あらすじ
「寺地さんの作品の中で、一番好きです」原田ひ香さん
ぼくたちは、夜を歩く。眠れない夜に。不安な夜に。静かで、藍色で、心細い。でも歩かずにはいられない。そんな夜に。
「一緒に歩かない?」
会社員の實成は、父を亡くした後、得体のしれない不安(「モヤヤン」と呼んでいる)にとり憑かれるようになった。特に夜に来るそいつを遠ざけるため、とにかくなにも考えずに、ひたすら夜道を歩く。そんなある日、会社の同僚・塩田さんが女性を連れて歩いているのに出くわした。中学生くらいみえるその連れの女性は、塩田さんの娘ではないという……。やがて、何故か増えてくる「深夜の散歩」メンバー。元カノ・伊吹さん、伊吹さんの住むマンションの管理人・松江さん。皆、それぞれ日常に問題を抱えながら、譲れないもののため、歩き続ける。いつも月夜、ではないけれど。
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Posted by ブクログ
父の死後に時々不安など負の感情に駆られるようになって、それを断ち切るために夜な夜な町を歩いている主人公。歩いている時に偶然出会った会社の同僚とその知り合い、元カノとその知り合い。それぞれに悩みを抱えた人たちが「夜の散歩」に加わっていく。
知り合い以上友だち未満、みたいな、お互いに深いところには触れないけど、それでいてお互いを思い合っている(だんだんそうなっていく)関係が素敵だと思いました。私も夜にウォーキングをするので、そういう仲間がいればいいなと思いました。
個人的には主人公たちの恋愛観に印象を受けました。主人公は「いつもそばにいて同じものを眺めて笑い合えるような恋愛関係」を望んでいる。それに対して、元カノは「わたしだけをいちばんに愛してほしい」と言っている。そして、主人公は現在の「気になる人」である幼なじみについて、「やりたいことがいっぱいあるアグレッシブな人。自分の望む恋愛観では退屈なのではないか」と思っている。
私自身の恋愛観は主人公に近いかな、と思いました。その他にも主人公には共感できるところが多くて、だからこそストーリーに感情移入できたのかな、と思います。
Posted by ブクログ
「出生の秘密も家族の問題も抱えていないし、壮絶な過去の心的外傷もない」という会社員、實成冬至が主人公。實成は父を亡くした後、得体のしれない不安(モヤヤン)にとり憑かれるようになり、それを遠ざけるため夜道を歩くようになるが、そのうち、それぞれに複雑な事情を抱える会社の同僚や元カノなど、深夜の散歩のメンバーが増えていく。その散歩メンバー間のゆるやかなつながりやほのかな成長を描いている。
大きな盛り上がりがあるわけではないが、心に沁みてくる良い小説だと感じた。迷いながらも善く生きようと日々の生活に向き合う「まじめ」な主人公に好感を持った。
夜の散歩メンバーが解散してしまうという結末は、この小説としては必然なんだろうが、夜の散歩は続けながらそれぞれの道を歩むという結末でもよかったのになーとは思った。