あらすじ
「寺地さんの作品の中で、一番好きです」原田ひ香さん
ぼくたちは、夜を歩く。眠れない夜に。不安な夜に。静かで、藍色で、心細い。でも歩かずにはいられない。そんな夜に。
「一緒に歩かない?」
会社員の實成は、父を亡くした後、得体のしれない不安(「モヤヤン」と呼んでいる)にとり憑かれるようになった。特に夜に来るそいつを遠ざけるため、とにかくなにも考えずに、ひたすら夜道を歩く。そんなある日、会社の同僚・塩田さんが女性を連れて歩いているのに出くわした。中学生くらいみえるその連れの女性は、塩田さんの娘ではないという……。やがて、何故か増えてくる「深夜の散歩」メンバー。元カノ・伊吹さん、伊吹さんの住むマンションの管理人・松江さん。皆、それぞれ日常に問題を抱えながら、譲れないもののため、歩き続ける。いつも月夜、ではないけれど。
感情タグBEST3
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モヤヤン。得体の知れない不安。どんどん増える深夜の散歩メンバー。気になることがあっても深く追求せず、相手の言葉を否定しない主人公の性格は素敵だと思ったし、見習いたい。世代もバラバラだが、こうやってなんでもない会話をしながらの散歩、いいな。
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夜に読むと良い作品。しんみりじんわり心を温めてくれる作品だった。
主人公實成の性格がとても好き。深慮深く相手が求めていることを自然にやってしまえるし、人との距離の取り方がとてもうまい。そして何より誰のことも否定せず肯定する。好きだなー。私もそういう人間になりたい。
悩んでいる時ってただ話を聞いてくれる、ただ一緒に居てくれる。そんな人が居れば人は前を向いて歩いていけるのかもしれない。
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久しぶりの寺地はるなの小説。登場する人物も等身大のどこにでもいそうな人たちで、いろんなことを抱えて他人を思いやりながら生きている。相手から求められることと、自分が与えられることのギャップに思い悩みながらも、自分自身であることをやめられない悩ましさ。煮詰まった関係に嫌気が差して、離れたいと望みながらも、求められることの安寧から抜け出ることができないもどかしさ。自分の気持ちを理解してもらおうとどんなに言葉を尽くしても、受け止めてもらえない絶望。特に大きな事件が起きるわけではない日常を淡々と描くなかで、複雑で難しい人間関係の機微を言語化して気づかせてくれる、最初から最後まで、なめらかで味わい深い日本語表現が心地よい、こころに滲みる小説だった。
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不思議な話だった
タイトルの通り眠れない夜に読むとホッとするようなそんな小説だと感じた
冬至は色々なことに気づきひっかかる
そして深いことを考えてる
なんだかじわじわと心をあっためてくれる作品でした
夜のウォーキングもう少し涼しくなったら私もやってみようかな
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實成は、無関心なようで周りの人のことを考えた行動ができ、とても優しい人でいいなと思った。
いろんな人と関わったり離れたりすることで、自分自身で問題を解決していく、やっぱり人との関わりって大事だと思った。
すごく心に染みて、今読んでよかった。
塩田さん、とても素敵な人でした。
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静かに、淡々と、夜のように進んでいく物語。「どこにも移動せずに旅をする人もいる」ってすごく良いなと思った。善く生きようとする實成の性格や考え方も良い。無関心なようで、たくさんたくさん考えてる。外に出すわけではないから一緒にいても気づけないかもしれないけど、私はすごく好きだなと思った。
夜の時間って、不思議と落ち着けたり、深い思考になったり、朝昼とは違う独特な時間だよね。ハッキリした理由なんかないんだけど、深夜に散歩したこと、自分にもあったなぁなんて思い出した。
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淡々と過ぎていくようで実はまったく淡々としていない日々。誰かと近づいたり、離れたり。そんな小さな揺れを繰り返しながら、人は生きているのだと感じた。
劇的な出来事があるわけではないけれど、登場人物たちがグラデーションのように少しずつ変化していく様子がリアル。
まるで散歩の帰り道、気づけば自然に家に着いていた。そんな感覚で、最後のページまでたどり着いた。
ひとつひとつの言葉に、共感したり、ハッとさせられたり。心に残るセリフがいくつもあった。
「可能性が少ないって、もう何者にもならなくていいって、自由だね」
この言葉は、胸の奥にしまっておきたい。
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職場図書室の新刊入荷のところにあったんだったかな。
まず「月」と入っていると手に取りたくなる。
帯には
父を亡くした後に得体の知れない不安(モヤヤン)にとり憑かれるようになった實成は、夜やってくるそれを遠ざるように、夜道を歩くようになる。
そのうち、その散歩?仲間?が増えていく。
というようなことが書かれていた。
それだけで、みな、何か抱えているように思えるじゃない?
私の不安感やらは、もしかしたら同じように父が亡くなる前あたりからはじまっていたのかも。
私も共感できるかも、って。
読後
共感というか、いろいろな悩みやらを抱えながら、それでも生きている人がけっこういるんだろうな、と。あたりまえなことを今さらながら。
周りの人は華やかで楽しそうだから。(若い頃の自分はそうだった)
人と関わりながら、自分で、自分の力で生き続けていくんだな、やっぱり。
そして 上の娘に寄り添う気力が少し足された。
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生きづらい
家族 職場でも
主人公は父から言われた
善く生きるを忘れずにいる
皆んなの明日が良くなればいいと思う
一気に読みました
次に読むのは
九月姫とウグイスです
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みんなみんな1人で、でも繋がっている。
寺地はるな先生が紡ぐ夜は、
ほんのりあたたかくて心地いい。
夜っていいな、1人じゃないっていいな…
じんわり染み入る、ひととひととの物語。
實成冬至には、父が亡くなってから「モヤヤン」という何かにつきまとわれている。そいつから逃げるように、實成は夜を歩く。そこで出会う様々な人もみな、何かを抱えている。複雑な家庭環境だったり、上手く恋愛できなかったり…そんな何か引っかかる気持ちを、ただただ夜が、一緒に歩くメンバーたちが、軽く柔らかくしていく。
最後にみんなが選ぶ未来や冬至が導く答えは、リアルで決してキレイなものじゃないかもしれない。それでもそのリアルさが、現実世界を生きる私にはとても染みた。キレイじゃなくても、登場人物たちみたいに遠回りして悩んで足掻きながら…1歩を踏み出していきたいと強く思えた。
寺地はるな先生が描く夜がリアルでとても好きだ。そこには暗闇だけじゃなくて、ちゃんと夜明けが待っているという確信がある。「明けない夜はないよ」って伝えてくれているような先生の作品をこれからも愛読していきたいと思う。
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初めて寺地はるなさんの作品を読みました。書店で、表紙と帯のコメントに惹かれて手に取った一冊です。
タイトルが、「いつか月夜」ですが、「いつか」月夜であって良いけど、「いつも」月夜であってはいけないという意味が込められていると感じました。
月夜のように、何かに照らされて、その明かりを頼りに生きるときがたまにはあっても良いかもしれないけれど、その心地良さに甘んじてはいけない。何に照らされなくても、自分の意思で歩かなければいけないときもあるということです。
話の内容としては、様々な事情を抱えた登場人物が、主人公と共に散歩会をするのですが、その抱えている事情や複雑な人間関係がだんだんと分かってきて、読んでいて先が気になるストーリーでした。
他の作品も読んでみようと思います。
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月夜に食べる米の飯。
善き人。
言葉の表現がよかった。
勉強になりました。
みんなで協力したり共感したり。
私にもこんな友達が欲しいと思わせる
作品でした。
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2024年出版。とても地味で普通、のようでいて、ジンワリ自分とは違う人々・関係性を間接体験する作品だった。非日常を強調するような部分は見当たらず。下手をすれば退屈と感じる読者も多いかも知れないな、と思いつつ、意外と興味深く読み切ってしまった。とても丁寧に、人の気持ちや心を大切にする・したい人達が中心的に出て来る。反するタイプの人達が対比的に描かれる。妙に文学的だったり、小難しく押し付けがましく含意の描写は無い、ように読んだ。なんか、ほの暖かい気持ちで読み終えられました。
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ものすごくリアルに人の葛藤が描かれている気がする。そんなモヤヤンを抱えた人たちの夜の散歩シーンはうらやましい。一人増え二人増え…少しずつみんなが前に進み、一人減り二人減り…、最後一人になってしまうかと思う主人公の前にモヤヤンの名付け親が現れてくれてほんとに良かった。
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良い小説だと思うんだけど、寺地はるなブランドってのが先に立って、ちょっと期待ほど盛り上がらなかった。
なんとなく、津村記久子の小説に似ているテイストやけど、津村作品ほど振り切ってないというか…。
得体の知れない不安感(モヤヤン)にとらわれないように忙しくする、それでもとらわれたら散歩に出る。なるほど、俺も時々焦燥感とか自己嫌悪が突然噴き出してきて、どうにも身動きとれなくなりそうになるんやけど、そういう時は走ってる。大声で叫びたいけど、街中では下手すると通訪モンやしねぇ。
伊吹って女が気に入らんかったなぁ。クズ男に惚れて身を崩すのは本人の自由やけど、自分が不幸なのを免罪符に元カレ騙し打ちにするような行動はサイテイ。
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サイン本。夜は不安や悩みが膨らんでモヤヤンになったり、急に走り出したくなる気持ちが痛いくらいわかる。實成が夜に歩くのを好きなように色んな気持ちや事情を抱えた人たちが寄り集まって夜歩く。話しながら、無言でも、ただ歩く。そしてまた1人、1人と去っていく。それだけなのにそれだけじゃなくて、すごくしっとり心に入ってくる。ただ、伊吹の依存性には危うさと怖さを感じて少し嫌悪感。彼女が手放せて良かった。「わたしのさびしさは、わたしのもんや」と笑って言い切る實成の母の言葉があまりに格好良くその強さがすてきで憧れてしまう。
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大津出身、大阪で印刷会社に勤める實成冬至は4人兄弟の末っ子。父を亡くしてから家族の様子も少し変わり、自分の不安のようなものを紛らすように夜の散歩に出かける。かつての交際相手、そのアパートの管理人、後任の会社の女性とその同居の少女、と再会あるいは出会い、徐々に夜の散歩仲間が増えていく。謎の隣の部屋の住人、ほのかに恋心を抱く幼馴染などとの交流とその中から感じる社会の違和感などを、細やかに綴っている。
静かに流れていく物語が心地よく、共感することの多い小説だった。
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みんなそれぞれ 悩みや不安や問題を抱えてる人たち。淡々と とりとめもなく 物語は進んで行く感じでしたが 自分自身で不安や問題を解決し それぞれの道を進む為に 離れて行く。
「月夜じゃなくても みんな歩ける」
彩夏には頑張ってほしいな
バラバラになるのは 淋しい感じだったけど ラストで あー良かったなぁって感じでした。
月夜の散歩 あれば是非参加したくなりました。
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主人公のよく考えるところが好き。最後にウォーキング仲間がバラバラになるのはさみしい。根っこの部分では繋がっているんだろうけど、これからも関係を継続してほしいなーと思った。
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ただ生きていくことは、旅のように流れ移ろい行くのかもしれない。同じ闇を抱えているように見えたから、いっときだけ一緒に歩き、救われる人もいる。が、必ずしも、そのひとたちと一緒に生きていくのが正しいわけではない。
そして、人が変わっていくことに、何か大きなきっかけが必要なのではないと思った。だから変わりたい時に大きなきっかけを求めなくてもいい。そんな気がした。
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何か大きな出来事があるわけではなく、誰にでも起こりうる日常を描いた作品なんだなと思った。
主人公で語り手の實成は、人に流されず、自分の気持ち、考え、抱いた違和感など、機微を大切にしていて、そして言葉も選んで会話ができる人で素敵だなと思った。
塩田さんとの最後のシーンは、2人の会話がとても素敵で、互いのことを深く理解しあっていることが伝わってきて感動した。
ただ「もっちゃん」はそこまで作中で触れられてなかったので、最後いきなり話が飛んだような、少し気持ちがついていけなかった。
そして真面目で大人しい人だと思ってた伊吹さんはいろいろ大変だった……實成への嫌がらせはさすがに酷いと思った。
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納得できないなら誰かの親切をありがたく受け取る必要はない、違和感を感じているなら距離をとってもいい、皆に合わせようとして無理する自分を嫌いになることなんてない。時には誰かの手を借りつつ、誰より一番近くにいる自分の声を聞いてあげようと思います。
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人は誰もが不安(モヤヤン)を持っている。
それに流されたり、流されてそれに合わせることが居場所に思えたり、気づかないフリをしたり、人に押し付けたり、人のそれに土足で踏み込んだり‥
それを振り払う手はあるし、差し伸べてくれる手もあるけど、最後に踏み出すのは自分。踏み出せば変わっていく。そして差し伸べるよりも、側にいて存在や生き方を認めることこそが、周りの人の役目かもしれない‥
ほんわり暖かい登場人物の、ほんわかな話だけど、ゆるく優しい中に、ものすごく強い芯が胸に残る話でした。
「いつも月夜に米の飯」深いなぁ。
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夜に散歩する人たち。わだかまりや譲れないものを抱えて歩き続ける。でも最後には離れていく。いつも月夜ばかりではないし、月がなくても歩ける、あなたは別の人と歩くべきという塩田さんのラストの言葉が良かったなあ〜。一時、とても心地良い仲間のようになったけど、この散歩を通して変わっていった彼、彼女たち。変わらないものなんてないんだな。
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主人公と散歩仲間たちとの交流が描かれている。それぞれが抱えてる問題が少しずつほぐれていくのが心地よい。
伊吹はちょっと性格悪いなと思った。
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散歩しながらそれぞれが訥々と話す物語。
慣れる必要が無い事に慣れてはいけない。
善き人が必ずしも正しいわけではないし
いつも善き人ではいられないけど、ふと立ち止まったり、迷ったりしながら生きていく。
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淡々とした文体で季節感の表現もなく、實成を苗字と思わなくて、亜子の年齢も全然わからないし、読みづらかった。生きづらさを表現するため、敢えて登場人物を徐々にぼんやりと見えてくるように描いているのだろうかと、悶々としながら読み進める感じ。
最後まで亜子の年齢はわからず、突然のもっちゃんのラストに一体どんなメッセージを送ったんだろうと気になったが、冬至の真っ直ぐな真面目さが伝わったんだろうと推測するしかない。
誰もが生きづらさを抱えながらも、前を向いて生きていくしかないということは、共感できる。
一番好きなところは、冬至の母が言った『わたしのさびしさは、わたしのもんや』。凄く良い。