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藤原氏一族が権勢を誇る平安時代。内供奉(ないぐぶ)に任じられた僧侶隆範(りゅうはん)は、才気溢れた年若き仏師定朝(じょうちょう)の修繕した仏に深く感動し、その後見人となる。道長をはじめとする貴族のみならず、一般庶民も定朝の仏像を心の拠り所としていた。しかし、定朝は煩悶していた。貧困、疫病に苦しむ人々の前で、己の作った仏像にどんな意味があるのか、と。やがて二人は権謀術数の渦中に飲み込まれ……。(第32回新田次郎文学賞受賞作)
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Posted by ブクログ
仏師定朝・叡山僧侶の隆範・藤原一族の大河のような読み応えのある一冊。親王と中務の悲恋と壮絶な最期はサロメのようで、定朝は観音の理想をそこに見出す。単純に言うと"腕"に魂が宿っていくストーリーだが、読み終えるのが勿体無いと思わせる作品だった。
藤原道長人生終盤頃の時代背景。平安時代の仏教、貴族や庶民の仏教感をわかりやすく物語られていた。 仏師の定朝の若い頃から平等院鳳凰堂に阿弥陀如来像を安置する晩年期頃までが舞台。 登場人物 中務。他登場人物(定期、敦明、隆範、彰子、道雅…)の心に宿ることとなる菩薩な存在の偉大さに愛を越える慈悲をみた気...続きを読むになった。 又読み返したいと思う小説だ。
時は平安中期、藤原道長全盛の時代の話。主人公は仏師定朝と内供部の僧侶隆範。彼ら2人の視線を通じて平安時代の情勢、仏教感、貴族の権謀術数、市井の暮らしぶりなどが描かれています。時は末法の世が近く、平安京の治安は最悪と言っていい状況。その中での仏教の役割とはどいうものだったのでしょう。仏教があるからこそ...続きを読む救われる心と、所詮宗教では病気を治癒できない冷酷な事実と、仏師や僧侶という登場人物を通じて考えさせられるものがあります。貴族の優雅な暮らしの影で、多くの市民が野垂れ死ぬ世の中。そこに一筋の光を届けるのは、仏教や仏像なのでしょうか。それとも仏教を信じる人の心にあるのでしょうか。
仏像は大好きだけど、じゃあ仏師は当時どんな暮らしをして、どうやって仏像を作っていたのかはほとんど知らなかったなと思った。平等院に行くといつも飛天にばかり心を動かされてしまっていたけど、今度はちゃんとご本尊も拝観しよう。それにしてもこの時代の系図は複雑で誰が誰だかちょっとわからなくなった。
仏師を題材にした歴史小説は初めて読んだ。非常に興味深かった。歴史学者である著者の知識だけでなく、1000年も昔の情景を容易に想像させてくれるような描写に、感心しっぱなしだった。 他の著書も全部読んでみたいと思った。
大好きな澤田瞳子さんの作品だが本作はいまいち。最近造仏の話を読んでいたので定朝にとても興味を持っていただけに主人公(で良いのか?)の定朝の造形が少し物足りなく感じた。 本作は若き日の定朝とそれを支える内供奉の隆範の交流から始まるも早々に身分を背景に二人の仲は亀裂。そこから中務と敦明親王を巡るドタバ...続きを読むタ騒動を経て定朝が本当の仏の姿を見つけるというストーリー。思い返しても「事件」と定朝の成長の繋がりは無理があるように感じる。「本当の仏の姿」を模索し成長していく定朝を正面から描いて欲しかったなという思い。 本作に登場する彰子の存在が非常に気になった。どちらかと言うと悲劇の中宮定子のライバルというイメージであまり良い印象はなかったが、本作でもキャラが立っており、「国母」というパワーワードも強烈に残った。冲方丁さんの『月と日の后』を読みたいと思う。
平安時代を題材にした歴史小説を読んだのは初めて。仏像や和歌に対する深い知識がなければこれだけの中身の小説は書けないだろう。優雅さと猥雑さで混沌とした平安時代の情景を味わいながら読んだ。
平等院の阿弥陀如来像へと至る仏師定朝の軌跡を藤原道長全盛の時代の中で描く.延暦寺の僧侶隆範との関係,関わってくる貴族の横暴,国母彰子の苦悩,貧しい人々の救いなどたくさんの登場人物のそれぞれがそれぞれの苦しみに喘いでいる末法の世が現れている.読みながらとても息苦しく感じた. 敦明親王の苦悩にみんなが同...続きを読む情しているが,この甘ったれの大人子供に腹が立って仕方なかった.みんなお前のせいだ!と言ってやりたい.
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満つる月の如し 仏師・定朝
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澤田瞳子
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