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しらゆきの果て
仏画、絵巻、浮世絵――美に魅了された人々の営みを描いた歴史小説集 六十路を越した老境の絵師・喜平治(宮川一笑)は、肉筆美人画の名手・菱川師宣の曾孫である姉弟と知り合う。絵描きを志す弟の伊平の面倒を見ることになった喜平治は、幼いながらも確かな筋の良さに感嘆するが、折しも町絵師の宮川一門と表絵師の狩野家の間で諍いが起きてしまい……。(表題作「しらゆきの果て」) 鎌倉、戦国、江戸、幕末 時代と歴史を超えて、 人々を狂わせ、神仏さえも惑わせる、 あらゆる「美」の真髄を描く5つの物語 装画/原裕菜 装幀/長崎綾(next door design) -
時代小説アンソロジー てしごと
働く女性たちはいつの時代も美しい。 人気作家六人による時代小説競演 己の腕と業で生きる道を切り開く おんな職人たちの凛とした姿を活写 豊富な知識と聡明さで人々の悩みをときほぐす薬師・真葛(まくず)。 亡き母の仕込みを継ぐ色酢の麹造り職人・沙奈。 木肌の魅力に惹かれ根付職人に弟子入りするおりん。 妹の亥(いの)とともに秩父の峠で茶屋を切り盛りするそば打ち職人・蕗(ふき)。 その身に霊を降ろす「口寄せ」を使う市子。 身体のみならず心の凝りもときほぐす揉み屋・絹。 時代小説の名手六人が女性職人の凛々しさを 巧みな筆致で活写した傑作時代小説アンソロジー。 【収録作】 春雀二羽 澤田瞳子 藍の襷 志川節子 掌中ノ天 奥山景布子 姉妹茶屋 西條奈加 浮かれの蝶 小松エメル おもみいたします あさのあつこ -
対決!日本史
戦国時代は世界の大航海時代を抜きにしては語れないと主張する安部龍太郎氏。 かたやプロテスタント神学者でもある佐藤優氏は、イエズス会(カトリック)が世界を席巻した戦国時代をどう分析するのか――。 知性の双璧が日本史を世界史からとらえ直す対談は、未だかつてない知的刺激を与えてくれる! ●イエズス会はポルトガルの商社マンだった!? ●キリスト教の布教と鉄砲・火薬の売買はセットだった!? ●信長はなぜ自分を神として祀らせたのか!? ●秀吉の朝鮮出兵は明のキリスト教化が目的だった!? ●キリシタンは踏み絵を踏んでも問題なかった!? ●鎖国をしなければ日本はスペインの植民地と化していた!? 世界史と日本史を同時に語れる二人が、これまで見落とされてきた歴史の真実に迫る。 「史観」を磨き、「教養」を身につける面白さ、その醍醐味にあふれた珠玉の対談から、真の日本の将来像を見つけ出せ! まえがき 安部龍太郎 第1章 乱世を生き延びるための「史観」 第2章 歴史から読み解く日韓関係 第3章 大航海時代と重商主義 第4章 天下統一への野望 第5章 織田信長「時代に呼ばれていた男」 第6章 豊臣秀吉の光と影 第7章 「パクス・トクガワーナ」の完成 第8章 現代に生きる徳川家康 あとがき 佐藤優 -
旅立ち寿ぎ申し候<新装版>
絶体絶命の紙問屋、大逆転の妙手は!? 時は、大老井伊直弼が惨殺され、動乱の気配が漂う幕末。 紙問屋永岡屋で誠意一筋、長年精勤してきた勘七は、主人善五郎の強い望みで跡を継ぎ、若旦那となった。 その勘七に小諸藩の上屋敷奉行高崎から大きな初仕事が舞い込む。藩札作りだ。 小諸藩は明君の呼び声高い藩主がおり、政は安定、財も潤沢らしい。藩札作りには二千両も支度してあるという。 幸先のよい出だしを切った、勘七がそう思ったのも束の間、商売仲間である醤油問屋広屋の浜口儀兵衛から、藩主が亡くなったと耳にする。 胸に不安が膨らむ中、ある夜、永岡屋が盗賊に襲われてしまう。盗賊はなんと高崎の配下だった。 配下は藩札と版木を入れた行李を盗んで姿を消したのだ。 襲われた際の傷がもとで、命を落とした善五郎を悲しむ暇もなく、主人として小諸藩に赴き、商いを質す勘七。 だが、新任の上屋敷奉行は「賂を受けていた前任の空の商い」として、二千両を踏み倒しにきた。 絶体絶命の危機に瀕した勘七に大逆転はあるのか? 幕末の三舟こと勝麟太郎や豪商高島屋嘉右衛門らの協力を得ながら、命を懸けて再建を図る勘七の懊悩と奮闘を、直木賞作家が瑞々しく描く。 商人道小説の傑作! ※この作品は過去に単行本として配信されていた『福を届けよ 日本橋紙問屋商い心得』 の文庫版となります。 -
月ぞ流るる
紫式部が生きた時代の豪華絢爛宮中絵巻 日本初の女性による女性のための歴史物語『栄花物語』の作者である朝児(赤染衛門)からみた宮廷はどんな姿をしていたのか? 宮中きっての和歌の名手と言われる朝児(あさこ)は夫を亡くしたばかり。五十も半ばを過ぎて夫の菩提を弔いながら余生を過ごそうとしていたが、ひょんなことから三条天皇の中宮妍子の女房として再び宮仕えをすることになる。 宮中では政権を掌握した藤原道長と、あくまで親政を目指す三条天皇との間には緊張が入っていた。道長の娘の妍子が、将来天皇となるべき男児を出産することが、二人の関係に調和をもたらす道だった。しかし、女児が生まれたことで、道長は三条天皇の排除を推し進めていくことになる。 朝児は、目の前で繰り広げられるきらびやかながらも残酷な政争に心を痛める。なぜ人は栄華を目指すのか。いま自身が目にしていることを歴史として書き記すことが自らの役目ではないのか。そこで描かれるのは歴史の勝者ばかりではない。悲しみと苦しみのなかで敗れ去った者の姿を描かねばならない。その思いの中で朝児は筆を取る。 -
月人壮士
「全き天皇であること」 ――その何人にも推し量れぬ孤独。 756年、東大寺大仏を建立した首(聖武)太上天皇が崩御。 道祖王を皇太子にとの遺詔が残されるも、 その言に疑いを持つ者がいた。 中臣継麻呂と道鏡は、密かに亡き先帝の真意を探ることになるが、 ゆかりの人々が語り出したのは、 母君との尋常ならざる関係や隔たった夫婦のありよう、 御仏への傾倒など、死してなお謎多きふるまいや 孤独に沈む横顔ばかりで――。 国のおおもとを揺るがす天皇家と藤原家の相克を背景に、 聖武天皇の真実をあぶり出す! 〈螺旋プロジェクト〉の1冊としても話題。 【電子版巻末に特典QRコード付き。〈螺旋プロジェクト〉全8作品の試し読みができます】 ※〈螺旋プロジェクト〉とは―― 「共通ルールを決めて、原始から未来までの歴史物語をみんなでいっせいに書きませんか?」伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8作家朝井リョウ、伊坂幸太郎、大森兄弟、薬丸岳、吉田篤弘、天野純希、乾ルカ、澤田瞳子による前代未聞の競作企画 〈螺旋〉作品一覧 朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』 天野純希『もののふの国』 伊坂幸太郎『シーソーモンスター』 乾ルカ『コイコワレ』 大森兄弟『ウナノハテノガタ』 澤田瞳子『月人壮士』(本作) 薬丸岳『蒼色の大地』 吉田篤弘『天使も怪物も眠る夜』 -
定価のない本
神田神保町――江戸時代に旗本の屋敷地としてその歴史は始まり、明治期は多くの学校がひしめく文化的な学生街に、そして大正十二年の関東大震災を契機に古書の街として発展してきたこの地は、終戦から一年を経て復興を遂げつつあった。その街の一隅で、ひとりの古書店主が人知れずこの世を去る。男は崩落した古書の山に圧し潰され、あたかも商売道具に殺されたかのような皮肉な最期を迎えた。古くから付き合いがあった男を悼み、同じく古書店主である琴岡庄治は事後処理を引き受けるが――直木賞作家である著者の真骨頂とも言うべき長編ミステリ。/対談=門井慶喜×岡崎武志 -
天下の値段 享保のデリバティブ
江戸も令和も、国家の命運は米価で決す! 世界初の先物取引所で繰り広げられる、享保の知られざる米騒動――大坂商人vs.将軍吉宗。究極の頭脳戦の行方はいかに!? 時は江戸時代、天下の台所――大坂堂島には全国から米が集まり、日々、値が付けられ膨大な取引がされていた。特に盛んだったのが、先々の米価を扱う先物取引(デリバティブ)。商人たちは紙と筆と頭脳を用い、利鞘の多寡で泣いたり笑ったり。 一方の江戸では、将軍吉宗はじめ、幕閣たちは忸怩たる思いを抱いていた。米価の変動はすなわち武士の年貢収入の変動であり、あろうことか、それらを商人たちが汗もかかず、意のままに決めている。そんな不実の商いは許すまじ、と堂島を支配すべく動き出すのだが……。 市場の自治を守らんとする大坂商人たちと、武士の誇り(とお金)を懸けた江戸幕府との究極の頭脳戦! -
東京帝大叡古教授
日本初! 文系の天才博士が事件を解決! 物語の主人公・宇野辺叡古(うのべえーこ)は、東京帝国大学法科大学の教授である。大著『日本政治史之研究』で知られる彼は、法律・政治などの社会科学にとどまらず、語学・文学・史学など人文科学にも通じる“知の巨人”である。 その知の巨人が、連続殺人事件に遭遇する。 時代は明治。殺されたのは帝大の教授たち。事件の背景には、生まれたばかりの近代国家「日本」が抱えた悩ましい政治の火種があった。 他を圧倒する「知の巨人」が開示していく事件の真相は、まさに予測不能。ラストは鳥肌モノ!! 直木賞候補作、早くも文庫化! -
東京、はじまる
日本銀行本店や東京駅など、近代日本を象徴する建物を矢継ぎ早に設計した、 明治を代表する建築家・辰野金吾。 下級武士から身を立てるべく学問に励み、洋行して列強諸国と日本の差に焦り、 帰国後はなんと恩師ジョサイア・コンドルを蹴落として 日銀の建築を横取りする……! 周囲を振り回しながらも、この維新期ならではの超人・金吾は熱い志で 近代日本の顔を次々を作り上げていく。 日銀の地下にある意外な仕掛け、東京駅の周辺にかつて広がっていた海の 蘊蓄など、誰もが見慣れた建築物の向こうに秘められたドラマを知ることもできる。 ベストセラー『家康、江戸を建てる』の著者が 「江戸を壊して東京を建てた」辰野金吾を描く、大きく楽しい一代記! ※この電子書籍は2020年2月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。 -
灯台を読む
灯台をゆけば日本の〈歴史〉と〈文化〉が浮かび上がる! 海と共に日本人の心に残る原風景の一つ灯台。現在、日本に約3,300基ある灯台は、船の安全を守るための航路標識としての役割を果たすのみならず、明治以降の日本の近代化を見守り続けてきた象徴的な存在でもありました。 建築技術、歴史、そして人との関わりはまさに文化遺産と言えるもの。灯台が今なお美しく残る場所には、その土地ならではの歴史と文化が息づいています。そんな知的発見に満ちた灯台を現代日本文学を代表する作家たちが訪ね、歴史的・文化的・地域的な価値を文学的な視点で綴った紀行集です。 「オール讀物」「クレアWEB」での好評連載中の企画をふんだんに撮りおろし写真を使って書籍化。 -
徳川家康の江戸プロジェクト
家康は、なぜ寒村の江戸に幕府を開き、江戸をどのように開発・改造していったのか。現代の東京に続く都市の物語を、『家康、江戸を建てる』の著者自らが新書オリジナルでリリース。この1冊で原作小説とドラマを、より深く堪能できる! -
特攻隊員と大刀洗飛行場 四人の証言
昭和20年(1945)3月、重要拠点ゆえにB29に爆撃され、壊滅的被害を受けた大刀洗飛行場(福岡県)。大正8年(1919)に完成したこの飛行場は、その後、陸軍飛行学校や技能者養成所が置かれ、東洋一と謳われた。国民学校を卒業したばかりの15歳の少年たちは、この地で速成され、ある者は整備兵として、そしてある者は特攻兵として戦場へと送り出されていったのである。当時を知る者が数少なくなる中、大刀洗飛行場で若き日を送った4人に、直木賞作家・安部龍太郎が取材。古代から近代まで、数多くの歴史小説を上梓してきた著者が、満を持して初めて「太平洋戦争」に取り組んだ。 【目次】●序章 大刀洗飛行場を訪ねて ●第一章 松隈嵩氏への取材――技術者たちの苦闘 ●第二章 信国常実氏への取材――生き地獄を味わった整備士 ●第三章 河野孝弘氏への取材――陸軍の迷走と「さくら弾機事件」 ●第四章 末吉初男氏への取材――特攻兵の届かなかった手紙 -
どうした、家康
人質から天下人へ。徳川家康のドラマチック人生! 幼少で母と生き別れ、少年時代は人質として各地を転々とした徳川家康。戦国の世を勝ち抜き、天下人として幕府を開くまでに、何度も訪れる人生の節目で、都度難しい選択を迫られた。織田家に囚われてから大坂の陣まで、歴史時代小説の精鋭十三人が趣向を凝らす、歴史改変もありの短編集。〈文庫オリジナル〉 織田家の人質となっていた少年時代 桶狭間の戦い 三河一向一揆 三方ヶ原の戦い 本能寺の変後の伊賀越え 小牧長久手の戦い 関東移封 関ヶ原の戦い 大坂夏の陣 など。 徳川家康の節目となった事績や事件をテーマに、ついに天下を手中に収めるまでの分かれ道を彼がどう切り抜けたか、史実に忠実な作品だけではなく、「あのときこうなっていたら」という歴史改変ものも含むバラエティー豊かなラインナップで、超短編を集めました。 -
にっぽんの履歴書
第158回直木賞(平成29年下半期) 受賞後第一作! 著者が長年創作のテーマとして考えてきた「歴史と日本人」をこの一冊に。 ――戦前の日本は、お人よしだな。 そう思うことがある。植民地のために人をやり、金をついやし、わざわざ政治的、軍事的困難に足をつっこむ。 そうして台湾のみならず東北アジア地域そのもののなかで出る杭になった末に、あの領土の奪い合いでもない、人民革命ののろしでもない、何だか理由はよくわからないがとにかく日本の膨張が一因らしい対米戦争へずるずる入って行ってしまった。 (「お人よしの台湾統治」より) 新直木賞作家が平成の終わりに考えた「この国のかたち」。 ・元号は平ったく言えば天変地異の占いの道具だった ・植民地経営に乗り出した戦前の日本はお人よしだった? ・宮沢賢治と夏目漱石の文体の「秘密」 ・「艦これ」の隆盛を司馬遼太郎が予言していた!? ・新聞はほろびたという議論は明治時代からあった ・刀は物体、剣は精神である ・女工哀史は本当に「哀」なのか ・人口減少で「邪悪な正義」も減る ほか、 全50篇。 フェイクでもヘイトでもない。この国の豊かな歴史にふれる渾身の歴史エッセイ集。 -
日本はこうしてつくられた
日本の成り立ちを現地取材で謎解き。 直木賞作家・安部龍太郎氏渾身の歴史紀行。〈古代日本人はなぜ大和の地を中央集権的な都として選んだのか?〉という大命題を黄巾の乱以降混乱した中国、朝鮮半島情勢を受けた〈三世紀の明治維新〉の影響だったという説を現地取材から読み解く章からスタート。 以下、〈国譲り神話をめぐる出雲と大和の関係〉、〈文字がまだなかった時代の出雲から出土した硯の謎〉、〈神武天皇上陸伝承地・熊野〉、〈秦の始皇帝に具申したうえで日本にわたって来た徐福上陸地から出土した秦の半両銭〉、〈中世の天皇家が繰り返し参詣した熊野三山の絶景〉、〈奈良大仏と八幡神のふるさとの関係〉、〈対隼人の最前線だった国東半島〉、〈大和と密接な関係を築いた古代丹後王国〉、〈丹後半島甲山から見た日本海の絶景〉、〈日本海三大古墳と大和の関係〉、〈対蝦夷の最前線軍事基地としての房総半島〉、〈大和との密接な関係を示唆する房総半島の古墳群〉、〈最初の前方後円墳「箸墓古墳」と最後の前方後円墳「浅間山古墳」〉、〈四国の阿波と房総の安房を結んだ黒潮〉など、古代日本の成り立ちを丹念に解き明かします。 ※この作品はカラー写真が含まれます。 -
人形の部屋
ねえ、お父さん。この謎、解ける? きっかけはほんのちょっとした小さな謎。だが、八駒家の食卓にのぼると、それは一篇のミステリに姿を変える――家主の敬典は、旅行会社の有能なる社員から、専業主夫に転身。家事に追われながらも平和な日々を過ごしていたが、ある日、元先輩が可憐なフランス人形を持ちこんできた。それも、左足の先が粉々に砕けた人形を。なんとかしてくれと懇願され、持ち主まで怒鳴りこんできても、敬典はなぜか悠然とかまえている。そんな父に、中学生の娘つばさは憤慨するが、敬典の頭にはある推理が浮かんでいた……。父と娘が織りなす、温かなおうちミステリ。 -
猫はわかっている
現代を代表する人気作家たちが、猫への愛をこめて書き下ろす猫の小説集第二弾! 猫が一生に一度だけ、人間の言葉をしゃべる!? 仕事と家事・育児にフル回転の雑誌編集者、九美が余命幾ばくもない猫を引き取ることになり……(村山由佳) 野良出身、いまは堂々の家猫ニャアが野犬に襲われ、まさかの!?(阿部智里) 火事が起きたとき、妻と双子の息子達の明暗が分れた。猫は何を見ていた?(長岡弘樹) 妊娠した姉から預かった猫との生活に、私の人生観が変わりだし……(望月麻衣) ほか、有栖川有栖、嶋津輝、カツセマサヒコらが登場! 話題の前作『猫が見ていた』に続く、謎と企みに満ちたオリジナル・アンソロジー。 -
熱源
樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。 一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。 日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。 文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。 樺太の厳しい風土やアイヌの風俗が鮮やかに描き出され、 国家や民族、思想を超え、人と人が共に生きる姿が示される。 金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、 読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。 ※この電子書籍は2019年8月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。 -
葉隠物語
直木賞作家・安部龍太郎が、武士道の代名詞たる『葉隠』を佐賀鍋島藩の成り立ちと数多の“曲者”たちの物語として描いた傑作歴史小説を、『拳児』『闇のイージス』などで知られる実力派・藤原芳秀がコミック化。時代劇コミック誌「コミック乱ツインズ」連載中の本作品が待望の単行本化。 武士道とは? 忠義とは?──現代社会を生き抜くヒントとなる、骨髄に徹した真の武士の物語。 「武士道といふは、死ぬことと見つけたり」 理不尽な理由で牢人になった佐賀藩士・田代陣基が佐賀鍋島藩の伝説的な“曲者”山本常朝と出会い、その鮮烈で「骨髄に徹した」思想に魅せられて弟子入りすることから、この物語は始まる。 常朝から語られる、肥前・龍造寺家の家老であった鍋島直茂の、肥前国を守るための永く困難な苦闘、そして佐賀鍋島武士ならではの“曲者(命知らずの剛胆な者)”たちの、過激なエピソードの数々。 「武士道」の真髄に迫る、矜恃と教訓の物語。 -
華に影 令嬢は帝都に謎を追う
明治三十九年、帝都東京。千武男爵家の令嬢・斗輝子は、書生の影森怜司を供に、政府重鎮の黒塚伯爵家で行われた夜会に当主である祖父の名代として出席した。しかし夜会の最中に黒塚伯爵が何者かに毒殺されてしまう。不当な疑いをかけられた千武家の名誉のため、斗輝子と怜司は事件の真相を調べ始める。だが、その裏には身分に縛られ、ままならぬ生き方を余儀なくされる人々の大きな秘密があった。すべての真実を知ったとき、斗輝子は――。勝ち気な華族令嬢と怜悧な書生、対照的な二人による明治謎解き譚。 ※本書は2014年、幻冬舎文庫より刊行された『帝都東京華族少女』を改題し、大幅に加筆修正したものです。 -
春かずら
父の仇を十二年間追う侍と、仇の息子。 交わらないはずの二人を繋ぐのは、“侍”の矜持。 直木賞作家が初めて挑んだ、武家小説。 仇討ちとは、いったい何なのだ――。 十二年前に父が殺され、以来、仇討のために諸国を巡る清史郎。しかし、仇の手掛かりは見つからない。病死した母の弔いに故郷・安良藩に戻った清史郎は、ある少年を助け、彼に剣の手ほどきをすることに。しかしその少年・隼人は、仇の息子だった。出会うべきではなかったと思いつつ、見限ることのできない感情のもつれ。仇の行方、そして藩内政治――。清史郎が最後に下した決断とは。 江戸時代を生きる「人」を描いた、傑作ドラマ。 -
半島をゆく
歴史の旅に発見あり! 「半島は陸のどんづまりだけども、海の玄関口でもある」――。明治に鉄道が開通するまで、わが国の物流を担っていたのは海運だった。物流の集積地である半島の港には、物があふれ、人々が集い、あらゆる情報が飛び交った。 だからこそ、歴史は半島で動いた。 信長が初めて鉄砲を使用した桶狭間6年前の合戦(知多半島)、鑑真やザビエルが上陸した世界に開けた港(薩摩半島)、戦国屈指の山城を擁した城下町(能登半島)、本能寺の変の司令塔が置かれた「鞆幕府」(沼隈半島)、頼朝、早雲、江川英龍と歴史を転換させた韮山の地(伊豆半島)、信長の天下統一戦線を水軍で支えた九鬼一族(志摩半島)など、 直木賞作家・安部龍太郎氏と歴史学者の藤田達生氏が半島を丹念に歩き、海と陸の接点から日本史を捉え直す意欲作。創刊27年の月刊誌『サライ』の大好評連載が待望の単行本化。 【ご注意】※この作品は一部カラーのページを含みます。 ※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。 -
パシヨン
受難(パシヨン)を越えて、求めよ、自由を――。『熱源』で直木賞を受賞した著者による、新たな到達点! 禁教下における“最後の日本人司祭”となった小西マンショの人生を軸に、異文化同士の出会いと摩擦、争いの中での“希望”を描いた圧巻の歴史小説。キリシタン大名・小西行長の孫で、対馬藩主・宗義智の子として生まれた彦七(のちの小西マンショ)の運命は、関ヶ原の戦さによって大きく変わった。離縁された母・マリヤとともに彦七は長崎へ。キリシタンへの迫害から逃れてきた、小西家の遺臣らの世話になりながら成長していく彦七だったが、彼には小西家再興の重圧がのしかかっていく。キリスト教が禁じられ、信徒たちの不安が高まるなか、彦七はある重大な決断を下すのだが……。“受難の時代”を生きる者たちの魂の叫びが刻まれた、著者渾身の長編小説。 〈目次〉●序章 主の孫 ●第一章 天国の門 ●第二章 出日本 ●第三章 求めよ ●第四章 走る群雲 ●第五章 受難(パシヨン) ●終章 世の終わりまで -
秘仏の扉
直木賞作家が描く、明治開国の仏を巡る群像 200年の間、固く閉ざされていた扉。 それはフェノロサと岡倉天心の手によって開かれた―― 飛鳥時代に聖徳太子の姿を模して造られたと言われる、 法隆寺夢殿・救世観音像。 その厨子は鎌倉時代以降、固く閉ざされ、 扉を開けば直ちに仏罰が下ると信じられていた。 「金のために秘仏を見せるというのか」 「支援がなければ、法隆寺はもう保てません」 国内では廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、 しかし、欧米では東洋美術が評価され始めている。 近代化と伝統の狭間で揺れる明治時代に、 秘仏開帳に関わったものたち、それぞれの思いとは。 直木賞作家が描き出す歴史群像劇の傑作。 -
美術探偵・神永美有
「その絵がもし贋物なら、見た瞬間、苦みを感じ、本物なら甘みを覚えます」。美術品の真贋をその舌に感じる味覚で見抜く美術コンサルタント・神永美有。 短大の美術講師・佐々木昭友にもたらされた、「ボッティチェッリの『秋』が発見された」との情報、半信半疑で出かけた佐々木だが、同席した神永は絵を見た瞬間、強烈な甘みを感じたという。「秋」はイタリア・ルネッサンス期の巨匠の真筆なのか、それとも手の込んだ贋作なのか? ボッティチェッリ、フェルメールから正倉院御物、江戸時代の涅槃図まで、美術にまつわる謎を解く5篇。 解説・大津波悦子 -
美術探偵・神永美有
人気の美術ミステリー、シリーズ第3弾! 舌に感じる味覚で美術品の真贋を見分ける美術コンサルタントの神永美有と美大の准教授・佐々木昭友、佐々木の元教え子で芸術家の卵・イヴォンヌのトリオが大活躍。 函館戦争で戦死した先祖を悼んで榎本武揚から贈られた、隕石を鍛えなおして作られたというサーベル。刀身の成分を調べてみると、隕石に含まれていたはずのニッケルが検出されず、偽の流星刀と断定された。だが、サーベルを前にした神永の舌はこの刀の意外な部分に甘みを感知していた(「流星刀、五稜郭にあり」)。 佐々木が密かに思いを寄せていた教え子・琴乃が結婚。いやいやながら結婚式に出席した佐々木の前で、琴乃は嫁ぎ先の家宝、支倉常長が持ち帰ったというローマ法王の肖像画を偽物と断じた。真贋の判定を託された佐々木は?(「B級偉人」)。 そのほか、志賀島の金印と同時代の「銀印」が京都から出土した。果たして本物か?(「銀印も出土した」)。北海道の農家から見つかったモザイク画は、本当にカエサルの時代のものなのか?(「モザイクで、やーらしい」)。ペリーが日本に持ち込み、将軍に披露したという蒸気機関車の模型は本物か。鍵を握るのはスケッチブックに残された「sen.T」の署名(「汽車とアスパラガス」)。神永が味覚で美術本の真贋を見極めるきっかけが明かされる青春記(「春のもみじ秋のさくら」)。 -
風雲 戦国アンソロジー
命懸けの、夢。 黒田官兵衛、前田利家、松永久秀…… 野望うずまく乱世を豪華布陣が描く、傑作小説集! 矢野隆「一時の主」 関ヶ原の戦いを前に、天才軍師・黒田官兵衛が息子に命じたのは―― 木下昌輝「又左の首取り」 傾奇者の前田”又左衛門”利家は、戦の作法などお構いなしで―― 天野純希「悪童たちの海」 大内義隆の重臣の子・冷泉新五郎は、かつて明を目指して船に乗り―― 武川佑「鈴籾の子ら」 上杉景勝に謀反を起こした新発田重家の胸には、亡き兄の言葉が―― 澤田瞳子「蠅」 豊臣秀吉に新大仏建造を命じられた木食応其は、高僧らしくなく―― 今村翔吾「生滅の流儀」 織田信長の大軍に包囲された松永久秀は、信貴山城で死を覚悟し―― ※本書は単行本『戦国の教科書』収録の短編小説を再録したアンソロジーです -
福音列車
「福音の列車が、やっと日本にも来る。このやかましく、血なまぐさい戦闘の騒音とともに」 国と国の歴史が激突するその瞬間、その時代を活写した5つの物語。 明治維新の後、アメリカの海軍兵学校に留学した佐土原藩主の三男・島津啓次郎。彼はスピリチュアル(黒人霊歌)と出会い、これにぞっこんに。しかし、歌うにはソウルとガッツが必要だと言われる。「ゴスペル・トレイン」 上野戦争で死に損ない、妻と二人で「虹の国」ハワイへ移住して再起を図ろうとした伊奈弥二郎。待っていたのはサトウキビ農場での重労働だった。威圧的な白人農場主たちに、弥二郎とハワイ人労働者のエオノはストライク(労働争議)を決行する。「虹の国の侍」 第一次大戦後、日本が委任を受けて統治していた南洋のパラオにて。海軍大尉・宮里要は諜報目的で潜入した米軍将校・エリスの死体を検分したが、旅券からは肝心の顔写真が剥ぎ取られていた。「南洋の桜」 シベリア出兵にて、どうしても従えない命令を忌避して脱走兵になった、騎兵一等卒・鹿野三蔵。彼はモンゴルで、黒旗団(ハラ・スルデ・ブルク)という馬賊団に参加。生まれや人種を越えて、自らの国(ウルス)を探そうとする。「黒い旗のもとに」 神戸で生まれ育ち、祖国のためにインド国民軍婦人部隊、ラーニー・オブ・ジャンシー聯隊に志願した、少女・ヴィーナ。元サラリーマンの陸軍少尉で、インド独立指導者のチャンドラ・ボースに心酔する青年・蓮見孝太郎。インパール作戦で、近くて遠い二人の人生が交錯する。「進めデリーへ」 -
ふたりの祖国
言論で日本の軍部を牽引する徳富蘇峰と、 アメリカの地から日本に警鐘を鳴らし続ける朝河貫一。 直木賞作家が透徹した「史眼」で描くアジア・太平洋戦争――。 佐藤優氏、激賞!! 国家の悪に切り込んだ感動の書 1931年、満洲事変勃発――後に戦前、戦中最大の言論人と呼ばれた徳富蘇峰は、 東條英機ら軍部と結びつき皇国主義、軍国主義の世論形成に大きな影響力を与えていた。 イェール大学教授で歴史学者の朝河貫一は、アメリカで激化する反日世論に晒されながら、 日米融和を唱え、祖国の未来に警鐘を鳴らし続けていた。 日本は満州事変から、中国との戦争が泥沼化していきアメリカとの対立も深刻化していく。 蘇峰は日本で、朝河はアメリカから言論の力で祖国のために戦い続けるが、 日米開戦は避けられない状況へと陥っていく。 1941年12月、朝河はルーズベルト大統領から昭和天皇への親書を起草し、 開戦の回避、そして和平を目指すが……そこには予想だにもしない国家の罠が仕組まれていた。 はたして天皇を、祖国を守ることはできるのか。 国家存亡の危機から祖国を守るために戦った朝河貫一と徳富蘇峰――。 真の愛国者は誰だったのか。祖国の未来を開いたのは誰だったのか。 真逆の思想をもった「ふたり」から見える真の正義とは。 戦後80年を迎え今、透徹した「史眼」で 満州事変から日米開戦を描く渾身の歴史小説。 -
ふりさけ見れば
遣唐使は日本の朝廷からどのような命を受けて派遣され、中国で何をしていたのか―― 2012年の直木賞受賞作『等伯』に続く、安部龍太郎氏の日本経済新聞連載小説は、対外的に「国家」としての土台を築き上げた8世紀・奈良時代の日本を、ユーラシア大陸・東アジアの中に位置づけて描いたスケールの大きな作品。安部氏の新たな代表作といっても過言ではない。 日本とユーラシアを結びつけるのは、唐で科挙に合格し玄宗皇帝の側近にまで出世したたぐいまれなる日本人・阿倍仲麻呂、そして仲麻呂とともに唐に渡り当時の大唐帝国のすぐれた文化・政治制度を内政に移植した学者にして政治家の吉備真備。唐からは、玄宗皇帝と楊貴妃、安史の乱を起こした安禄山、大詩人の李白や杜甫など、日本でも多くの逸話が知られる人物が続々と登場する。ついに帰国できなかった阿倍仲麻呂が日本の朝廷から帯びていた重大な密命とははたして…… 当時、吉備真備らが持ち込み移植した律令制度はその後いまに続く日本の法律の中に色濃く残る。日本の皇室の儀礼にもこの頃移植したものが少なからず存在し、鑑真和上の招聘による仏教の興隆など、「国家」としての土台はまさにこの頃に築かれたものである。チベット、新疆ウイグルなどとの中国の緊張関係は1300年前から連綿と存在していた。日本と中国の関係、日本と朝鮮半島の関係、中国と朝鮮半島の関係は古代から幾多の戦乱を経て、連綿と今に続くものである。歴史時代区分としては日本の古代を描いた小説ではあるが、ここが「東アジアの中の日本」の視座の原点かもしれない。 -
文豪、社長になる
名プロデューサー・菊池寛 大ベストセラー作家にして、稀代のプロデューサーだった男は いかにして時代を読み、大衆に愛されたのか? 芥川龍之介や直木三十五、川端康成などの協力を得、 菊池寛が発行した「文藝春秋」創刊号はたちまち完売する。 読者が求めた雑誌は部数を伸ばし、会社も順風満帆の成長を遂げていく。 天才を見抜く天才で、芥川賞・直木賞の「父」でもある菊池寛。 「通俗者」と馬鹿にされても『真珠夫人』など徹底したエンターテイメント作品を書き続け、お茶の間を明るくすることを願った。 生涯を懸けて「文学」を娯楽にかえ、映画に携わり、 エポックメイキングな仕事をし続けた男の生涯と、 戦中戦後を生きた数々の「文豪」や出版人の奮闘に涙する感動作。 解説=秋元康 単行本 2023年3月 文藝春秋刊 文庫版 2025年7月 文春文庫刊 この電子書籍は文春文庫版を底本としています。 -
漫画 家康1 分冊版
直木賞作家が描く、人間・徳川家康を完全漫画化!! これを読めば、大河ドラマがますます楽しくなる 現代のビジネス社会に通底する苦悩と葛藤、決断の日々――。 主人公・家康は何を迷い、いかに判断し、どう行動していったのか。 ・仕組まれていた! もう一つの「桶狭間」の舞台裏 ・家康と信長の妹・お市の方は結婚するはずだった?! ・堅物ではなかった?家康と女性たちの恋模様 ・家康は信長となぜ同盟を結んだのか ・・・・・・ 大河歴史小説の漫画版 堂々スタート ※本作品は『漫画 家康1』より、第1話を収録したものです。 ※重複購入にご注意ください。 -
見果てぬ王道
孫文を支え続けた日本人実業家の、スケール感溢れる一代記 映画事業で大成功をおさめ、その資金で革命家・孫文を支援し続けた梅屋庄吉。その情熱と葛藤、国境を越えた友情を直木賞作家が描く。 長崎の貿易商・梅屋商店の跡継ぎとして育った庄吉は、香港で写真館を経営する。そこで出会ったのが、清朝を打倒し、西洋の武力支配からの自立を目指す若き孫文だった。西洋列強による東洋の侵略に理不尽を感じていた庄吉は、孫文の情熱を知り、革命を支援することを約束する。庄吉はやがて、日活の前身となるMパテー商会を創立。黎明期の映画事業は大成功を収め、その資金で革命を支援し続ける。 実業家・梅屋庄吉の熱き生涯! -
八咫烏シリーズ
山神さまによって開かれたと伝えられる世界・山内を舞台にしたファンタジー「八咫烏シリーズ」の外伝。 この地を つかさどる族長一家が宗家、その長が金烏である。 有力貴族の四家によって東領、西領、南領、北領が治められている。住人たちは卵で生まれ烏の姿に転身もできるが、通常は人間と同じ姿で生活を営む。 『かりんみず』の主人公は中央城下の薬種屋の次男坊・章次。高貴な姫に仕える姉が急死した。周囲の者たちはなぜか口を閉ざして…。 【この電子書籍は、「オール讀物」2024年6月号に掲載された「かりんみず 八咫烏外伝」を収録しています。】