あらすじ
直木賞作家・角田光代が全力を注いで書き上げた、心ゆさぶる傑作長編。不倫相手の赤ん坊を誘拐し、東京から名古屋、小豆島へ、女たちにかくまわれながら逃亡生活を送る希和子と、その娘として育てられた薫。偽りの母子の逃亡生活に光はさすのか、そして、薫のその後は――!? 極限の母性を描く、ノンストップ・サスペンス。第2回中央公論文芸賞受賞作。
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Posted by ブクログ
最高すぎた。
私が1番好きな映画、マレフィセントのよう。
究極の愛の姿とは
母と子
私は産みの母の顔を覚えていない
でも、寝たふりをした私を寝室に運ぶ母の匂いと、ソバージュのふわふわの髪。
両親が喧嘩をしていて、キッチンへ避難させられプープー鳴る椅子に座って楽しいふりをする自分自身。
その二つだけ覚えている。
継母とは良好でたくさん愛情を貰って大好きすぎるので、私にとってやっぱ育ての母が当たり前に正真正銘お母さんだけど、少しだけ、ほんの少しだけ、自分を産んだ人を一目見てみたいとも思う。
その時私はどんな事を思うんだろう。
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白かった。逆に映画もドラマも通らずにいててよかった。そのどれよりも駆け抜けて読みました。
深く考えない、疑問を持たない、主張がない。自分を持っていないから、悪意や憎しみといった負の感情が薄い。これは僕のことかもしれない。反省。
不妊の恨みは強すぎる、産婦人科としての身が引き締まる想いです。
Posted by ブクログ
皆さんは、人が持つ愛や誠実さについて、真剣に考えた経験が一度はあるのではないだろうか。
そしてそれらを成就することは、社会的・倫理的な正しさと、果たしてどこまで合致するものなのだろうか。
この作品は、そのようなことに興味のある方には、最適の小説の一つだと言えるだろう。
特定の状況や出来事の前後における、個人個人の成長や変化と、人間模様の移り変わりを観察することが好きな方にも、向いているといえそうだ。
表向きは母性愛をテーマにしたこの作品。しかし同時に僕には"誠実さ"が陰のテーマとして宿っている気がしてならない。
実在の事件をヒントに描かれた作品なので、全体的に悲壮な雰囲気が漂っている。だが読後には仄かな温もりと幸せの予感を汲み取ることができるのではないだろうか。
以下ネタバレを含むので、これから読む方、読みたい方にはブラウザバックをお勧めする。
主人公・希和子の悲劇的かつ絶望的な母性愛は、確かに歪んでいたかもしれない。だけど、歪んでいてもそこにはれっきとした愛のかたちがあった。
たとえば"薫"に初めての歯が生えた時の、希和子の喜びの描写を振り返ってみよう。
そこに確実に本物の愛があると、読者にも読み取れるがゆえに、この物語は冒頭から涙ぐましくも健気な美しさを湛えている。
その模様はショパンの『葬送行進曲』における、あの悲しさと優しさの同居する旋律のようだ。
さらに深いことに、希和子の"薫"によせる愛の強さは、恵理奈(=薫)のじつの両親の、"恵理奈"への形式ばった愛情を明らかに上回っているのだ。
もう一人の主人公、恵理奈が希和子のことを憎みながらも、彼女や、彼女と過ごした土地をどこか懐かしく感じてしまうのは、まさにこの点に由来すると、僕は思う。
これに気づくことは、この物語を理解する上での重要な鍵になってくるのではないだろうか。
恵理奈は全体的に威圧的な雰囲気を纏った女性に成長する。経緯を考えれば、それもやむを得なかっただろう。
だがかつてマロンと呼ばれた女性、千草と、その好奇心溢れる姿勢に触れることにより、その厳つさは徐々に解けていったように見える。
歴史は繰り返す。それは家庭内においても当てはまる。
だが恵理奈の、希和子とは異なる最終的な決断からは、彼女と同じ過ちを繰り返すまいとする強い意志が感じられないだろうか。
とはいえ、この物語で最も誠実を一貫した人物は、実は希和子ではないかと、僕は思うのだ。
手記に日記形式で丁寧に日付を書く様子からも、それが伺える。また彼女の"薫"に対する愛の深さは、まさにこの誠実さに由来している気がしてならない。
おそらく不誠実な人物は男性陣二人と、恵理奈の母・恵津子である。
その言動もさることながら、度々描かれる、乱雑に散らかった彼らの部屋は、その誠実味のなさを象徴的に物語っているのではないだろうか。
誠実な人が生涯苦しみ、不誠実な人が大手を振って堂々と生きる。逆説的ではあるが、この作品はそんな社会の本質を、僕たちに密かに、しかし鋭く突きつけてくる。
最後に、希和子の愛は、読者にも乗り移るほどの強さを持っている。
たとえば僕は、恵理奈が成長を通じて好ましくなさそうな男性と関係をもっていくことに、不意にいわば嫌悪感を覚えたのである。
これは、希和子の"薫"への母性愛が父性愛となって、僕に感得されたことに他ならないのではないか。
結婚もしていなければ子どももいない僕だが、その自分にも父性愛は確かにあるのだ。
展開を通じて読者の内面さえも照射してくれたこの作品は、紛れもなく僕の中で名作である。
ショパンの楽曲『葬送行進曲』は、絶望的な曲調から始まり、優しい光が射してきたと思うまもなく、再び暗澹とした曲調に戻って終わる。
だがこの作品はそうではない。最後に温かくきらめく光を見せてくれるのだ。
『誠実な人が生涯苦しむ』と先に書いたが、希和子も今後、心穏やかに暮らしていくことができるのではないだろうか。何となくそんな感じがした。ふたりの女性のこれからの幸せを願うばかりである。
Posted by ブクログ
序盤のサスペンスフルな逃走劇から、終盤の誰もが胸を打たれる重厚なドラマまで、本当に濃度が高い読書体験だった。
最重要のテーマとして、「母性」が扱われる。すべての人間に等しく「母性」が備えられているという願いが込められた、とても優しい作品だった。また、舞台となる1980年代の世相や時代背景(宗教施設等)を丁寧に描くことで、完璧な世界観を構築していた。
7日しか生きられない蝉の一生と、複雑な生い立ちを背負う女性の一生を掛け合わせた作品名が秀逸。これだけ複雑な再生の物語を、「八日目の蝉」としてまとめあげる作者のセンスと着眼点に脱帽。
終盤の、薫(恵理菜)が希和子の生涯を追体験しながら、人生の意義や家族の在り方を見直していく過程が切なすぎた。
そして何より、小豆島の描写の美しさ。島の自然・海・祭り・醤油の香り等の風土の魅力がありありと伝わってきた。島特有の濃くて優しい人間関係もとても丁寧に描かれている。
ラスト、フェリー乗り場でギリギリ交わるようで交わらない薫と希和子がもどかしい。ただ、お互いにとってこれがベストなのだと頷くしかない幕切れだった。
小豆島、行かなくちゃな。
Posted by ブクログ
序盤は、ハラハラしすぎて、犯罪だし早く捕まって欲しい、、、と言う気持ちでいっぱいだった。
後半、成長した薫(恵理菜)のその後や、千草が調べ上げたいろんな事実がわかるにつれ、何が正解だったのだろうと考えるようになった。
元の両親のところへ戻らず、希和子と逃げ続ければ薫は幸せだった?でも誘拐している以上普通の生活は望めないわけだし、どうすればよかったのだとずっと考えてしまう。
自分にも幼い子供がいるので、母の愛に涙が止まらなかった。
Posted by ブクログ
『八日目の蝉』感想
『八日目の蝉』は、日野OL不倫殺人事件をモチーフにした作品だと言われている。実際の事件では、女性Aが不倫相手Bとその妻Cの子ども二人を焼死させている。そして、BはAに二度の中絶を強要し、精神的にも身体的にも深い傷を負わせたうえ、CはAに対して「子どもができても簡単にかきだす」と侮辱した。
この事件を知るとき、簡単に善悪で切り分けられない「誰もが被害者である」という視点が浮かび上がる。
もちろん、何もしていない子どもを奪ったAの行為は決して許されない。しかし、Bが恋心を踏みにじり、希望をちらつかせながら追い詰めた過程を知ると、胸が締めつけられるような、ただただ惨く悲惨な現実に向き合わざるを得ない。
Aの中に渦巻いた嫉妬や憎しみを、私が安易に理解しようとすることでさえ、踏み込んではいけないと感じると同時に、それでも、理解しようとしてしまうほどの複雑さがある。
小説の中でAは子どもを誘拐し、逃亡生活の中で無償の愛を注ぐ。服役後、外の世界に戻っても、彼女は薫の姿を思い浮かべ続ける。
そして実際のAもこの小説を読み、数日間体調を崩したと聞いた。私はその事実に触れたとき、「彼女は何を思ったのだろう」と考えずにはいられなかった。
もし、ガソリンをまくのではなく子どもを連れて逃げていたら。彼女もまた、薫に向けたような愛を注ぎたかったのだろうか。それとも、BとCの存在が憎悪となり、愛と復讐が入り混じった末路だったのか。
考えても答えは出ず、ただ言葉にできないやるせなさだけが心に沈んだ。
そして、最も強く感じたのは、この事件で最も悪いのはBであるということだ。
なぜ、Aが無期懲役となった一方で、Bは平然と生きていけるのか。
こんな非人道的な男になど、絶対になりたくない。
不倫の末路にあるのは破滅だけだと痛感させられた。
タイトルについて ―「八日目の蝉」
「蝉は七日で死ぬ。もし八日目まで生きたら、孤独なのか。それとも、自分だけが見られる景色があるのか。」
小説の中で問われるこの言葉に、私はAの存在を重ねてしまった。
すべてを失い、人生が終わってしまったとしても、もしAが八日目の蝉になれたなら。
世界は残酷だったけれど、それでも八日目にしか見えない景色がきっとある。
そんな希望を、この物語は差し出しているように感じた。
もちろん、子どもを奪った加害者に軽々しく同情してはいけない。
それでも、私自身もまた、何もかもが終わったとしても八日目の蝉でありたい。
自分にしか見えない景色を求めて、もう一度生き直す力を持ちたい。
そう思わせてくれた、小さくて強烈な生の衝動をくれた作品だった。
⸻
Posted by ブクログ
犯罪者をこんなに応援したくなるなんて。
営利目的ではないからか?
母性に訴えかけるからか?
心情にシンパシーを感じるからか?
希和子と薫に「早く逃げて!逃げて!」と叫ぶ。
逃亡劇は中盤でガラッと反転する。
出てくる男性はみんなクズ!…池澤夏樹氏の解説は良かった!
角田光代氏の長編は2冊目。短編より長編の方がやっぱり好み♡
頭の中の小豆島に憧れる。
映画もドラマも観てないが、再放送されたドラマはダビングしてあるので、小豆島のロケを期待しながら近々観てみよう。
たぶん泣くな(TT) ひとりで観るわ。
Posted by ブクログ
描写力が凄まじい作家の一人。
角田さんの書く文からは、その情景がありありと目に浮かんできます。
タイトル回収も秀逸。
狂気であっても、引き込まれ、いつか応援してしまう...そんな物語でした。
Posted by ブクログ
読んでいて気づいたら感情移入してた。希和子と薫が幸せな時はずっこうでいいんじゃないと思ったが、色々な逃亡をしたのち、希和子は捕まり途中まで希和子の視点で書かれていた文章が今度は薫の視点で書かれていた。
物語は綺麗にまとめられていて読みやすく、物語は終わったが、続きで色々な可能性が考えられ、読んだ後もいろんな想像ができて面白かった。
あといつか小豆島に行きたくなった。
Posted by ブクログ
とにかく幸せになってほしいと願ってしまう物語だった。
悪いことをしているはずなのに何故か願ってしまうのは、巻末の解説にもある通り母子には手を差し伸べたくなってしまう力があるのだと実感した。
ただの読者である私も、母子を助ける作中の女性たちの気持ちが分かる気がしてしまう。
先の展開を知るのが怖くなるくらいドキドキしながら読み進めていたが、いざ決定的な場面になると不思議なくらい冷静になる。
人というものを俯瞰できる何とも言えない感覚だった。
物語の進み方が映画を見ているような感じで、そこも大きな魅力だと思う。
少しずつ色々なことが判明していく流れも、何となく自分を登場人物に投影できて面白かった。
ドラマや映画として実写化もされているらしいので、見てみたい。
Posted by ブクログ
誘拐犯なんかに感情移入するはずがないと最初は思っていた。けれど、親と子の掛け合いが丁寧に描かれていて、そこから関係の良さも滲み出ていて、この先明るい未来はないんだろうなと想像すると自然と涙が溢れた。自身も3歳になる子を持つ身なので、自分の子どもと重なった。希和子を憎みきれないと言う恵理菜の一文を見て少しホッとしてしまう自分がいた。
Posted by ブクログ
本を読んで号泣したのは初めて。誘拐というテーマは現実離れしてみえるかもしれないが、あまりに生々しい書き振りに日常の延長線に思える。登場人物が良い人でもなく悪い人でもなく、どこかにでもいそうな人だからだと思う。普通の人が織り成す悲劇。
実母が一番可哀想なのに、可哀想と思えなくさせる描写が憎い。印象で簡単に覆る世間の目そのものだ。
この作品は、誰が悪いと犯人探しをすることに意味はないと繰り返し言っているのに、実父も実母もクズと断じる感想になるのは残念。希和子がこんなことになるとは思ってなかったように、誰の身にも起こりうることだと身を引き締めることしかできないだろう。
角田光代さんの小説は、重くて苦しいのに最後は前向きに集約されるので安心できる。読んでいて、何でそうなるの?今のどういう意味?となることが一瞬もなく、ノンストレス。そういう意味では娯楽作品としても完成度が高いし、社会派小説としても楽しめる。
映画もすごくいいので、よかったら観てください。
親子の様な血縁同士でも、互いの命を簡単に終焉へ運んでしまうのに、
物語の主人公、希和子は法律や倫理観念といった人間が組み上げた枠を力強く超え、愛する者守り抜く。
本当の親子とは、愛とは何か、、囲うコトのない素直な描写に感動し、何回も読み返しました。
Posted by ブクログ
半分あたりから、完全に希和子に感情移入してしまい、1日でも長く一緒にいられますように、、!と願ってしまった。
切ないのに読後感は爽やか。ラストがキラキラ色鮮やかで好きだった。
Posted by ブクログ
希和子の経験は唯一無二だと思うのに、初めから終わりまで感情移入してしまって、一つ一つの出来事にこちらも心をかき乱されていた。
終わり方が、読者に未来の想像を委ねるような形だったのがとても良かった。
また、さも実際に起こった出来事なのではなかろうか、と思わせるようなリアリティも、この作品の完成度を高める要素の一つになっていたと思う。
Posted by ブクログ
不倫相手の赤ちゃんを誘拐するなんて人として決して許される事ではないけど読み進めていくうちにどんどん犯人の希和子に感情移入していった。
映画未だ観ていないので映像でも観たくなった。
Posted by ブクログ
女性の生きることへの葛藤。男社会の身勝手を女性が皺寄せを受けてきた時代の苦しみは、今も変わらない。もっとも純粋なのは、子供への愛情だけか。島田雅彦氏の後書きがあって、なんとか男も救われる。
Posted by ブクログ
本の題名、八日目の蝉
これは一体何を意味するんだろう。
というのが、この小説を読んでみようと思ったきっかけ。
なんだろうと思う興味心が先に立って、とても重たい小説だったが最後まで読み切ることが出来た。
蝉はずっと土の中にいて、地上に出てきて七日で死ぬ。
七日で死ぬよりも、八日目に生き残った蝉のほうがかなしい。でも、八日目の蝉は、ほかの蝉には見られなかったものを見られれるんだから。
なんかうまく感想を書けなかったけど。
角田さんの本は、いままでエッセイはよく読んだけどこれからは小説も読んでみたい。
Posted by ブクログ
随分前に映画を観ていたのですが、小説もやっぱりおもしろいですね。角田さんの書かれる作品はそれぞれの登場人物の感情がとても細かく表現されていて読んでいて嬉しくなったりハラハラしたり時には寂しくなったり、といとも簡単に感情移入させられてしまいます。
希和子と薫が路頭に迷ったり危機が迫ってくると「早く逃げて」と焦り、ようやく落ち着ける場所を見つけると自分もほっと胸を撫で下ろす。希和子は母として薫の成長を心から喜び、一見すると美しい親子の物語のようにも見える作品です。希和子が捕まるまでは2人の生活がいつまでも続きますように、と応援している自分もいたはずなのに後に薫が実の両親の元へ戻されて恵理菜としての新しい生活は恐怖と混乱が繰り返されるところでは希和子を簡単に非難する自分がいました。
恵理菜の実の母親だって恵理菜が誘拐されていなかったら、夫が不倫さえしていなければ、生まれてきた子供を希和子がしたように大切に育てていたかもしれない。そこには幸せな家族があったのかもしれない。この家族を、そして成長した恵理菜を苦しめているのは全て希和子が悪いんじゃないかと強い憤りすら感じました。
ただ千草の言う「ずっと抱えてきたものを手放してここから出ていけるように」恵理菜も希和子もそして恵理菜の母親もそれぞれに抱えているものを徐々に手放していけるように祈ります。
Posted by ブクログ
子供をいつくしむ気持ちや子育ての多幸感が伝わってきてキレイに感じました。
途中ちょっと好みの分かれる内容もありますが全体的には読み応えがあって面白かったです
Posted by ブクログ
最初は読み進めるのが怖かった
赤ちゃんを誘拐する
例え育てることはできても、病気したらどうするの?学校はどうするの?
愛情だけでは無理
だから早く親に返さなきゃっ駄目だよ…..とずっとドキドキしながら読んでいた
結果として成長した恵理菜は、すごく重いものを抱えて生きる羽目になった(もちろん家族も)
だけど4歳までの愛情いっぱいに育てられた記憶はちゃんと心の奥底に大切に保存されていた
不倫していた両親、希和子、そしてまさかの恵理菜…とツッコミどころは沢山あるけれど、どうしても人間は過ちを犯してしまう
でもその後どうするか何を学ぶか
きっと恵理菜は希和子にしてもらったように、愛情豊かなお母さんになるだろう
私は自分の子どもを産み育てたことが、当たり前過ぎて忘れていたけれど、とてつもなく幸せな時間だったんだと気づいた
立派な子育てはできなくて、反省することばかりだったけれど、愛情は沢山あって子どもが大人になった今も変わらない
自分の記憶として大切にしていきたいと思う
Posted by ブクログ
主人公は薫として生きた方が幸せであったのか、恵里菜として生きた方が幸せであったのか
きっとどちらであっても20歳前後になった子供は自分で考え、与えられた環境を受けいれて生きていくのだと思う
ただ、子供が親になるとき、凡例は自分の親しかいないとも思う
その意味で自分は子供が積極的に肯定できる親にならなければいけないと感じた
幼稚園以前の記憶などほとんどないが、親からの愛を感じた瞬間と、親からの怒りを感じた瞬間は、カメラロールに残る動画のように不思議なほど俯瞰的に記憶に残っている
親は選べない、だからこそ子供の幸福が何よりの幸福である親になりたい
ある一人を選んだなら、男であるより父親でありたい
Posted by ブクログ
◾️サマリー
・お母さんだと思っていた人は誘拐犯だった
・実の親か、育ての親か
・実父と実母が最低すぎる
◾️所感
悲しい物語である。もしも、誘拐犯の野々宮希和子が捕まらなければ、逃げ切れていれば、薫こと秋山恵理菜の人生は、幸せだったのではないかと思った。
世の中、知らない方が幸せなこともある。
もちろん、誘拐行為は悪である。しかし、実父も実母もそれぞれ不倫、浮気をした上で産まれてきた子である。
他人にも関わらず、血の繋がりのない希和子と薫には、親子以上の繋がりがあるように思えた。
薫は、両親のもとに戻るが、とても幸せな人生を歩んだ訳ではない。実の親か、育ての親か。
希和子が警察に捕まる瞬間、自分のことよりも、薫はまだ朝ごはんも食べていないことを心配する。
自分の心配よりも子供のことを想う。希和子は間違いなく薫の母である。
◾️心に残る箇所
その子は朝ごはんをまだ食べていないの。
そうだ、彼女は私を連れていく刑事たちに向かってたった一言、そう叫んだのだ。
その子は、朝ごはんを、まだ、食べていないの、と。
自分がつかまるというときに、もう終わりだというときに、あの女は、私の朝ごはんのことなんか心配していたのだ。なんて、なんて馬鹿な女なんだろう。私に突進してきて思いきり抱きしめて、お漏らしをした私に驚いて突き放した秋山恵津子も、野々宮希和子も、まったく等しく母親だったことを、私は知る。
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八日目の蝉は、ほかの蝉には見られなかったものを見られるんだから。見たくないって思うかもしれないけど、でも、ぎゅっと目を閉じてなくちゃいけないほどにひどいものばかりでもないと、私は思うよ 貸
Posted by ブクログ
母娘 再読でしたが以前読んだのはいつのことか忘れてしまうぐらい前で、新鮮に読み進められました。親子でも、父息子ではなく母娘の設定が重要なんだと私は思いました。
最近では蝉は羽化してから1週間以上生きることが分かっているそうです。捕まえられた蝉は7日しか生きられないのかも知れませんね。大自然を生き抜けば長生きなのかも知れません。
Posted by ブクログ
映画 井上真央、永作博美主演、日本アカデミー10冠
逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか−−理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。家族という枠組みの意味を探る、著者初めての長篇サスペンス。
Posted by ブクログ
不倫相手の子供である秋山恵里菜を誘拐し育てた希和子の視点と、大学2年生になった恵里菜の視点で描かれた、親子とは?家族とは?を問われる作品。
誘拐という犯罪を犯しながら、薫と名づけた恵里菜に娘として惜しみなく愛情を注いだ希和子。
それに対して、自分たちの行動が招いた結果にも、戻ってきた恵里菜にも目を背け続ける恵里菜の両親を見ていると、罪とは何か?親の資格とは何か?と考えてしまう。
「誘拐された」という体験や、その経験から派生する物事は変えることはできないが、どう捉えるかはその人次第。
どんな体験も、それを糧に生きていくしかない。
未来への決意と共に、過去に向き合う覚悟を決めた恵里菜に、力強さを感じた。
Posted by ブクログ
幼い子供を、病院に連れて行けない環境で育てるのは無理があると思う…。本当にその子を想うなら、自分ではこの子の命を守れないと気づいた時点で親元に返すんじゃないかな…。
でも実の親も、20分も赤子1人家に残して行ってしまうような親だしな…。
大人になれば、自分で自分を幸せにできるから、どうか薫には幸せになってほしいと思う。
Posted by ブクログ
平坦なストーリーが展開されていく作品。
作品を通して抱いた印象は角田光代さんは誰かの日常を描くのがこの上なく上手いという事。
血縁関係がある人を親とするのか、育ててくれて愛してくれた人を親にするのか、、、永遠のテーマですね。