Posted by ブクログ
2021年02月13日
桶狭間の戦いから説き起こした家康物語。
大概の歴史小説は会話もそれらしき言葉で綴られるが、本作は現代語で語られる会話が多く、歴史小説は初めてという読者には取り組みやすいか。一方、コアな歴史小説ファンにとっては、重みが感じられないか。
家康も自分自身を「俺」と表現し、現代言葉が多用されている。年若い正...続きを読む義感の持ち主として、青年家康を象徴するひとつの手法か(途中から「わし」になるが)。
この家康、「人はなぜ殺し合い、奪い合うのか。なぜ欲や敵意から離れられないのか」と、悩みながら闘いの日々を生きる。
そんな家康であるが、やがて相手の人の良さを弱点と見做し、逆手にとって勝ちにつなげる冷静さを身につけてゆく。
また、家康を取り巻く女性たちー母の於大の方や正室瀬名の方それに信長の妹お市ーそれぞれが、自己主張が強くたくましく描かれているのが、安部版家康の特徴か。
史実的にはあり得ないが、お市が家康の寝所にもぐり込み同衾してしまう。小説としては面白いが(笑)。