小説・文芸の高評価レビュー
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ネタバレすごく良かった…。
有栖川有栖先生の描く人物が好き。
あと先生の目を通して見える景色が好き。
エンタメとしてのミステリというより、有栖川有栖のエッセイをフィクション仕立てで読ませてもらったような気分。
改めて、有栖川有栖という作家はミステリというものや、小説を書くということに対してとても真摯に向き合っているのだなぁとしみじみ感じた。
事件が起こって、颯爽と探偵が登場して、スカッと解決して!というミステリではなく、どちらかといえば人物の心象にフォーカスをしていて、テンポとしてはとてもスローな作品であるけれど、それでも脇道にそれすぎて迷子になったり、スローすぎて飽きさせるようなこともなく、
最初から最後まで一貫して一つの大きな謎に読者を捕らえ続ける手腕はさすがとしか言いようがない。
お、こいつが探偵役か?ちがうんか〜い!とか、主役がそのまま真相にたどり着く流れ???にしては諦めつつあるな…とか、終盤こ、ここにきてやっと真打(探偵)登場?!いや解決せんのかーい!!!とか、ミステリ慣れをした読者をうまく振り回しつつ、もうこれは解決とかそういう結末じゃないのかもしれないな…と思っていたら最後の最後で急に解決編が始まって仰天したりと、本当に面白い読書体験で、
読み終えた時に、良いものを読ませていただいて本当にありがとうございました。とお礼を伝えたくなるような作品だった。
これからも先生が書くミステリをたくさん読みたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読書感想|暗約領域 新宿鮫11
大沢在昌の人気シリーズである新宿鮫シリーズの11作目にあたる本作は、前作での人間関係のリセットを受けて、鮫島が新たな一歩を生み出す作品となる。
前作の絆回廊では私生活と刑事生活の両方で、彼が支えとなっていた人間関係を一気に失うことになってしまったのだが、本作でより焦点が当たるのは刑事の生活の方だ。このシリーズではキャリア組でありながらも、所轄に配属された鮫島を生活安全課の課長として桃井が陰に日向に守ってきた。
しかし彼の後を継いで生活安全課の課長となったのは、「ルールを守る」ことを自身のポリシーとするノンキャリアの叩き上げである阿坂という女性警視だった。通常であれば二人一組で捜査に当たるところを、鮫島がこれまで一人で捜査を行ってきたのは、桃井の理解と庇護のおかげだった。その桃井から阿坂に上司が変わることで、鮫島は自身の操作方法を変えるか、阿坂と対立するかの二択を迫られることになる。
その葛藤と浅香との激突が警察内部での本作での見どころだとすると、その警察の外側で鮫島が追う事件は、これまでになくスケールの大きいものとなっている。発端となったのは生活安全課の事件らしく、新宿で運営されていた闇民泊の摘発だったが、その一室で宿泊者らしき男が射殺されるところから事件は始まる。
闇民泊はシノギが減って苦しくなっているヤクザの新たな資金源との位置付けなのだが、本作は当然そこで物語がとどまるわけではなく、やがて殺された男は北朝鮮籍であり、北朝鮮や中国との密輸に関わっている人間であることが明らかになる。
そして鮫島の捜査が進むにつれて関わってくる人間は警察内の公安だけではなく、前作に登場した金石や東亜通商研究会、さらに北朝鮮やタイ、中国といった国際的なマフィアたちにも広がっていく。また捜査が進むにつれて「ルールを守る」ことで警察を信じてきた阿坂は、鮫島たちキャリアを取り巻く警察内部の闇にも少しずつ触れることになっていくのだった。
おそらく過去最長の作品と言って良い本作は、とにかく脇役を含めた登場人物の数が多く、話の筋を追うだけでも簡単ではない。鮫島が所々説明口調で事件の振り返りをしてくれるのだが、それでも誰が敵で誰が味方かわからないまま物語は進んでいく。
もちろん、そうした混沌とした世界観を描くことこそ作者の大沢在昌の狙ったところなのだろうが、「何かすごいことが起こっている」ということはわかりつつも、読んでいる(聞いている)方としては、頭がこんがらがってきてしまうところがある。
最終的には、最近の新宿鮫らしくしっかりとアクションで物語は幕を閉じるのだが、やや伏線が消化不良なところもあり、続編があることは、この作品用のだけでも確信できるような終わり方だった。 -
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夜間保育園に内定した保育士が、そこに通う子供と親と関わりながら成長していく話。
夜間保育園には縁がない状況ではあったが、存在自体は知っていたのでどんな人が使っているのか気になっていた。
まず思い浮かぶのは夜の接客業だが、それ以外にも深夜遅くまで仕事をしている夫婦やシフト制で働いてる夫婦なども使っているんだなと知った。
夜間であれ昼間であれ、働く親を支えるという目的は同じであり、保育士の立場からの子供への思いと、親の立場からの子供への思いでそれぞれ見えないことがあることを描いていて、色んな形での愛があるなと感じた。
親ではなく子供が親を無償で愛す、と最近聞いたが、まさにその通りで、逆に親は愛したいという気持ちと、愛するために超えるハードルやプレッシャー(養っていけるか、体力があるか、)があるなと感じた。子育ては可愛いだけではない。でも親も親なりにベストを探そうと頑張っている。
そんなことを考えさせられた本だった。 -
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豊潤で繊細で明確で曖昧な、圧倒的なイメージの芸術作品に触れたかのような読後感。その想像力と創造力は僕の許容範囲を遥かに超えていて、たぶんこの小説が持つポテンシャルの半分も理解できていないような気がする。それでも、言葉の積み重ねによってこれだけのイメージを表現することができるという「文学」の可能性に、読後の今、打ち震えています。この著者を輩出するためだけに芥川賞ってあったんじゃないの?と思えるくらいに。フローラの失踪から始まるこの物語は、その肝心のフローラが何者なのかまったく明かされないままに進んでいきます。おそらく架空の町である南マインケロートで織り成される、「面」をめぐる様々な記憶と因縁と感情や想いの物語。肖像面、眠り顔、裏顔、顔のパスポート、肖像保管所、面作家、などといった聞き慣れない名前がたくさん出てきて戸惑うけれど、ここではそれが当たり前のように溶け込んでいる町。旧東ドイツという歴史的な宿命を負った町。アジアからは遠く離れた町。人の想いや人生は様々な相を成し、さらには層を成し、面に刻まれたレールを辿ってまたどこかへ旅立って行くのでしょう。
頻繁に織り込まれる「町の三叉路」、「写真展の写真」などの小道具が効果的。
透明感のある文章に酔いしれました。 -
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冒頭からうるっときたのは、初めてレベルでした。
本物語は「足りてない」人に向けた話。
みんな足りてない。1番がないと、足りていないと感じる。
だけど、本当は足りていることもあるんじゃないかと思う。それはそんな自分を支えてくれる人や物事に気づけるかどうか。自分の周りの世界を愛せるようになれば、足りている人間に近づけるように思う。
なにかと、使命感のようなものに駆られるせいか、人は大切なものに順番をつけがち。
あるドラマでの人物は「人の大切なものに1番と2番もないんだから」と言っていたことを思い出した。
自分が追い求めたくなる大切なものが1番であるものの、自分を大切にしてくれるものも1番であることに気がつければ、足りている人間だと思えるようになるのではと感じました。
あと、黒田さんがめっちゃ好き。 -
Posted by ブクログ
面白かった。タイトルからてっきり警察内ののほほん部署の話かと思ったら、パイオニアとも言えるような業務で道を切り拓いてきた人の話だった。
人が死んだりするような事件ではなくても、人の心に、社会に、生物の命に、影響を与える事件に携わられていて、これもまた正義だと思う。
以前テレビで、犯行に使われる自転車特定のプロである警察官を見たけど、警察内では似たようなキャリアパスなのではないだろうか。
自他ともに認められるような優秀な人はどんどん上に上がっていけばいいと思うし、細かなことを突き抜けて進められる人材も必要。
お仕事ものエッセイのように楽しめつつ、自分のキャリアについても考えさせられる本だった。
読んでよかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレエンタメ作品では決してないが、かなり読み込む深さはあり文学として完成されてる。
作中、食人という行為に関わる人物は4人出てくるが、この四者比較で描写の読解が深まる。全員が生きていくための食人を否定しきれておらず、また全員が「俺は一線を超えていない」と思っていることがポイント。
意思決定はしていない・手は汚していない・食べてはいないというそれぞれ異なる一線を守ることで自分を免罪しようとしている。純粋に一線を守り切った人間はゼロという構造がこの小説の面白さ。
もう一点、別の角度から。不正の三角形(動機・機会・正当化)を逆に回す構造を戦争が持ち得ていることに対しては気づきがあった。
通常の不正のトライアングルは、個人が動機・機会・正当化を自ら組み立てて一線を越えるプロセスを説明し、そうならないように組織は手を打とうねということを研修とかで習う。しかし戦争下では、管理の消滅により機会は無制限化し、飢餓という動機は選択の余地なく外部から強制され、極限状態では仕方がないと言う正当化の動きも働く。
したがってどんな異常な行動でも起こり得る。この小説内では先述した通り、正当化している範囲が人によって違うことで噛み合わない会話や諍いが起こる姿が描かれる。
さすが往年の名作だという内容だった! -
Posted by ブクログ
本作も大満足の一冊でした。
自分を励ましてくれる要素があったり、新たな発見があったり、目頭が熱くなるほど胸を打たれたシーンがあったからです。
この本を読む前、自分のメンタルがあまり芳しくなく、自分の人生って一体なんだったのだろう……
と悲観的になっていました。
そんなとき、第1話の主人公、宮下佳菜がまったく同じ言葉を呟いていてびっくり!
「自分にできるかぎりのことをして、人生を味わう」という結論に、そうだよなと妙に納得して、このままいこう!と思わせてくれました。
第2話での、発見はうれしかったです。
書き写すことは、作者の気持ちに迫れる。
目からはいった言葉が身体のなかを通り、指先から出ていく。身体のなかに流れが生まれる。身体全体に言葉が染みこんでいく。身体のなかにある小さな記憶ひとつひとつを揺らす。
僕は、好きな文章を書き写すのが好きなのですが、その理由がわかった気がしました。
作品のなかにある流れが、自分のなかにも浸透し、電流が繋がる。その感覚が心地よいからだと思いました。
これは大きな発見です。
最後の話は、先生と学生の交流が描かれています。
単純にこの設定に、僕は感動しやすいようです(笑
)
斎藤先生の素晴らしさは、少しクセのある永瀬さんの言葉に収斂されている気がしました。
「先生のゼミで良かったです。若輩者の話を真剣に聞いてくれて、そういう人もいるんだな、と思いました。大袈裟だけど、この世界で生きていてもいいんだと感じました」
ものすごく素晴らしい先生だったのだと思いました。
第3巻も、心温まる素敵な作品でした。
次の第4巻で最後です。
すごく楽しみです!
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