小説・文芸の高評価レビュー
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恋人たちの会話を聞いているような歌集でした。
テーマごとに、くどうれいんさんと染野太朗さんの短歌が掲載されています。
贈答歌のページもあるのですが、全体的に会話のような雰囲気があり、かみ合うようで、かみ合わない。
そんな不安定さがとてもリアルでした。
同じ場所に居て、同じものを見ていても、それぞれ思っている事は全然違っていたりする。
それも恋だからって、イレギュラーなリズムの短歌が主張しているかのようです。
音読して味わいたい歌集でした。
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どこへでもいけるだなんて言わないであなたと
いけるかを聞いているの(くどうれいんさん)
永遠はいたるところにあるのだと知ったあの日の海に来ている(染野太朗さん)
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停滞と絶望に慣れ、倦み、恐れ慄き、別れを告げんと足掻く。
救済と進展を諦め、嘲り、希い、我が物にせんと縋り付く。
内心では己を殊更に特別視し、他者を見下し切り捨てんとする醜い傲慢。
なけなしの金を刹那の慰めに使いきり、将来のことなど一顧だにせず。
悪魔の囁きと救済の手の区別がつかない——いや、実は両者は本質的に同じなのかもしれない。
現状から抜け出せると喜び勇んだものの、実際には何も変わらず堂々巡り——そして、本人は決して気付かない……。
2025年にノーベル文学賞を受賞したKrasznahorkai Lászlóのデビュー作。
暗澹な人生を這い回り続ける人々の、滑稽で愚鈍だが生々しいその描写に圧倒された。これはいつ、どこの誰にでも当てはまる——いや、いま読んでいるわたしのことではないか、と。
2026年どころか、わたしの生涯で一二を争うほどの傑作。作者、翻訳者、出版社——本作に関わった全ての人に感謝したい。
また、わたしは翻訳者が勧めるとおり2周した。たしかに「円環」だった。
Tarr Béla監督の映画版(1994)も有名。わたしも以前観たが、7時間超えの長大さには敵わず早々に寝入ってしまった。何がなんだか分からず終いの映画体験であったが、原作を読んだ今なら最後までいけるかも?
“ここを出たところで、容れ物が替わるだけ、罠のなかに捕らわれていることには何ら変わりないのだ”
(第2部第5章) -
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ふっかふかの、胸の谷間にシュート・イン!
何を言ってんだって?けどそれが読み終わって一番初めに頭に浮かんだワードなんだからしょうがないでしょうが。
物語冒頭から全裸の男が誰かを待ち構えているという不穏な幕開け、そこからしばらくは雲を掴むような、というか寮暮らしをする男子大学生達のわちゃわちゃとした会話劇をひたすら追う展開。
中々パンツを穿いてくれない巨躯マッチョと、世紀の顔整いだけど迸る陰キャ感が全部台無しにしてる白モヤシ君との、だいたい3ヶ月間くらいの出来事のはなし。
マッチョの名は〈紫波央士〉、元・高校アメフトのスター選手、「一九〇を超える身長も、現役時代からは減ったがそれでもまだ八十キロある体重も、七パーセントの体脂肪率も」(p9)備えた体躯で且つ「ミラクル入学バカ」(p20)。「スポーツしかしてこなかった自分は、この大学に入れるような学力レベルにはまったく達していない。」「スポーツ推薦で進学したのに、いざ入学した時にはそのスポーツすらもうできなくなっていた」(同)男。
モヤシの名は〈丹生景都〉、上述したように「とにかく目に見える情報のすべてが叫ぶみたいに陰キャ感を主張している。のに、顔が。顔面が。とんでもなく、整っている」「筋肉量は少ない」(p13)男。表紙の絵を参考にされたし。
この対照的な二人が学生寮でなんの因果か同室となるところから物語は回り出していく。
全6話で構成されているうちの大部分がいわゆる大学生同士の不毛なじゃれ合い、だらけた中にも微妙に知的なジョークを織り交ぜる会話の感じ(個人的に「ペプシンの刑」(p181)が凄く好き)とか、生活全般に漂う気だるさの一方で日々の課題とかはなんだかんだでちゃんとうまくやる要領良さとかがいかにも大学生っぽい。友人や先輩と誘い合わせて行く深夜の工場バイトとか、わたしも経験があるからあの道すがらの雰囲気はめちゃくちゃよくわかる。
ずっとこうした群像日常劇を読むだけなのかと思いきやそうはどっこい、序盤から各所に散りばめられている不穏な要素・伏線が意外なまでに緊張感をキープしてて、後半でのそれまでと打って変わるシリアス展開を経てからの無上のカタルシスがすっごく気持ち良い。目がカッと開く爽やかさ。
まさか「地球を一周したい」(p389)なんてひとフレーズがラストで効いてくるとは思わないし。
ちなみに、この感想の頭に書いた胸の谷間とは「大胸筋」(p20)のことで、実体もそうだが精神の胸が盛り上がっていればいるほど人徳者であるということ。胸の深さは徳の深さなのだよ。
オビやら公式などで掲載されている内容紹介文の「夢の中だけでも王子様に会いたい。」というフレーズが上手い。物語を読めばこの「王子様」がダブルミーニングだという事は自明で、ぜひとも作中に登場する某カレー商品のパッケージを眺めつつ、頭上に広がる星空にも目を向けてみて下さい。
ダンベル持ちながらね。
1刷
2026.9.11 -
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伊坂作品、ギャングシリーズが1番好きかも。4人組の成瀬、響野、久遠、雪子のバランスの良さよ!それぞれ素敵なセリフのオンパレード。あと段落始まりの辞書部分【恩人】①お世話になつた人②情けを掛けてくれた人。「あの人は命の恩人だ」.相手から言って来た場合は注意が必要。とか、あるあるで面白すぎ。私の思い出話し語り恐縮ですが、高校生の時に、恩人とは言われてないが相手から「親友だろ」と頼み事あり。冷静に断ると「絶好」と宣言された人いたな。彼奴、友達100人居てるって言ってたからあと99人居てるし何とかなったかな❓あー、思い出した。俺、確か16番目位つて言ってたな。でも先の人、絶好されてたから、あん時は暫定一位やわ。
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美人女将のお妙が切り盛りする居酒屋「ぜんや」では、武家の次男坊・只次郎の愛鳥ルリオの雛の譲渡権をめぐりプレゼンが行われます。お妙の料理を酒のつまみに、雛を狙う大店の旦那衆がわいわい争っている様子が楽しい本シリーズ。
今回は、只次郎とお妙の関係が大きく動くことになり、江戸版『めぞん一刻』みが出てきました。
それにしても三河屋の旦那とその娘の、只次郎へのアプローチがなかなか強い。そして大体そんな第三者の存在が、自分の本当の気持ちと向き合うきっかけになるものなんだよな。
料理では、武士がきゅうりの輪切りを食べない(断面が葵御紋に似ているから)とか、まぐろ(別名シビ→死日)といった武士がタブーとしている食べ物についての描写があるのが興味深かったです。そして只次郎はそういった武士のならわしごとをスルーしている自分がいることに気づきます。それは町人としてやっていくという思いが固まってきたということ。今後の展開が楽しみです。 -
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「寒い国から帰ってきたスパイ」に続いて、ジョン・ル・カレを読む。
私は、「寒い国から帰ってきたスパイ」の方が好きだったけれども、この小説も、スパイ小説の傑作と評価されていて、自分もそういう風に読んだ。
この作品は「スクールボーイ閣下」「スマイリーと仲間たち」と続く、三部作の一作目。たぶん、30年以上前にスパイ小説を数多く読んでいた時期に、この「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」までは読んだ記憶があるけれども、あとの二作はおそらく読んでいない。この作品の主人公である、ジョージ・スマイリーが登場する小説は、あと一作、「スパイの遺産」という作品があるようで、この三作品は、読んでみようと思っている。
「寒い国からかえってきたスパイ」の感想にも書いたけれども、この作品の背景となっている東西冷戦、そして、東側と西側の諜報戦というのは、現在ではリアリティはないけれども、諜報活動、インテリジェンス活動は、世界中で現在でも活発に行われているはずであり、そういう意味では、物語としてのリアリティは損なわれていないように思う、 -
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小説のタイトルはウツボカズラとある。恐らく植物の名称なのかと想像しながら、調べてみると、「独特な袋状の捕虫器を持つ食虫植物」と書いており、犯人が甘い汁を好む犯罪小説なのかと思いながら、さらに調べてみると花言葉は「甘い罠」「魅惑」「危険な美しさ」だ。
甘い言葉には気を付けろ!
と思いながら文庫本の裏表紙に「戦慄の犯罪小説」と書いていたのでワクワク感を期待しながら本書を読み進めた。(実はこういう小説が好みなんです(笑)そして警察小説でもある。
基本はミステリの範疇なんだろうなぁ~と思い騙されまいと、読書ノートを書きながら付箋を貼ったりするのですが中判以降は物語の展開が速く大きく事件解明のため刑事が奔走する有様で、本来どんなに興味深くても、冷静さを失わない方なんですが、頁を捲る手が止まらなかった。そういう意味で熱中して読んだと理解してほしい。ミステリ小説が好きな方なら痺れるでしょうね。
勿論、後半になるまで犯人像が明かされませんが、警察の必死の捜査で物語が猛スピードで終結に向かう様は圧巻でした。長編にも拘らず読める作品でした。
傑作だと思う。
読書は楽しい。
仕掛けの匠が良いですね☺️
#幻冬舎文庫
#柚月裕子 #ウツボカズラの甘い息
【文庫版裏表紙のあらすじ】
家事と育児に追われる高村文絵はある日、中学時代の同級生、加奈子に再会。彼女から化粧品販売ビジネスに誘われ、大金と生き甲斐を手にしたが、鎌倉で起きた殺人事件の容疑者として突然逮捕されてしまう。無実を訴える文絵だが、鍵を握る加奈子が姿を消し、更に詐欺容疑まで重なって・・・・。全ては文絵の
虚言か企みか?戦慄の独罪小説。 -
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ネタバレドラマ化前に再再読。
数年おきに再読しているが、今回が一番しめたかもしれない。とてもよかった。昔より、言葉の面白さを感じたり、自分の考えをきちんと言葉で伝えたいと思っているからだろうか。それとも歳を重ねて、『大渡海』にかけた年月の長さと重さを実感しているからか。自分にとって仕事とは何かと考えているからだろうか。
馬締やみどりの、恋や愛の語釈で対象を「異性」と限定するのはおかしいのでは?という疑問は、今では多くの辞書で改訂されているのではないか。感慨深い。
一番共感できたのは西岡だった。
辞書や職場にそこそこ愛着もあったのに、あとから入って来た馬締に敵わないと思ってしまった西岡は、異動先で、自分にできる方法で辞書作りを支援しようとする。その気持ち、わ、わかる……!あとがきに自分の名前を発見した時の西岡を想像したら、泣ける。
「その言葉を辞書で引いたひとが、心強く感じるかどうかを想像してみろ」。西岡、いいこと言う……!
『CLASSY.』連載だったというのが毎回意外でびっくりする。
みどりの妄想した馬締の河童への取材「とっくりを持つことはありますか?」がツボ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2015年既読。初潮を迎える前に妊娠し出産した中学生と子どものいない夫婦。ひかりは周りの大人にうまく頼れずどんどん悪い方へ進んでしまう。知らない事を教えてもらえない、娘にこういう感情で接する親もいるのか。ひかりは養子縁組をする浅見に出会えて、まだマシだった。佐都子は不妊原因が夫側にあった事で悩む。不妊治療に理解がなかった夫も検査結果を知り、その後妻に寄り添う、デリケートな心の動きが目に見えるように伝わる。別れず共にいる事を選ぶ二人の姿、羨ましい。自分だったらできない。ひかりを『広島のお母ちゃん』と呼ぶ朝斗、夫婦で朝斗のおかあさんと境界線を引きつつも大切に思う気持ちも素敵だった。佐都子夫婦のもとにひかりが産まれていたら、どんな人生だっただろう…親も子も選べない。
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