角田光代のレビュー一覧
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皆さんは、人が持つ愛や誠実さについて、真剣に考えた経験が一度はあるのではないだろうか。
そしてそれらを成就することは、社会的・倫理的な正しさと、果たしてどこまで合致するものなのだろうか。
この作品は、そのようなことに興味のある方には、最適の小説の一つだと言えるだろう。
特定の状況や出来事の前後における、個人個人の成長や変化と、人間模様の移り変わりを観察することが好きな方にも、向いているといえそうだ。
表向きは母性愛をテーマにしたこの作品。しかし同時に僕には"誠実さ"が陰のテーマとして宿っている気がしてならない。
実在の事件をヒントに描かれた作品なので、全体的に悲壮な雰 -
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ネタバレ序盤のサスペンスフルな逃走劇から、終盤の誰もが胸を打たれる重厚なドラマまで、本当に濃度が高い読書体験だった。
最重要のテーマとして、「母性」が扱われる。すべての人間に等しく「母性」が備えられているという願いが込められた、とても優しい作品だった。また、舞台となる1980年代の世相や時代背景(宗教施設等)を丁寧に描くことで、完璧な世界観を構築していた。
7日しか生きられない蝉の一生と、複雑な生い立ちを背負う女性の一生を掛け合わせた作品名が秀逸。これだけ複雑な再生の物語を、「八日目の蝉」としてまとめあげる作者のセンスと着眼点に脱帽。
終盤の、薫(恵理菜)が希和子の生涯を追体験しながら、人生の意義や家 -
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ネタバレ『八日目の蝉』感想
『八日目の蝉』は、日野OL不倫殺人事件をモチーフにした作品だと言われている。実際の事件では、女性Aが不倫相手Bとその妻Cの子ども二人を焼死させている。そして、BはAに二度の中絶を強要し、精神的にも身体的にも深い傷を負わせたうえ、CはAに対して「子どもができても簡単にかきだす」と侮辱した。
この事件を知るとき、簡単に善悪で切り分けられない「誰もが被害者である」という視点が浮かび上がる。
もちろん、何もしていない子どもを奪ったAの行為は決して許されない。しかし、Bが恋心を踏みにじり、希望をちらつかせながら追い詰めた過程を知ると、胸が締めつけられるような、ただただ惨く悲惨な現 -
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立場の異なる二人の女性の友情とすれ違いの物語。
相手を理解したいという思いや努力が、むしろ理解できない現実を浮かび上がらせ、相手とつながれない関係(=自己防衛)になる様子を上手に描いている。
高校生の頃、葵は当時の友人のナオコと深い関係にあった。しかし、ナオコは相手が変わってしまって、「以前のようには話せないかも」と恐れるがあまり、葵と再びつながる関係にはなれなかった。
大人になってから、仕事で仲のよい関係となった小夜子とは一度は同様につながれない関係となるが、再度一緒にいるようになる。
無理に理解しあおうとせずとも、存在を無視しあわないことが、最終的な人間関係として自然な状態である様 -
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ナナコと葵がタクシーから降りて別れを告げて以来一度を会っていない理由に、あまりにも共感できた。
学生時代の友達と久しぶりに会ったとき、あんなにも仲がよくてよくお互いの家に遊びに行ったのに、昔のようにしょうもないことで笑い合える関係ではなくなったことに悲しみを覚えた。
お互い今の環境に慣れて変わってしまった。
そんなとき、昔の記憶が走馬灯のように蘇ってきて悲しくなる。
でも、ただ悲しいだけじゃない。
旧友と会うこと、会わなくても、今どこにいて何をしているか聞くだけでも安心する。あいつも元気でやってるんだなと。
小説として素晴らしかったし、文句はないけど、ナナコが今どこにいて何をしているの -
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出会いが人生に与える影響力ってすごいなと思った。
自分もこんな風に生きられたらいいのにな。と感じるような人と出会うと、強くなれる気がするし、自分を肯定できる気がする。
ナナコと葵、二人の別れのシーンはすごく心が苦しいけど、二人だけで過ごした時間は嘘じゃなくて、二人だけにしか分からないことがあって、大人になってからもその記憶で乗り越えられたことがたくさんあるはずで。
会えなくなっても、ずっと自分の人生に存在し続ける人ってすごい。
『ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね。』 -
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10篇のそれぞれの登場人物は、
それぞれの居場所にずっと違和感を持っている。
こんなはずじゃなかった。
でも、あっという間にここまで来てしまった。
そもそも、自分にここ以外の選択肢なんて
なんにもなかったんじゃないか。
こないだ読んだ荻原浩さんの「あの日にドライブ」では
主人公は銀行を不本意に辞めて、
タクシー運転手になった。
あの人も、こんなはずじゃなかったと思いながら、
最後にはこの場所で頑張ろう、と希望の兆しを見せて終わった。
トリップの登場人物には、そんな希望はない。
長く長く続く絶望。
でも、現実はこんなものじゃないだろうか。
絶望の中で希望を見いだせる人は、たくましいけれど。
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Posted by ブクログ
すごく好き。
「どんなこともいつか懐かしくなる日がくるわ」
なんだか泣きたくなって、そんな気持ちになる自分が嬉しい。
絶対また時間をおいて読み返す。
超弩級の恋は足りないから超弩級になるんだと思う
自分が好きだと思うのと同じだけを、相手がかえしてくれなくて、あるいはかえしてくれているようには思えなくて、それで、どんどんどんどん、好きが吸い取られていって、きづいたらとんでもないくらいの好きになっているんじゃないかな
なくしたものばかりだ、と、二袋目の写真を見ながら、わたしは思う。落としてしまったもの、なくしてしまったもの、置き忘れてしまったもの、いなくなってしまったもの。写真はそれらで満