無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで200万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
「7世紀の終わり頃から8世紀に切り替わるような頃」というのは、日本史では「持統天皇から文武天皇の時代」というようなことになる。現在の奈良市に在った平城京に遷都する前の、現在の橿原市に在った藤原京、読んだばかりの小説では推定される当時の呼称の新益京(あらましのみやこ)が築かれて日が浅い頃のことである。
本作の主要視点人物は、阿古志連廣手(あこしのむらじひろて)(=作中では主に「廣手」)である。一部は讃良大王(さららのおおきみ)(=作中では主に「讃良」)となっている。
因みに讃良大王(さららのおおきみ)というのは女帝の持統天皇である。現在でも知られている「〇〇天皇」というのは「諡号」というもので没後に冠せられる呼称である。存命中は、漠とした天皇に対する敬称で呼ばれるか、皇族の中での名で呼ばれることになる。そしてこの讃良の「大王」(おおきみ)という尊称だが、彼女の時代、後継の文武天皇(=作中では珂瑠(かる)王子または珂瑠(かる)大王)の頃に律令が定められたことを契機に「天皇」(すめらみこと)となって行く。
本作はその「天皇」(すめらみこと)という呼称、「日本」(ひのもと)という国号が創出されて行ったという経過を背景とするような物語が、若者の成長譚というような色合いで、時代モノらしい謀略や冒険や戦いという要素も加えて紡がれている。
廣手が新益京(あらましのみやこ)を目指して旅をしているという辺りから物語が起こる。紀伊国の牟婁(むろ)に在る地方豪族の次男である廣手は、新益京(あらましのみやこ)で仕事を始めようというのだった。
廣手には八束(やつか)という異母兄が在った。文武に優れ、周囲の人達に慕われていた兄を廣手自身も敬愛していたのだった。その兄の八束は仕事をするために郷里を離れていて、新益京(あらましのみやこ)で不慮の事故によって他界していた。その兄を追って、新益京(あらましのみやこ)で働くことになる。
本作では、廣手が色々な出来事に出くわす中、「天皇」(すめらみこと)という呼称、「日本」(ひのもと)という国号が創出されて行ったという経過にまで関わることとなり、兄の「不慮の事故」の真相にも迫るというような物語が展開する。
一口に語りきれないような、多彩な要素を含む、なかなかに興味深い作品である。本作に出くわすことが出来て善かった!!
Posted by ブクログ
「7世紀末。迫り来る唐・新羅に立ち向かう女王がいた。」という帯に惹かれ手に取った。なるほど歴史の教科書に何度も出てきた大化の改新や大宝律令等も、このような深遠な意味があったのかと驚いた。しかも、令和で一躍脚光を浴びた梅花の宴の作者で万葉集の編集に大きく関わった大伴旅人・家持親子が、「倭国」「大王」に代わる「日本」「天皇」という表現を使い始めたという。天智・天武からの改革を受け継ぎ外敵に立ち向かえる日本国の礎を完成に導いた持統天皇と腹心の忍裳という二人の女性の真摯な生き方にスポットを当て、遥か遠い古代日本の壮大なロマンが描かれていて楽しい1冊でした。この一連の事件こそが所謂「大国主の国譲り」「日本国誕生物語」ではないかとの見方もあり一層魅力的でした。
Posted by ブクログ
持統天皇が大宝律令を制定するが、その際の既得権益を持っていた豪族との争いを描いた話である。
なぜ律令がいるか、それは、中央集権国家を目指すためで、百済のような亡国にならないよう、国力をあげるためだった。また、その中には、日本という言葉が記され、これまでの、倭国という、蔑まれた国名ではダメだという、日本人の強い思いがひめられていた。
法律がなければ、人びとは、己の欲の欲するままに行動し、国は乱れ、まとまらず、国力は落ちる。律令で天皇すらもその元にあるという、おもいだったとこの小説ではいう。天皇という言葉も大宝律令で出てきて、それまでの天皇の呼称 大王から変わるが、この、大宝律令の制定は、これまでの豪族中心の国家から、近代国家に生まれ変わる外国にたいしての決意表明のようなものであったのではないかと思う。
ただ、本書は敵ですらも最後にはきれいに死なせてしまうように描いているので、それはいらないかなと思ってしまった。
でも、中々、著者の作品は面白い。
Posted by ブクログ
古代日本史の本というのをあまり読んでないので、他の作品とは比較できないが、この本は面白かった。戦のシーンはほとんど出てこない政争劇なのだが、適度に緊張感があり登場人物たちの描写も分かりやすくて、ボリュームやテーマの割に読みやすい。
持統天皇以前まで、天皇ではなく大王(おおきみ)であったこと。そしてその時代まで日本ではなく倭であったこと。
聖徳太子が小野妹子に託した文書が有名すぎて、その影響が大きいのだが、中央集権制という意味で日本が真に国家の体制を整えたのは、大宝律令が出来て以降だということが良く理解できる小説。
国家の基盤となる法律があってこその法治国家、そしてその国家には有能な官僚がつきものであること。これは現代日本も同じである。現代日本に藤原不比等はいるのだろうか?いい意味にも悪い意味にも、それだけの役者はいない…すくなくともまだ舞台には出てきていないように思う。
Posted by ブクログ
持統天皇の治世、律令制の確立に奔走する者たちを描いた壮大な物語。概略だけを見れば地味なテーマではあるが、過去の遺産を捨てきれない古い勢力による反抗により話は国家を揺るがす大きな事件を生み出す。
主人公の廣手たちの行動が律令国家の未来への希望を原動力としている点が非常に気持ち良い。制度は作るだけでは不十分であり、その中で動く人間がよく理解し、柔軟に対応してこそ本当の価値を生み出す(413p)。今に通じるものもある。
ハイライトは廣手が兄の仇である大麻呂と対峙するシーン。諦観と後悔から自分を殺してみろと挑発する大麻呂に対し、廣手は兄の首を取るより国家に尽くすよう懇願する道を選ぶ(p403)。その上の首謀者である大伴御行や丹比嶋に対しても、律に照らした処分を望む(p490)この行動の一貫性と真っ直ぐな心持ちに爽快感を覚えさせられた。その点でも大河小説でありながら青春小説の側面が強いと感じた。これはこれまで読んだ澤田先生の作品に共通して見られると思う。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。