小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
リアルに起きた事件を取り入れていることは明白だったが、実際にはその事件自体は主人公里佳の物語のきっかけに過ぎず、オリジナリティある里佳の物語が展開されている。
カジマナの崇拝者となって、他者から満たされることに慣れてしまう男たちと、その崇拝者たちのために料理をするカジマナ。それと対比的に、自らを満たすために料理をすることを覚える里佳の存在。前者は、破滅を辿ったのに対し、里佳は人生を再構築しようと前向きな結末に終わったのが印象的だった。また、人間関係の構成要素が崇拝者か、里佳と伶子のような信頼か、という点も自らで満たす経験の有無に左右されていると感じた。
自分のために自分で満たすということが、私 -
Posted by ブクログ
本屋にて、ついに文庫化されたことを知り、即購入。私自身親として、母・妙子のような言動を全くしてないか、と言うとそんなことは全くない。
「詰問」「罵倒」「命令」「蒸し返し」「脅迫」「否定」に分類された妙子の罵声、どれも私はやったことがあるとハッキリ言える。
詰問「どうしてまたプリント出してないの?」
罵倒「嘘つき」
命令「出せ!」「やれ!」
蒸し返し「前も同じこと話した!」
脅迫「ゲーム禁止にするよ」
否定「本当に反省してるように見えない」
その他「決まりごとを守れなくて将来困るのは自分だよ?」
子どもには証拠隠滅のため、プリントをトイレに流されたこともある(トイレが詰まって、子どもはめっちゃ怒 -
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いわゆる“ご飯もの小説”として手に取った一冊。
古内一絵さんの作品は初めてだったけれど、この文体がとても好みだった。やわらかくて読みやすいのに、ちゃんと心に残る余白がある。登場人物たちもそれぞれに個性があって、自然と愛着が湧いてくる。
中でも印象的だったのは、ドラァグクイーンのシャールの存在。言葉や距離の取り方が絶妙で、相手を否定せず、でも甘やかしすぎない。その包み込むような優しさに、ただ癒やされるだけではなく、少しだけ背筋を正されるような感覚もあった。
深夜にふらりと立ち寄って、あの空気ごと味わってみたくなる。シャールの言葉とごはんに、そっと救われる人の気持ちがよくわかる一冊だった。 -
Posted by ブクログ
瀬尾まいこさんの作品を初めて読んだ一冊。
まるで他人の心が読めるかのように――いや、正確には「読もうとしすぎない距離感」で寄り添う会話が、とても印象に残った。踏み込みすぎず、それでいて見過ごさない。その絶妙なやりとりに、じんわりと心がほどけていく。
登場人物たちは、それぞれに「言わなくてもいい」「言いたくない」過去を抱えている。それを知ってしまっても、暴いたり正したりするのではなく、相手を傷つけないように言葉を選び、そっと掬い上げていく。
タイトルの“掬う”という行為が、そのまま物語全体の在り方を表しているように感じた。強く救うのではなく、こぼれ落ちないように手を添えるような優しさが、静 -
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タイトルに込められた意味が、物語の終盤で静かに回収される。その瞬間、ばらばらに見えていた出来事や人の想いがひとつに結び直され、胸の奥にじんわりと広がっていく。
登場人物たちは皆、年齢を重ねる中での変化を抱えている。しかしそれは単なる老いの描写ではなく、もっと奥行きのある“時間の積層”として描かれているように感じた。
そして何より、文体が心地よい。やわらかく、過剰に説明しすぎず、それでいて感情の芯はしっかりと届く。そのバランスが絶妙で、読んでいる間ずっと穏やかな呼吸を保てるような感覚だった。
ふとした場面で、鼻の奥がつんとするような瞬間が訪れるのも印象的だ。大げさではないのに、確かに心を揺ら -
Posted by ブクログ
92作品の世界文学を飲みの隣の席で「てかさーっこの主人公さー、ちょっとヤバいんだけど」って軽い感じで語りつつも、だがあってはならない事に対しては厳粛に非難する、1冊5.6ページで簡潔に語ってくれるそんな本です。
世界文学というと構えてしまって学校の教科書を読むような机と椅子に正座して読まなくてはという雰囲気があるけど津村さんの軽妙で率直な感想を聞くと何だかもう読んだ気になってしまう。
この中で実際に読んだ事があったのは恥ずかしながら5冊くらい、あらすじくらいなら知ってる程度なのは15冊くらいで他の作品は知らないものが多くてそんな作品でも面白く読めた。ただ全く知らないものは読んでもよく分からない
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