あらすじ
夜勤中に地震に見舞われ意識を失った看護師の紗穂。気がつくとそこは1944年のマニラで、さっきまで病室にいた老女の若き日の姿になっていた! 困惑を抱えたまま、従軍看護婦として戦争に巻き込まれる紗穗。それでも、持ち前の明るさで数々の理不尽に抗いながら、過酷な日々を駆け抜けていく。反戦の意志と、命を背負った女たちのかけがえのない青春が紡ぐ圧倒的感動作。
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Posted by ブクログ
__あらすじ__
夜勤中に地震に見舞われ意識を失った看護師の紗穂。気がつくとそこは1944年のマニラで、さっきまで病室にいた老女の若き日の姿になっていた!困惑を抱えたまま、従軍看護師として戦争に巻き込まれる紗穂。それでも、持ち前の明るさで数々の理不尽に抗いながら、過酷な日々を駆け抜けていく。反戦の意思と、命を背負った女たちのかけがえのない青春が紡ぐ圧倒的感動作。
再読だが、この本を初めて読んだ後、映画が放送されることになり、あまりドラマの見ない自分だか、文庫本に感化されドラマを見た。
当たり前だが、ドラマも原作と違った面白みがあり、とても興味深かった。
戦争は「国」で戦うものであり、いざとなれば自決してでも自分の名誉を守るという昔の考えと、紗穂の何がなんでも「命」が大切であるという、時代による考え方の違いによってこんなにも行動が変わるのかと思った。
この物語内では戦争の戦いにフォーカスを当てられた話は出てこない。あくまで主人公は看護師である。でも、看護師目線でもわかる、戦争の惨さや残酷さがひしひしと伝わってくる。
戦後80年となる今年、戦争の悲惨さ、この悲しみを決して繰り返さないということをもう一度思い返してはどうだろうか。
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戦争末期のフィリピンの惨状と従軍看護婦の仕事を初めて知りました。
現代社会の戦争のない平和な世界に生きている。
そのため、戦争の悲惨さを学ぶには、とても大切な1冊だったように思える。
命が1番大事で、命より大切なものはないってことを改めて思い知らされる。
この今の社会では、当たり前の考えが、1944年頃は、とても、ユニークな考え方だと言われていた。
そのような現実からすると、今から100年後の世界は、どれくらい考えが変わっていくんだろうと思った。
とても感動する1冊で、何度も泣いてしまった。この本を読み終えてしまったのが悲しい。
ドラマを見てみたいなと思った。
Posted by ブクログ
「私は、自決なんて絶対にしません。命が尽きる最期まで、この命を守りますよ。敵が目前に迫っているのなら降伏します。捕虜になってでも生き延びて、日本に帰るんですっ。私には……私たち班員には、会いたい人が日本にいるんです。まだまだこの先やりたいことだってたくさんある。誰が始めたかわからない、誰のためなのかもわからない、こんな戦争なんかで死にたくないんです。」
戦時中だったら決して言えない言葉。でも平成からやってきた彼女だから言えた。時代を突き抜ける力強い言葉
先日『晴れたらいいね』のドラマを観た。
ドラマよりもフィリピンでの従軍看護婦が観た世界が細部まで深部まで描かれている。
『晴れたらいいね』
「あなたが教えてくれた歌の中に、『昔みたいに雨が降れば、川底に沈む橋越えて』という一節があるでしょう。私はね、その部分を口にすると涙が滲んだのです。雪野さんは知らなかったでしょう? 私があなたがたの先頭を歩きながら、涙ぐんでいただなんて」
婦長さんの故郷には、増水すると川底に沈んでしまう橋があった。てすり、欄干がないから、流れない橋。寒村の故郷を思い出し、涙ぐむ婦長さんが愛おしい。お国のためと気持ちを奮い立たせながらも、残してきた妹弟を想う。
日本のこれからはどうだろうか。
自分や大切な人の命を守っていけるだろうか。
『晴れたらいいね』は彼女達の絆を強くし、希望を与える歌だったけど。
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佐治さんが言う⇨どうしてだろう誰一人戦争を止める声を上げるものはいなかったが異常だったのだね、岩代の様な人間が大量にいたから、白飯を毎日食べる上官がいたから、赤紙一枚で簡単に命を奪った奴がいたから戦争が起きた。現在でも中国にロシアに戦争になる可能性あるのに、自民党 公明党 維新に投票する我々はもっと深く考えようよ!
川でパニックの進藤さんにファンユーファと声を掛けてた場面がグッとくる、あと戦友会の写真で全員生きて帰れた事も どうして紗穂が送られた意味を教えてくれた。婦長と紗穂とやり方は違うけど同じ道を進んでいる雪野さんならあなたたちの命を守るという言葉は重いし命より大切なものはないと言い切れる所
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大戦末期に、フィリピンに派遣された、若き女性看護師たちの奮闘記。でも戦争なので、力を合わせても、死んでいくんです。最後まで読んで、生きてて本当に良かったと痛感させられます。
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藤岡陽子さんの作品を初めて読見ました。
タイムスリップの物語だとは思いませんでしたが引き込まれてしまいました。
良い作品です。
藤岡陽子さんにハマってしまいました。
Posted by ブクログ
良書です。
その一言に尽きる一冊でした。
看護師の紗穂は夜勤中、長く意識が戻らない高齢女性患者が意識を取り戻した瞬間に遭遇する。
医師を呼ぼうとするも大きな地震が発生し、気付いた時、彼女は目の前にいたはずの患者の若き日の姿となり、1944年のマニラにいた。
従軍看護師として戦争に巻き込まれた紗穂は、仲間の看護士と共に厳しく苦しい日々を乗り越えていくー。
かなり突拍子もない設定ですが、主人公の紗穂の明るさと、戦時下のマニラにおける看護師の視点で描かれた第二次世界大戦の悲惨な描写に引き込まれ、あっという間に読み終えました。
20歳前後の女性達が従軍看護師として負った任務の過酷さ、目の当たりにした戦争の悲惨さ、無意味さ、それでも絶望せず前を向いて生きようとした精神力。
全くもって頭が上がりません。
そして改めて感じる、戦争の恐ろしさ。
ノンフィクションでは伝わらないことがあります。
史実に基づいた良質なフィクションの存在価値を示す一冊だと思いました。
この荒唐無稽な設定に違和感を覚えなかった理由が解説に書かれていました。
「戦争のおろかさを相対化するためには、戦争の外で生き、戦争の結末を知る人の視点が必要だから」だそうです。
だとしたら、戦争を知らない私達にもできることがあるはず。
もう二度と、あれほど恐ろしくて愚かで無意味なことが起こらないように、今を生きる私達に何ができるのか考えていかなければならないと思いました。
2020年11冊目。
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子ども向けかと思うようなスタートでしたが、途中からは涙が止まりませんでした。やっぱり良い人がたくさん登場して、悲惨な状況の中でも深刻なトーン一色にはならず、前向きなエネルギーが途切れることのない感動的なストーリーでした。
この本は日本人から見た戦争の話ですが、以前マニラに行った際に現地の方から聞いた話しを思い出しました。「フィリピンはスペイン、アメリカ、日本と3回外国に支配されたが、スペインはキリスト教を、アメリカは英語を残してくれた。日本は…」とても恥ずかしい思いをしました。
戦争大好きな極右政党自民党の皆さんはこの本を読んだらどんな感想を持つのでしょう。安倍晋三さんも高市早苗さんも自分に命の危険が及びようなことはないでしょうし、子供もいないので最前線の兵隊の命なんて考えたこともないのでしょうね。
Posted by ブクログ
突然、第二次大戦中のマニラへタイムスリップした紗穂。ひとまず日赤の従軍看護婦・雪野として生きることにしたが、傷つき運び込まれる人たちの治療に追われる毎日。
「元の世界に戻れるまでーー」
「終戦を迎えるまでーー」
死と隣り合わせの過酷な環境の中、共に生き抜いてきた従軍看護婦や陸軍看護婦たちとの絆。親友の三津、菅野婦長、佐治軍医の存在の大きさははかりしれない。
時代が変わっても自分を失わず、周りに明るさや希望をもたらす紗穂の強さがまぶしい。
初めて知った親友 三津の思い、
戦友会の写真、
表題「晴れたらいいね」の意味に思いを馳せ、目頭が熱くなりました。
『お国のために命を懸けて』
そんな戦時中の思想に対して、紗穂の言葉が深く、重く、心に刺さりました。
『私は、自決なんて絶対にしません。命が尽きる最期まで、この命を守りますよ。(中略)
私には…私たち班員には、会いたい人が日本にいるんです。まだまだこの先やりたいことだってたくさんある。誰が始めたかわからない、誰のためなのかもわからない、こんな戦争なんかで死にたくないんです。』
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夜勤中に地震に見舞われ意識を失った看護師の紗穂。気がつくとそこは一九四四年のマニラだった。従軍看護師として戦争に巻き込まれながらも、何事にも前向きに取り組む主人公に感動します。
何より史実に基づいて書かれているのでリアリティがあります。従軍看護師に関して、戦争末期のフィリピンに関して調べてみたくなりました。
藤岡陽子さんこ作品は初めてでしたが、もっと読んで見たいと思いました。
Posted by ブクログ
日赤から戦地へ派遣された従軍看護婦の物語。
看護婦目線で戦争について少し知ることができたように思います。
終戦間近のフィリピン。
様々な地域で負傷兵の救護活動(包帯の洗濯、隔離病棟での世話、死んだ兵士の遺品整理、防空壕へ患者の移送、食料探しなど)している姿に心が痛くなりました。
生きている時代が違うだけで、なぜここまで苦しまないといけないんだ、何のために戦っているのか、国のために?ふざけんな…静かな怒りみたいな感情が溢れてきました。亡くなった兵士や看護婦さん達、その家族に想像を絶する悲しみや辛さを負わせてまで国が得たかったものは何なんだろうか。。
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現代の看護師が担当していた意識のない老女。
大きな地震の際に老女に入れ替わって終戦前年のフィリピンにタイムスリップ。
当時の従軍した赤十字看護師たちの苦悩が描かれています。
最後はウルウルです。
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戦争の話は読むのがつらい。
だからなるべく避けるのだが、現代から看護師がタイムスリップする話だということでハードルが下がり読んでしまった。
従軍看護婦なので「兵士」ではないが、過酷な状況なのは変わりない。
看護婦の立場から見た戦地の様子がとても生々しかった。特に衛生面がひどい。自分たちも生きていくのがままならない中での看護。心も体もおかしくなってしまう。紗穂の生きることへのまっすぐな気持ちが仲間の看護婦たちの支えになっていた。
終わり方がよかったな。恋愛ものではないけど
「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」を思い出した。
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地震で意識を失い、気づいたら終戦間近のマニラにいた紗穂。そこで従軍看護婦の雪野サエになっていたというタイムスリップ作品
看護師さん目線の戦争のお話で涙が出てしまう場面もありました。国のために生きるのが当たり前で「自決なんて絶対にしません。命が尽きる最期まで、自分の命を守りますよ。敵が目前に迫っているのなら降伏します。捕虜になってでも生き延びて、日本に帰るんです。…誰がはじめたかわからない、誰のためなのかもわからない、こんな戦争なんかで死にたくないんです」と主張する紗穂が変わり者の時代。
最後の現代に戻ってきたところはあっけなかったなっ思いましたが、中学生くらいの子に読んで欲しい本です。
Posted by ブクログ
看護師の紗穂が、2015年から1944年のマニラで看護婦として働く雪野サエの姿になってしまうという始まり。
戦時中の価値観と、平成の価値観が違いすぎて、怖かった。
兵士はもちろん、看護師も、そして戦場となった場所に住んでいた現地の人たちも本当に過酷だったんだ。。
ーーー
自分は命が生まれる手伝いをする看護婦だ。だから、命を簡単に掛ける戦争を決して許さない。命を生み出し、そして育むのに、女たちがどれほどの時間と力を費やすのかを、男は知らない。
ーーー
というところで、強い共感とともに、涙が出そうになった。
戦争について学び直ししたいなとなった。
あと、物語に出てくる看護師さんが全員本当にかっこよくて他にも看護師さんの物語を読みたくなった。
Posted by ブクログ
現代のナースが戦時中のマニラの従軍看護婦にタイムスリップする物語。
戦争を知らない主人公がいきなり戦場に投げ出され、「お国のため」と兵士たちが戦っているのを複雑な気持ちで看護を施すのが、理不尽で歯がゆいだろうなと思う。
戦争の意味と、命の大切さを戦時中の仲間にも語るが、当時の戦場で理解するのは難しかっただろう。
Posted by ブクログ
この本を読んで、初めて戦争末期のフィリピンの惨状や従軍看護婦のことを知りました。想像を絶する看護婦達の任務の過酷さにもかかわらず、助けたいという気持ち一心で命と向き合う姿が凄い。婦長が言った「目の前の全ての傷病者を救護するように教えられている。性別も年齢も国籍も関係ないのです」世界の人が助け合える戦争のない世の中になってほしい。
Posted by ブクログ
戦争末期のフィリピンの状況や、従軍看護婦について全く知らなかったが、感情移入し、何度も泣いてしまった。
現代から見ると戦争というものでは命が軽く扱われすぎるが、主人公はそこにきちんと立ち向かっていく強さがあり、清々しさもあった。
タイムスリップという設定も最初はちょっと無理やりでは、、とか思ってしまったが、だんだん全く気にならなくなっていった。
さらっと読めてしまったが、改めて、戦争とは、戦争の最中に生きるとはどんなことかを考えさせられた。
Posted by ブクログ
日本赤十字社から戦地に派遣された従軍看護婦も、戦争末期のフィリピンの惨状も知らなかった私だったが、本書を読むに当たって、あまり影響がないと思われたのは(勿論、これを読んで興味を持つことはあると思うが)、本書で教えてくれる大切なことは、また別のところにあったからだと感じられたからである。
平成生まれの看護師、「高橋紗穂」が夜勤中に見舞われた地震によって意識が遠退き、気が付いたら、1944年のマニラの地で倒れており、彼女の意識は紗穂のままであったが、その身体は、つい先程まで看護していた「雪野サエ」のものであり、当初紗穂は、何故こんなことになってしまったのかと悲嘆し、早く元の世界に還りたいことばかりを願っていたが、その心境は戦地に於ける青春時代を約一年間共にした、日赤救護班の仲間たちと生きることによって、少しずつ変わっていった、それは当たり前のことができることの幸せであった。
『そばにいる人が生きていて、ご飯を食べて話をして歩いて笑って。そんな当たり前のことがこんなに嬉しいということを、私は教えてもらった』
そして、そんな幸せを現代人の彼女が噛み締めることで、如何に戦争が愚かで悲しいものなのかを、より実感させられた、それは命も心も粗末にすることなんだと思う。
『自分は命が産まれる手伝いをする看護婦だ。だから、命を簡単に懸ける戦争を決して許さない』
日赤救護班看護婦は、目の前にいるすべての傷病者を救護するよう教えられており、そこには性別も年齢も国籍も関係ない、そんな彼女たちだからこそ実感できることもあり、時には『看病した兵隊が敵を殺せば、あなたたちが殺したのと同じ(一部、言葉づかいを変えています)』や、『看護婦っていっても戦争の加担者』などと、理不尽な事を言われることもあったが、それでも当時の、『私たちは求められてここにいる』ことを誇りに、できることをやりながらも、心のどこかでは誰が起こしたのか分からないものに、召集令状の紙切れ一枚で派遣されて、巻き込まれることへの虚しさも抱いていた。
しかし、そうした思いは決して口には出さずに、心の内に留めたままにしていたのは、周りの仲間たちのみならず、当時の風潮でもあった『国のために尽くすつもり』で、命は二の次であることを、まるで美徳のように捉えていた時代的背景が確固として立ちはだかっているからであったのだが、そうした、『弟のために死のうと考えていた』から、やがては『弟のために生きて帰りたい』という心境へと奇跡的に変化していくことで、戦争の虚しさと命のありがたみを教えてくれた、そうした当時の時勢からはまずあり得ないような、ある意味、痛快で爽やかな思いを引き出させてくれたのは、平成の時代からタイムスリップしてきた、紗穂のおかげなのである。
『いまの自分の唯一の武器は、この戦争の終わりを知っていること』
本書に感じられた、戦争を描いた小説としての独特さは、まずここにあり、過去にタイムスリップした人間が歴史を変えるような大活躍をするというのは、割とあると思うが、ここでの紗穂は、平成生まれならではの常識や価値観を身に付けているので、当時の人達からすれば、『あなたの常識は、私たちが持っているものとは違う』といった不思議な人となり、それが却って、物語を面白くも痛快なものにしている一方で、そんな彼女の当時とは違った常識に、皆が憧れを抱いていく展開に考えさせられるものもあったが、かといって、歴史は大きく変わるわけではない、寧ろ、とてもささやかな一人一人の命を繫ぎ止めるような役割ではあるが、実はそれこそがとても大切なのだという、至極、現実的な視点で描いていることに、私は女性ならではの慈しみを感じられ、それは、一気に形勢逆転して勝利を収めるようなすっきりする話でもなく、とことんリアルで凄惨な描写をしかと見ろ的な話でも無いということである。
『命を生み出し、そして育むのに、女たちがどれほどの時間と力を費やすのかを、男は知らない』
そして、そんな眼差しは上記の言葉からも感じられるように、女性側から見た男が引き起こした戦争といった一面を持ちながらも、そこにくどさを感じさせないのは、300ページ以上ある本書を書き上げた藤岡陽子さんの、丹念に紡ぎ上げながらも、どこか軽やかで爽やかな雰囲気を持つ文章力にあるのだと感じながら、別に男性蔑視の視点ではない、寧ろ、それぞれを平等に眺めている姿に好感を持ちつつ、目を覆いたくなる場面もありながら、上空を飛ぶ敵機よりも体を這う虫の恐怖に気をとられていた描写が表れるのには、やはり女性でないと書けない奥ゆかしさがあるようで、そこに戦争を描いた小説として、もう一つの独特さがあったことに、もしかしたら、これが藤岡陽子さんの作品の魅力なのかもしれないと感じられた、どんなに苦難を伴う時代に於いても、それは紛れもなく彼女たちにとって、かけがえのない青春の日々であったのだ。
そうした魅力は、平成からやって来た紗穂も、当時のサエの仲間たちも、お互いに教えられることがあったことに、それぞれの時代性を考えさせるものがありながら、もう一つ、女性的な眼差しの素晴らしさを取り上げなければならないのが、斎藤美奈子さんの解説にもあった、タイトルについてである。
このタイトルを見た瞬間、私はすぐにある曲を頭に思い浮かべたのだが(世代なので)、まさか本当にそれだとは思わなかった上に、歌詞についても新たな発見があったのが今更のように嬉しくて、この曲が恋人に向けたそれじゃ無かったことを、本書で初めて知った。
『昔みたいに 雨が降れば 川底に
沈む橋越えて』
特に上記の部分は、物語の展開とも相俟って心打たれるものがあり、また、これが1944年のマニラで歌われているというのが、なんとも不思議な感覚でありながら、なんて清々しい光景なんだろうと感じられて、特に皆で黙々と険しい山道を歩む中で、ふと誰かが歌い出した瞬間、堰を切ったように、次々とそれに続けとばかり、皆の声が重なり合って、やがては一つの大きな感情を伴った力に変わる、歌には、そんな皆の心をまとめ上げる叙情的高揚感がありながら、これを従軍看護婦たちがやっていることに、また違った感慨を抱かせるようで、当時の戦争の状況も正確に分からず、時折現れる敵機の影に怯えながら、食べ物もろくに無い中を、漠然とした目標に向かって歩まざるを得なかった彼女たちの心境を、まるで慮ったような温かみのある『if』の物語には、女性だからこそ書ける、そんな眼差しの必要性を証明するのに充分なのではないかと感じさせる程の、その軽やかさに、私は未来の可能性を見た思いがした。
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ヘイセイにいた看護師が重病患者の入れ替わり、終戦一年前のフィリピンに従軍看護師として、バツクツーザフイーチャー、反戦の看護小説。
夜勤中に地震に見舞われ意識を失った看護師の紗穂。気がつくとそこは一九四四年のマニラで、さっきまで病室にいた老女の若き日の姿になっていた!困惑を抱えたまま、従軍看護婦として戦争に巻き込まれる紗穂。それでも、持ち前の明るさで数々の理不尽に抗いながら、過酷な日々を駆け抜けていく。反戦の意志と、命を背負った女たちのかけがえのない青春が紡ぐ圧倒的感動作。
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明るい感じの表紙と題名に反して戦争もの。現代からのタイムスリップなので、スッとその世界に入り込めた。
看護婦の紗穂が地震に巻き込まれて気を失う。目覚めたときには1944年のフィリピンのマニラにいて、従軍看護師として働く身になっていたという設定。
終戦1年前の南方での戦いは泥沼化して凄惨な状況であったことは有名。直接の戦闘が描かれることはないのだけど、若い看護婦たちの任務の過酷さを通してその悲惨さが伝わってくる。傷ついた兵士の看護はもちろんのこと、転身する時の爆撃を避けながらのジャングルの移動も本当に過酷。
こう書くととてもつらい小説のようですが、紗穂の持ち前の明るさとバイタリティーに勇気づけられながら読むことができます。本当にしんどい中、タフだし若さゆえの明るさもあり、彼女たちが助け合い支え合い集団生活を送る様子は青春すら感じます。戦争さえなければもっと明るい希望にあふれた青春を過ごせたであろう彼女たち。登場人物たちの個性も豊かです。献身的で愛情深い美津、上から目線で皮肉屋だけど憎めない民子、たくましく頼れる白田、新藤、梅、そして佐治軍医と菅野婦長も人として深い。
つらいことがたくさんある中でも、絶対に生き抜きたい、仲間を誰も死なせはしないという紗穂の強い思い。前向きなエネルギーが途切れることないストーリーに引き込まれました。祈るような気持ちで読み進めました。
反戦小説あり、同時に医療小説でも青春小説でもあった。従軍看護師の目線で見た戦争のリアルが伝わり、読む価値のある一冊でした。
Posted by ブクログ
夜勤中に起こった地震で気を失った紗穂が目を覚ますと、そこは1944年のマニラで、雪野サエという人の中に入り込んでいたというタイムスリップ物語。
1944年のマニラというと、そう、雪野サエは従軍看護婦で・・・という戦争の物語。
「手のひらの音符」が素晴らしかったので、それと比較すると少し、残念な感じではあった。サエに入り込んでしまって、サエとして生きていくことを決意する(せざるを得ない)紗穂の感情の部分や、親友のサエが今までとは別人になっていると気づいた美津の感情の部分が伝わってきづらく、少し読者側の感情が置き去りにされているような感じがあった。
それでも、戦況を考えると感情云々の前に生き延びないといけない、という状況だったのだろうとも思う。
紗穂の「生き延びる」という決意と、それを上官や周りの仲間に堂々と発言する姿勢に、「よし、よく言った!」と清々する気持ちになった。戦後に生まれ、戦争の悲惨さを知り、二度と戦争を起こしてはいけないとわかっている現代からの使者、紗穂だからこそできる発言、姿勢。
どこかで聞いたことのあるような、と思うタイトルは、予想通りあの有名な歌からだった。
少し紗穂の感情に追いつけないところはあったものの、反戦小説として素晴らしかった。
Posted by ブクログ
戦争ものは今まで読んでこなかったからなのか、中盤までは中々スムーズに読み進められず。
今現在も世界ではこんな事が起こっているのかと思うと信じられず。。結局自分事としては考えられていないのだなぁと、、
自分は恵まれているという気持ちだけでは薄っぺらい
何も悪くない沢山の人が亡くなるなんて、あってはならない
ただ世界平和を願います
読んで良かった
Posted by ブクログ
24歳の看護師が、95歳の患者の24歳だった時にタイムスリップして、1944年から1945年の1年間をフィリピンに派遣された従軍看護婦として過ごす。
悲惨な体験をした従軍看護婦の物語を描くこともできただろう。しかしその時代の教育を受けていない主人公の、命に対する考え方の違いや、軍歌ではなく「晴れたらいいね」を歌わせるために必要だった設定。
この時代からすれば、今の普通がユートピアに見えるかもしれないけど、貧困も差別もあるのよ、とちゃんと言わしている。
皆が生き延びたことが描かれたラストが良かった。
ウクライナの人たちも死なないで欲しい。
Posted by ブクログ
読みやすいはずなのになぜか、一気読みできず読み終えるのに2ヶ月ほどかかってしまった。
現代にいきる看護師紗穂が、戦時中のマニラにタイムスリップし、従軍看護師として生きていく話。SF小説と思われるかもしれないが、そうではなく、現代を生きる女性の目を通してみた戦争の悲惨さ、そして無意味さを訴える小説である。
しかしながら、主人公紗穂の持ち前の性格から、常に前向きに生きようとしている姿に心を打たれる。
「晴れたらいいね」って、その「晴れたらいいね」だったんだね!と、途中、はっとさせられる。
Posted by ブクログ
看護師の紗穂は夜間見回り中に大きな地震に襲われ、見回り中の部屋にいた患者の雪野サエとなって1944年のフィリピンへとタイムスリップする。
日赤の従軍看護婦として、友人の美津に助けられて過酷な日々を生きていくことになる紗穂。
間もなく終戦がやって来る。それまでは何としても生き抜いて日本へ帰るのだと言う強い気持ち。
タイトルの「晴れたらいいね」はドリカムの歌らしい。山中を歩いている時に紗穂が歌ったこの歌が、仲間たちの励みになった。
友人の美津の日記の最後のページに書かれていたのは
「わたしたちの未来は、晴れたらいいね」
Posted by ブクログ
先にドラマ版を観たが、小説と内容はかなり違ってたなぁと思った。小説の方が過酷で悲惨。ファンタジー感も伏線回収も薄いので、戦争の悲惨さを現実感持って感じるかも。お国の為に死ぬ方が立派だった日本…なんて馬鹿な時代だったろうと悲しくなる。
Posted by ブクログ
不思議な感覚の小説でした。その中で
今では考えられない戦争中のことを思い、沢山の人がいろいろな意味で戦いぬいてきたんだと改めて平和の大切さ感じました。
Posted by ブクログ
看護師の沙穂が夜勤中に地震に見舞われ、気付くと戦時中のマニラで、従軍看護師であるサエという女性になっていた、、ていう始まりで割りと気楽に読み進んでいたんだけれど、途中からがっつり戦争のお話。
従軍看護師の部分は結構細かい事まで書いてあって、赤紙で召集されたのは男性って思ってたけど、こういう形で戦地で働いてた女性もいたことを改めて考えさせられた。
ただ全体を通して見ると、タイムトリップ、入れ替わり、そしてドリカムで。なんだか頭ん中でうまく混ざり合わなかった感あり。