思う。
ただし、それはあらかじめ行き当たりばったりで旅をすると決めてからじゃないと嫌だ。
角田さんは、両方の気持ちと心理をうまく描いていて、すごいなー。
1番共感できなかったのは『未来』
若いうちはありがちだけど、30過ぎるとちょっとやめた方がいい。自分のこと棚に上げて人のやってること悪口言ってる。くだらない生活で生きてるのに、人のことを悪く言うのだ。そんなふうにずっと生きていると、くだらない人しか周りにいなくなるだろうなぁ。目標とか、充実とか追い求めないから、人のそういうものを馬鹿にして生きていくしかないんだろうなぁ。
Posted by ブクログ
若い男女のヴァイブスや心情、温度感や湿り気、軋轢や歪みを本当にうまく捉えてる。え!?あの時、見てたの?笑 と言いたくなる。自分が若い頃の経験、何気ない会話や表情心情、温度や匂いがフラッシュバックしてしまう。そして、あの時なぜ許せなかったのか。と。
太陽と毒ぐも。
こんなに端的で的確にこの本を表す表題は
他にはない様に思う。
Posted by ブクログ
全て恋愛の話だが、どれもハッピーエンドともバッドエンドともとれない終わり方でモヤモヤした。
価値観の違いやお互いにこれは譲れないというところで衝突するカップルの話が多かったように感じる。
特にスリランカに旅行に行ったカップルの話は悲惨だった。私もスリランカという日本と何もかもが違う国に行くのならぼったくられても仕方ないと思うし、千円ちょっと払って快適に移動したいし、人でもみくちゃの電車に3時間も立っていられない。女性側の気持ちが痛いほどわかるから、キツイだろうなと思った。
匿名
すごく沢山の恋愛ストーリー。
お風呂に入らない彼女。万引き彼女。は、度肝を抜かれた。流石にこれは我慢できないレベルでした。
旅行先で喧嘩になる男女、これにはすごく共感しました。非日常の世界に心がついてゆけず不安から喧嘩になる経験ありました。
Posted by ブクログ
思ったよりも読みやすい。
11話、同じような温度感で話が進むので、1話目が気に入ればそのまますっと最後まで読めると思う。
〈毒ぐも〉というワードで想像するよりも小さな毒。それは小さいけれども確かに毒で、そして、誰にでもある毒の話。
蜘蛛も悪いことばかりでない。ときに蜘蛛は、害虫をたべる益虫として農家の人からありがたがられたりする。見方によっては、良いところもあるのだ。
Posted by ブクログ
とても読みやすい作品でした。
私が感じる『読みやすさ』は、あまり深く考えずに読めたり、文章が簡単だったりする作品を指すことが多いです。
しかし、この小説はそういう『読みやすさ』ではなく、あまりにもストンと簡単に心に入ってくる『読みやすさ』がありました。簡単に入ってくる分、何とも表現出来ない哀しさがじわじわと沁みてきます。
イタタ…と思う恋愛の哀しさ。
あ〜…と思いながら読む恋愛の哀しさ。
それでも離れられず、トントンと読み進めました。
Posted by ブクログ
⚫︎受け取ったメッセージ
それでも人は、人がいないと生きられない
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
「角田光代の隠れた傑作」といわれる、
不完全な恋人たちの、キュートでちょっと毒のある11のラブストーリー。
リョウちゃんは、あたしのたいせつな恋人は、
あたしの前で口を開いた洞窟なのだ。
そうしてあたしは未だその入り口で立ちすくみ、
その一番奥に何があるのか見極めるための
一歩を踏み出せないでいる。
──「お買いもの」より
ハッピーエンドから始まる恋人たちの幸せな日常。
どこにでもいるようで、でもちょっとクセのある11組の恋人たち。
買い物依存症、風呂嫌い、万引き常習犯、迷信好き……。
この恋愛短篇集は、極端な恋人たちを描きながらも、
いつしか、読む者の心の奥に眠らせていた記憶を呼び覚ます。
文句なしの面白さと怖さに震える、長年偏愛されてきた傑作です。
「だが、だからこそ、物語が進むにつれて、そのおかしさが物悲しさへと変わっていく。
どうして、この人は、このままで許してもらえないのだろう。
どうして、最初は許されていたものが、許されなくなってしまうんだろう。(中略)
相手の中の「どうしても許せない部分」が、自分の過去、コンプレックス、傷、そしてそれらに飲み込まれずに生き続けるためにまとってきたたくさんの鎧と関係していることに気づいていくのだ。
作中で「裸んぼで暮らせたら問題なかったんだろうな」という言葉が出てくるが、この物語たちは、裸んぼではいられない、過去を、痛みを、コンプレックスを、すがるものを切り離せずに着膨れながら生きていくしかない人間のかなしみを見つめた作品なのだ」(解説より 芦沢央)
⚫︎感想
パートナーの気になるところ、どこまで許せるか問題。なおして!と思っても、他人を変えることは不可能に近く、自分を変えることもまた難しい上に気づきにくい。自分は相手に何かを言えるくらいまともなのか?という自問自答も浮上する。他人を通して、嫌な自分に出会ったり、のちに気づいたりする。
このことをとてもうまく例えてある「ドレッシング」の表現があった。
以下引用
「…私たちの暮らしはドレッシングみたいなものだったと思うことがある。サラダ油に酢を入れてぐるぐるかき混ぜる。なかなか混じり合わない両者は数秒でちゃんと融合し、どろりと白濁したドレッシングになる。34.5年で培ってきたそれぞれの生活は、油と酢のように、くっきりと孤立したなにかで、両者を混ぜ合わせるには、それ相応の気負いと行為がいる。専用泡立て器でぐるぐるかき混ぜる行為は、しかし、楽しかった。譲歩も変更も楽しかった。けれど、白濁したドレッシングを放置すれば、またすぐに分離してしまう。譲歩も変更も新しい習慣も入り込む余地のない何かを、私たちはそれぞれ相手の中に見つけ出してしまう。新鮮で興味深い新発見の連続ののちに、さほど喜ばしくもなく、どちらかというと、厄介な新発見がさらに発掘され続ける。誰かと暮らすということは、そういうことらしい。」
では、果たして100%ぴったりの相手がいたとして、それはそれで刺激がないとか文句に繋がるんだろう。結局、100%合う人なんか居なくて、呆れたり、見ないふりをしたり、期待しなければ(笑)意外といいとこ見つけたり、変化する相手に刺激されたり…そういうことが他人と生きるということかな。
Posted by ブクログ
面白かった!角田光代さんのこういういい意味で気が抜けた(八日目の蝉とかのような大傑作に感じる緊張感は無いという意味)作品はとても好き。
ありふれた、よくいる問題ありの恋人たちの話。自分にも当てはまるなぁ。人間臭さを感じる面白い作品。
Posted by ブクログ
未婚カップルが抱える相手への違和感にクローズアップした短編集。
価値観の違い…とまで言うほどのことじゃない。
きっと友達にコレが原因で別れたって話したら、笑い転げられるだろう。
それでも、毎日毎日気になってモヤモヤする。
パートナーの些細なクセや習慣。
結婚してないんだから、1歩踏み出して別れたらスッキリできるに違いない。
…でもなぁ。それ以外は全部好きなんだよね…。
・あんまり風呂に入らない彼女
・おしゃべりすぎる彼女
・買い物依存症な彼氏
・スナック菓子がごはんな彼女
・ジャイアンツ至上主義な彼氏
・下戸な彼氏………etc
みんな悩んで、別れたり妥協したり。
分かりみが深い。
人と人が分かり合うって大変だわ。笑
Posted by ブクログ
行事が好きとか嫌いとか、菓子とか酒とか野球への愛とか、「たったそれだけ」のことで決定的に関係が壊れるなんてあまりにも馬鹿げている。頭では分かるけど、そういうちっぽけなことが自分にとっては大きすぎて、譲りたくても譲れなくて、結局、魅力的であるはずの相手の「ある部分」を好意的に解釈できなくなる自分にうんざりする。
そういう、「許せなくなる側」のかなしみを描いてくれるこの本にひどく共感した。11の恋人たちの中には関係を続けることを選んだものも、別離を選んだものもいたけれど、きっとどちらも正解なんだ、と思う。
Posted by ブクログ
たくさんの、いろんな、多種多様な男女恋愛模様が、それぞれの短編の中で繰り広げられ、短編の中で的確に男女のズレを炙り出しつつも、綺麗に、整理整頓された、理屈の通ったようには落着せずに、だけど何となく、ふと気づいたら、穴にすっぽりハマる。
Posted by ブクログ
お風呂に何日もはいらない女性、盗み癖がある女性、異常なほど物を買い込む男性、あらゆる迷信を信じて実行を強要する女性、スナック菓子を主食とする女性、半端なくお酒を飲む女性、言っていいことか否か判断できずなんでも(噂話し的な)言ってしまう女性、
いろんな性癖を持った男女の短編小説。
これが、めっぽう面白かった。
そんな奴、おるんかいな(特にお風呂に入らないレベルがまるでホームレス並み)と思うけど、著者の手にかかればいかにもいそうなのよ。
それぞれの性癖を相方の彼、彼女らは付き合い始めは美点にさえ見えているのよ、それ意外の相性は一緒に暮らすほどいいんだもの。
でも、それがだんだんもやもやしてきて、許容できなくなる日が訪れる、そのこちら側の哀しみが読んでいてぐっとくる。
角田光代はやっぱりすごいな。
Posted by ブクログ
二者択一に出ていたセリフのように男女が一緒に暮らすということはドレッシングのようなものかもしれない
お互いが譲歩と変更をすることで混ざり合うことでやっと混ざり合うのだろう
この短編ほど極端な欠点ではなくとも誰にでも欠点はあるその欠点を二人の関係が落ち着いた頃に嫌気がさして拒絶するか受け入れるか次第ではないか
Posted by ブクログ
角田光代の本初めて読んだけど、1ページ読んだときにこの人の本好きだわって思った。
なんで自分の恋人はこうなんだろう?変だよね?っていう語り口ですすめられるストーリーで、たしかに出てくるキャラは割と極端。でも、自分の恋人を変だと感じるように、自分も恋人から「なんで?」って思われてることが多くて、そこが面白かった。
つまり2人っていう世界の中ではどっちが普通とか、どっちが正解とか、そんなのはなくて、多数決しても決着つかないんだから。
まあ、小さいことから大きいことまで、どんな恋人や夫婦にも、理解できないと感じることはあるはずで。
それが良さでもあり、登場人物の誰かが言ってたけど、自分が正しいって決めつけるのは間違ってるよなぁと思う。
吉野弘さんの「二人が睦まじくあるためには」にあるように、完璧であろうとしないで。
Posted by ブクログ
どれもこれも男女の中の折り合い?というか、ありありだなと思う短編集。Audibleで。
雨と爪。100%。ちょい解る気がして面白かった。「雨と爪」で出てくる諺の数々(笑)私も結構気にするけどこんな風に他の人に共用したり言ったりしたいから、言ったりしたらこんな風になるんだ~って(笑)
「100%」は付き合い出してからの、お互いの趣味とかこだわり。おおげさな表現が多いけど、そうなんだよね。自分の推し、相手の推しをいくらかは譲歩しながら楽しめるのなら長く付きあえるのかな。
どの短編もかなり癖のある男女がでてくる。でもその、癖でさえ愛されちゃうのだ
Posted by ブクログ
11の短編を収録。11組の恋人達の話である。恋人だから恋愛小説のカテゴリーにしたけど、ハッピーエンドの恋バナではない。お互いが相手のある部分を許せなくなるという話。風呂嫌いの彼女、記念日マニアの彼女、買い物依存症の彼、などなど。ドレッシングのサラダ油と酢みたいに、混ぜるにはそれ相応の気負いと行為が必要。
Posted by ブクログ
付き合っている恋人同士の小さな違和感に焦点をおいた短編集。
付き合い出した頃は「おもしろい」ですんでいたことが、だんだんと気になり、存在感を増していく。
何日もお風呂に入らない。使いもしないのに次々と買い物する。やたら迷信を気にする…結局、相手の欠点(もしくは直してほしいと思うこと)を許容できるか、それも含めて愛せるかがその後結婚までいくかどうかにかかっていくんじゃないかなぁと思った。
Posted by ブクログ
短編集11篇
変なカップルの生態,11組11色の味があって,別れを考えながら二人がそれなりに関係を続けていくのが,腐れ縁の味わいがあっておかしみと悲しみが残る.
Posted by ブクログ
ハッピーエンドから始まる11組の恋人たちの、平凡な日常。そう、日常というものはこういうことなんだよな、と思わされるビターな味わい。角田光代さんは、なんてことのない日常の、けれど決定的な歪みを見逃さずに書くのがほんっっっとうに上手い。
解説で芦沢央さんも引用されているのだけど、ドレッシングのたとえが絶妙に当を得ている。
〈永福町ではじめた私たちの暮らしは、ドレッシングみたいなものだったと思うことがある。サラダ油に酢を入れて、ぐるぐるかき混ぜる。なかなか混じり合わない両者は、数秒でちゃんと融合しどろりと白濁したドレッシングになる。三十四、五年で培ってきたそれぞれの生活は、油と酢のようにくっきりと独立した何かで、両者を混ぜ合わせるにはそれ相応の気負いと行為が要る。専用泡立て器でぐるぐるかき混ぜる行為は、しかしたのしかった。譲歩も変更もたのしかった。
けれど白濁したドレッシングを放置すればまたすぐに分離してしまう。譲歩も変更も、あたらしい習慣も入りこむ余地のない何かを、私たちはそれぞれ相手のなかに見つけ出してしまう〉
もうこれで全部を言い表し切ったかと思うぐらい秀逸なたとえ。
菓子中毒、買い物依存症、風呂嫌い、万引き常習犯、迷信好き……。出会ったばかりの時にはキラキラとした個性や長所にみえたはずのそれらが、どうしてか、やがて許せなくなっていく。
私は現夫とは、勢いで同棲して勢いで結婚したので、こんなことを考える時間も余裕もなかった。夫はずっと実家暮らしだったし、私も上京してはじめての一人暮らしも板についてないうちだったし。
互いの生活のペースやこだわりなんていう、ややこしいものは私たちの間にはまだなくって、ただ好きという気持ちだけを持ち寄って、まぁただの若気の至りとはいえ今にして思えばそれがこうして10年も一緒に暮らしてられる理由なのかなとは思う。
「お酒をたくさん飲めるところが格好いい!」「人に気前よくご馳走するところが素敵!」なんて思ってた長所は、もちろん今じゃ一番許せない点ではありますが、でもともかく。
愛は消えても二人でつくってきた生活は残る。きっとこれからもだらだらと続いていく。
離婚したとしても、じゃあ新しい誰かとまたドレッシングをつくりましょうなんて到底無理だもん、これは絶対。
Posted by ブクログ
相手に対して不満を抱いているカップルの短編集。角田作品では好きじゃないタイプの奴(ごめんなさい)。
なんていうか、若者たちが下品なんだよね・・・。
それぞれいろんな不満や違和感を抱いていて、結婚するか別れるか逃げ出すかを決めるお話。
あんまり、うーん、どの話も好きじゃなかった。