あらすじ
学生時代はボランティアサークルに所属し、国内外で活動しながら、ある出来事で心に深傷を負い、無気力な中年になったみのり。不登校の甥とともに、戦争で片足を失った祖父の秘密や、祖父と繋がるパラ陸上選手を追ううちに、みのりの心は予想外の道へと走りはじめる。あきらめた人生に使命〈タラント〉が宿る、慟哭の長篇小説。
解説・奈倉有里
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
どんどん話に引き込まれる。そして妙な親近感にさいなまれる。いつのまにか登場人物になりきった感じで読んでる自分に気づく。いろんな世界のふつう…身近に感じた一冊でした。
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撚り合わせた糸のような作品だと思った。
みのりの現在、みのりの学生時代、清美の話、それぞれが層のように重なるのではなく、糸のように撚り合わさって最後のシーンに集約されていったと思う。
すべての描写に無駄がなくて圧倒された。
小説にここまで付箋付けて読んだのははじめてで、とにかく「ここ、覚えておきたい」「このシーンも後で読み返したい」のオンパレードだった。
それは、私がみのりのように「何かしたほうがいいとは思ってるけど、なにもできない」と感じているからかもしれない。
世界はきれいでもなければ、絶対的な正義も存在しない。目を背けたくなる現実ばかりだし、知らない方がよかったとも思うことがあふれてる。
でも、それでも「なにかしなきゃ」って気持ちが持てるのが人間の希望だなって思う。
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とても感動した。読み進むうちにも感動する。
満員電車の中で大声で慟哭しそうになる。
タイトルからして聖書にまつわる話、
才能というかギフトの話?
かと思っていたが、案の定その話なんだけど
それだけじゃない、人間の想い、気持ちに通底する何かに
触れている気がする
そういう意味で、まさにバイブル。
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自分のタラントってなんだろう?
今からでも何だって始められる、
駄目だったらまたあらたに探せばいいか!
神さまに返すために生きてるんじゃなく、
僕らが生きるために神さまはいるんだから。
勇気と元気を貰いました。
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長いかなと思ったけど、あっという間に読み進みました。難民キャンプとか、孤児院とか、パラリンピックとか、東日本大震災とか、コロナまで、たくさん今の時代に起きていること、起きたこと、考えさせられました。
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・小説っていいな
自分や自分の周りにいない人、
自分のなかにある人格、そばにいる人のなかにある要素
そんなものに触れられるような感覚があるから。
・その人のいる場所や肩書きや今やってることやある状態だけで一面的に知った気になってはいけないなと改めて思った。
・ボランティアで東北に行った時に、補助金がたくさんあるせいで変わってしまった人がたくさんいる、みたいな話を聞いたことを思い出した。
あの時の私も、打たれたように漠然とショックだったのを思い出した。
Posted by ブクログ
ボランティアとはをみのりと玲と意見の言い合いが何度も出てきてムーミンが文珠チームで楽しくやりましょうよと投げかけてその場にいる事が意味があるのかどうか禅門なのかなーで最後にみのりは答えを出したんだ、清美の死も無駄にしない。でも清美の上京の真実と戦争と1番最初のが清美じゃなくて陸だったのを踏まえてもう一度読むと全然違うだろうな。涼花の手紙を書いてるうちに自分の愚痴とかあれやこれや書いてる後ろめたさがあった告白も、みんな同じ様に悩み事あるんだなって思った。涼花とか寿士とかムーミンの登場シーンが上手だなぁ、みのりの目からと清美の上京を思い止める=コロナを伝えるのが一番上手いと思う もちろんマスゴミなんかよりも。あと星影さやかに読んだ後でどちらも同じ時期の戦争の話でした
Posted by ブクログ
素敵な話だった・・・本当に好き。
何も話さない清美が内に秘めていた思いが
段々と分かってきて、最後は大号泣だった。
みのりと陸と清美と、それぞれの人生で重なる部分が
とてもうまく描かれていた。
みのりのような経験をした訳ではないけど、
共感できる部分があって、みんなそうなんだと 少し安心した。
Posted by ブクログ
みのりと同じ経験をしているわけではないのに、何をしよう、何がしたい、何ができる、と未だに思ってしまう私にはひりひりする物語だった。
戦争で片足を失くした祖父の話、中学生の甥っ子の話、いずれも考えてしまう。
聖書のタラントの話にも考えさせられる。1タラントをどんなふうに使ってきたのか……。甘い自分に嫌気がさすけれど、それでも生きていれば、いつか100タラントを渡される日がくるかもしれない。そんなふうにも思う。
Posted by ブクログ
表紙のイメージから、陸上部の青春群像かなと思っていたら全然違った。テーマとしては逃げることと向き合うということなのかなと思ったけど、僕は戦争小説、という側面を多く感じた。清美目線の文について、陸が書いていたと分かる部分は熱くなった。評価を4と5で迷った。
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ボランティアのサークルで活動をする女性、戦争で片足を失いながら生き延びた元陸上選手の老人、不登校になった四国のうどん屋の息子の高校生。自分には共通点どころか全く接点もないが、それぞれがいろいろと思い巡らす話に頷き続けながらストーリーに引き込まれた。
戦場カメラマンも難民キャンプに取材に行くフリーライターの知り合いもいたこともないが、何かわかるようなわからないような、どこかで冷めてみたり、時には非難する気持ちになったり。現代を生きているというのはこうした事だなとしみじみと思わせてもらった。普通じゃない普通の人生が当たり前に描かれていて面白いという小説もそうはない。
巻末の解説も良かった。これも小説の一部のような気がして楽しめた。多田陸にちょっと藤井風のような雰囲気を感じたりして新しいCDを聴きながら読んだ。なんかしあわせなじかんがすぎていってここちよかった。
Posted by ブクログ
みのりは不器用で自分の気持ちや考えをなかなか言語化するのが苦手な印象。はらはらするけれど、そんなところが私に似ているところもあって親近感。
一方で奥底にもっている熱、青い炎の強い思い、頑固な思いがあって魅力的でした。
Posted by ブクログ
文庫本で556頁もあるんで、読みこなすのに時間がかかるかと思たら、すいすいといつの間にか読み終えてしもた。センテンスが短いのと文章にリズムがあるけん、そいで日常語で綴られてんからかも(彼女たちの話し言葉につられてしもた笑)。
冒頭に、手記のようなものが記され、それが各章の都度繰り返される。やがてそれが主人公みのりの祖父の戦時中のことだとわかる。
ストーリーは、みのりの大学生活から結婚した現在までを時間を前後しながら繰り返される。
長編ゆえ、彼女の大学時代のボランティアサークルを通じた親友たちとの交友や、サークル仲間との海外活動、それに祖父の謎の交流などなど話は多岐にわたる。
それらの底に流れ、折に触れ語られるのは、題名の「タラント」=使命感(聖書に出てくる言葉だとか)。
主人公みのりはもとより、甥の翔太も繰り返す。使命感、言葉を換えれば才能が翔太にはあるし、親友たちにもあるが、みのりはあるふりをしていただけと思い惑いながらも、使命感のようなものに駆られたときが、たしかに自分にもあったと自覚する。
「だれも彼もが何かしらのなんということにない義務感に突き動かされ、それに従っていて、それがつまりはそれぞれにあたえられら使命であり才能だと」、みのりは思う。
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大学時代にバリ旅行をしたことがある。初めての海外旅行だった。旅行会社のツアーだった。食事も美味しかったし、海も楽しかった。ツアーではバスで移動し、現地の人が工芸品?のように何かを作っている場所を見学する→その後土産物店でショッピングタイム、というのを数回繰り返した。この本を読んでその時感じた違和感を思い出した。
ボランティア活動に対する疑問や葛藤や違和感、パラリンピックに対する無知。敢えて言わない考えない思わないようなこと、これまで踏み込もうとしても結局避けてきた思いが次か次へと思い起こされ、この主人公と同じかもしれないと思った。
何も知らずに日本にいる。世界の紛争についての報道に触れ、平和ではない地域の人々の声の記事読み、トランプ大統領の発言を知り、あれこれ思う。知らなければならないと思いもする、日本人で良かった、と無責任にも思う。そんな自分が恥ずかしくも感じる。
「よいこと」をした方が「よい」。当たり前のようで真実ではなく、何も考えずにそんなふうに思い、娘にも言ってしまっているかもしれない自分が怖い。
読み終えたばかり。落ち着くまでは少しかかりそうだ。
落ち着いてまた再読したいと思える本だった。
Posted by ブクログ
社会問題を自分に引き寄せて考えていたり、支援活動やボランティアに携わる人により親和性が高い物語と感じる。
主人公、学校にあまり行かなくなった甥、何か事情深い言葉少ない祖父 3人が散歩に行く冒頭のシーンがなんとなくいいなと思った。
中盤より、
自分に何ができるのか、善意といわれる活動、使命感とは、はっきりした正義があり活動につきすすめる人物への思い、目を背けたり逃げてもいいこと、タラントって何?
そういう問いが連続してくる。非営利活動をしていると、通る問いばかり。
そんな中で滲み上がってくる祖父清美とバラ選手涼花のストーリー。物語の初めからじわじわと染み込んでいた戦争経験とともに、見えてこなかった祖父の気持ちの一部が弾ける場面、競技用義足をつけて走って空を飛べるんちゃうかといって笑う一節が、とてつもない光であり、好きだ。この見開きページが物語全体を照らすように思う。
Posted by ブクログ
まず。
やっと読めた、読み終わったという印象。
そして、どっと疲れた。
主人公山辺みのりの視点を通してずっと読み続けてきた。私自身みのりと同年代ということもあり、就職氷河期だったり、アメリカ同時多発テロだったり、東日本大地震だったり、コロナ禍だったり、大きな流れの中で何かできることをその時々で成し得たいと、もっというと、役割を果たしたいというみのりの気持ちや、挫折、戸惑いや迷い、諦めなどその全てが突き刺さる感じで、正直読み進めるのが難しかった。
物語の終盤、みのりはいろいろな人との出会いの中で、それでも自分を突き動かす何かによって、また何かをやり始めようと思う。そう、やらなければ、何もわからないし、何も始まらない。誰の人生でもなくて、己の人生の延長線上にしか、己はいないのだと、ようやく等身大の自分を分かるようになる。
角田さんの作品を読むと、私自身どうしようもなく平凡で何者でもない自分であることを真正面から叩きつけられるけれど、それでも前向きな気持ちにさせてくれるのは、それぞれの人物にはそれぞれの人生があるっていうことをちゃんと伝えてくれているからだろう。それをタラント、という言葉で言うのなら。
Posted by ブクログ
ニコチャンマーク(無表情)
第一章~第八章
ニコチャンマーク(笑顔)
あれ? 投稿したと思った感想がどっかへ行っちゃった
なんで?? (/ω\)イヤン
面白かったからもう一度読む?
集中して読んだ後の気持が……
忘れたころに 読めたらいいな
Posted by ブクログ
タラント=〘 名詞 〙 ( [ギリシア語] talanton から ) 旧約聖書では、三千シケルに相当する重量の最大単位をいう。新約聖書では、重量と、六千デナリに相当する通貨の単位をいう。のちにこのことばは、各自に与えられた神の賜物の意に使われるようになった。「才能」の意のタレント(talent)も、これに由来する。ー引用「精選版 日本国語大辞典」web
みのりたちの自意識が身につまされる。そうだ、大学生のころは同じようなことを思っていた。そしてどんどん都合よく言い訳して忘れていく。この歳になり自分にタラントはなかったとよく考えている。「今からでも遅くない」とかいう慰めや励ましが欲しいのではない。行動しなかっただけと言われるのも受け止める。ただ、突き動かされ持続する情熱が今日までの自分に持てなかったことが、とても残念だと思ったのだった。
Posted by ブクログ
何者かになり得るのは選ばれし者なのか?
今自分の周りにいる若者たちに読んでほしいと思った。でもこんなにもしみじみズキズキしたのは、使命・才能の類の言葉から希望・野心みたいな気持ちもさして湧かず他人事のように感じてしまう大人になったからこそなのかも。
世に名を馳せる何者かにはなれなくても、世界中の困っている人を救えるような才はなくても、今の自分の世界を今の自分で"やったるか〜!"と思った。とても丁寧に背中を押してもらった感じ。
Posted by ブクログ
前振りが長すぎて冗長な印象。我慢できず読み飛ばし気味に読んでしまい、肝心の人の使命なんてものがあるのか、自分のやりたいことに従って生きるというテーマと、主人公の祖父がうまく繋がらず。
Posted by ブクログ
鮮やかなブルーの表紙に魅せられジャケ買いの一冊 角田光代は好きで読み続けている作家さんの一人である ぼんやりした話の中に主張強めのメッセージがある 表題のタラントは聖書から引用された個人に与えられた賜物という意味で主人公みのりはこの人生で増やすことができるのか 青春真っただ中の多感な20年間を描く ちょっとお話が内容のわりに長かったかな
Posted by ブクログ
主人公がタラントとは、なんだろうと思い巡らすくだりがある。
パラリンピックの陸上選手も描かれている。
神様から挑戦という課題や使命を与えられた人という意味のチャレンジドにも通じるように思う。
Posted by ブクログ
タラント
角田光代
終戦記念日の今日、読み終えて良かった。
8章からなる長篇小説。シーンごとに考えさせられるものがある。貧困/戦争/障害/夢/実行力/震災/コロナ…さまざまなテーマを時系列通りでない構成で扱い、それが逆に起伏や読みやすさを持っている。
内容が深く厚いので、いくつか心に残ったことを。
・ネパールの学校の子どもたちの夢はみな「先生」だったが、おそらく他の職業を知らないからだという。
・後押しするムーミン
・うじうじすることも、そんな自分を嫌悪することにも慣れてしまっている
・国に命を捧げた若者が、戦地から帰ってきてしまった葛藤と「失ったものを数えず、残されたものを最大限に生かせ」という言葉
Posted by ブクログ
角田光代さんはかなり好きな作家さんで、期待感が強すぎたのかあまり入り込めなかった。
時系列が頻繁に変わるところがついていけなかったのかも。
祖父の回想は陸が書いたんだなと気付いたときはなんだか温かい気持ちになった。
Posted by ブクログ
清美さんの最後の心情の吐露に泣けた。
世界各地の「現実」を知って、向き合って、
それに対して何か行動を起こすことも
特に行動しないことも、自分を守るために向き合わないことも、どれも間違いではない。
自分ができること、したいことをしよう。
「したい」と思ったときに。
Posted by ブクログ
終始みのりの逆転?復活?に期待してしまったが、そういう話ではなかったかな
全く接点のない世界や考え方だったから、そういうのもあるのか〜と思った。知らない人生を知れるのはいいことですよね
Posted by ブクログ
話があちこちいっている感じで、なんとなく消化不良のまま終わってしまったような…。
「何かしたい、何かしなくては」というところから、
「なぜあの人が死んで私は生きているのか、生きている私は立派なことをしなくてはいけないのではないか。」
「何もしなくてもいいし、やりたいことは小さなことでもやってみればいいし、失敗したり続かなかったらまた新しいやりたいことを見つければいいし。」
へたどり着くまでの道のり、なのかなぁ…。
Posted by ブクログ
香川から東京の大学に進学し、ボランティアサークルに入ったみのり。
卒業後も日本の絵本に外国語の翻訳をつけて、本を送る小さな出版社に就職し、休みには海外の難民キャンプを回るようたスタディツアーに参加していた。
ヨルダンの難民キャンプでみのりが抱いた親切心から起こった事件がトラウマとなり…
みのりは…
戦争で片足を失ったみのりの祖父・清美は、みのりの進学とともに、たびたび東京に。
清美は何をしているのか…
パラアスリート・涼花との繋がりは…
なかなか長かった…
そこまで引きずらなくても、というくらい。
みのりはごくごく普通なのかもしれない、何か飛び抜けたものがあるような。
失敗するのが怖くて、なかなか踏み出せない。
考えすぎじゃないかというくらい、考えてしまう。
祖父・清美とパラアスリート・涼花との関係から、清美の過去を知り、義足について考え始める。
不要になった義足を必要とする人たちに届けることを思いつく。
みのりがやっと動き始める。
長かった…
ここまで10年以上かかったのか。
陸が書いてたんだね、清美の過去の話は。