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怨返し 古道具屋 皆塵堂
日光街道の越ヶ谷宿の旅籠で働かせてくれた恩人・仁兵衛の遺品には幽霊が憑いていた。仁兵衛が若い時分に、江戸で借金の取り立て屋「すっぽんの桑次郎」という異名をとっていたことを知った甥の藤七は、遺品の数々を元の持ち主に返す旅に出ることになった。道中、「刀狩りの男」と呼ばれる浪人に襲われ川に落ちた藤七は、深川亀久橋近くの古道具屋「皆塵堂」で目を覚ました。 三十年前に仁兵衛が手に入れた遺品の数々は、「すっぽんの桑次郎」の借金の形なのか。優しかった伯父が人々に恨まれる非情な取り立て屋だったことがどうしても信じられない藤七は、限られた七日間の江戸滞在のうちに、遺品の持ち主を捜し出し、憑いている幽霊の謎を解き明かし、伯父の正体をつきとめることができるのか? 材木商のご隠居・清左衛門、力自慢の魚屋・巳之助、有能な小僧・峰吉らの助けも借りながら、「知りたがりの藤七」は江戸でも行く先々で幽霊をみることに……。 怪談+とぼけた笑いで人気の「皆塵堂」シリーズ、第十弾! -
乱世をゆけ 織田の徒花、滝川一益
甲賀の忍びあがりの土豪、滝川久助は、里の陰謀で父を失い、兄を殺め出奔。久助は名を一益と改め、諸国を放浪中に織田信長と運命的な出会いをする。一益は、射撃や忍びの腕だけでなく、武将としても力をつけ、信長の寵臣として存在を大きくしていく。天下への道を着々と進んでいく信長だったが、天正十年(一五八二)、家臣・明智光秀の突然の謀反によって斃れてしまう──。一益を頼みとする若き前田慶次郎、伝説の忍者・飛び加藤といった魅力的な脇役も登場。謎多き武将、滝川一益の波乱に満ちた生涯を描く。選考委員が大絶賛した、第九回角川春樹小説賞受賞作。 -
万延元年のニンジャ茶漬け
アメリカの南北戦争で傑出した活躍をし、あるいは奇談を引き起こした海軍少将サムエル・スイード・デュラン。名家の出身で偉丈夫の彼は、なんとニンジャに憧れていた! 折しも、遣米使節団が立ち寄ったボルチモアで、村垣淡路守の摩訶不思議な挙動に惹きつけられていく。西洋文明に取って、未知な国ニッポン。異文化交流で起きることとは……「万延元年のニンジャ茶漬け」。京都で捕まったどろぼうに接見した女性弁護士は、彼の素性を探ると……「太秦の次郎吉」。さいたま出身だが、京都に憧れ大学に通ったのに、就職で神戸に住むことになった女性に巻き起こる騒動とは……「鈴蘭台のミモザ館」。デビュー作の『秘剣こいわらい屋』や『まぼろしのパン屋』で描いてきた、ちょっとコミカル、あったかくて、微笑ましい人間たちを、虚実織り交ぜて描かれる不可思議な三つの物語! -
私雨 峰蔵捕物歳時記
毎日おまんまが食べられれば、悩むことなんか何もないんだ― 御用聞きの峰蔵と癖者揃いの店子が、捨て子たちの成長を見守る。 江戸を正直に生きた多彩な住人が織りなすほろ苦く、心温まる人情長屋噺。 柳原の御用聞き峰蔵の計らいで、才槌長屋に六人目の捨て子が引き取られた。 長屋には妾斡旋の仲人、隠居の元幕臣、茶屋女など、世を厭う店子が暮らしていた。ある晩、住人で湯灌場買いの又八は、親しい寺男の暗い一面を目撃しやけ酒を呷る。帰途、若者に襲われ心身共にどん底に落とされるが、子供らの心優しい看病を受けた又八は……(「私雨」)。温かさ沁みる傑作! -
怪盗 黒猫
妹の仇を追う若殿が鉢合わせした黒影は、巷で話題の義賊黒猫? 長屋の大家は若い女義賊。 住人は癖のある者ばかり。 妹の仇討ちが巡り巡って、女義賊と長屋の衆と共に、悪党退治に目覚める若殿! 長屋の女大家と若殿新シリーズ第1弾! 若殿・結城直次郎は、世継ぎの諍いで殺された妹の仇討ちに出るが、仇は途中で殺されてしまう。下手人は一緒にいた大身旗本の側室らしい? 江戸に出た直次郎は旗本屋敷に潜り込むが、黒装束の影と鉢合わせ。ところが、その黒影は直次郎が住む長屋の女大家で、巷で話題の義賊黒猫だった。仇討ちが巡り巡って、女義賊と長屋の住人ともども世直しに目覚める直次郎の活躍! -
御庭番の二代目
世継ぎの家重を護れ! 宮地家二代目「加門」に将軍吉宗から直命下る。 側室が懐妊したばかりの、家重の病は果たして偶然か。 加門の幼馴染み、十八歳の田沼意次は、家重の小姓。加門と意次は合力して闘う。 享保元年(一七一六)、吉宗は跡継ぎのいなかった家継の養子となり、将軍を継いだ。紀州藩主であった吉宗は、紀州から多くの家臣を伴って江戸城に入った。そのなかに、宮地家も含まれていた。紀州から連れて来た薬込役(くすりごめやく)十七家を御広敷伊賀者(おひろしきいがもの)として置いたのである。江戸城に入ったとき、宮地友右衛門は二十五歳、三年後に二代目となる加門が生まれている。 十八歳の若きヒーロー! 新シリーズ第1弾 -
春色天保政談
御家人の次男坊で無役の波岡進次郎は、剣の腕はからきしだが、色の方は凄腕。女をたらすことにかけては天賦の才を見せ、春画の絵師としても一流の技を持つ。人妻に手を出して追手がかかり、身を隠すべく逃げ込んだ寺は、女参詣客を相手にするとんだ売淫寺だった。さらには、お相手した大奥女中から預かった密書がもとで、江戸城内の権力争い巻き込まれる。御政道には無縁の遊び人・進次郎が味わう、地獄と極楽の顛末とは……。長篇時代小説。 ●多岐川恭(たきがわ・きょう) 1920年福岡県生まれ。東大経済学部卒。戦後、横浜正金銀行をへて毎日新聞西部本社に勤務。1953年『みかん山』で作家デビュー。『濡れた心』で第4回江戸川乱歩賞を、翌年には短編集『落ちる』で第40回直木賞を受賞。以降、推理小説と共に時代小説も旺盛に執筆した。 -
江戸寺子屋薫風庵
尼僧と寺子の熱い絆!江戸版“二十四の瞳”。 江戸は下谷に薫風庵という風変わりな寺子屋があった。三百坪の敷地に平屋の学び舎と住まいの庵がある。二十人の寺子は博奕打ち一家の餓鬼大将から、それを取り締まる岡っ引きの倅までいる。 薫風庵の住人は教鞭をとる妙春という二十四歳の尼と、廻船問屋・日向屋の先代の元妾で、その前は遊女だったという五十一歳の蓮寿尼、それに十二歳の飯炊き娘の小梅の三人しかいない。子供たちの評判はいいが、女所帯では不用心と日向屋の用心棒の堤勝之進が様子を見にやってくる。寺子屋設立の費用と月々の掛かりを出す日向屋は世間体もあって、同じ町内の薫風庵にすげない仕打ちもできないらしい。 そんなある日、隣家の大造が寺子に盆栽を折られたと怒鳴り込んできた。近所では蚯蚓や蛙の死骸を投げ込まれた家もあるのだという。折も折、寺子が学び舎の前で行き倒れを見つける。男前に弱い蓮寿は、城戸宗次郎と名乗る浪人の面倒は薫風庵で見ると宣言する。やがて宗次郎が学び舎で教え始めると、妙春に思いもよらぬ心の変化が……。 隣家への投石は誰の仕業なのか。宗次郎の出現は単なる偶然だったのか。教職の経験もある著者が満を持して放つ江戸版“二十四の瞳”誕生! -
奥小姓裏始末
失脚した田沼意次の甥、世を憚る身の竜の之介がなぜ将軍の奥小姓に? 将軍家斉の個室御用の間。将軍家に害をなす輩を人知れず駆逐せよ! そのためこれを下げ渡す! 下されたものとは……? 大型新人、登場! 新シリーズ第1弾! 竜之介さん、うちの婿にならんかね──。 故あって神田川の河岸で真剣勝負に及び、腿を傷つけた田沼竜之介を屋敷で手当した、小納戸の風見多門のひとり娘・弓香。多門は世間が何といおうと田沼びいき。隠居した多門の後を継ぎ、田沼改め風見竜之介として小納戸に一年、その後、格上の小姓に抜擢され、江戸城中奥で将軍の御側近くに仕える立場となった竜之介は……。 -
江戸の一夜
江戸勤番になった実直な侍が出会った妖艶な女。まんまと財布をすられながらも何となく憎からず思っていた。偶然か罠か、侍は逢瀬に誘われるが……。「江戸は怖い所だから、お気をつけになるんですね」生き馬の目を抜く大都市でたくましく生きる女と、武骨な侍の妖しくも爽やかな交歓を描く表題作など、十六編。江戸の街を舞台に、色と欲に狂奔する人々の姿を活写した時代小説短編集。 *江戸の一夜 *出戻りぐせ *ペテン師たち *笑くぼの女 *淪落 *不義の部屋 *ある御落胤 *隣りも妾宅 *みれん *渡し場 *酔眼の友 *夜逃げ家老 *権八伊右衛門 *欺し欺され *夫の首 *蛇 ●多岐川恭(たきがわ・きょう) 1920年福岡県生まれ。東大経済学部卒。戦後、横浜正金銀行をへて毎日新聞西部本社に勤務。1953年『みかん山』で作家デビュー。『濡れた心』で第4回江戸川乱歩賞を、翌年には短編集『落ちる』で第40回直木賞を受賞。以降、推理小説と共に時代小説も旺盛に執筆した。 -
暗闇草紙
湯島妻恋町の裏通り。明け方から夕暮れまで日が差さず、お先真っ暗な連中が肩寄せ住まう、人呼んで「暗闇小路」。その小路に引っ越してきた、いかにもわけありの娘・お春が押し込み強盗に襲われ、伝家の観音像を奪われた。手習いの師匠で糊口する浪人者・島小平は、思うところあって、お春の窮状に手を貸す。観音像は誰の手に渡ったのか、また像に隠された秘密とは? 波瀾万丈の娯楽時代小説。 ●多岐川恭(たきがわ・きょう) 1920年福岡県生まれ。東大経済学部卒。戦後、横浜正金銀行をへて毎日新聞西部本社に勤務。1953年『みかん山』で作家デビュー。『濡れた心』で第4回江戸川乱歩賞を、翌年には短編集『落ちる』で第40回直木賞を受賞。以降、推理小説と共に時代小説も旺盛に執筆した。 -
用心棒
荒川戸田の渡し近く、簀巻きにされた浪人風の男が助けられた。名は泥助(どろすけ)。男は助けられた縁で、上野池の端の安房屋に身を寄せる。用心棒稼業ながら、剣の腕はからっきし。昼間から酒をくらってぶらぶらし、女にだけはやたら手が早い。全くの役立たずにみえる泥助の正体は何者か。色と欲が渦巻く、江戸の闇の世界を舞台に、過去も未来も捨てた男の生き様を鮮やかに描く長篇時代小説。 ●多岐川恭(たきがわ・きょう) 1920年福岡県生まれ。東大経済学部卒。戦後、横浜正金銀行をへて毎日新聞西部本社に勤務。1953年『みかん山』で作家デビュー。『濡れた心』で第4回江戸川乱歩賞を、翌年には短編集『落ちる』で第40回直木賞を受賞。以降、推理小説と共に時代小説も旺盛に執筆した。 -
蒼翼の獅子たち
時は明治初年、新しい国のかたちが定まらないころ。四人の若者が、マグマのような熱い情熱と石清水のような清冽な理念を胸に、この国の未来を創ろうともがいていた。アメリカの最高学府の教育を受けるには語学力はもとより、基礎学力も充分とは言えず、わが身をほとんど白紙の状態においての渡米。わずか数年前、新政府軍と幕府軍に分かれて戦っていた彼らが、なぜ海に渡ったのか、なぜ日本で大学を創ろうとしたのか。時代が人を産み、人が新しい国を育てる……。 後に専修大学を開校する相馬永胤、田尻稲次郎、目賀田種太郎、駒井重格の四人を中心に、明治維新直後にアメリカへ渡った若き留学生たち。その熱き夢と友情に溢れた青春群像を、直木賞作家・志茂田景樹が実話をもとに骨太な筆致で描く。静謐な感動が心に沁みてくる歴史小説。2010年には「学校をつくろう」というタイトルで映画化(監督:神山征二郎/出演:三浦貴大、橋本一郎、池上リョヲマ、柄本時生/配給:ゴー・シネマ)された。 ●志茂田景樹(しもだ・かげき) 静岡県生まれ。おひつじ座のA型。中央大学法学部卒。塾講師、新聞記者などを経て、1976年秋に『やっとこ探偵』で第27回小説現代新人賞を、1980年には『黄色い牙』で第83回直木賞を受賞。 -
徳川慶喜と血族
あいついで側室を置き、十数人の子をもうけ、狩猟、油絵などの趣味三昧の生活。その慶喜を密かに訪れる権力者たち。奥深い屋敷の中で何が起こっていたか。慶喜は明治政府の改革を、西南戦争をどのような思いで見詰めていたか。徳川幕府瓦解後、駿府の元代官屋敷に引き籠もった徳川慶喜の生活を、女中頭・須賀の目を通して描く。長篇時代小説。『徳川慶喜と家族』の続編的内容。 ●志茂田景樹(しもだ・かげき) 静岡県生まれ。おひつじ座のA型。中央大学法学部卒。塾講師、新聞記者などを経て、1976年秋に『やっとこ探偵』で第27回小説現代新人賞を、1980年には『黄色い牙』で第83回直木賞を受賞。 -
徳川慶喜と家族
上様が私の帯を解いたのはたった一度。須賀はそれでも維新の激浪にもまれる慶喜とその家族を守りきった。日米通商条約、安政の大獄、継嗣問題、五か条の御誓文、大政奉還、鳥羽伏見の戦い……。激動の軸となった徳川慶喜の胸中深くに大きくひろがっていた理想とは何だったのか。彼の身のまわりの世話を勤める一橋家女中頭・須賀の目を通して、幕末の動乱と徳川家の悲劇を描く。長篇時代小説。 ●志茂田景樹(しもだ・かげき) 静岡県生まれ。おひつじ座のA型。中央大学法学部卒。塾講師、新聞記者などを経て、1976年秋に『やっとこ探偵』で第27回小説現代新人賞を、1980年には『黄色い牙』で第83回直木賞を受賞。 -
汽笛一声
汽車は、明治三年(一八七〇)三月二十五日の測量開始から、五年九月十二日のきょうこの日に開業式を迎えるまでの、二年半におよぶ建設の歴史を乗せて走っていた。宏蔵は、客車の一輛一輛がその歴史のひとこまひとこまに思えて、つかのま放心していた。軌条の上で死んでも本望だと腹をくくり、心血を注いで建設工事にうちこみ、完成にいたった鉄道を、たったいま、随従の高官、各国の公使、代理公使などを多数乗せて、御召の汽車が走ったのである。(本文より) イギリス人鉄道技師のエドモンド・モレルを師と仰ぎ、日本初の鉄道敷設工事に命をかける若き鉄道技師・宏蔵。大隈重信、伊藤博文、大久保利通、井上馨、西郷隆盛、山縣有朋、江藤新平などがこの利権に絡んで暗闘を演じるなか、今、蒸気機関車は夢を乗せて走る……。 ●志茂田景樹(しもだ・かげき) 静岡県生まれ。おひつじ座のA型。中央大学法学部卒。塾講師、新聞記者などを経て、1976年秋に『やっとこ探偵』で第27回小説現代新人賞を、1980年には『黄色い牙』で第83回直木賞を受賞。 -
南朝の日輪 北畠親房
延元四年八月十六日、後醍醐天皇崩御。「なんと帝が、おかくれになられたか。ああ、お早すぎた」南朝方の中心人物・北畠親房は嘆き、大いに落胆した。京都回復の望みはならず、草深い吉野の行宮に果てられた後醍醐天皇の不運と無念を思うと、はらはらと落涙するばかりである。「この吉野を守りぬいて足利を討ち滅ぼすまでは、死ねぬ」南朝の京都回復のために影の軍団・多聞党を使い、足利家内部を攪乱する親房。その心には若くして戦場に散った、わが子・顕家の面影が常によぎる……。 公卿でありながら、武将であり、軍師であり、冷徹な経営家でもあった親房の炎の生涯を描く。長篇時代小説。 ●志茂田景樹(しもだ・かげき) 静岡県生まれ。おひつじ座のA型。中央大学法学部卒。塾講師、新聞記者などを経て、1976年秋に『やっとこ探偵』で第27回小説現代新人賞を、1980年には『黄色い牙』で第83回直木賞を受賞。 -
うかれ堂騒動記
かわら版屋のお転婆が引き起こす珍事件!? 17歳の一穂は、黒目がちの目がくりくりと大きい。なのに、たいそうなお転婆。せっかくの整った顔立ちが台無しだ。その一穂、事情があって、かわら版屋〈うかれ堂〉を営むおじさんの市右衛門と一緒に働いている。今日も今日とて、工房を構える日本橋の〈うかれ長屋〉でご飯を食べていると、北町奉行所の同心・吉田主計が様子をうかがいにやって来た。一穂と幼馴染の吉田は、事件のネタを〈うかれ堂〉のために漏らしてくれているのだ。そのかわりに一穂と市右衛門は、江戸市中で見聞きした物事を報告し、時には探索を手伝っている。十手こそ渡されてはいないが、吉田とは持ちつ持たれつの間柄というわけだ。そんな吉田が持って来たのは、新任与力の水野左衛門が一穂と直に話してみたいという、呆れた私事。ところがいざ会ってみると、なぜだか、北町奉行の小田切土佐守と寺社奉行の青山下野守の政争につながるネタを追う羽目に……。挙句の果てには、とんでもない大騒動になって!? 『幕末ダウンタウン』で第十二回小説現代長編新人賞、『ぴりりと可楽!』で細谷正充賞を受賞した実力派時代作家、初の文庫書き下ろし! (底本 2022年5月発行作品) -
醤油と洋食
明治時代の女子大三人娘が美味しい食べ歩き。 料亭の名は「鈴川」、江戸時代から続いている結構な老舗だ。 鈴川八重はその、麻布に立つ料亭の一人娘。 店主の父・勇児は明治の末生まれで頑固者だけれど、料理以外は進歩的。母の海子はキリリとした顔立ちで、まるで芸者のように気風がよい。 そんな両親と楽しく暮らす八重は、今日も目白の椿山女子大学まで自転車で通っては、同級生で男装の華族令嬢・桜木虎姫、そして美貌の資産家令嬢・桃澤雫と、鯛焼きやかき氷、お汁粉などなど、おいしいあれこれを食べ歩き。 店に帰れば、料理には厳しい歳上の板前・洋一郎とふたりで新しいメニューづくり。馬鈴薯トーストにストロベリーカレーに……夫婦丼!? おいしい食べ物、あまい恋愛に目がない、明治時代の女学生三人娘のスイートな日常を描くグルメロマンス。 -
御典医の次男坊 森嶋中良
これから紹介するのは、なにごともなしとげなかった人物である。むろん才能はありあまるほどあった。ただ、封建社会の中で御典医の家の次男として生まれたのが、運の悪さといえばいえる。最初から日の当たる活躍の場を奪われて、いいところ補助要員だった。もっとも、それを本人が嘆いていたとは思えない。なにごとかをなしとげるなどといった大層な考えも抱いてはいなかった。(「はじめに」より) 江戸時代後期に戯作者・蘭学者・狂歌師として活躍した文人、森嶋中良(もりしま・ちゅうりょう)。平賀源内の弟子であり、多くの文化人と交流を持ち、気の向くまま数々の書物を著してヒットさせた上に、ついには浮世絵にまで手を染めた彼の半生とは、いかなるものであったか。 電子オリジナルの評伝小説。 ●佐野広実(さの・ひろみ) 1961年横浜生まれ。1999年第六回松本清張賞を『芳年冥府彷徨』(島村匠名義)で受賞。2020年第六十六回江戸川乱歩賞を『わたしが消える』で受賞。近作は『誰かがこの町で』(講談社)。電子書籍封切作品に『ムッシュ・ジャポネ』『浮世絵鑑定談』『森嶋中良 御典医の次男坊』がある。「新青年」研究会会員。 -
ムッシュ・ジャポネ
パリの美術学校で学ぶ日本人画家・片岡哲夫、彼に恋い焦がれる下宿先の娘・アンナ、そして親友だったドイツ人・エリッヒ。若者3人の友情は、やがて戦争という災禍に巻き込まれ、ねじれてゆく……。 第二次世界大戦下のフランス、パリ。退廃芸術理論を推し進めるナチスによって奪われた絵画には、大量の贋作が紛れ込んでいた。その見事な贋作を作り続けたのは誰か。ナチス党内で頭角を現し、特別任務を受けて調査を始めたエリッヒは、やがてバロンと呼ばれる画商、そして彼に付き添う若き日本人画家の存在に気づく。 電子オリジナルの長篇サスペンス小説。 ●佐野広実(さの・ひろみ) 1961年横浜生まれ。1999年第六回松本清張賞を『芳年冥府彷徨』(島村匠名義)で受賞。2020年第六十六回江戸川乱歩賞を『わたしが消える』で受賞。近作は『誰かがこの町で』(講談社)。電子書籍封切作品に『ムッシュ・ジャポネ』『浮世絵鑑定談』『森嶋中良 御典医の次男坊』がある。「新青年」研究会会員。 -
朝の茶柱 眠り医者ぐっすり庵
小さな幸せ、きっとある。 〈眠り〉と心に効く あったか養生所、大繁盛! 書店員さんも読んでぐっすり!? 「心温まる、それでいてドキドキハラハラもあり!の物語。 貴方も心地良い眠りの世界に導かれること間違いなし!」 ――井上哲也さん(大垣書店イオンモールKYOTO店) お茶でほっと一休みのはずが 眠気も覚める大騒動が…!? 江戸郊外の西ヶ原で長崎帰りの兄・松次郎と眠り専門の養生所〈ぐっすり庵〉を開いた藍(あい)。ひそかに評判の養生所には、眠れぬ悩みを抱えた人々が今日も相談に。そんななか、伯父が営む茶問屋・千寿園にやり手の商売人・万屋(よろずや)一心(いっしん)が乗り込んできた。千寿園の傾いた商売を立て直すと息巻くが、怪しさも漂う彼の本当の狙いとは? 笑いと癒しの時代小説。 眠りに関するミニ知識も…著者のコラム〈ぐっすり庵覚え帖〉もあるよ! -
目利き芳斎 事件帖
湯島に千里眼あり──。 持ち込まれる謎を、次々と解き明かす! 三年ぶりに実家に帰ると、帳場には妙な男が……。 骨董屋の跡取り和太郎と鷺沼芳斎の出会いだった。 江戸の謎解きはおまかせ! 謎解きって面白い! 新シリーズ第1弾! 「お帰り、和太郎さん」「えっ」──どうして俺の名を知ってるんだ…いったい誰なんだ? 家を飛び出て三年、久しぶりに帰ってきたら、帳場に座って俺のあれこれを言い当てる妙なやつが──。湯島の骨董屋「梅花堂」に千里眼ありと噂される鷺沼芳斎と、お調子者の跡取り和太郎の出会いだった。骨董の目利きだけでなく謎解きに目がない芳斎が、持ち込まれる謎を解き明かす事件帖の開幕。 -
見果てぬ祖国
東京の日比谷公園に、ひっそりと一つの記念碑が立っている。ホセ・リサール。スペインの植民地だったフィリピンを独立に導いた建国の父として知られている詩人のものだ。明治の頃に一ヵ月半ほど日本を訪れて、東京や横浜などに足跡を残し、末広鉄腸は彼をモデルに『南洋の大波瀾』というベストセラーを書いた。いま読者が手に取って下さっている『見果てぬ祖国』は、リサールが残した二つの長篇小説の翻案である。(「はじめに」より) 君臨する聖職者の吝嗇と狡猾、野心に身を焦がす事件記者の虚報、酷薄な政治権力の牙……。三つ巴で仕組んだ罠に挑む革命戦士の物語。ホセ・リサールの傑作長篇小説『ノリ・メ・タンヘレ』『エル・フィリブステリスモ』が翻案されて甦る! ●ホセ・リサール 1861年生まれ。フィリピンの独立運動家、医師、著作家、画家、学者。「国民的英雄」と称される。平和的方法による独立を主張し、小説を書くことによってスペイン圧政下に苦しむ植民地フィリピンの現状を訴えた。1896年にフィリピン革命が勃発すると当局に逮捕され、12月30日に銃殺刑となった。この日は現在、フィリピンの祭日となっている。 ●村上政彦(むらかみ・まさひこ) 作家。1987年『純愛』で福武書店(現・ベネッセ)主催の「海燕」新人文学賞を受賞。以後『ドライヴしない?』『ナイスボール』『青空』『量子のベルカント』『分界線』で5回の芥川賞候補に。また『ナイスボール』は相米慎二監督により『あ、春』として映画化、ベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞。アジアの物語作家を自任している。近著に『台湾聖母』(コールサック社)。日本文藝家協会常務理事。日本ペンクラブ会員。文化庁国語分科会委員。「脱原発社会をめざす文学者の会」事務局長。 -
勘十郎まかり通る
できたての、お江戸で、どえらい漢が大活躍! 十文字鑓は家康公下賜。 大目付の父から勘当され、日本橋の米屋に居候しつつ萬揉め事相談で糧を得る! 豊臣秀頼の遺児が頭目の野盗を報ずる読売を手に……。 「居眠り同心 影御用」の早見俊、新シリーズ第1弾! 向坂勘十郎は群がる男たちを睨んだ。空色の小袖、草色の野袴、右手には十文字鑓を肩に担いでいる。六尺近い長身、豊かな髪を茶筅に結い、浅黒く日焼けしているが、鼻筋が通った男前だ。肩で風を切り、威風堂々、大股で歩く様は戦国の世の武芸者のようでもあった。寛永十二年、大坂落城から二十年、江戸の町には未だ戦国の気風が漂い、町のあちこちで争い事が絶えない。 -
剣客奉行 柳生久通
大岡越前守の再来!? 微行(おしのび)で市中を行くのは、一刀流免許皆伝の町奉行! 突然の北町奉行拝命に、戸惑う将軍世嗣の剣術指南。 仇討ち若侍を居候にしつつ、昼行灯と揶揄されながらも、火付け一味を一刀両断! 将軍世嗣の剣術指南役であった 柳生久通は、老中松平定信から突然、北町奉行を命じられる。一刀流免許皆伝とはいえ、市中の屋台めぐりが趣味の男への、あまりに無謀な抜擢に尻込みするが、下手人の知れない、お城御門近くでの付け火に自らが立ち上がる。親の敵に間違えられたり、昼行灯と揶揄されもするが、能ある鷹は爪を隠す、久通の剣の冴えが、火付け一味を一刀両断! -
北町奉行所前腰掛け茶屋
茶屋の主人は元奉行所与力。 貧乏長屋をく悪党どもの正体は? 名物料理と人情裁きが心に沁みる新捕物帳シリーズ開幕! 江戸北町奉行所の前で腰掛茶屋を開く老主人は、かつて奉行所で御仕置の記録をする与力を務めていた。 訴えや裁きの待合いのため訪れる客の話を耳にし、事件や揉め事の種を見つけ出しては、自ら解決に乗り出す。 看板娘の加代や息子の紀一郎の心配をよそに、仕込み杖を手に今日も探索へ繰り出す弥兵衛だが… 人情と捕物の傑作新シリーズ開店! 目次 第一章 おい、と答えて 第二章 思い半ばに過ぐ 第三章 爪に火をともす 第四章 単糸線を成さず 第五章 欲には目見えず 第六章 頼み難がたきは人心 第七章 暮れぬ先の提灯 第八章 金銀は回り持ち -
猫まくら 眠り医者ぐっすり庵
江戸っ子だって ぐっすり眠りたい! 心と体がほっこりする養生所、始めました! (眠り猫もいるよ!) 明日のために眠りませう―― 江戸っ子のお悩み承ります! 茶問屋の娘として育った藍は、両親を相次いで亡くし、不安で眠れぬ日々が続いていた。 そこに帰ってきたのは、医学を学びに長崎へ行ったまま二年も家を空けていた兄の松次郎だった。 兄に眠りの大切さを教えられた藍は、兄とともに眠り専門の養生所〈ぐっすり庵〉を開く。 しかし、肝心の兄の生活には大きな問題が…。温かさと癒しあふれる時代小説。 細谷正充氏絶賛の人情時代小説! とかくストレスの多い世の中だ。心に鬱屈があってなかなか眠れず、 疲れが取れないこともあるだろう。そんな人にこそ本書を薦めたい。 本書そのものが安眠枕だからだ。寝る前に読めば、 本を閉じた後、気持ちよく眠ることができるだろう。 ――細谷正充(文芸評論家) -
漂流、諸国廻り 幻の船を追え
各地で起こる異変や悪事に対応するため、将軍家斉に諸国悪党取締出役を任ぜられた飛川角之進。 じつは彼は将軍の御落胤。 「能登の沖に暗雲あり」との託宣が出たと、幕府の影御用を務める宮司の大鳥居大乗から告げられ、若年寄から現地に赴くように命ぜられた。 冬は陸路が厳しく、補佐役の春日野左近と手下の草吉とともに、 協力してくれる大坂の廻船問屋の船に便乗し、北回りで行くことに……。 書下し痛快時代小説、第三弾! 第一章 焼け焦げた地図 第二章 千都丸出航 第三章 蝦夷地廻り 第四章 能登まで 第五章 黒鳥の群れ 第六章 幻の船 第七章 秘法と渦 第八章 闇と御燈明 第九章 渦の向こうへ 第十章 夢の中の都 第十一章 千都丸帰還 終章 うつつの船 -
帝都の用心棒 血刀数珠丸
刀を持たぬ剣術遣いと刀剣蒐集妖女との邂逅。 藤田五郎翁は刀を手にし、表に飛び出した。斬殺された男ふたりが道端に倒れている。 傍に立ち、血刀を提げた巨漢が唸り声を上げた。転瞬、ふたつの刃が火花を散らす。それも束の間、巨漢が隙を突き、姿を消した。 残された藤田が目にしたのは、亡骸の首元に彫られた蜘蛛の入墨、周囲に転がる数珠玉だった……。「立て続けに妖刀が出没して、人を斬っている」との噂を聞いた、東京帝国大学理学部教授の山川健次郎は、事件の真相を突き止めてほしいと、加能碧一と行成光雄に依頼した。 ふたりは、梁山泊屋敷と呼ばれる〔水城よろづ商会〕に出入りする用心棒コンビなのだ。刀を持たない剣術遣いの碧一と、二振の短刀と棒手裏剣を全身に仕込んでいる光雄は早速、刀剣蒐集家ウィルソンの邸へ赴いた。 ウィルソンが蔵で保管していた四谷正宗こと源清麿が血染めになっていたのだという。刀の装飾には蜘蛛が施されていたらしいが、前の事件を鑑みると、近頃一部の富裕層を取り込みつつある謎の組織〔蜘蛛の会〕を主宰し、人知を超えた力を使うと言われる妖女、多摩峰トワ子が関係しているのか? 剣光疾り、太刀風駆ける、書き下ろし大正ノワール日本刀アクション! -
火群の森
鼈甲を思わせる深い鳶色の膚と炎燃え立つ赤い髪……斑鳩の里“ぬばたまの館”の若き主であり、次期天皇と噂される父を持つ蜂子は、その異貌のためにひっそりと時を過ごしていた。かたや、桜の薄桃の花びらの如く優しく儚い容貌を持つ厩戸皇子は、救世観音の化身として、飛鳥の京で華やかな世界の中心にあった。蘇我馬子と物部守屋の政略の渦の中で、二人の皇子はたがいに激しい憧憬を抱く。光と闇、生と死の交錯の果て、日出る国を現前させる魂たちの荘厳な営み。歴史長編ロマン。 ●榊原史保美(さかきばら・しほみ) 東京都出身。立教女学院を経て中央大学文学部哲学科卒。1982年『小説JUNE』創刊号の最優秀投稿作に選ばれ、「螢ケ池」でデビュー。1985年、初の単行本、『龍神沼綺譚』を上梓。以降、民俗学、宗教学の素養を生かし、形而上学的テーマを昇華させた作品『鬼神の血脈』『荊の冠』等、多数発表。美意識に貫かれた作風により、「耽美小説の草分け的存在」と称されることも多い。1995年発表の『蛇神 ジュナ』より、ペンネームを「榊原姿保美」から現在のものに改めている。趣味は、陶芸、写真、近代建築・ギャラリー巡り。 -
裏太平記
古典随筆の名作「徒然草」の著者、吉田兼好は謎の多い人物だ。そこに目を付けた鬼才半村良。 鎌倉幕府の滅亡、後醍醐天皇の建武の中興の動きの中に、歴史を操る人物として兼好法師を置き、『太平記』には書かれなかった裏の歴史を紡ぎだす。 物語の中で実在の人物と創作の人物たちが自由闊達に動き、新しい歴史を生み出していく。 伝奇小説の巨匠が残した幻の長編小説。 -
評定所留役 秘録
天下の法に横槍入れる徳川ゆかりの大身旗本。 評定所の父子鷹が闘う。 幕府の最高裁判所、評定所。 鷹と謳われた父の後を継ぐ若き正義の士、結城新之助。 将軍家斉にも恐れず盾つく旗本松平左京の悪を許さず。 評定所は三奉行(町・勘定・寺社)がそれぞれ独自に裁断しえない案件を老中、大目付、目付と合議する幕府の最高裁判所。留役がその実務処理をした。結城新之助は、鷹と謳われた父の後を継いで留役となった。ある日、新之助に「貰い子殺し」に関する調べが下された。探っていくと五千石の大身旗本松平左京の影が浮かんできた。父、弟小次郎との父子鷹の探索が始まって……。 忖度を排し法を護る! 新シリーズ第1弾 -
別子太平記
江戸時代、五代将軍徳川綱吉の治世。 伊予国新居郡の南にある別子山で、銅が発掘された。 その情報を得た側用人の柳沢保明は、逼迫する幕府の財政を改善するために、 銅山の開発を勘定頭差添役の荻原重秀に命じた。 彼は諸国の鉱山を歩き廻った後藤覚右衛門を、代官に任じる。 後藤は、大坂の豪商・住友の分家で、銅業を営んでいた「泉屋」に協力を仰いだ。 それが、二百八十三年にわたり、日本の近代化を支えることになる別子銅山の歴史の始まりだった。 愛媛新居浜で、別子銅山とともに生きた人々を描く歴史巨篇。 天正の陣 泉屋の灯 赤銅の峰 待ちぼうけ峠 新居浜浦 -
まんぷく旅籠 朝日屋 ぱりとろ秋の包み揚げ
お江戸日本橋に、ちょっとワケありな旅籠が誕生!? 料理屋「夕凪亭」の娘ちはるは、雇われ人の裏切りで両親と店を失い、長屋でひとり借金苦に喘いでいた。そこに元火付盗賊改の工藤怜治が現れ、借金を清算してしまうと、日本橋室町に新しくできた旅籠「朝日屋」を手伝うようちはるに迫るが、ちはるには素直に頷けない事情があり……。 お腹も心も満たされる「朝日屋」の物語、ここに開店! ●主要登場人物● ちはる――17歳。いまはなき料理屋「夕凪亭」の一人娘 工藤怜治――28歳。朝日屋の主。元は腕利きの火付盗賊改で熱血漢 慎介――54歳。朝日屋の料理人頭。朝日屋の前身である料理屋「福籠屋」の主で、料理の腕前はピカイチだったが…… たまお――31歳。水茶屋の茶汲み女。外見はおっとりしているが、客あしらいがうまい。過去に悲惨な事件を経験している 綾人――16歳。乙姫一座の女形。かつての奉公先で事件に遭い、怜治に救われた過去を持つ 慈照――27歳。眉目秀麗な「天龍寺」の住職。幼い頃からちはるに目をかけている。甘党 柿崎詩門――24歳。火付盗賊改で、怜治の元同僚。怜治と違い、品のいい優男だが有能 -
潜入、諸国廻り 鬼の首を奪れ
将軍家斉の御落胤・飛川角之進。 彼は諸国悪党取締出役を任ぜられ、各地にはびこる悪人を、 補佐役の春日野左近と手下の草吉とともに退治している。 若年寄の指示で、みちのくの小藩・陸中閉伊藩に向かった角之進たちは、不穏な噂を耳にする。 この地は、もともと鬼の棲み処だというのだ。 おまけに、一昨年くらいから、藩主の顔を見たら、目が潰れるとまで、領民たちに言われていて……。 書下し痛快時代小説。 【目次】 第一章 江戸出帆 第二章 釜石まで 第三章 鬼伝説の地 第四章 城下潜入 第五章 山城へ 第六章 御前試合 第七章 攻防戦 第八章 念彼観音力 第九章 光と闇の戦い 第十章 最後の砦 第十一章 それぞれの味 終章 次なる雲 -
円也党、奔る 光秀の忍び
稀代の大うつけ・織田信長を天下人に! 戦国版「スパイ大作戦」ここに開幕! 智将・明智光秀が抱いた無謀ともいえる野望を叶えるべく、 天下無双の忍びたちが暗躍する! 書き下ろし時代活劇。 元亀三年(1572)秋。 織田信長は、小谷城で籠城を続ける浅井、朝倉連合軍を攻めあぐねていた。 織田家家臣の明智光秀は、朝倉に兵を引かせるため、 密かに円也党一味を朝倉の国許越前へ向かわせる。 かつて越前で牢人生活を送った時に知己を得た遊行僧百鬼円也率いる忍び集団だ。 念仏踊りで敵を惑わす一舎、 催眠術を操る茜、 怪力の妙林坊、 美丈夫の来栖…… 一味は国内を攪乱すべく動き出す。 -
老侍
群雄割拠の戦国時代。武士たちは身命を賭して主君に仕え、家を守り、己の矜持のためにその生涯を生き抜いた。どんなに老いて体が衰えたとしても、その経験と智慧が輝きを失うことはない。 常に戦いの中に身を置き、死を傍らに感じる中で、武将たちはいかに考え、いかに生き残っていったのか。 最期の最期まで「侍」であることにこだわり続けた、六人の武将の生き様を描く作品集。 戦国時代に、「定年」はない――。 「意地の天寿」……龍造寺家兼(齢九十三) 「勝てば良かろう」……朝倉宗滴(齢八十二) 「不屈なれ」……長野業正(齢七十一) 「捨て身の思慕」……宇佐美定満(齢七十六) 「魂の檻」……武田信虎(齢八十一) 「過ぎたるもの」……島左近(齢六十一) -
遊戯神通 伊藤若冲
天才絵師の素顔と技法に迫った長編小説。 若冲没後百年を経た明治37年、セントルイス万博に〈若冲の間〉というパビリオンが出現する。この時〈Jakuchu〉の名を世界に広めたのは誰だったのか? 京都の図案家・神坂雪佳は、若冲の末裔という芸者から〈若冲の妹〉と呼ばれた美しい女性の話を聞く。 宝暦13(1763)年、京都錦の青物問屋〈枡源〉に、一人の少女がやってきた。主の若冲が飼う鶏や、珍しい鳥、美しい毒草などの世話をするために。美以という名の少女の体からは不思議な芳香が漂っていた。その匂いに、若冲はかつての異国の女の面影を重ね合わせながらも、美以を自分の弟に嫁として与えてしまう。若冲を慕う美以は、以後〈若冲の妹〉として思いを秘めたまま生きていくことになる。 『動植綵絵』の完成間際に、錦市場を揺るがす事件が起こり、弟が謎の死を遂げる。彼は本当は若冲の何だったのだろうか。さらに天明の大火による被災……だが、若冲が本来の絵師として蘇生するのはそれからだ。そして、いつも傍らには〈妹〉の姿があった。 心の中の〈奇〉を描かずにはいられなかった絵師、若冲。時空を超え魅了し続けるその素顔と秘密に、江戸と明治の二つの時代軸で迫った長編小説。 ※この作品は過去に単行本版として配信した『遊戯神通 伊藤若冲』の文庫版です。 -
恩讐の香炉 居眠り同心 影御用
シリーズ開始から丸9年――最終回、第30弾 元老中松平定信が白昼、居眠り同心の目の前で「貴船党」に拉致された。 家宝「鳳凰の香炉」と交換に定信の身を返すとの文が。 大納言三条錦卿が三十年前、老中定信に受けた遺恨を晴らすためだというが……。 北町奉行所の元筆頭同心で今は“居眠り番”の蔵間源之助は、元老中で隠居の白河楽翁と鉄砲洲の鰻屋で食事をした直後、店の前で何者かに襲われ昏倒。その隙に楽翁は貴船党を名乗る一団に拉致され、身代金として松平家の家宝「鳳凰の香炉」を要求された。翌早朝、奥女中が貴船党の指定場所に香炉を運び、楽翁は……。家宝の香炉はいつの間にか贋物にすり替えられていた。 -
正邪の武士道 居眠り同心 影御用
不可解な辻斬りが続発。背中から斬りつけ、銭六文だけを残す……。 六文は三途の川の渡し賃。単なる洒落ではあるまい。 四万五千石の大名の後継ぎに絡む「影御用」を受けて、元筆頭同心の源之助は……。 不可解な辻斬りが続発。侍ばかりが背中から斬りつけられ、遺体には銭六文だけが残されていた。北町奉行所の元筆頭同心で今は閑職“居眠り番”の蔵間源之助に駿河三島藩四万五千石の藩主後継から、奇妙な影御用が舞い込んだ。側室にと見初めた町娘の素性調査。あまりに単純な御用に思えたが、折りからの辻斬り事件との絡みで、意外な展開が待ちかまえていた。 -
姉上は麗しの名医
イケメン侍のコンビが難事件を見事に解決! 剣術道場の若先生こと、瓜生清太郎は二十三歳。鍼治療で不在がちの老師範代わりに、毎日洟ったれの少年たちを指南している。 今日もみっちり稽古をつけてやると、清太郎の技を見て、「強い男と見込んだ」という、小間物問屋の息子・直二から相談を持ちかけられた。 話によれば、「最近、家の近くで野良犬がたくさん死んでいる。死に方からすると、たぶん毒を食べさせられた」らしい。 つまりは、憎っくき犯人を懲らしめてほしいようだ。 一方、町奉行所の定廻り同心・藤代彦馬は、二十五歳。 三年前に家督を継いで、十手を預かる身となり、休みもなく働き通し。 いま携わっているのは、医者が誤って毒を飲み、死んでしまった事件だ。 不審な点がいくつもあるが、奉行所は理由もなしに、探索を打ち切ってしまったという。 納得のいかない彦馬は、腕の立つ女医者の真澄に知恵を借りようと、清太郎の家にやって来た。 真澄は、清太郎が自慢する姉なのだ。 事件の経緯を聞き、訝しさを感じた真澄は、清太郎と彦馬が止めたのにもかかわらず、独自に探索に乗り出す。 が、真澄は行方不明に……。 -
北前船用心棒 赤穂ノ湊 犬侍見参
塩の浜を血に染めた犬侍の凄絶な立ち合い! 元禄14年春、播州赤穂に向け、摂津を出港する千石船があった。船の名は蓬莱丸、乗組員は素性の知れない面々ばかりで、白い柴犬を連れた千日前伊十郎と名乗る犬侍まで乗り込んでいる。生類憐みの令のもと、お犬様を手にかければ首が飛ぶ。打擲できない犬を従えた犬侍は最強の用心棒だった。 息が詰まるようなご時世に、将軍交代を望む声が出始める。候補は二人、紀伊國屋文左衛門が推す紀伊藩主綱教と大坂の豪商・三代目鴻池善右衛門がよしとする甲府藩主綱重だ。一方、伊十郎と二人、赤穂に先乗りした蓬莱丸の炊・権左は、次席家老・大野九郎兵衛に体よくあしらわれていたが、伊十郎の人柄に魅了された筆頭家老・大石内蔵助の妻りくのとりなしで、ようやく二家老の信頼を取り付ける。 胸襟を開いた大石によれば、松の廊下の刃傷事件の背後で糸を引いていたのは犬侍だという。塩受け取りの当日、潮が満ち始めた塩田の浜に甲斐犬を従えた犬侍・黒虎毛が立ち塞がる。身構える柴犬シロ。得意の石つぶてを握りしめる権左。ついに、伊十郎の龍王剣音無しの秘太刀が虚空に舞った。 -
陽だまり翔馬平学記
巨悪の老中に狙われた軍学者と姫の運命は? 軍学者の沢村翔馬は、公家の姫・由布の護衛として、江戸の一軒家で暮らしている。口うるさい老侍女のお滝も一緒だ。翔馬が開く私塾は、飢え死にしそうな若い浪人が弟子入りしたり、やくざの親分が講義の邪魔をしたりで、毎日なにかと忙しい。そんなある日、翔馬とお滝は一瞬の隙をつかれ、由布を何者かに誘拐されてしまう。最近、明国復興を目指し、徳川幕府に援軍を要請しているという鄭成功からの使者が江戸市中を荒らしているらしいが、なにか関わりがあるのか。過去に起こった騒動で、翔馬に深い恨みを抱く老中の松平信綱が、腹心の朽木誠一郎へ密命を下したのか?巨悪の権謀術数に伝家の宝刀を一閃、絶体絶命の危機を乗り越えろ! 沢村翔馬……元摂津国伊丹藩士で、林羅山の弟子。宝刀「鬼丸」を持つ。 由布……書道と和歌、お菓子作りが得意な姫。 お滝……京都びいきで、江戸の悪口を言う。野郎歌舞伎を観るのが趣味。 朽木誠一郎……林羅山の弟子で、翔馬に敵愾心を抱く。 松平信綱……老中次座。「知恵伊豆」と呼ばれる。保科正之の失脚を企む。 保科正之……陸奥国会津藩藩主。徳川幕府最高実力者。 高館孝直……伊丹藩藩主高館孝元の嫡男。蛮勇を振るう。 -
見参、諸国廻り 天狗の鼻を討て
大坂の廻船問屋「浪花屋」の船が、 瀬戸内海で天狗の面を被った海賊に襲われた。 諸国悪党取締出役の飛川角之進は、 将軍家斉から命を受け、真相を探るため、 補佐役の春日野左近とともに海路で備後福山藩へ。 柳生新陰流の遣い手で、将棋の腕前は敵無しの角之進。 旗本の三男坊として育ったため、市井で生きようと 料理を習い、見世を構えていたが、 出自ゆえに大名になったこともある。 少々風変わりな経歴を持つ、快男児が悪事を成敗する。 第一章 結ばれた縁 第二章 出航 第三章 鞆の浦にて 第四章 天狗の棲み処 第五章 黒旗の海賊 第六章 死闘 第七章 帰船 第八章 蟹雑炊とふぐ雑炊 第九章 あまから屋となには屋 第十章 江戸の土 終章 大川の水 -
魔王の子、鬼の娘
織田信長が、本能寺で明智光秀に急襲され、 炎の中に消えたとき、嫡男である信忠もまた 二条城で攻められ、炎の中で死んだはずだった。 しかし、彼は目覚めた。 遠く離れた信濃の地で、顔に鬼の面が貼りついたまま。 そこには諏訪四郎勝頼の娘と名乗る美しく不思議な少女がいた。 天下の情勢が気になり、京へ向かう信忠に同行する娘。 しかしその行く手に、異形の“魃鬼(オニ)”たちが襲いかかる……。 日本ファンタジーノベル大賞受賞者が描く歴史伝奇小説。 第一章 邂逅 第二章 鬼の城 第三章 月の怒り 第四章 初演 第五章 八百姫 第六章 元興寺 第七章 大暗黒天 -
怪盗 桐山の藤兵衛の正体 八州廻り桑山十兵衛
悪は必ずしも悪ならず。 思いがけない事件の結末が胸を打つ! 消息を絶っていた盗賊「桐山の藤兵衛一味」。 再び動き始めたのはなぜか。 時代に翻弄される人々への、十兵衛の深い眼差しが胸を打つ。 ドラマ化もされたヒットシリーズ『八州廻り桑山十兵衛』。 松戸近辺に住む強欲な百姓一家殺害事件で、 十兵衛は、一時期世間を騒がした盗賊たちが再び動き始めたのではないかと疑い始める。 十兵衛の前に現れては捜査を攪乱する謎の美女、 さらに事件の背景には盗賊たちの人生を変えたある悲劇。 時代に翻弄される女と男に対する十兵衛の深い目線が胸にささる、 人気シリーズ第10弾にして最後の作品! ※この電子書籍は2017年7月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。 -
十手婆 文句あるかい
白髪丸髷に横櫛を挿す、江戸っ子婆お鹿の、意地と気風の弔い合戦! 木賃宿で皆殺しの惨劇が! 騒然とする奉行所だったが、岡っ引きの駒蔵も殺される。 女房が亭主の弔い合戦と、形見の十手で悪行を暴く! 深川のうらぶれた木賃宿で、宿の主や使用人、三人の泊まり客のすべてが殺される惨劇があった。騒然とする奉行所だったが、目的も分からず下手人の目星もつかない。岡っ引きの駒蔵は、家族の皆と一緒に手分けして見えない下手人を追うが、逆に殺されてしまう。女房のお鹿は息子二人と共に、亭主の敵でもある下手人をどこまでも追うが……。江戸っ子婆の啖呵が悪を暴く! -
居眠り同心 影御用
陸奥国白河藩十一万石の元老中松平定信から影御用。藩金横領の殺人侍を捜せ! 薬研堀で評判の名医が上司斬殺の脱藩侍!? 記憶喪失者の真実は? 元筆頭同心で今は居眠り番、思いもよらぬ真犯人を暴く。 謎解きの鍵は? ひょんなことで閑職に飛ばされた凄腕の元北町奉行所筆頭同心「居眠り番」蔵間源之助に極秘の影御用が舞い込んだ。陸奥国白河藩十一万石の元老中松平定信からである。勘定方の林崎宗次という侍が上司の大谷幸之介から藩の公金横領のことで叱責され、逆上して大谷を斬殺、刑場への途路、逃亡して江戸へ出奔。ついては、この林崎を捜し出してほしいというのである。
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