角田光代のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
問いかけから始まる文体が多いからなのか、角田光代さんとちょっとした行きつけのバーや喫茶店で恋バナやら人生やらについてよもやま話をしているような気分になる一冊。
「あなたも一度くらいあるよねえ?褒められてキャラが微妙に変わったこと」
「男運なんてものは存在しなくて、私も友人も知人も、自分のシンプルな基本設定に忠実に恋愛をしてきただけなのではないか、と思うのだ。
〜大事なことと許せないこと、つまるところこの二点を満たしている男と、人はだれでもつきあうのではないかしらん。
〜男運が悪いと言われている女の子って、つまり基本設定がゆるいというか、即物的ではないだけなのではないかと」
「当事者でありながら過度な関心を持たない。それは、愛とより近しいと私は思うのだ。信頼と言い換えてもいい。
〜無関心のまま、家族の食事の世話を完璧にこなすフネは本当にかっこいい。」
「何回恋愛をしたから上達するということもあり得ない。馬鹿みたいな人と連続五回つきあっても、六回目にまた馬鹿みたいな人を好きになったり、平気でする。醬油さしラビリンス。」
(醤油サシって何かしらの欠陥あって正解を探して買い続けるけど、なかなか見つからないよねって難しいよねって話)
「親しい人、好きだと思える人たちのあいだにこそ社交辞令は存在すべきだと。」
「人の会話って、ほんと、馬鹿みたいだよなあ。馬鹿みたいで、意味もなくって、くだらなくて、大切なことはいつも伝わらなくて、けど、なんてあたたかいんだろう。そう思った。」
「しかし一方で、酒でどんなに失敗しても(記憶がない、道路に寝る、知らない人にからむ、夜まで続く二日酔い)、酒トラウマが私に何も学習させないのはなぜだろうと、疑問に思ったりもする。」
20年以上前のエッセイと知り驚いたくらい、何年経っても古臭いと感じさせないお洒落な感覚と普遍的な感性を持ち合わせてる角田光代さんのファンになった。 -
Posted by ブクログ
人生に対して、もういかほども抗うことができなくなり、諦念を持ってしまってからでさえも、人はふりかえり、あのときあんなことしなければ、とか、ここをこうしとけば、とか、そんな生産性のないことをついつい考えてしまうものだと思います。
『当たり前の、普通の、平凡な人生を送ってくればよかった。なんのことはないそれが一番だったんだ』
僕はふりかえってそんなふうに
思ったりするんです。
『平凡』ってなかなかに
難しくないですか?
『平凡に生きてる』って
案外非凡なことなのかもしれません。
『平凡』って幸せと同義なのではないだろうか、と還暦をこえてからそう思うようになりました。
当たり前に日々を健康で過ごせること、
それって実は大きな祝福ではないかと。
そんなあたりをうまく書いてあると思う表題作だけでも読んでみて欲しいし『月が笑う』とかも心に残るし、みな粒揃いなので、できれば是非手にとってみていただきたいと思います。 -
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ネタバレ知られてないのが惜しいレベルで高評価な一冊。
あらすじはかつてボランティアに勤しんだ孫女のみのりと戦争に行き足と感情を失った祖父の清美と不登校気味な甥の陸が各々抱える悩みや過去が交錯しながら進むヒューマンストーリー。
ボランティアを「助ける側と助けられる側を無意識に線引きしてる」とか、救われる側はしおらしく弱者であってほしいという無意識な考えとか等身大だけどリアルな視点や物の捉え方にひとつずつ共感できる。善意には善意で返すという無自覚に信じているところとかハッとさせられる考え方を言語化してくれる一冊だった。
「この子は困難な立場にいるというだけで、私と隔たった世界にいるのではない。かっこつけたいし、写真にはきれいに写りたい。学校にいきたいのは勉強したいからではなく、サッカーがしたいからだし、殴られればムカつくが、だからといってどうすればいいのかわからない」このワンフレーズが印象的。海外で困っている人をどこかで線引きして、自分とは遠い存在、違うなにかと思っているが本当はそうじゃないこと。もっと普通に等身大の人だということを言い表しているのが印象的。 -
Posted by ブクログ
まだ字も書けないほどの小さな女の子が戦争のために家族から離れて疎開した。
家族からたくさん愛されてきた小さな妹。
両親の心配をよそに元気に疎開先へ出かけていく。
その後疎開先でどんどん元気をなくしていく様子が字のない葉書からありありと伝わってくる。
その変化に胸が締め付けられた。
どんなに心細く苦しかっただろう。
お母さんもお父さんも居ても立っても居られなかっただろう。
子どもたちの無邪気さ、健康、安全基地、時には命を奪ってしまう戦争の理不尽さをひしひしと感じた。なぜ人間はそんな愚かな行為に繰り返し走ってしまうのか。
小さな妹が無事に大きくなってよかった。
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最終巻ものすごく面白くてあっという間だった!!
特に蜻蛉→手習→夢浮橋の流れがドラマチックで、なんというか今風で…とにかく読みやすかった。
古典を読んでいるというよりエンターテインメントを楽しんでいる感覚
浮舟に憑いてた魔物が「1人目は取り殺した」って言うシーン怖すぎて鳥肌。大君の名前出さずに、でも読者には大君のことだとわかる、そういう昨今の漫画のような演出を1000年前からやってたのスゲエ…
源氏物語途中で作者変わってる説あるけど、たしかに宇治十帖(特にこの8巻に入っている浮舟以降)はテイストがかなり違うように思える。でも私は、創作している過程で書き方が変わったり書きたいものが変わったり筆が乗ったり乗らなかったり、そういうものの結果だと思うけどね
人の不幸を描けば描くほど冴え渡る、それが紫式部だということは一貫して変わらなかったわけだし。
角田さんは相変わらず薫のことが大嫌いみたいだけど、わたしは光君よりだいぶ好きです
なぜなら歪なキャラクターが大好きなので。
しかも無意味に歪んでいるのではなく、薫のような「なぜここまで歪になってしまったかがわかるキャラクター」が良いの。味があって面白いの。
光君たちの時代から続く業がつくりあげたある意味悲しい男だよな
考察のしがいのある奴ってだーいすき
源氏物語全部読んで、変な感じだけど、日本人になれたって気がする -
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最近エッセイが好きでよく読んでいるが、その中でもこの本は、とくに五感を刺激してくれるエッセイだと感じた。
これまで食にまつわる小説やエッセイをいくつか読んできたが、どちらかといえば小難しかったり、手間暇のかかる料理が多かったりして、自分からは遠い世界、額縁の中に飾られた芸術を鑑賞するような感覚があった。
それと比べると、この本はもっと身近で、読んでいるあいだ、いままさに手元で同じ情景を見て、味わっているような感覚を呼び起こしてくれる一冊だった。
言葉選びや文章のリズムが心地よく、踊るように楽しんで書かれているのが伝わってくる。きっと話すときも、わくわくしながら嬉しそうに語る人なのだろう、と想像した。 筆者がもともと偏食だったという記載もあり、だからこそ、普通の人なら当たり前として通り過ぎてしまう感覚をひとつひとつ見逃さずに受け取り、良し悪しで評価することなく、丁寧にすくい上げて表現している。そんな印象を受けた。
私自身、ここ数年ほど適応障害を患い、食欲も睡眠も死んでいるような状態が続いていた。年始になってようやく、少しずつ食事に対する感覚が戻ってきたところなのだが、この本を読んで、その感覚がさらに刺激されたように感じている。
まだ全回復ではないので、生の食材に手を出すと腐らせてしまいそうだ。だから冷凍のものも織り交ぜながら、ほんの少しずつ自炊を増やせたらいいな、増やしたいな、と思わせてくれる作品だった。 食欲が死んでいるときに、もう一度読み返したい一冊。読めてよかった。 -
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主人公のみのりの語り口が、過去に遡る時と、現代の時とあって、その構成が面白く、みのりの考えがよく伝わった。
最近読んだ、善良と傲慢や、何者、正欲などとは違い、登場人物一人一人に共感できるところや、何か近しいものが感じられた。その人物描写が素敵だと思った。
みのりの祖父についての文章が間に挟まっているが、これはみのりの甥の陸が書いたものであると言うのが素敵だと思った。
みのりの祖父が、戦争での経験を通して新しい挑戦や感情を放棄してしまった気持ちもよく理解できる構成になっており、世界で起きる惨事から目を背けてもいいんだよというメッセージがある。
みのりの夫の性格も素敵だと思った。先行き不透明でも悲観せずに穏やかでいるという才能を持っていて、みのりも夫と一緒にいる時はありのままでいられるというのがいいなと思った。
みのりの大学生のときの友達も、その人たちについてみのりが考えることも、ああ、そうだねって思えた。
また読みたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かった。
子ども時代の、日常から離れた夏の思い出から、だんだんと現実に近づいていく。
自分たちのルーツを知ったところから少しずつ紐解かれていって、そこにはそれぞれの苦しみや葛藤があって
知りたくないことも知らなくてはならないのが現実で
でも知った先に待っているのは決して不幸ばかりではないのも、リアルだなと思った。
角田光代の作品って、綺麗事だけじゃないところがいい。
賢人と紀子が結婚しましたとか、ドナーから本当の父が見つかって感動の再会とか、そういうおとぎ話的な展開にならなくて本当によかった。笑
ドラマみたいなことは起こらないけど、少しずつ、でも確実に心が動く瞬間があって、そういう細かい描写に出会うたびにグッとくる。そんな作品だった。