Posted by ブクログ
2017年11月09日
直木賞受賞作であり、その主人公も戦国時代から江戸時代までを生き抜いた絵師ということで興味もわいてきたので、読んでみました。主人公長谷川信春(等伯)は、生れながらにして絵を描くことが好きな絵仏師です。狩野永徳の存在に焦燥感を感じ、出身地能登から都に出て絵師として大成したいという願いを持っていました。義...続きを読む父母の非業の死により故郷を離れざるを得なくなり、途中、織田信長の比叡山襲撃焼き討ちに遭遇し、比叡山側についたため信長側から追われる身となります。そんな逆境の中でも絵を描くことだけは忘れず、それで名をあげていきます。やがて本能寺の変がおこり、信長側の追跡がなくなったことで、やっと落ち着いて絵師としての仕事に専念できるようになりました。上巻はこのあたりでおしまい。病死する最愛の妻静子の存在が信春を支えていたことはまちがいなく、の存在は大きいです。信春の絵の才能を静子は見抜いていたから、苦労続きでもついていったのだと思います。なんとけなげな良妻でしょう。主人公ではないけれど、主人公なみの印象がありました。本能寺の変前後の時代、一人の絵師の運命がこんなにもめまぐるしく変わっていくことに、驚きました。信春の絵を私は、恥ずかしながら見た記憶がないのですが、彼が書く仏の描写など、作品中にでてくる絵は、人の心に感動を呼ぶものでした。信春が生きた時代が動乱の時代だったからよけいに、彼の絵が喜ばれたのかもしれません。下巻は信春がどう活躍するのか、楽しみです。