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Posted by ブクログ
かるい読み物や短編ばかり読んでいると、どっしりとした歴史の物語を、読みたくなる。満を持して(?)読み始めた。正直、上巻は退屈なところもあったが、下巻に入ると一気に読み進んでしまった。
狩野永徳、千利休、といった文化人の描き方には引き込まれた。一方、残虐の限りを尽くす信長や、謀略をめぐらせる石田三成、教養のかけらもないと思わせた秀吉の慧眼など、誇張して描かれる戦国武将たちは、表舞台で歴史を作っているが、ここでは脇役にすぎない。
信春(後の等伯)は、武士の出自。長男でなかったため、商家に養子に出され、そこで絵の才能を開花させる。
政治に巻き込まれ、度重なる不運に泣かされるが、家族には恵まれていた。二人の妻も献身的だし、息子たちもそれぞれ道を受け継いでいる。だが、それだけが救いといってよいほど、つぎつぎと苦難が襲いかかる。その家族が居てこその信春であったと思う。
歴史の描写が、翻弄される信春を浮かび上がらせる。芸術家ひとりが、時代の波をどう戦い、乗り切ってきたか、これはただもう実直で並ならぬ求道者の、壮絶な物語。
一枚の絵にも、これだけの物語があったのだ。
Posted by ブクログ
絵仏師であった長谷川等伯が国宝「松林図屏風」を描く境地に至るまでの生涯を綴った時代小説。第148回直木賞受賞作。織田信長、豊臣秀吉、狩野永徳など、多くの偉人に翻弄され続けた等伯の生涯に焦点を当て、日蓮宗法華宗など当時の宗教による教えも丁寧にわかりやすく書き記されている。確かに当時の文化は宗教と密接に結びついているので、そこのところを疎かにしないところに筆者のこの作品に対する意気込みと思いが伝わってくる。
登場人物である千利休の人間性に興味をもったので、次は「利休にたずねよ」(山本兼一著 第140回直木賞受賞作)を読んでみようと思う。
こんな風に興味が広がっていくのが読書の醍醐味。
Posted by ブクログ
戦国時代を生き抜き、時代を代表する狩野永徳と競い合った絵師、長谷川等伯(信春)の物語、いよいよ下巻です。上巻少しのんびりしていた物語が、時代の流れと共に一気に加速します。ここでは、永徳に弟子入りすることになった等伯の息子久蔵の成長ぶりが目を引きます。久蔵のたぐいまれな絵の才能を見抜き、狩野派を継がせようとする狩野永徳と、一人息子ゆえに自分の長谷川派を継がせたい父親等伯。りこうな久蔵は当然、父の元へ帰りますが、そのことがわがままな狩野永徳の怒りをかうことになり、等伯の絵師としての仕事をことごとく妨害しにかかります。狩野永徳を羨ましがっていた等伯は、そこではじめて自分がたとえようもない宝物を持っていたことに気がつくのでした。この時代を代表する絵師として、狩野永徳の名は高いですが、並んで評される長谷川等伯には、こんな波乱万丈の物語があったとは・・・。感無量でした。絵を描くことだけを追求してきた等伯は、そのことで自分の周りの人たちや家族を不幸にしたのではないかと終始悩みます。けれども、その反面、周りの人たちによって、窮地に陥ったときに救われたりします。この点、やはり、人間性と仏法の縁(等伯はもとは絵仏師ですから)が等伯に味方したのでしょう。好きな絵を描き続け、家族に恵まれた等伯は、芸術家として幸せだなと思いました。上下巻とも表紙の装画は、国宝に指定されている「松林図屏風」(長谷川等伯作)の一部です。等伯の代表作とされるこの絵には、すさまじい等伯の気迫がこもっているようです。物語の中でもこの絵を描くシーンは印象深いものでした。まーちさんのレポにもありましたが、東京国立博物館所蔵のこの作品、私は恥ずかしながらまだ見ていません。一度は本物を見てみたいと、思います。悩んでいたり苦しんだりしているとき、この絵を見るとなんだか希望の力がわいてくるような気がするのです。
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