恋とか愛とかやさしさなら

一穂ミチ

プロポーズの翌日、恋人が盗撮で捕まった。

カメラマンの新夏は啓久と交際５年。東京駅の前でプロポーズしてくれた翌日、啓久が通勤中に女子高生を盗撮したことで、ふたりの関係は一変する。「二度としない」と誓う啓久とやり直せるか、葛藤する新夏。啓久が“出来心”で犯した罪は周囲の人々を巻き込み、思わぬ波紋を巻き起こしていく。

信じるとは、許すとは、愛するとは。

男と女の欲望のブラックボックスに迫る、
著者新境地となる恋愛小説。

わたしの心と体を通ってきた、無数の、犯罪の名前が付かないたくさんの傷のことを考えた。苦しかった。読めてよかった。
――高瀬隼子（作家）

僕はこの物語を、生涯忘れることはありません。
――けんご（小説紹介クリエイター）

女性が置かれている地獄のある側面が突きつけられる。
――スケザネ（書評家）

• カテゴリ: 小説・文芸
• ジャンル: 小説 / 国内小説
• 出版社: 小学館
• ページ数: 240ページ
• 電子版発売日: 2024年10月30日
• コンテンツ形式: EPUB
• サイズ(目安): 2MB

[ブクログ · ★★★★★]

初めての一穂ミチさん。
あらすじを読んで手に取りましたが、単なる恋人同士のお話ではなく、加害者、加害者家族や恋人、とまたその友人、加えて被害者、被害者家族と色々な視点から描かれていてお話は予想もしていなかった方向に進み、それぞれ登場人物のリアルな心理描写やストーリーの展開に感服しました。

性犯罪は絶対に許されないし、社会的にも明確に否定されていて私も同感です。
でも、この作品の中では、それ以外の「どこまでが許されるのか」というグレーな場面がたくさん描かれていて、人によって捉え方が違うことに気づかされました。
そうした描写を通して、人それぞれの倫理観や道徳心が浮かび上がってくるようで、とても考えさせられる内容でした。

[ブクログ · ★★★★★]

正しいとか正しくないとかこうあるべき、悪い人は悪い人みたいな一元的な考えが多い世の中だけど、
人にはいい一面も悪い一面もいろんな一面があるし、それは許す許せないだけで判断することはできないよな〜複雑なきもち！
社会的なルッキズムとかそういう問題もあって、、とても考えさせられた

[ブクログ · ★★★★★]

読んでいてすごく苦しかったけど、すごく良かった。一穂ミチさんの文章は、やっぱりなんだか清々しくて良い。
信じるとは、確かに純度を伴う。
自分が罪を忘れても、罪が自分を忘れない。いくら周りから見つからなくても、自分は自分をごまかせない。恥ずかしくない自分で生きていきたいと思った。

[ブクログ · ★★★★★]

読書備忘録953号。
★★★★★。

5年の交際の末、彼氏からプロポーズされた。嬉しい！
その彼氏が電車の中で女子高生のスカートの中を盗撮した。え？
初犯？軽犯罪？示談？前科も付かない・・・。え？
あり得ない。どうしたら良いのワタシ？

他人事であれば、性犯罪であっても軽犯罪から重犯罪というランク付けを客観的に見ることが出来るかも知れない。
でも自分の身に起きたら？彼氏が性犯罪を犯したら？軽犯罪だろうが性犯罪であることに間違いはない。
ありえない！生理的に無理！という感情が普通ではないか・・・。

ということで、紛れもないオスであるわたくしが偉そうにレビュー出来るストーリーでは無いですよ。
無理です。だってオスですもん。
ということでレビュー放棄。

ストーリーは、彼女視点の「恋とか愛とかやさしさなら」と、彼氏視点の「恋とか愛とかやさしさより」から構成される。
彼女視点のストーリーは、彼氏の性犯罪に直面した彼女の葛藤を描く。
彼氏視点では盗撮被害者の女子高生(とその家族！)と加害者の関わりがストーリーの中心となる。
ただ、彼女視点から彼氏視点には時間が流れており、読んでて退屈しない。

そして作者は何が正解か？というより、数あるパターンの一つを物語にしたという感じを受けました。
さて、読者の皆さんどう思う？　と。

私はね。私は・・・。
表紙裏のショートストーリーの意味が全く分かりませんでした！
という感想でした！

以上！

[ブクログ · ★★★★★]

私自身、性犯罪にはかなり厳しい態度を取ってきたし、それが正解だと思ってたけどこの小説を通して加害者側の苦悩に対する理解が深まった。結局加害者も被害者も孤独にしない、というのが大切なのかも。加害者の身近の人達、特に性犯罪を軽蔑してるような人達は世間からの同情が受けられないず、加害者への愛情と性犯罪への軽蔑の行き違いで、辛いこともあるよなぁと。

[ブクログ · ★★★★☆]

ここにあるのは、愛なのか？　やさしさなのか？
誰もが過ちを犯しやすい、後悔を残しやすい背景の中で、人を愛する、許すってことがどれだけ葛藤を乗り越える必要があるのか？　愛するってことは、どれだけ他人を巻き込む必要があるのか？
誰でもが遭遇しやすい設定だからこそ、なんらかの「怖さ」を持っていることに気が付く。
「愛する」「恋する」「やさしさ」は真っすぐなんかじゃない、デコボコで棘だらけで、痛みを乗り越える必要があることを、この本の中から感じ取ることができる。

本書の中に前編と後編でタイトルが変えられている意図について考えながら読んだ。
「やさしさなら」何を許すべきなのか？
「やさしさより」何を見つめる必要があるのか？
啓久を挟んで新夏と莉子の感情が交差し、痛みが溢れる。

きっと物語の中だけではなく、自分たちの身近にあるお話である。

[ブクログ · ★★★★☆]

欲望の在処。
折り合いのつけ方。

他人の眼差し。
自己評価。

いろいろよく考え、適切なシチュエーションを作り出しよく表現された作品だと思う。

[ブクログ · ★★★★☆]

一気読みでした。幸せの絶頂から一気に叩き落とされる感じでした。今、性犯罪が増えていて、考えられないような盗撮事件も起こっています。性犯罪だけでなく、犯罪、不祥事など、加害者の身内がいかに「わからない」という感情に陥るかが伝わってきました。

[ブクログ · ★★★★☆]

一穂さんの作品は久しぶりでした。
プロポーズの直後に恋人が盗撮で逮捕された女性のお話と盗撮した男のその後のお話。
すごく深いような浅いようなそんな厄介な内容で読んでてなかなかしんどかったです。
どうしたらいいのか、分からないですし(^^;;
でも分からなくてもこうして読書を通じて色々考えることが大切なんかなって思いました。
ありがとうございました。

[ブクログ · ★★★★☆]

こんな読んだことない、観たことない心情にフォーカスされる物語があるのかという驚き。

みんな人のことを悪く言ったり、蔑んだり、否定したりするけど、自分のことを振り返ったときに、同じことを聞き返されたら言い返せるのか。

じゃあ、自分はどうなんだ。と何か言う前に/行う前に踏みとどまることが必要かなと。かなり難しい話でした。