小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
さすが本屋大賞。とても面白かった。
主人公の貴瑚は、幼少期に母親と義理の父から虐待を受けた過去をもつ。父親違いの弟だけに愛情が向けられ、苦しんだ。その後、高校時代の友人と再会、アンさんと出会って救われる。そんな過去をもつ貴瑚が、海辺の田舎町に引っ越して、話さない少年と出会って……。
少年52の過去が明らかになるにつれ、貴瑚の過去も少しずつ明らかになっていく。貴瑚はどういった過去をもつのか、なぜアンさんと離れることになっているのか。貴瑚の過去の壮絶さに心痛むとともに、同じ52ヘルツの声をあげている52を助け出したい、見捨てられないという貴瑚の頑なな想いに共感することとなった。誰にも届かない、52ヘルツの声。私は聴けるのだろうか。いや、聴けない気がする。でももし聴こえることがあったらーーー。貴瑚やアンさん、美樹は、とても美しい心の持ち主だ。 -
ネタバレ 購入済み
時代に取り残された男の悲劇
満州で生まれ、家族と共に日本に帰り着いた秋好であるが、不運につきまとわれ、戦後の好景気に取り残されたために貧困のスパイラルにとらわれ、それが後の犯罪につながったのではないだろうか。むろん、全てが本人の責任ではないが。
その原因は主に病弱の(かつては神童と呼ばれた)母、次々と死んでいく弟妹、父の突然死など…。
無論家族が悪いわけではない。だが、これらのどれがひとつでもなかったら、真面目な性格だった秋好英明は、ごく普通に人生を送ることができたかもしれない。
とは言え、本人がいくら真面目に働いても、いい加減な親戚や周囲の関係者たちが足を引っ張る。(いい人間もいるが…)
そして本人の内気で断れない性格や、厳しく叱責されたことがなかった経験(この辺りは現代の人にも当てはまりそう?)から、謝罪や都合の悪いことは口にできず、また、それらから何度も逃げる。
そして、自分に借金があることを隠して金遣いの荒い妻を娶り、ようやく借金を返し終わったと思ったらまた金をピンハネされたり浪費癖のある妻が数十万もする時計を勝手に買ったりと、要するに彼の人生は貧しさと、流されやすい性格、また逃亡癖、逮捕、投獄により最愛の娘を失い…と、とにかく積もり積もって人生の坂を転げ落ちていく。
英明はしょっちゅう金をなくす。落としたり騙されたり立て替えたのを返してもらえなかったり、盗まれたり…。最終的にはスロットマシンに手を出し、のめり込んでしまいには借金に追われる羽目になる。(とは言え、借金は踏み倒さずなんとか返していこうというのが彼の真面目さを表しているが…)借金を誤魔化すために嘘に嘘を重ねていく。
そして…。
内縁の妻となった女性の家族を殺害したとして死刑囚となるが、未だ執行されないのは何か理由があるからなのか。
秋好英明の凄絶な半生も緻密に書いてあり、また、逮捕されてから裁判、判決までについて、実に1/4近くを費やしている。
この本に書いてあることが全て真実かどうかはわからないが、文庫にすると、全編800ページ近くもあるという。
推理作家の島田荘司にこのような著者があるとは知らなかった。
司法の裁きが妥当か、戦後頻発した冤罪については、もしやこれもそうなのか…と色々と考えさせられる。
興味があれば、是非一読を。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ序盤は世界観の説明や平和な日常が続き、正直なところ、よく分からないまま読み進めていました。
ただ、その日常の中にも所々に「何かがおかしい」「この世界、どこか不気味だな」と感じさせるものが散りばめられていて、その違和感が少しずつ大きくなっていきます。
そして後半からは一気に物語が動き始め、そこからは時間を忘れて没入して読み進めていました。
なぜバケネズミは人間に従っているのか。
バケネズミの「変異体」とは何なのか。
なぜ大人たちは先史時代の記録を抹消し、過去を隠そうとしているのか。
そして、覚の言った「今が一番危険な状態」とは何を意味しているのか。
上巻を読み終えた時点でも分からないことだらけで、むしろ読み進めるほど謎が増えていく。
序盤に感じていた何気ない違和感も、この先すべて意味を持ってくるのではないかと思うと怖くもあり、楽しみでもあります。
この世界の正体は何なのか。
早く続きを読みたいです。 -
Posted by ブクログ
音楽を聴いて、心を鷲掴みにしてくるような、一瞬思考を乗っ取られたような気持ちになって呆然としてしまった経験が私には何度かある。
くすかも、ある日突然、そんな経験をしたんだろうな。
子ども時代、きっと生きていくのに大変な思いをたくさんしたであろうくすかが、あるミュージシャンの音楽に出会うシーン、一緒に泣きそうになった。
音楽によって救われるって、確かにあると思う。
それから時を経て、くすかの息子の新もそのミュージシャンの音楽と出会う。
新が友達に感じた劣等感、自分は何も持っていないと思ってしまう気持ち。
思春期に思いを馳せて共感してしまう。
登場人物がみんな、まっすぐで心地よいんだよな。
くすかの友達の庭田さんも、新の友達たちも。
そして、バックにはあのミュージシャンの音楽が流れている。
なんと素敵なことだろう。
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