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神田神保町――江戸時代に旗本の屋敷地としてその歴史は始まり、明治期は多くの学校がひしめく文化的な学生街に、そして大正十二年の関東大震災を契機に古書の街として発展してきたこの地は、終戦から一年を経て復興を遂げつつあった。その街の一隅で、ひとりの古書店主が人知れずこの世を去る。男は崩落した古書の山に圧し潰され、あたかも商売道具に殺されたかのような皮肉な最期を迎えた。古くから付き合いがあった男を悼み、同じく古書店主である琴岡庄治は事後処理を引き受けるが――直木賞作家である著者の真骨頂とも言うべき長編ミステリ。/対談=門井慶喜×岡崎武志
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Posted by ブクログ
定価をつけられないほど日本人にとって価値がある本 戦後間も無く、進駐軍はダスト・クリーナー作戦を進める。これは、日本人の歴史を奪い日本人のアイデンティティを破壊する作戦だ。そのために、進駐軍は日本の古書を買い集める活動をする。その中で起こる古書仲間とその妻の死に主人公は巻き込まれる。
この物語は、戦後すぐの神保町古書店主とアメリカとが「日本文化」という爆弾の撃ち合いによる戦争を描いている。
「定価のない本」というタイトルは、定価をつけられないほど日本人にとって価値がある本ということではないだろうか。古書は日本人にとってかけがえのない文化なのだと筆者は言いたかったのだろう。大変面白かった。多くの人に読んでほしい。
Posted by ブクログ
GHQに勝ったのは俺たちじゃない。文字を愛し文字を尊ぶ日本人、日本の歴史そのものなんだ───。
古典は『のこる』ものじゃない、誰かが『のこす』ものなんだ───。
歴史を奪う。文化を奪う。敗戦国となった日本にGHQが無慈悲に吐き捨てる。戦いに負けた側が、全ての罪を負いその贖罪を課されるのは長い歴史の中で、戦の常である。
それでもやはり、歴史は宝だ。文化も宝だ。そしてその記録は、どんな形であっても維持し続けなければいけない。奢りでも、陶酔でもそんなことではなく、各々が母国のルーツを知る手段は残っていなくてはいけない。
今も尚、古典に触れられる。それは先人達の血と涙の滲む努力と、情熱と、不屈の精神の賜物だ。感謝の気持ちを忘れる事なく、大切に読み継いで、未来永劫残して行かなくてはならないと、小さな使命感のような物が湧いてくる。
Posted by ブクログ
ミステリー仕掛けであるが、ミステリーというジャンルには入りきらない。「歴史ミステリー」かもしれないが、少し違う気がする。作品背景となる時代の情景もビビッドに書かれているが、抽象的な「歴史」を描くことが主目的ではない。中心にあるのは、その時代に、たまたま、ある分野で専門的に活動している主人公が、懸命に自己の分を尽くそうと奮闘する姿だ。
門井は、そんなふうにジャンル分けが難しい作品を出す。
本作では、神保町の古書屋が、戦後のGHQ統制時代に、日本の文化資産の散逸・消滅の危機に際し、自らの生業の範囲内で、知恵を絞って抵抗する姿を描く。
地味で、大うけが狙えるようなテーマではない。が、小説として読むと、非常に暖かな読後感を残す。このような作品を世に出してくれる門井と出版業界の人に感謝。
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