月ぞ流るる

月ぞ流るる

小説・文芸
2,200円 (税込)

11pt

紫式部が生きた時代の豪華絢爛宮中絵巻

日本初の女性による女性のための歴史物語『栄花物語』の作者である朝児(赤染衛門)からみた宮廷はどんな姿をしていたのか?

宮中きっての和歌の名手と言われる朝児(あさこ)は夫を亡くしたばかり。五十も半ばを過ぎて夫の菩提を弔いながら余生を過ごそうとしていたが、ひょんなことから三条天皇の中宮妍子の女房として再び宮仕えをすることになる。

宮中では政権を掌握した藤原道長と、あくまで親政を目指す三条天皇との間には緊張が入っていた。道長の娘の妍子が、将来天皇となるべき男児を出産することが、二人の関係に調和をもたらす道だった。しかし、女児が生まれたことで、道長は三条天皇の排除を推し進めていくことになる。

朝児は、目の前で繰り広げられるきらびやかながらも残酷な政争に心を痛める。なぜ人は栄華を目指すのか。いま自身が目にしていることを歴史として書き記すことが自らの役目ではないのか。そこで描かれるのは歴史の勝者ばかりではない。悲しみと苦しみのなかで敗れ去った者の姿を描かねばならない。その思いの中で朝児は筆を取る。

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月ぞ流るる のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

     澤田氏らしい美しい物語だった。12月にして今年のベスト本。これは、朝児と頼賢、三条天皇と姸子の4人物語。
     序盤は朝児と頼賢師弟の信頼関係の醸成を楽しみつつも、頼賢の養母の原子の死の謎に迫っていく、静かな嵐の気配を感じさせられる展開。ただ後半早めに死の真相は判明し、そこからは一転三条天皇と姸子の物語に移行していく。月が満ちるように栄華を極める道長に対し、国のトップでありながら道長に両手両足を縛られ、実際に耳目も機能しなくなる天皇。そしてその対立のもとで天皇を慕いながらも政敵の子として愛情を向けてもらえない姸子。
     ここに頼賢と原子を絡め、三条天皇が何故ここまで苦しみながらも譲位しないかに解を与えていく。かつて自身が犯した罪を自らが苦しむことで償う、譲位して解放されることこそが罪だと。
     そしてラストシーン。百人一首で有名な「心にも〜」とそれに対する姸子の変化。前者は天皇のままならぬ苦しみへの叫びと解釈するのが通説だが、本作では姸子への愛情と受け取れる。「いつかはこの月も恋しくなるだろう」ではなく、「生きながらえたおかげであなたと月が見れた」と。歌が苦手な姸子がすぐに返歌を送るのも良い。そのへ返歌も朝児がかつて頼賢とその父を重ねて思い返した歌で、別の解釈であることも素晴らしく、澤田氏の和歌への造詣の深さに感嘆するばかり。
     さらに、上記出来事が朝児の栄花物語への思い、史書でも物語でもないかな文字の歴史書の意義、読んだ人が怒ったり悲しんだりすることで少しでも現実のモヤモヤから解放されることを願う気持ちの決心に帰着する展開は、賞賛の他に言葉が見つからない。

    0
    2024年12月18日

    Posted by ブクログ

    人はとかく、目を惹くものばかりを信じがちである…人目にはつかねど内心で案じている者は幾人もいる…p.336
    順調でなかったり不幸だったりどん底では辛く悲しく孤独に陥ったりしたこともあり、そんなこともあったときには静か〜
    に寄り添ってくれる優しさもあったなと…この本を読み終え改めて思い心温もる。
    頼賢の生い立ちには辛いこと悲しいことが多々あったけど、受けた優しさは心に染み込んでいいて、朝児との出会いが転機となり難ありながらも良い方へ成長していくののが微笑ましく嬉しく読み進めました。
    この物語の三条天皇の妃達の心内は平安時代の姫で卑しくないのがよかった。

    0
    2024年03月19日

    Posted by ブクログ

    澤田瞳子さんの文章は、とても素敵でグッとくる表現が多い。本作も物語や史書の在り方の箇所は、とても良かった。

    内容は赤染衛門を中心に据えて、生い立ちとか『栄花物語』を書くきっかけといったような内容かと思い読み始めてしまったので、頼賢がメインになったり謎解きのようになってしまったりと、少し自分の読みたかった物とは方向性がズレてしまった。

    0
    2024年03月06日

    Posted by ブクログ

    許される限り、この世のありとあらゆる物をこの目で見ておきたい。
    そしてそれを書き記して世の人々に知らせたい、という「物書きの業」
    人々はどのような読み方をしてくれるのか、密かに込めた真意を汲み取ってくれるだろうか?
    紫式部が、清少納言が、そして赤染衛門が抱いたそんな思いを、作者も胸に抱いているに違いない。

    『栄花物語』を著した、赤染衛門の物語。
    憎しみに身を焦がし、復讐だけを生きる糧とする乱暴な若き僧だった頼賢(らいけん)の成長と、
    夫・大江匡衡(おおえのまさひら)亡き後、叡山の高僧・慶円に請われるまま、訳ありの頼賢を学問の弟子とした朝児(あさこ)こと赤染衛門が、権謀術数渦巻く宮城の歴史を見たままに書き留めようと決意するまで。

    世は、藤原道長vs三条天皇。どちらに着けば己の身が安泰か、朝堂は二つに割れている。
    平安絵巻はきらびやかな地獄絵図である。

    有明/上弦/十日夜(とおかんや)/小望月(こもちづき)/十六夜(いざよい)/暁月(あかつき)

    0
    2024年02月17日

    Posted by ブクログ

    初めて澤田瞳子さんのこの本を読みました。
    そこに居られた人々の懊悩や優しさ、その時代の設いが文章が流れるように美しいですね。
    物語をどう伝えようかが 作者と朝児が交差している様子が垣間見られ 一体化していくようで素晴らしかった。
    三条天皇のことや栄花物語、他の読みつがれいる物語を是非読んでみようと思います。

    0
    2024年02月05日

    Posted by ブクログ

    犯罪疑惑を解き明かすミステリー要素あり、政治的対立のドロドロありで波瀾万丈の物語でした。面白く読みましたのでオススメ。

    0
    2024年01月13日

    Posted by ブクログ

    藤原道長が強大な権力を持っていた時代。
    あくまでも天皇による親政を目指す三条天皇との対立。
    その板挟みとなって苦悩する道長の娘である中宮妍子。

    妍子つきの女房として宮仕えをしていた赤染衛門(朝児)から見た華やかであるはずの平安貴族の世界は、悲しいものだった。
    「この時代の事実を書き残そう」栄花物語を書こうと思い立つきっかけとなった。

    それにしても、ちょっと前に読んだ「道長ものがたり」やNHK大河の「光る君へ」とは、道長の描かれ方が全く違う。ものすごく嫌な奴になってる。

    0
    2026年05月16日

    Posted by ブクログ

    『栄花物語』の作者である朝児(赤染衛門)と訳ありの比叡山の御坊さんとの関わり。『光る君へ』での赤染衛門(凰稀 かなめさん)がとても魅力的で、他の配役も大河バージョンでサクサク読み進められました。

    0
    2025年03月10日

    Posted by ブクログ

    澤田瞳子作にしては読みやすかった。
    大河ドラマ共リンクしていて、人物像が浮かび上がった。赤染右衛門、頼賢を中心に探偵モノでありながら三条天皇と研子のラストが胸をついた。悲劇でありながら見方によっては希望のラストが見事。

    0
    2024年08月14日

    Posted by ブクログ

    物語のほぼラスト、三条帝と妍子のやり取り(悲しいけど、一種の雪解けと捉えました)では、思わず涙が出そうになりました。
    憎い藤原道長の娘である故に、愛せない、愛せないが、憎み切ることもできないという帝の苦悩を痛切に感じました。

    三条天皇の百人一首の歌と物語が見事に絡まっており、筆者の想像力に脱帽です。

    日本史の中で、戦国時代や幕末に比べると、小説として取り上げられることが少ないと思われる平安時代ですが、なかなかドラマティックで、興味深い人物や出来事が多い時代だと思いました。

    著者の他の作品も読んでみたいです。

    0
    2024年07月11日

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