小説・文芸の高評価レビュー
-
Posted by ブクログ
最初は7つの独立した短編に見えるが、最後の「第七」で全てが繋がる。哲学者でもある著者らしい、鋭く冷徹な視点で人間の限界を執拗に攻める。
2025年最後に良い本を読んだ!
第1話「エリセエンヌ」
SF風に楽しめるが、過去の自分と今の自分が連続した存在ではなく、ただ積み重なった層の上に今が乗っているだけ——という存在の不連続性。
第2話「木管」
元ロックスターの音楽をめぐる物語。他の話に比べて少しエンタメ寄りで異色だが、やはり人間の行動は「人間の枠」から逃れられない。
第3話「サンギーヌ」
寓話的で読みやすい。物質と反物質、量子もつれのように、我々の目にはそれぞれ別の物質のように見える世界の -
Posted by ブクログ
今から1000年後の「新世界」で描かれる先史時代を思い起こさせる人々の暮らし、呪力を用いて生活する人々の心に埋め込まれたトラウマや洗脳、そして人と同じような知力を獲得したバケネズミ達。この混沌に満ちた、「新世界」が新たな争いと殺戮によりその「真実」が明らかになっていく。
広大な世界観で上、中により語られたことの真実が少しずつ主人公の過去の記憶との現在の出来事との交差によって明らかになっていった。なぜバケネズミなる存在がいるのか、なぜバケネズミという存在は人に反逆をしてきたのか、人々が持つ「呪力」などの特異な力とは、そういったものの真実がラストに明らかになることでこの「新世界」の見え方も読者に -
匿名
購入済み落語好きなら読む価値あり
たまたまBookLiveのアプリで値下がりした本の紹介で出会った本。
小学生の時、親父に連れられていった上野鈴本演芸場で見た三遊亭円楽の落語【中村仲蔵】。粋でかっこいい噺だなと子供心に思った記憶がよみがえり、今回読んでみた。著者の松井今朝子も初めて知った作家。
いや、実に面白い!ぐいぐい仲蔵の話に引き込まれてしまった。あぁ、落語に出てくる仲蔵はこんな人生を送った役者だったのか。当時の芝居小屋を取り巻く環境や人々の生活、千両役者の由来など興味深いものばかり。NHKの「べらぼう」の時代と重なり、浅間山の噴火や米騒動、仲蔵に関係する人物として田沼意次、松平定信、田沼に仕える三浦や土山、現代でも有名 -
Posted by ブクログ
どうも紫式部の親友小少将の君が登場するたび、ハリウッドザコシショウがちらつくひまわりめろんです
いやー、おもろいわー
平安時代やっぱおもろいわー
そしてやはりいつかは『源氏物語』読まねばね!と思いました
さてさて、この『紫式部日記』は当時の皇后、彰子に仕えた紫式部の宮仕え日記なわけなんですが、当時の貴族社会のあり様を今に伝える貴重な歴史的資料であると同時に、紫式部奮闘記でもあるわけです
好ましいのよ
頑張ってるのよ紫ちゃん(急に馴れ馴れしい)
ほんともう毎回書いてるけど、今の時代にも通じまくりで、共感しかないわけ
そして、この編者の山本淳子さん!めっちゃ分かりやすく解説してくれて、良 -
Posted by ブクログ
初読みの作者さん。
皆様の★も高いし、直木賞&山本周五郎賞受賞ということで期待値も上がる。
どんな話かも知らずに読み始めたが、仇討ちから2年後にそれを果たした武士の縁者という若侍が現れ、仇討ちを目撃したという人たちにその時の様子に加え、それを語る人の“来し方”を聞いてまわるというお話。
なんだ、仇討ちそのものの話ではないのかいと思ってしまったが、木戸芸者、立師、衣装部屋の女形に小道具係、そして筋書と、芝居小屋に身を置く5人の語りは、落語か講談を聞いているようなリズム感が心地良く、そこに流れ着いた顛末はどれもがそれぞれ面白い。
そうこうしている内に、このあだ討ちにはなにやら裏があることが知れて -
Posted by ブクログ
我が道をゆくルソーワールド全開。ルソーの想像力の豊かさとその世界観を細かく表現しているところに奥ゆかしさを感じた本。
見た人を陶酔させ、心を離さない。
唯一無二の、ルソーにしか表せない魅力があるのだと思った。
ティムやオリエ、バイラー、ヤドヴィカ、ジョゼフなど、彼らがルソーを愛する姿、ピカソがどこか一目置いている姿が深く描かれているのが良かった。
何より、ピカソの言動がかっこよくて、癖になる。気づけばピカソとルソーの絡みを待っている自分がいた。
絵を鑑賞する上で、技術的な視点だけではなく、絵から受ける第一印象、フィーリングも大切にしたいと思った。 -
Posted by ブクログ
◼️死を描きながらも、生きる力をくれる物語
数年前、はじめて『ライオンのおやつ』を読んだのが、小川糸さんの小説との出会いでした。
その一冊で糸さんワールドにすっかり惚れ込んで、今回は再読です。
主人公・雫が、自らの死の運命を受け入れていくまでの心の変化が、丁寧に、丁寧に描かれていて。
一人称視点で物語が進むからこそ、後半は時間や場面の輪郭が曖昧になっていくような浮遊感があり、その表現が本当に凄まじい。
けれどそれは苦しさや痛みではなく、どこまでもあたたかく、前向きな感覚として胸に残ります。
瀬戸内の穏やかな気候、きらびやかな海の光、蜜柑やレモンの甘酸っぱい香り。
情景がふわっと脳内に浮か -
Posted by ブクログ
山中で起きた不可解な事件を軸に物語。読み進めるほどに点だった出来事が線となり、最後には一枚の像を結ぶ。その伏線回収の心地よさは確かに気持ちいい。
ただ本作が印象に残るのは、謎が解けたからではない。描かれているのは「なぜ、そう生きるしかなかったのか」という人間の過去や孤独で、事件はその表面に過ぎないように感じた。
刑事は真実に辿り着くが、すべてが救われるわけではない。その割り切れなさが静かな余韻として残る。
派手なトリックや爽快感を求める人よりも、謎解きの先にある人生や沈黙に目を向けたい読者にこそウケる作品だと思う。
読み終えて少し黙ってしまう、その時間まで含めて味わう一冊。