小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
良くならない病と向き合うなかで、介護者に積み重なっていく、悲しみやもどかしさ。
どうしようもなく溜まってしまう感情の澱は、想像するだけでもきつい現実だと感じた。
大事な人の存在が希薄に感じられることの寂しさや孤独感は、介護の肉体的なしんどさとはまた別の辛さなのだと初めて想像した。
そこを想像できない、私のような人間は数多くいて、そんな者たちの何気ない一言や態度によって、少しずつ心が削られていく方は実際に多くいるんだろう。
ただ生きてるだけでは“生”は感じられない、ということに気付かされ、強く胸に残った。
そんな中で描かれるマチ先生の接し方に改めて真摯さを感じた。
できれば避けたい、だが -
Posted by ブクログ
以前、トー横界隈に強く惹かれたことがあって(あくまで傍観者として)本作に興味を持ち、すばるの誌面に掲載されたものを読んだ。
七瀬と心中しようとするまでのシーンが良かった。2人の会話と、徐々に強くなる死の匂いが切ない。どうにかして生きてほしい、という願いを超えたところにある諦めともまた違うゆったりとした時間。
僕がトー横に関心を持った要因がこの小説の中にしっかり閉じ込められている感じがした。破滅的で退廃的な危うさ、今まさに底に落ちている最中であるかのような世界観、それにもかかわらずそこにいる人たちは異常に楽しげで、だからこそ濃くなっている影、あの感じ。
表現が濃密で、まどろっこしいと感じる -
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ザリガニの鳴くところ
著者:ディーリア・オーエンズ
2019年・2020年アメリカでいちばん売れた本という肩書が気になり手に取った小説。
とにかく物語の重厚感に圧倒された。
ノースカロライナ州の湿地で発見された死体を巡る法廷ミステリーが主軸であるものの、
湿地に1人残された主人公の成長譚や、貧乏白人を描く社会差別、DV、三角関係の恋愛小説と、色々な切り口で物語を楽しめた。
また、野生動物学者である著者の自然描写が美しい。
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潟湖には、生命と死のにおいが同時に漂っていた。成長する有機体と、腐敗する有機体が交じり合ったにおい。カエルが嗄れた声で鳴いていた。カイアは -
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アンクールな人生
著者:弘中綾香
『ミュージックステーション』『激レアさんを連れてきた。』『ノブナカなんなん?』など人気番組のレギュラーを多数担当されるアナウンサー、弘中綾香さんのエッセイ。
小学生時代から『好きな女性アナウンサー』3年連続1位になる現在までを振り返る回顧録のような内容だった。
中学受験、女子校、慶應、アナウンサー。
肩書きだけ見ると、テレビ越しのキラキラした芸能界で働く順風満帆なイメージを持ってしまうが、本書で登場するエピソード、悩み、言葉のチョイスのどれもが、自分とかなり近い感覚、距離感で描かれている。
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周りの同級生を見てみると、なんだ -
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52ヘルツのクジラたち
著者:町田そのこ
52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない周波数で鳴く世界でたった一頭だけのクジラ。
虐待に人生を搾取され続けた主人公が、
逃れついた田舎街でムシと呼ばれる少年との出会いから始まる物語。
主人公の過去はそれはそれは不幸の詰め合わせかのような描写が続き本当に心が苦しくなった。
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拒絶するように向けられた背中を見つめる方が、殴られるより辛かった。p125
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どれ程の絶望感なのか。
到底自分とは縁の無かった境遇なのに、
何故かフィクションとして真っ直ぐに受け入れることが出来なかった。
誰にも言 -
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百花
著者:川村元気
認知症を患った母とその息子の話。
重いテーマを携え、母と息子2人の「記憶」を丁寧に描きながら進行していくのが特徴的だった。
次第に忘れていく百合子と忘れていた思い出が蘇る泉の対比的な描写に胸が苦しくなる。
誰もがいずれ訪れる死について、
大人になるということはなにか、
を問われ続けていた気がした。
時間を目で捉えることは出来ない。
けれど時の流れを肌で感じる瞬間は、確かに日常に存在している。
日捲りカレンダーを破る時、歯ブラシを交換する時、金曜日のプラスチックごみの収集。
そうして積み重ねた瞬間が日々をつくり、年齢をつくり、死へと繋がっていく。
当たり前に
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