あらすじ
平成3年に発生した誘拐事件から30年。当時警察担当だった新聞記者の門田は、旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「今」を知る。再取材を重ねた結果、ある写実画家の存在が浮かび上がる。質感なき時代に「実」を見つめる者たち──圧巻の結末に心打たれる、『罪の声』に並び立つ新たなる代表作。
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Posted by ブクログ
【ニ児同時誘拐事件】第九章-空白-で涙腺が崩壊。門田記者がたどり着いたのは、事件に巻き込まれた野本貴彦と優美が亮のために最善を尽くした結果だった。産みの親と育ての親。『みんなでいっしょにずっとくらしたい』と七夕の短冊に書いた子に『一緒に暮らした、、、お父さんとお母さんのことは忘れなさい』と言わなければならなかった。胸が締め付けられた。門田記者が書いた記事がこの『存在のすべてを』になったのかな。重い内容の中、里穂との関係が純愛として続いてホッとした。貴彦と亮の親子のストーリーだった。
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白く澄んだ素晴らしい作品だった。
不穏な空気が漂うと明らかに靄がかかったような雰囲気になるのが、凄い。
最初は刑事系のパキッとした文で感覚を掴んでいたのに、誘拐事件に関する記述が早々に終わったのでこれから先の展開がどうなるのか不安に思いながら読み進めていた。
しかし、進んでいくにつれて、こう進むべきだったと思えてくる素敵な物語構成だった。
特に印象的だったのは、同じ事柄を語る時に微妙に表現を変えてくるところ。
大体の小説は、違う人物が同じ展開や人物、物体に出くわした時、それが共通のものであることを認識させるためにほとんど言い回しを変えていないように感じる。
ただ今作は、それぞれの人物がそれぞれの視点から見た感覚で語っており、なおかつそれが共通のものであろうと上手く感じ取らせていた。
テーマとなっている写実画の「実を捉える」が、こういった手法で表現されているのではないかと感じ、感動した。
それぞれが寸分たがわぬ感想を持つのではなく、自分の目や耳で感じたことが真っ直ぐに現れているのが、個人的に好きだった。
写実画を実際に肉眼で見たくなった。
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壮大な愛の物語だった
言葉がどうしても陳腐になってしまうが、亮はきっと幸せな人生をこれから歩んでいくんだと思う
ただ誰かが一緒にいなくとも自分を想っていてくれるそれだけでいいのだと思う
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導入から、のめり込むまでには少々時間がかかるけど、でも、のめり込むと息ができなくなる。
正しさって、なんなのだろうか。
ひとつの事件を写実的に描かれているけれど、そこには終わりのない哲学的なものを感じた。
「不可能だから、信じられる」
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なぜ早く読まなかったのか…
散りばめられた沢山の点と点が、少しずつ丁寧に線になっていく
それが一つも無駄ではなく、一字一句読み進めていかなくては…という気持ちになる話だった
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1991年に神奈川県で発生した「二児同時誘拐事件」
誘拐の手口
警察の捜査手法
記者の動き
序盤はこれらが事細かく描かれている
担当刑事、担当記者も30年が経ち、誘拐されていた男児は画家として脚光を浴びていた
30年の謎を記者が紐解いていく
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そもそも実際の元の事件がどの程度モデルとなっているのか気になりながら読みつつ、調べたらネタバレにるかもと調べることもできず、貪るように読みました
ほぼフィクションなのでしょうが、警察とのやり取りや捜査の手法が生々しくリアル
とにかく登場人物が多く、最初は整理できなかった
読み終えたあと、これだけの人物が関わらないと色々な事が無理だろう…と思った
改めて再読したい
何を書いてもネタバレになりそうだから少しだけ
ラストは少し安心した
ボリュームはあるが、少しずつ読み進めていくにはちょうどいいくらいに節が分かれているので読みやすい
2027年に映画化!西島秀俊さん主演
他の配役も気になる
あと、「ホキ美術館」に行ってみたい
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昔起こった二児同時誘拐事件について、様々な人物の目線を織り交ぜながら真相が読み解かれていった。
読んでて物凄い衝撃がある!とかではないけど、とにかく丁寧に書かれていて、感情を揺さぶられた。
誘拐のお話で泣きそうになるとは、、
読み終わった後でタイトルを改めて見てみるとすごく深い意味が込められていることが分かる。
読んだ後も余韻がずっと感じられるような作品だった。
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ミステリーがベースなのにまさに写実的な作品でした。最後の1ページまで綺麗で丁寧で、登場人物の心境にこちらも心が揺れました。
忘れられない作品になりました。
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写実主義という美術のカテゴリを知ったのは最近のこと。
本物らしさを追求して手を入れ続けるのものだそうだ。
主人公(ネタバレ含むのでぼかします)を
サポートする人たちが、
自身の人生をかけてサポートする様子が書かれている。
予定された大団円かな?と
ちょっと美化しすぎな気もするけど、
キャラクターの一言に重みがあって
読み応えのある作品。
長い作品を仕上げるのに体力が必要と思うけど、
この読後感は、丁寧に人物の心情を書いたからなんだろうなと。
ありがとうございました。
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分厚い本なのに、読みやすく、先が気になって一気に読んでしまった。一つの事件の真相を突き止める話がここまで人と人とのつながりや愛情に涙がとまらなくなるとは予想してなかった。私のベスト1⭐️
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時間の流れが長く感じるほど
じっくりと読ませる一冊
読むほどにじわじわと心に染み入る一冊
映画化されるとのこと
上映開始前に再読しよう
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親子愛の話。
空白の3年の告白のシーン、そして別れのときは感動して読んでて涙が出た。
結局、人は人なんだなと。
優しい人は犯罪に巻き込まれて尚、やさしく愛を持って生きていて、その苦しさ、不運さとともに、もがき幸せを目指す その情景に感動した
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背景や描写の説明が冗長なことも含めて「写実」的であり、「存在のすべてを」実感させ、また喪失させていく。
ミステリーというよりもヒューマンドラマなお話。トリックやドンデン返しを期待する方にはオススメできない。内容としては素晴らしく確かに映画化向き。2027年に西島さん演じるモンデンが楽しみ。
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不幸な境遇にあった子どもに不器用さはありながらも愛情を持って接する育ての親の優しさに感動しました。目下で不幸があったとしても愛情が未来に継承され、暖かい家庭が築けると良いなと思います。
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とても深く突き刺さる素晴らしい本でした。
なぜ絵を描くのか、なぜ記事を書くのか、その本質に迫る本だと感じました。
表面だけ見ても決して気付けない、『存在』、『実在』の重要性を説く話でした。
Posted by ブクログ
★4.6
二児同時誘拐事件。犯人は捕まらず時効を迎えたのちも、真実を追い求める人達がいた。
それぞれ思惑は違う。過去に向き合いたい者、正義を求める者、そして忘れたい者。
ただのサスペンスかと思っていたら、思いがけず“描くこと”と“記すこと”の本質に触れてしまった。
たまにこんな小説に巡り合う。
「まだ終わらないで、もう少し読みたい」
ページをめくる手が惜しかった。
一枚の絵に対して、画家はどこかで諦めないといけないらしい。絵に完成は訪れないから。
ただ、我々は画家の思いなど梅雨知らず、十分に美しさを感じられる。
この小説も然り。もしかすると筆者にとって完成ではないのかもしれない。
それでもやはり、この小説は美しい。
美しさとは、描ききれなかったところに宿ることもある。余白にある美しさを感じられた一冊だった。
存在とは何かを考える
「すごい…」
読み終えて出た言葉はありきたりで陳腐なものだったけれど、何かずっしりとした重量があるのに遠く上の方できらきらとした澄んだものがみえる、そんなものが腹に胸にのしかかっている感覚を覚えた。
家族愛、虐待、憎悪、淡い恋慕、執念、悔恨、そして希望、その間を湧水のような清らかで力強い写実画が繋いでいる。
作品の中で絵画の挿絵は1枚もないのに、そのほとばしる生命力と存在感溢れる彼らの作品が脳裏に焼き付いてしまう。
「彼」の存在感も実体も記憶の中のもので靄がかかった輪郭の薄い人物に感じられるが、彼の作品の描写からは生きている一人の芸術家の命の力、思いの強さを受け取るのだ。
この作品にはたくさんのメッセージやテーマがあり、読み手によって受け取るものは本当に様々ではないかと思う。
が、少なくとも絵画好きならぜひ、読んでみてほしいと思います。
ミステリーが好きな方も、とても読み応えのある大作ですのでぜひ。
作中の「トキ美術館」は間違いなく千葉県の「ホキ美術館」がモデルで、ここには写実の大作が多く展示されています。静謐な空間で写実画に圧倒され続ける体験は、他ではなかなか味わうことができません。
超絶プロット
ただ、ただ、すごい。感動。なにより、悲惨なエピソードを吹き飛ばす、プロット。闇の中の一点の光、その光を照らし出そうとする、いくつもの信念と愛情。とにかく、良いです。
涙を超えた感動
一ページ一ページが勿体無いほど作者の試作や体験の深さが滲み出る。パズルのように空白の時間の謎が解けていく。生きるとは何なのか、芸術とは、表現とは。失った事のある人にしかわからない愛の深さと悲しみ。私の空白を埋めた本。人生の岐路に必要だった作品。今日読み終えました。ありがとう。
Posted by ブクログ
オーディブルで視聴。
私には、登場人物の多さや、時代の行き来、話の展開が複雑だったため、オーディブルではなく本で読めば良かったな〜
でも内容は良いし、感動作。
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二児同時誘拐を巡り話は進んでいく。被害男児4歳の内藤亮、母親の瞳、祖父母の茂と塔子、所轄刑事の中澤、新聞記者門田、そして、亮を預けられた誘拐犯の弟(画家野本貴彦)とその妻(優美)、亮と高校で出会った画廊の娘里穂。貴彦と優美は3年間亮と隠れるように暮らすのだが、その間に亮は貴彦から写実の絵の本質を伝えられる。30代になった亮は、如月修という人気の写実画家になっていた。貴彦と優美が亮に伝えたかったこと「存在のすべてを」は、亮の絵の中に。
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⭐︎4.8
(5はなかなかつけたくない、というプライドが邪魔をして…笑)
何度か書いているのですが、私の中で読書の「面白かった」の基準は2つあって
・自分の心を動かす、読む前と後で考えが何かしら変わる、というような、自分に影響を与えるもの
・心を動かされたりそういうのはないけど、単純に話が良かったり、贅沢な時間潰しなるもの
この2つです。
基本高評価になるのは一つ目の要素が多いけど、この話に関しては、結構純粋に「話が面白かったから」だと思います。
面白い、というのも、表現が正しくないかな…
映画館で映画を観てる感覚に限りなく近いけど、私は映画だと作り物感をどうしても感じてしまう。でも小説だと、頭の中で自然な世界で話が生まれて、動いていくから、より本物の世界で動いてる感覚でした
まず、タイトルが、シンプルだけど、壮大。
こういうのって、対して深刻じゃない軽めの話に以外に使われて、お涙頂戴的な感じか
逆に、すごーく暗くってどうしようもないしんどいストーリーか
タイトルからそんなイメージでした。
でも、あぁ、そっか、
大袈裟でもなく、ちゃんと物語に沿ったタイトルだなって、すごくしっくり来た瞬間がありました。
スタート部分は、同時誘拐という、なんとも興味が惹かれるところから、いろんな人物が少しずつでてきて、それぞれが丁寧に描かれて、彼らの人生がじわじわ滲み出てくる感じ
読書をしたというより、この世界に少しお邪魔させてもらった、みたいな感覚でした。
すごい楽しい話でもないし、心に残る言葉があったりするわけではなかったけど、一生懸命生きてる人たちがそこにいる重みを感じざるを得なかったです。
そして、恋愛小説はもう何も響かなくなってきた私ですが、これくらいのものが、意外に染み渡る。
この本を読んで良かったなと間違いなく思える一冊でした。
Posted by ブクログ
平成3年の未解決「二児同時誘拐事件」の発生というジェットコースターのようなスタート。30年後の新聞記者の門田の再取材からは信憑性に欠ける情報を頼りに展開していくため、長いトンネルに入ったような気分だった。事件の真相と「空白の3年間」が描かれる後半は夢中になり、読み応えがあった。文章は読みやすいが、取り扱う内容の重さもあって読むのに時間がかかった。シリアスな雰囲気の中でも里穂視点と優美視点が時折和ませてくれた。最後は育ての両親と再会を見たかったと思いつつ、「芸術に完成はない」というのを見せられた気がした。
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久しぶりの塩田武士さん!
まぁ、単行本以外は、読んでるけど〜
二児同時誘拐!
結構、身代金渡すまでのシーンは、ワクワク!ドキドキ!
これは、この珍しい事件を追っていくのかと思えばさにあらず!
未解決になったこと事件を時効が過ぎて、30年という月日を超えて、動き出す。
幸運にも、この事件は、誘拐された子供たちは、帰って来てる(^_^)v
でも、一人は、3年後に帰って来る。
元新聞記者さんやから、真実を追うシーンには、現実感がある。
コツコツ、コツコツとジグソーパズルのように取材でえた事実を埋めていく…
途方もない時間をかけながら…
事件自体は、時効になってるけど、当時に関わった刑事、記者には、それぞれの忘れられない想いがあるんやろうな…
人によれば、この辺ツラいかも?
なんか、「罪の声」と似ている感じかなぁ…
現在進行形の事件解決とそれで明らかになった部分は、当時に戻って再現していく2元中継みたいな感じで進む。
空白の3年間が、充実してるようで、やっぱり現実を考えるとツラい.°(ಗдಗ。)°.
いつもやけど、スーッと流れで読んでしまうので、人の名前が憶えないことあるんよね〜なので、誰?ってなる事が…(・・;)
まぁ、重要やったら、また現れてるやろ!って感じで振り返らずに読んでしまってるけどね(^◇^;)
空白の3年間が、充実してるようで、やっぱり現実を考えるとツラい.°(ಗдಗ。)°.
亮くんは、あの事件を契機に、ある意味、幸せを掴んだ気もするな。
ラストは、ええ感じ!
あれ!お父ちゃんは???
絵で繋がってるのかもしれんけど…
「これから世の中がもっと便利になって、楽ちんになる。そうすると、わざわざ行ったり触ったりしなくても、何でも自分の思い通りになると勘違いする人が増えると思うんだ。だからこそ『存在』が大事なんだ。世界から『存在』が失われていくとき、必ず写実の絵が求められる。それは絵の話だけじゃなくて、考え方、生き方の問題だから」
ちょっと、毛色が違うかも、しれんけど、記者が地味にコツコツと昇降を集めて、スクープまで持って行くような映画も好き!
イチオシは、
「スポットライト 世紀のスクープ」
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序盤と中盤からの流れ方にギャップ萌
踊りつかれても、そうだけど序盤の勢いが読みたい!!という気持ちをすごい駆り立てる
だから中盤からのゆっくり時が流れるような展開がより良い
はじめて小説で考察を調べたかも!2回読んでも面白い作品だと思います
Posted by ブクログ
2024年本屋大賞第3位受賞作。
二児同時誘拐事件から物語が始まる。
幸せと切なさと悲しみが入り混じる展開に心拍数が上がっていく。
愛情が溢れんばかりの作品。
ラスト1ページの終着に胸が震えました。みんな幸せだといいな。
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誘拐事件の裏側にある真実。そこに深い愛と絆を感じるからこそ切なかった。絵を描くことを通して繋がり続けて、ラストは驚きと安堵。彼らにしかわからない家族という形に優しさが溢れていて胸が打たれた。
Posted by ブクログ
サスペンスでありミステリーでありドキュメンタリー的な要素もあり、そして美術史やラブストーリー的なところもあり……重厚なエンタメ小説であるのと同時に、なんかこれは、もう、人生!!人生の小説です!!と思いました。人生やって頑張ってる人、みんな読んでほしいです。
激動の生活を送る中でも、あの約束が忘れられてなかったって分かったとき、私も泣いちゃった。そして今から老後に備えてオタクグッズの整理に入らせていただきます。それでは。
Posted by ブクログ
切なくて、悲しくて、最後に少しだけ救われる。
これは本じゃなくて、すでに映画だな。
映像が綺麗に浮かんでくる文章力。
私は絵が上手じゃないから、よくわからないけど、写実絵にとって「存在のすべて」を描く事が大切だそうだ。メインだけじゃなく、その周囲もきっちりと描くこと。それが、結果的にメインをリアルに見せることになると。
きっと、亮だけじゃなく、その周りの人たちの存在すべてを丁寧に書いたから私の頭の中ではすでに映画なんだろうな。
Posted by ブクログ
順番逆だが『踊りつかれて』に続いての塩田先生の作品
2作しか読んでないがいつもテーマ曲がある?
作中に出てくる洋楽の1曲がずっと流れている感じがする
主題は、時効も過ぎている30年前の誘拐事件の身代金受け渡し劇から、誘拐された子が戻るまでの空白の3年間にシフトしていく
『踊りつかれて』もそうだったが事件はキッカケでしかなく、描きたいものはその裏の話なのね
ミステリーの皮を被った人間ドラマやね!
人間ドラマとしては揺れ動く心情を細かく描いて切なさに涙するほど感動的