小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
『インビジブルレイン』を経て池袋署へ異動した姫川玲子。現在の事件から若き日の姿まで、『ブルーマーダー』前後の時間をつなぎながら、さまざまな玲子の貌を描く全8編の連作短編集。
第2シーズンまで来て、ようやくこのシリーズならではの楽しみ方が分かってきた気がする。
長編で濃密な物語に浸り、短編集で少しひと息つきながら人物や物語の隙間を味わい、そして次のシーズンへの期待を高めていく。この流れが実に楽しい。
中でも、若き日の玲子を描いた「彼女のいたカフェ」はどこかほっこりさせられ、「落としの玲子」では、今泉管理官をやり込めてしまう玲子がなんとも面白い。一方、「夢の中」「闇の色」は、長編になってもおかしくないほど内容が濃く、短編集だからといって満足感が薄れることはなかった。
『シンメトリー』でも感じたが、長編に盛り込めばテンポを損ねそうな人物の日常や過去、事件の余白を、短編だからこそじっくり味わえる。そうした物語が加わることで、シリーズの世界が少しずつ厚みを増していくのが嬉しい。
さらに、ここから先へつながっていきそうな気配も随所に感じられ、ひと区切りついたはずなのに、気持ちはもう次のシーズンへ。
長編が物語を前へ進め、短編集がその世界を横へ広げていく。そんな読み方ができるのも、このシリーズの大きな楽しみになってきた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレはじめは単なる恋愛小説かと思っていたのに、最後の展開があまりに衝撃的で、読み終わってため息が出た。
別作品も読んだけれど、人間の虚栄心や自己愛、歪んだ執着心といった複雑で繊細な感情の描き方があまりにも上手いと思う。文章も難しすぎるわけではないのに、美しくて読むのが心地よい。蘭花の凛とした美しさが想像できるような文章だった。ミスリードからの、真実が明らかになる瞬間までが怒涛すぎて。登場人物たちの心情が強く関わっているから絶対にわからないだろうと思うのに、ほの暗い執着心に妙に共感してしまったりもした。傲慢と善良に似通う部分もあったように感じた。恋のパートも友情のパートも、出力は違っても根底には執着と支配欲があるように感じられた。すごく好きです! -
Posted by ブクログ
出版区のYouTubeで俵万智さんが勧めていたのを観て読みたくなった。近所の本屋に置いてあったので購入。早速読んでみた。
率直な感想としては、「とにかく面白いから、人の感想なんか読む前に騙されたと思って読んでください」しかないのだけど。
とりあえず言葉にしておきたいので書いてみる。
著者の繁延あづささんは本書の前に『山と獣と肉と皮』と『ニワトリと卵と、息子の思春期』という著書があり、そちらを先に読んだ方が経緯がわかりやすいのではと思ったが、はじめに軽く説明してくれているのでとりあえず本書から読んだ。
文章が面白いのでスラスラ読めるのだが、経緯の内容が濃厚過ぎて前作が気になってくる。どういうことだ。どういうことだ。
ともあれ本書の大筋は夫の退職を機に養鶏場をはじめる話で、家族のことやカメラマンの仕事のことなど日常も挟みながら話が進んでいく。生肉を売るには資格が必要で、資格を取るためには食鳥処理場で三年以上の勤務経験が必要。そこで食鳥処理場で働きだすのだが、そこで想像を遥かに超えた体験をする。
前作で猪狩りに同行した際に著者が感じたという、森の中に死は溢れているが、街では隠されてしまう違和感。食鳥処理場はその間に立つところだった。
そこでは夥しい数の鶏が流れては食肉となっていく。状況を飲み込む時間もないまま、タイトル通り鶏まみれになりながらひたすら捌き続ける。
体験を重ねるごとに広がる想像と現実のギャップに湧き起こる「?」。読んでるこちらも頭の中がぐるぐるしてくる。さらに家族や職場の先輩達との何気ない会話が心に突き刺さる。どうすればいいのか。頭の中でオセロのように白と黒とがひっくり返し合っている。なるほど!なるほど?
凄く濃厚な読書体験だった。余すところなく鶏。鶏肉はとても身近な食材なのに何も知らなかった。著者の繁延さんについて行くだけで、食に関してだけではなく、日本の経済から歴史、労働と対価、子供と後期高齢者まで色々なことがヒヨコのように鶏にくっついてやってくる。
食肉処理場での光景は、知らない人が見れば壮絶であり衝撃的であるが、その職場を改善すれば済むというような問題では全くない(改善はすべきだが)。それより皆んなが普段食べている鶏肉が、何処からどのようにやってくるかを見たことがない我々の方が「ズレて」いるように感じた。
それは命の教育とか、食べ物に感謝できるようになるとかそんな話でもない。こんなに大切なことを知らずに生活してるのは勿体ないと感じている。そもそもがズレていたのか。本書を読んだ後だと、著者が言う捌かれた鶏や内蔵の写真の美しさが伝わってくる。
社会は勢いでここまで来たけど、行く先を見失っている今、あっちこっちと移動しながら都度立ち止まって考えてくれる繁延さんは有難い存在だ。
著者が様々な現場で感じる「なぜ」が生きる事の全てに繋がっている。それぞれに良い面と悪い面が複雑に重なって、今の社会があることが見えてくる。
なにより恐怖を伴いながらも(家計の為とはいえ)それに立ち向かう著者の勇気に敬服する。なかなかここまでやれる人はいない。やり遂げることの凄さ。その中で理想と現実の葛藤を抱え続けることのできる強さ。
食鳥処理場での体験だけでなく、家族との時間や、カメラマンの仕事、他の業種の人達との会話が、本書に温かみを与えていると共に、メディアからは敬遠されている仕事が自分たちの生活と地続きであることを伝えようとする強い意志を感じた。
物を作る人間としては、繁延さんが販売する卵のパッケージやパンフレットのデザインや販売の仕方、全ての細部に、それらの体験と言葉が滲み出ていて、ぐっときました。これぞ本来のデザインの仕事のあり方だと眩しく感じます。
著者が感じたこの大きなクエスチョン・マークをより多くの人が読んでくれたらと思った。話はそれからだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ予想外に非常に面白かった。表紙の絵柄からは想像もつかない展開で非常に驚いた。
第5章、最後に三井仁菜が真相を説明するシーンは圧巻。そこで仁菜の想像を超える真実が明かされる。
「総経本部メンバー4人が青瀬を殺そうとしていた。」
飯野は、青瀬が仕事ができないからという理由で消えてほしいとは語っているが、殺すというのは飛躍しすぎ。パワハラの前川を殺したいのはわかるが、青瀬は殺さなくてもなんとかなると思う。
5章のあとに、過去のエピソードがあり、エピローグがあるのはよかった。
こんな会社あるのかなとも思うが、冷静に考えると確かにありそう。
ここへ行って仕事の改善をしたくてたまらなくなった。
メンタルがやられるとどんどん悪循環に陥ってしまい、脱出できなくなる怖さがよく描かれている。
作者の別作品も読んでみたい。
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