小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
ネタバレ最初はスパイというあらすじの言葉だけをみて、もっとミステリーっぽいお話なのかな?と思っていた(腹の探り合いとか、バレかけて一悶着…とか)。
実際はそんなことは一切なく、おだやかに、熱心にチェロの練習に励む主人公と先生とその仲間たちがいて。だからこそ主人公はスパイとして嘘をつき続けなくてはいけない罪悪感と、いつか終わるという恐怖に悩んで、でもチェロと向き合う日々や仲間たちとの逢瀬も楽しくて…
橘くんが思いがけず見つけた居場所、どうか少しでも少ないダメージでふんわり落ち着いて欲しい…と思っていて、そのときがくるのがこわかった。
結果、最悪な形でばれてしまうし、先生の気持ちも分かるけど…!!橘く -
Posted by ブクログ
ずっと気になっていた作品。
60年代の古い小説で、日本語訳もかなり前のものなので読みにくいのではと警戒していたが、意外なほどスラスラ読めた。
淡々とした文体でテンポがよく、古さを感じる場面は少ない。聞きなれない単語(「月賦」など)もあるが、数えるほどしかない。
一方で内容はかなり哲学的で、人間性や共感の本質について考えさせられる。
「マーサー」は実体なのか幻なのか、その曖昧さが世界の不安定さを際立たせていて興味深い。
読者に解釈を委ねる姿勢も本作の魅力だと思う。
テーマは難解に感じる部分もあるが、文章やストーリー自体はそれほど難しくない。
読後にAIに色々質問して理解を深めるのも楽しい。
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Posted by ブクログ
美しく、そして悲しい物語だ。
森、泉、果てしなく広がる草原。これ以上ない大自然の中に「創作者の家」があり、あらゆる芸術家がそこを訪れては楽器を演奏し、小説を書き、編み物をしては帰って行く。「僕」はそこに住み込みで創作者達のお世話係をしている。ある日、母親からはぐれて傷ついた動物が迷い込んできたのを保護し、「ブラフマン」と名付けた。そこからが僕とブラフマンの濃密な生活の始まり。僕はこよなくブラフマンを愛し、かわいがり、ブラフマンは僕を慕い甘える。寝る時は存在を確かめるように尻尾を絡め、姿が見えないと不安がる。もう可愛くて仕方がない。犬とおんなじ。でも犬じゃないんですよね。犬のように賢いけど水かき -
Posted by ブクログ
始めて読んだミステリ小説。
「ミステリ初心者にお勧めは?」とAIに聞いたときに挙がった候補の一つで、短編集中心ということもあり、とても読みやすかったです。
読んでいて何度も騙された感じが、気持ちよかった(?)です。
ミステリの楽しさって、こういうことなのかもしれません。
“超美人の霊媒探偵”という設定がどこかラノベ的で、人によって好みが分かれそうですが、自分は嫌いじゃないです。
一方で主人公のことは、何となくあまり好きになれませんでしたが、終盤の仕掛けでその印象にしっかり説明がつき、納得できました。
実写ドラマ化もされているようですが、個人的にはアニメ映えしそうな作品だと思います。
漫画 -
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本当に面白い小説だった。最初から独特の世界観が感じられて物語にぐいぐい引き込まれた。村上春樹の長編を読むのは初めてだったが、この人特有の比喩表現とか物語の展開が自分の好みにすごくあっているんだと思う。いろいろな意味深な表現や出来事がたくさん出てきすぎていて、すべての意味を理解するのはとても難しいと思うが、この物語は人間が心の隙間を埋めて自分を認められるようになるまでの過程を描いているのではないかと思う。さくらと佐伯さんはカフカの実の姉、母ではないとは思うが、カフカはそう自分の中で認められるような根拠を探し求めているように思えた。そうすることで呪いを受け、解放されることができるからだ。また、カフ
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澤村伊智の!新刊!読みました!おもしろかった……。ちょと今のところ今年のベスト3に入りそうだ。いまのこの時勢で、社会をこれだけ取り込みつつ、小説でしかできない表現をしており、そしてホラーとしてしっかり怖いのすごすぎないか、小説うますぎ。
今回は障害者、ミックスルーツ、沖縄への差別と米軍や先の大戦による天皇批判要素もあり、めちゃめちゃ盛り込んでくるやん……と思いながら読んでいたし、最後のあの小説だからこそできる演出、自分の偏見が浮き彫りになり、食らった。本当にまだまだ自分のなかにある偏見を引き剥がすのは難しい。今回体感でもって自分のなかに内在化した偏見の存在がわかってよかったと思う。
また排外主 -
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この作品が持つ「透明感のある美しい文章」や「生と死、記憶という重いテーマへの真摯な向き合い方」が、どこか純文学のようなノーブル(上品)な雰囲気を醸し出している。
大衆小説(エンタメ)ではありますが、ただ軽いだけの日常系ではなく、人間の感情の揺れ動きを丁寧に描いた「非常に文学的で質の高いエンタメ小説」であると思います。
―前作からのバトン―
前作『今夜、世界からこの恋が消えても』は、神谷透という一人の少年の死と、前向性健忘を患う日野真織の切ない恋の結末を描いた衝撃的な作品だった。あまりに美しく、そして残酷な幕切れに、私はしばらく涙が止まらなかった。だからこそ、その「その後」を描く本作を手に取る -
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ネタバレ自分が痛いのなんてわかってる。
でも、それでも、理想像に近づくために、何者かになるために、自分は必死に頑張る。
これが結構刺さった。
おそらく私だけではなく、一定数の人間が抱いている感覚だと思う。この本が出てからかなり経つが、この言葉を心の中でひそかにモットーにしている人の数は、この本が出された当時よりも、今の社会の方がよっぽど多いのではないだろうか。
本書は、今の若者が持ちがちな冷笑的なマインドセットに警鐘を鳴らすと同時に、理香さんのように自らの痛さを自覚しながらもそれでも何者かになろうと努力し続けている人たちを暗に応援している、そんな優しい小説でもあると思う。
まとめると、
他人の線 -
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ネタバレ高崎さんへの応援を込めて、星5。
毒親の母親をもつ私も医学部へ行くために、同じことをされ、言われ、疲弊していた。読み進めていて、忘れていた幼少期のことを思い出したり、正直辛かった。回答を間違えると罵声を浴びせられながら勉強をしていました。私の学力の低さに対する言葉選びも同じ。
私と高崎さんの違いは、私には弟妹がいたために早々に諦めてくれたこと、祖母が近隣に住んでいたこと、それだけ。勿論、私のことを諦めるまでに一悶着ありましたが…。父親は離婚のため不在、裕福だった祖父母からの支援があったところもニアリーイコール。中学時代には母親と大喧嘩をして階段から落として全てを終わらせようとしたので、高崎