あらすじ
栄華を極める光源氏への女三の宮の降嫁から運命が急変する。柏木と女三の宮の密通を知った光源氏は因果応報に慄く。すれ違う男女の思い、苦悩、悲しみ。最高峰「若菜(上・下)」から「鈴虫」までを収録。
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角田光代さんの後書き通り、作者の筆が冴え渡っている。わたしは特に、三の宮の父(朱雀院)が娘の行く末をなんとか幸福にと願っているところが身につまされた。娘の方はどこ吹く風なのだが。
督の王(柏木)の死ぬ理由の屁理屈も弱っている時には、そう思うよなあ、という迫真だった。
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柏木、まさか。
と一旦、本を閉じました。
話がダイナミックに展開。
みんなの思いが少しずつズレていく。
あー。って思いながら、いままでで一番早く読み終わる。
それにしても、六条御息所の執念というか、執着というか…この世から去るときは未練を残さないようにしなきゃな。
到仕の大臣は気がつくのかな
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奪ってきた側の源氏が奪われる側に。源氏が柏木の手紙を発見し、彼と女三の宮の関係に気づく件が素晴らしい。その読者を楽しませようとする展開はまさにエンターテイメント。現代小説となんら変わらないことを千年も前にやってるんだから驚くほかない。
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あらすじは知っているので、角田さんの描き方を楽しみながら読み進めた。
あとがきにある、紫式部が光源氏の恋愛以外に書きたかった「別のこと」が何なのか、次巻から読み解くのが楽しみだ。
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「若菜 上」から「鈴虫」まで。源氏は39歳から50歳。ああ、柏木・・・。この巻では、源氏をはじめ様々な苦悩が描かれる。訳者の角田さんも仰っていますが、本当に運命はほんの少しのボタンの掛け違えで動いてしまう。次巻(6月発行予定)が待ち遠しい。
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角田光代さん訳『源氏物語』5巻。「若菜 上」、「若菜 下」、「柏木」、「横笛」、「鈴虫」の5帖が収録されています。
朱雀院出家。光君40歳の祝賀。朱雀院の姫君女三の宮が光君と結婚、六条院へ入る。光君、二条の宮に移り住んだ尚侍の君(朧月夜)を訪ねる。明石の女御、男の子を出産。明石の入道が命尽きるまで勤行すると決め山に入ったことを、明石の御方、娘女御、尼君、そして光君も、手紙で知る。督の君(柏木)、蹴鞠に興じていたとき、唐猫のせいでめくれた几帳の奥に、昔から心惹かれていた姫宮(女三の宮)の姿を見て思いを募らせる。冷泉帝退位、東宮が即位。太政大臣は辞職、左大将(鬚黒)は右大臣に昇進、明石の女御の産んだ一の宮が東宮に。右大将の君(夕霧)は大納言に昇進。朱雀院50歳の御賀に、光君は、若菜の調理と管絃の遊びを企てる。光君が外出した夜、紫の上は胸の痛みに苦しみ始め、その後も衰弱するばかり。中納言に昇進した督の君(柏木)、女二の宮を妻とするものの、女三の宮のことを忘れられず、その思いをとげてしまう。紫の上死去……と思われたが息を吹き返し、物の怪があらわれた。女三の宮は、督の君の子を宿していた。光君は姫宮の懐妊を知った後に、その真実までをも知ってしまう。紫の上の容体は落ち着いた。尚侍の君(朧月夜)は出家、前斎院(朝顔の君)も出家していた。女三の宮は男の子を出産、そして出家。病気がちだった督の君、帝が権大納言に昇進させるも、死去。大将(夕霧)は、督の君に病床で打ち明けられた〈心の内に思い悩んでいること〉が気になっている。夫を亡くした女二の宮(一条宮・落葉の宮)を訪ねた大将は、督の君が大切にしていた笛をもらって帰宅した夜、督の君の夢を見る。秋好中宮は、あの世の母御息所が成仏できずに苦しんでいるようだと気がかりでならない。
いやもう、めっちゃドラマチック。子ども世代、孫世代と、登場人物が増えてきて、人間関係がだいぶ入り組んでいるので、「この人が!」、「あの人が!」、「えーっ、この人とあの人が!!」などと、目が離せなくなっております。
ここに収録された「若菜」は、〈とりわけ完成度が高く、最高峰と評され〉ているそうで、読んでみるとうなずけますね。角田光代さんの「文庫版あとがき」でも、その完成度について、作家としての考察が書かれており、かなり興味深い。このあとがきのおかげで、さらにこの先が楽しみになってきた!
「若菜 下」で、朱雀院50歳の御賀のため、みんなで合奏練習する直前の描写が美しかったので書き抜いておきます。
〈趣深いたそがれどきの空に、梅の花は、去年の雪を思い出させるように、枝もたわむほど咲き乱れている。ゆるやかに吹く風に、言いようもない御簾の内の香りもともに漂い、鶯を誘い出せそうなほどに、御殿のあたりはかぐわしい匂いに満ちている〉
原文では、
〈ゆゑあるたそかれ時の空に、花は去年の古雪思ひ出でられて、枝もたわむばかり咲き乱れたり。ゆるるかにうち吹く風に、えならず匂ひたる御簾の内の香りも吹き合はせて、鴬誘ふつまにしつべく、いみじき御殿のあたりの匂ひなり〉
はぁ……雅ですなぁ。
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面白かった。まさか光源氏が奪われる側になるとは!表紙が何故猫ちゃんなのかにも納得。手紙が見つかる時も一緒にドキドキした。そして六条御息所がまた登場するのにもびっくり。紫の上にはただただ幸せになってもらいたい。
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女三の宮の登場によって、一番愛されてはいても、よるべない立場なのだと自覚してしまった紫の上の動揺が不憫だった。
親もなく、幼い頃から光源氏にグルーミングされてひたすら光源氏の理想の女性として生きざるを得なかったのに、正妻は別の人になり、自分は結局何者でもないんだ、なんなんだこれは?と足元が崩れるような感覚に陥った紫の上の心情がこれでもかと描かれていて、居た堪れなくなる。
そして女三の宮も不幸な女性だ。玉鬘の強さ、聡明さのあとで対極にいるような、少々発達的な何かをお持ちのような女性として登場する。
幾度も出てくる幼さ、あどけなさの表現。自我がなく、ふわふわしているうちに陥ってしまった事態も不憫。
何度も出てくる厭わしい、という表現は、光源氏から女三の宮に、女三の宮から柏木に向いて、愛されない禍々しい子を残し、誰も幸福になれずやりきれない終わり方をする。
光源氏の老い、翳りの見えた人生の後半戦を紫式部先生はシビアに描いてゆく。
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女三の宮はレイプされた上に、源氏に見下されてるのが不憫でしょうがない。温室育ちでほわっとしてるだけなのに…
源氏の棚上げ気質には驚くばかり。
源氏が紫の上に自分のことを「心のひねくれたつきあいにくい女だった」と言ってたことが本当に恨めしい…
と再登場の六条御息所!
やり過ぎだけど、気持ちはわかる。これはムカつく。
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光君がだいぶ大人になって、落ち着いてきた印象があります。あとがきで角田光代さんも書かれているけど、今までは光君が女性を奪う側だったけど、今度は奪われる側になって、三の宮と柏木の関係は光君にとっては因果応報というか、若い頃の行いがこういう形になって返ってきてしまったのかな、なんて思いながら読みました。
紫の上が亡くなるかもしれないとなったときの光君の様子はやはり紫の上が特別で最愛の人なんだとわかるのでもっと大事にしろよーと思ってしまいます。
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自身も、帝であった父の相手に恋して、その子供の冷泉院が実は自分の子である光君も、嫁である女三の宮と柏木の密通を知ることになる。そしてその子が生まれる。
自分がしてきたことをされたまでだと思う。
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(とてつもなく)長大な「若菜」とつづく柏木で、物語は大転換。
女三の宮の降嫁に端を発する物語の中で、光君は老いて見え、紫の上が自身のポジションというものをしっかりはっきりと自覚してしまい、柏木は道ならぬ恋により滅んでいく。恋でちゃんとしっかり身を滅ぼすパターンははじめて?描くべくして描かれているイメージ(あ、でも怨霊はいたなぁとなるタイミングでちゃんと言及される六条御息所もグッドです)
昔の読者らはこの辺りからの、なんとなく不甲斐ない光君をどう思って読んでいたのだろう、と気になる次第でした。
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孫ができた40代の光源氏。
それでも変わらず、まだ恋愛体質。
断れないからと妻が増えた。うーん。
そしてその妻が光君の子供じゃない子供を産んだことの気持ちが、棚に上げてるのに腹立ちました。
50代はどうなるのか?
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若菜、ずっと催し物だったりみんなの着てる服とか調度品の話とかでめちゃくちゃ退屈だな…本当にドラマチックな章なのか…?と思ってたら柏木が暴走するあたりでめちゃくちゃ面白くなった
平安時代の読者も意趣返し好きだったりするのかな。光君、ざまあ。と思ったりしたのかな。私は思ったよ
自分がしたことが返ってきたのに、いやむしろ自分の方がやばいことしてるのに、柏木と三の宮にキレてるのなんなんだよ笑
光君、本当不遜で鼻につくわぁ〜いくら美しくたってもう40超えたおじのくせに……‼️
若菜(下)で、光君が過去の女の悪口を紫の上に話し出して嫌だな〜と思ってたら御息所でてきて「だよなあ!」となった。想定の上で書いてるの、紫式部ほんとすごいわ…
あと柏木と小侍従の友達コンビかわいい
男女が気軽に会えない世界なのに、きっと御簾や几帳を隔ててコソコソ軽口叩き合ってるんだろうなあと思うともうそこがくっつけと思ってしまう 幼馴染喧嘩っプルいいじゃん
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「若菜」からは瀬戸内寂聴から角田光代に切り替え。どちらが好きかと言われれば、やはり寂聴さんかな。下の者が宮中の出来事を物語るという体を取っているので、これという名刺には全て「お」をつけ、「おうたをお詠みになります」とか「拝舞をなさるお姿は風情があります」とか、おもばゆいけど心地よい。そして帖ごとの解説も、状況確認できて嬉しい。もちろん、角田さんの翻訳も、とってもわかりやすいし読みやすいんですよ、でも寂聴さんの勝ち。
・若菜(上)‥朱雀院は身体も弱くなり、出家しようと決心する。そうなってくると心配なのは、まだ片付いてない三女の女三の宮。嫁ぎ先には困らないが、院としては光君(角田氏は光源氏といわず光君という)にもらってもらいたい。押される形でついに光君は三人目の妻をもらう。おもしろくないのは紫の上。今までどんな女を連れ込んできても自分が一番という自負があった。しかし今度は妻なのだ。位が高く、しかも若い!気持ちを察した光君はより一層紫の上を大切に思い、つい女三の宮をないがしろにしてしまう。容姿も品格も知性も紫の上の方が魅力的なのだ。督の君(柏木、頭中将の息子)は、朱雀院がどれほど三の宮姫を可愛がっていたかを知っているので、自分ならもっと大切にきてあげられるのにと悔しく思う。
さて、明石の女御(姫君)に息子が生まれた。光君の直系の孫だ。明石の御方(母)も尼君(祖母)も少しでもそばにいたくて仕方がない。でもお世話役は紫の上。東宮の子なので将来帝になる可能性もある。畏れ多いことです。妻と娘を都に送り出し、明石の田舎でひとり出家していた明石入道は、息子出産の報を聞いて、もう自分は不要と娘に手紙を出して山奥に消えた。
光君40歳の祝宴、当の本人は遠慮がちだが、帝の命を受けて六条院で盛大に行われた。帝、東宮、朱雀院、秋好中宮と名だたる面々が参加。この時夕霧は右大将を任じられる。
・若葉(下)‥督の君は三の宮のことが頭から離れない。恋文を渡すが反応がない。仕方なく、三の宮の姉妹二の宮(落葉の宮)を妻として迎え入れることにした。が、やはり思いは三の宮へ。どうしても諦めきれず小侍従に頼み込み、会えるように図ってもらった。念願叶い寝室に忍び込み、一晩かけて口説くが相手はつれない。しかしそこは男女のこと、たった一晩の行為で妊娠させてしまった。しかもそのことが光君に知れてしまったからさあ大変。督の君はすっかり意気消沈。朱雀院五十歳の祝いの席で、渋々光君と顔を合わせ、たっぷり嫌味を言われた。光君だって父親の女に手を出して子供(冷泉帝)を産ませたくせにね。
髭黒の前妻は、玉鬘に座を奪われて以来気が触れてしまい、娘と共に里に戻されたが、里の父、式部卿宮はその娘の嫁ぎ先をずっと心配していた。そこへあの玉鬘への恋に敗れた兵部卿宮(蛍宮)が、その気もないのに気のある素振りを見せてきた。それに乗っかった式部卿宮、さっさと二人を結婚させてしまった。意に沿わない結婚で兵部卿宮は妻に対して冷たい。
そんな折、冷泉帝は引退を決意。東宮が帝になり、明石の女御が産んだ一の宮が東宮の位についた。夕霧は大納言に昇進。
紫の上はすっかり弱ってしまった。気持ち的にももう引退して出家したいという。一度は死にかかり、祈祷により蘇るが、その際またあの六条院の女御が現れる。葵の上のみならず紫の上にまで‥しつこい女だ。
この帖では、住吉神社へのお礼参り、朱雀院五十歳を祝う琴の会、それに続く御賀を描き、華やかなる平安の宮家の高貴な方々の行事の様子を綴っている。
・柏木‥督の君は自分のやらかしたことの重大さを改めて感じ、自責の念で寝込んでしまう。そして悩み抜いた末死んでしまった。‥え、人間ってそんなことで簡単に死ねるの?身ごもった女三の宮は男子出産の後、出家する。(その際にまたあのもののけ六条御息所が現れる)
夕霧は友人だった督の君の妻、女二の宮(落葉の君)が里に戻っているところを見舞い、情を移す。
・横笛‥夕霧は友(督の君)が死ぬ間際に何か言いたげだったことが気がかりで、光君に真相を確かめようとするが、はぐらかされてしまう。
・鈴虫‥中秋の音楽会が六条の院で行われる。冷泉帝が退位し、六条に戻ってきた秋好中宮は、実母六条御息所が時々もののけとして現れるのを、なんとかくいとめたいと思う。