小説・文芸の高評価レビュー
-
Posted by ブクログ
ネタバレリョウジと雪穂の関係性や彼らが犯していることに少しずつ少しずつ気づかせる展開がうまい(とくに典子とリョウジの出会いのあとに、篠塚製薬の話挟むところとか)。
そしてラストにかけてはカーチェイスのように息着かせない展開!
主人公2人の内面やお互いへの感情、仲良くなっていく様子の直接描写がなかったのが惜しくもあり、読者に想像させる余韻にもなっていた。
ハゼとエビのエピソードと二人の関係性を重ねると、雪穂の住処にリョウジは住み着いていて、雪穂に危険が迫ると知らせる(守る)から、どう考えたって力関係は雪穂>リョウジ。
でもリョウジが雪穂に惚れ込んでいて雪穂がそれを利用したというだけではなくて、お -
Posted by ブクログ
p10 人生だって断続するトンネルみたいかものだ。必ずどこかで意識は途切れ、ずっと明るいままの思考が連続しているわけではない。それなのに、たった今通ってきたばかりの道にトンネルが存在していたことさえ忘れてしまう。そうして人は、常に明るい綺麗な道筋を顧みようとする。
久しぶりの読書は読解力を求められる。p482の犀川先生のセリフ、頭にはいってこない。。
p483人は、自分以外の多数の他人を意識しないと、個人とはなりえない、個人を作りえない
p526 人間以外の動物たちは、喜怒哀楽を知ることはあっても、それを隠したり、保存したり、仲間に分け与えることはできない。すべては伝達に起因している。人 -
Posted by ブクログ
「張り込み明けによくそんな分厚い本読めますね。眠くなるでしょ」
「読んでて眠くならない小説のことをミステリって言うんだよ」
「にしても、雛未さんをめちゃくちゃ警成してたのはちょっと心外というか、腹立ちますね。
やっぱお医者さんみたいに頭いい人は、ギャルは素行悪いって偏見強いんでしょうね」
蓮杖が愚痴っぽくそうこぼすと、小石はにやりと笑って、
「その蓮杖くんの発言も、“医者は頭いい”って偏見と“頭いい人はギャルへの偏見強い”って偏見を孕んでるよん」
「なによ、客いないんだから別にさばりじゃないし。いいことじゃん、不倫調査を頼んでくる客がいないってのは、それだけ恋しんでる人が少ないってことだよ -
Posted by ブクログ
ネタバレ『食堂かたつむり』を読み終えて、涙が止まらなかった。
本を読んでここまで声を上げて泣いたのは、生まれて初めてだと思う。
“命はどれほど大切なものなのか”という問いが、静かに、だけど強く胸の奥に突き刺さった。
物語が進むにつれて、お母さんの倫子への愛情が少しずつ明らかになっていく。
派手に示される愛じゃない。
人目につかないところで、そっと積み重ねられてきた愛。
その存在に気づいた瞬間、胸が締め付けられて、最後の手紙ではもう涙を抑えられなかった。
エルメスのシーンは言葉にできないほど心を揺さぶられた。
様々な事情を理解したうえで、自ら解体されるために歩み寄る姿は、残酷で、優しくて、尊くて、悲 -
Posted by ブクログ
心に響く。
買うかどうか迷ってここを訪れた人は安心して、この本を手に取って欲しい。この本は、あなたの人生に、少なくとも影響を与えるものだろうから。
こういう類の小説を読むたび、思う。小説というものは、物語というものは、その作者の今までの人生の集大成なのだということを。
文学には、学校の教科書なんかよりも、よっぽど濃い学びがある。その学びとは、作者が、頭を抱え悩み、考え、そして至った結論の数々である。それは、登場人物の台詞を通して、我々読者に伝えられるものであり、我々が本文約200頁の中から唯一覚えて、吸収しなくてはいけないものだ。
匂いや温度を感じるような、まるで自分もおばあちゃんの家にいるよ -
Posted by ブクログ
ハックルベリーの冒険を知らずにこの本を読んだ。奴隷の立場で語られる話だがこんなにも過酷な状況を強いられていたことを知った。白人は黒人に対し鞭打ちなどの酷い拷問で支配することで心の底にあるその恐怖心を隠していたのではないかと思った。
アメリカだけでなく最近の民族主義的な風潮はそういった感情を現代の人も持っている表れではないかと考えさせられた。
現在でも世界中でデモや暴動が起きているニュースを見て、なぜ死者がでるほど激しくなるのだろうと思っていた。その発端は人としての尊厳を保つ限界を越えるほどの抑圧があったからこその行動だからであろうと気付かされた。
奴隷の視点での話なのでハックルベリーの冒険と読 -
Posted by ブクログ
忘れかけていたあの頃の未熟さ、情けなさ、残酷さを、ヒリつくような緻密さで正確に表現していて、作者はまさにこの渦中にいる女子中学生かと思うほど。解像度の高さよ。すごすぎる。
主人公の捩れっぷりは相当なもので、伊吹くんがかわいそうでかわいそうで…中学校編からしんどいながらも読み進めていたら、急展開からのエンディング。
村田さんの作品を貫く、暗い肉体的な欲望や手に負えない感情を扱いながらも、これはそこからいくばくかの解脱を遂げた数少ないものなのではないかと。絶望の真ん中にほったらかされなくてよかった…
あまり読み返しはしない方だけど、この作品は珍しく最後のパートを2度読みました。直前まで苦しかったか