あらすじ
知人の老女がひったくりに遭う瞬間を目にした大学生の春風は、その場に居合わせた高校生の錬とともに咄嗟に犯人を追ったが、間一髪で取り逃がす。犯人の落とし物に心当たりがあった春風は、ひとりで犯人捜しをしようとするが、錬に押し切られて二日間だけの探偵コンビを組むことに。かくして大学で犯人の正体を突き止め、ここですべては終わるはずだったが──いったい春風は何に巻き込まれたのか? 『パラ・スター』『カフネ』の俊英が、〈犯罪と私たち〉を切実に描き上げた、いま読まれるべき傑作長編。/解説=瀧井朝世
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Posted by ブクログ
他人から見えているのは輪郭だけで
中心は闇かもしれない。
その闇に呑み込まれないように
みんな必死に前向きに生きている。
自分で自分を諦めない限り
その闇から抜け出し
また立ち上がれると勇気をもらえた作品。
北海道が舞台で
北海道大学,旧北海道庁、北三条広場、札幌テレビ塔などの景色が沢山出て来て旅のお供にしたい。
フジサキ視点から突然の春風登場に始まり
衝撃の展開が続き、夢中になって読み進め
ミステリーとしても読み応え抜群。
・印象に残った部分
人は孤独でそばに誰がいようと
誰にも頼れないことはたくさんある。
むしろそんなことばかりだ。
けれどそれでも、彼には忘れないでほしいのだ。
今まで彼がしていた、闇の底をたったひとりで
歩くような闘い方は、もうしなくていいのだと。
私は弱い。私は囚われている。
私はそれを認める。
けれど弱く脆い人間が、その弱さと脆さによって、
立ち上がることができると私は信じる。
私は学び、努力し、時にゆらぎ、それを克服しようとあがきながら、私が変われるということを証明する。
証明すると決意する時、私の未来はどんな鎖らも
自由になり、無限の可能性を持って広がる。
あなたの切り離せない一部があっても
それはあなたの未来を縛りはしない。
あなたはこれからいくらでも
あなたの願う自分になれる。
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先を知りたくてたまらなくて、昼休みの15分で毎日耐えながら読み続けた。
ハラハラ、ドキドキ、大好物なタイプ、カフネの様な最後はほっこりした終わり方が気分が良かった。
Posted by ブクログ
自分の周りで今まさに起きているかもしれない犯罪を取り扱った、バディもののミステリー。正直ここまで緻密に組み立てられてるとは思わなかった。
容疑がかかった怪しい人物、その裏に隠れた影武者達、そしてそれを包む巨大な闇。ページがめくられるに連れて徐々に徐々に開示されていく情報、妙に現実味を纏った気味悪さ、といった要素は宮部みゆきさんの「火車」を彷彿とさせる。
Posted by ブクログ
一瞬たりとも目が離せない展開。
全てに意味のある流れに、ずっと緊張感を持って読めた。目を離すことすら惜しいような、そんな読み心地になれる本はそうそう出会えない。(お昼になったのに気が付かなかった。良い意味で食欲も削がれてしまった)
犯罪は犯罪。そこに落ちる人の闇は確かにあるけど、だから誰かを傷つけていいのか、と。どうかその闇を照らすのは犯罪ではない救いの光であってほしい。
もっともっと読まれてほしい名作。すごいの一言。
Posted by ブクログ
第1章では、偶然居合わせた強盗現場をきっかけに二人がバディを組み、事件解決へと乗り出す――一見オーソドックスな探偵ものかと思いきや、第2章では一転、少女が犯罪に加担する場面が差し込まれ、物語は不穏な混沌へと踏み込んでいく。
現代社会で横行する詐欺犯罪がリアルに描かれ、人々の生活苦と絡み合うことで、物語に確かな深みと切実な共感が生まれている。
次々と謎が解き明かされていく目まぐるしいテンポの中に、ミステリならではの醍醐味があった。
Posted by ブクログ
叙述トリックが効いていて、あ、そうきたらか、と感じさせられるミステリ要素もあり。
悪いことだとわかっていることを、それが得意かもしれないし、なんなら快すら感じかねないと自覚したあと、どう生きていくか。
自律する気持ちと、闇に引きずり込まれないように繋いでいてくれる手があると信じられたのなら、そんな自分でも強く生きていけるかもしれない。
変に恋愛要素がなくてよかった。
Posted by ブクログ
正直ひったくりからここまで面白い展開になるとは思わなかった。前半は海外小説のAI翻訳かと思うくらい臭いセリフのオンパレードでフェードアウトしようかと本気で思ったが、加賀谷と里緒の登場でガラッと雰囲気が変わる。登場人物全員、根が善人で真の悪人が登場しない点に少し物足りなさは感じたが。春風の強い覚悟と深い愛情を感じさせる三章最後「大丈夫。そんな顔を、しないで。」は珍しく震えた。句読点って大事な表現方法だね。
Posted by ブクログ
本屋大賞受賞作のカフネよりこっちの方が好き
読み始めたときは、ひったくり犯とそれを追う無鉄砲な女子大生とはしっこい高校生男子のシンプルなお話かと思ってたけど、徐々に様相が、変わっていき
良い意味でだいぶ思っていたお話とは違う
え?そうなの?あれ?とラストあたりでなり、上手い作家さんだなと
Posted by ブクログ
あらすじを読む限りではあまり面白そうに感じなかったけど、実際に読んでみたら凄く面白かった。春風と理緒の物語はどう関係してるんだろうと思いながら読み進めていたら、繋がった瞬間から面白さが加速度的にアップしてそこからは一気に読んでしまった。
小説としての面白さはもちろんのこと、特殊詐欺の一例も物語には出てくるので、啓蒙の意味も含めていろんな人に読んでみてもらいたい。
Posted by ブクログ
話題になっていたので手に取りましたが、納得です。
春風と錬コンビの第一章から一転、第二章は色んな事情で詐欺に加担してしまう理緒の話に。春風と錬の話が明るい探偵小説のような雰囲気もあってか、理緒サイドになるととても辛くて苦しい…。ミステリーなので、きっとどこかで繋がるんだろうなぁとは思っていましたが、予想外の展開に最後まで驚かされっぱなしでした!
誰しも皆、何かしらの事情があり、明るい部分もあれば暗い部分も併せ持っている。いつだって闇に堕ちることは簡単にできてしまう。だからこそ、自分を戒めながらも前を向いて歩き続ける。勇気づけてもらえる素敵な作品に出会えました。
Posted by ブクログ
阿部暁子さんのお話しは『カフネ』しか読んでいませんでした。
全然予備知識無しで読み始めてしまったのでミステリだと思ってなくてビックリ!
でもグイグイ引き込まれて一気読みでした。
中盤あたりから
『え?そうなの?そういうこと?』
の連続で、もうやめられなかったです。
『詐欺』になんて絶対ひっかからないぞ!
と、思っていたのに急に不安に…。情けない。汗
Posted by ブクログ
なんで、こんなにリアルなの。
理緒が最初はムカつくやつなんだけど、次第に惹き込まれていきます。犯罪に巻き込まれていく様がリアルでした。
犯罪の一端に加担する感じ…紙一重のところにいるかもしれない自分。
『カフネ』に続いて泣かされました。
主人公はいい子ちゃんなので、私のイチオシは理緒ちゃん(と錬くん)。ドラマ化など、ぜひ!
以下はお気に入りの文の引用です。
「彼らは、励ますことはしても、実際に手をのばして何かしてくれることはないのだ。たぶん、世の中は、そういうものなのだ。」
「口を。閉じて。三分間。」
「事件とは無関係の可能性も同等にある。身近な人間の信頼を損なわせるようなことはできない。」
「彼の手に自分の指を絡めたい衝動がこみあげて、でも、できなかった。恋しすぎてふれるのとすらためらわれる、そんな気持ちがあるんだということを、彼に会って初めて知った。」
「この人といられるなら、地獄にだって堕ちていく。」
「世の中には、毎日を生きることに必死で、役所に行って手続きをすることがままならない人もいる。」
「きっと、親を一度も憎んだことのない子供も、子供を一度も疎んだことのない親も、この世にはいないと思う」
「命や人生というものは綱渡りのような偶然の上に成り立っている」
「私は、私も含めて、人間がわからない。私を誘拐した犯人がいる一方で、私を助けてくれた人がいる。」
「弱く脆い人間が、その弱さと脆さによって、立ち上がることができると私は信じる。」
Posted by ブクログ
2人の関係から目が離せない!と思っていたら、別の女の子の話が出てきて、どうやってつながっていくんだろうと最後まで目が離せない展開だった。
とにかく面白い。
レンは潔癖と言えるほどのまっすぐさと器用に何でもこなせてしまうところ、不安定さを持ち合わせていて、とにかく魅力的な人物だった。
でもハルカも後半負けないくらいキャラが濃くて、大好きな2人になった。
最初はハルカと母のやり取りに苦しさを感じたりもしたけど、後半は見え方が違ってくる。
カフカと同じく葛藤がある中にも希望もある感じの世界観がとても良かった。
Posted by ブクログ
冒頭は少し退屈なストーリーでしたが、中盤から後半は展開が多く、楽しませてもらいました。
特殊詐欺の話で今時の話題で、ここがこう繋がるのか、あぁこういうことねって思うことが多くて最後まで飽きなかったです。中盤からは物語に引き込まれてしまいました。
知識がある人や用心している人でも詐欺に引っかかる時は引っかかると思いますが、
引っかからないような対策や色んな知識を得ることは大事ですね。こんな詐欺があるんだと思うことも。
Posted by ブクログ
カフネがあまりにも良かったので他の作品も読みたくなり手に取りました。
最初は私の苦手なジュブナイルものかな?と思い読むのをやめようか迷いましたが、途中から物語の景色がガラリと変わりどんどん惹き込まれていきました。
読み終わった今、世の中の価値観や倫理観について深く考察したい気分になっております…
冒頭は少年少女が謎解きのお遊びをしているような場面が続きます。
ティーン世代の青春ものや恋愛ものを読む趣味が無いので「今作はイマイチ刺さらないな…」と思いました。
それが急に!変わるんです!いきなり!犯罪の世界に!笑
本作のテーマは特殊詐欺です。
それに巻き込まれた人達を取り巻く環境や心理描写を丁寧に描かれいきます。
物事の善悪を決めるのは人の心なんですよね…
身近な人が詐欺事件の主犯であることを知った時、私ならどうするんだろう…
終盤で登場人物たちが語る価値観についていろいろ考えさせられました。
とても面白かったです。
追記
詐欺に手を染める人達の背景には様々な理由があるとはおもいますが、性犯罪者はどんな言い訳も許されません。
地獄に堕ちて当然かと…
カフネから
入ってきました
本屋さん大賞はホントにいい企画だと思います。
登場人物はダークなのに全員にそう思わせない
フォローの文面が入り著者さんの優しさが
溢れています
巻末の解説の方も書かれている様に
決して読者を裏切らない安心して読める作品
なのでは?
Posted by ブクログ
世話になっている老女がひったくりに遭う場面に、ひとりの大学生が偶然行き合わせる。居合わせた高校生とともに犯人を追うが、取り逃がしてしまう。犯人が落とした物を手がかりに正体を探りはじめる、その偶然から物語は動き出す。
ところが読み進めるうちに、その偶然が偶然ではなかったと分かってくる。別々に流れていた出来事がやがて交わり、避けがたい必然として一本の線に結ばれていく。
本作の核心は謎解き以上に、事件に巻き込まれた人々の心の陰影にある。家族を守りたい切実さ、貧しさゆえに犯罪へ引き寄せられる弱さ、過去に負った傷。登場人物が背負うものが的確に描かれ、善悪を単純に割り切れない領域へ読者を導いていく。
最後に明かされる真相は、予想を裏切る形で像を結ぶ。ミステリーとしても完成度が高い。
Posted by ブクログ
未成年の学生たちが特殊詐欺に切り込んでいくところが上手く描かれていて面白いミステリー作品でした。
初めの章で「春風」と「練」がタッグを組んでひったくり犯を捕まえようとするのですが、第2章から経済的な事情で特殊詐欺に手を出さざるを得ない女性を書いてました。
また、この本の解説がわかりやすく書いてました。タイトルの「金環日蝕」はまさにふさわしいと思います。円の円周にあたる被害は明らかになるのですが、円の中心であるの犯人は暗くて判明しないということを表現しているのでしょう。
最近は自分の周りでも特殊詐欺のニュースを見たり聞いたりするので、より気をつけなければ、と思いました。また知らず知らずのうちに詐欺に加担してしまう事例も聞くので、「楽してお金を稼ぐ方法はないんだよ」と諭されている感じがしました。非常に勉強になりました。
Posted by ブクログ
「春風」と書いて「ハルカ」という名前が素敵だなと思ったのが最初の感想だった。
春風を見ているとよく自分の言われる「正論と正解は違う」と言われる理由が何となくわかるが、春風が言ったように最初からしていたら、こんなことにはならなかったのではないかという気持ちもずっと抱えながら読んだ。
この人は救われて、この人は救われないという不平等も気になったが、何も無くなってしまった時でさえ、この人は寄り添ってくれるという事実に早いうちに気づけた人がいたのは幸いだった。
最初から何もかもが繋がっていたのに、途中でようやくわかるというのは見事だった。
最後の写真のことはちょっと不完全燃焼だったが、全体的に優しい話しだった。
Posted by ブクログ
ある偶然な出来事が登場人物の思惑から必然的に起きていたと後から種明かしされていくものが好きだと気づいた。少しの出来心から詐欺に吸引されていきながら、振り回されていく物語。現実感がものすごく強いわけでもないが、人物達の思惑は綺麗に抽出されていて、みんなで1つの物語を作っていることを見せられた気がした。とにかく後から必然性が出てくるミステリーが好き。
Posted by ブクログ
阿部暁子さんの文章は、時に本筋を追い越してしまうほど人物描写に重きが置かれる。前作『カフネ』でも感じたその独特の筆致は、本作においても健在だ。
登場する大人の女性の描き方に自分なりの違和感を覚える部分はありつつも、読み進めるうちに物語の世界へ深く没頭させられていた。
人を傷つけようとする者もいれば、助けようとする者もいる。「人間という生き物のわからなさ」を描き出す著者の視点に、静かに引き込まれていく感覚がある。
そんな混沌とした人間模様の果てに待っていた結末は、意外にもスッキリとしたものだった。
随所に散りばめられていた種明かしには、それぞれの場面で驚かされた。重苦しさが漂う物語の中で、ある登場人物が見せる爽やかな去り際が印象的で、それが物語に一筋の風を通し、確かな救いとなっている。
中心にある闇を、周辺の描写を積み重ねることで浮かび上がらせる。まさにタイトルである『金環日触』を体現したような手法が、最後に見事な収束を見せ、読後の納得感に繋がった。
ミステリーとしての驚きと、ままならない人間ドラマの濃密さを同時に味わえる力作だった。
Posted by ブクログ
引ったくり犯を捕まえるだけの日常系ライトミステリかと思って読み始めたが、犯罪の規模も家族の話も大きくなって驚いた。一番驚いたのはフジサキの正体かな。叙述トリックが随所に仕込まれていて種明かしの頻度が高く、終始おもしろかった。金環日蝕の比喩も秀逸。カガヤと錬が実写で見たい。カフネも読みたくなった。
Posted by ブクログ
カフネがとても刺さったのでもう一冊。
やっぱり会話の掛け合いのリズム感がとっても良く春風と錬、陽と翠がぽんぽん進むのが本当に心地よい。
重めの題材なのにその会話に合わせてスラスラ読めた。
決め台詞は北海道万歳!
Posted by ブクログ
地元が舞台ということもあり、情景を鮮明に思い描きながら読めた。探偵パートではラノベみたいな大学生がどんどん出てきて、こんな作風なのか…?と思ったら詐欺パートからどんどん話が転がっていくので引き込まれた。二人の背景が重すぎる。
人類で最初の仕事は詐欺師って、あながち間違ってなさそうでこわい。この時代でもどんどん手法を変えて永遠になくならない。
Posted by ブクログ
序盤から伏線が散りばめられていて楽しい
金環日食の意味が平面的に見るとわかる
人間の矛盾について精緻に描写されている
どうしようもない悪意に晒されてその被害者になることは往々にしてあることだけどその逆もあるという矛盾が面白いという観点に気づかせられる
登場人物が生き生きしてていい
映像化に向く作品なのではと思う!
イケメンは得だなと思った
Posted by ブクログ
カフネを描いた阿部暁子さんによる小説.ひょんなことから,青年と知り合った春香が謎を追っていくたびにだんだんと全貌が明らかになっていくミステリー小説.カフネと同様に,少しずつ謎が解明されていく感じはサクサクと次が気になる構造になっており,最後まで飽きなく楽しむことができる.人が死なないミステリーであり,人とのつながりを大事にしようと思える形式は阿部さんの得意ジャンルなのかもしれない.ほのぼのとしたミステリーを読みたい人にとっておすすめです.
Posted by ブクログ
どんな事情があれ、犯罪は犯罪だと思う。
たしかに、自分自身が同じ境遇にあれば、同様の行動をしてしまうかもしれない。他人の幸不幸を考えられず、生きるために、家族を救うために行動してしまうと思う。ただ、理緒は認められたいために犯罪に加担していた。これはいかがなものかと思う。最後までお咎めなしで終わった。確実に被害にあった人はいたはず。なんか、モヤモヤは溜まった。
Posted by ブクログ
大学での人探し編、レンの家にお邪魔編では記号的なキャラクターが賑々しく、おまけにレンが品行方正でイケメンで人望い人格者と持ち上げられ過ぎており、作者の偏愛と寵愛を感じるようで、更にオーディブルの効果も相まって、キャラクター小説が読みたかったわけじゃないんだけどな、正直失敗したかなと思った。リオ編との温度差にも風邪引くわとも思った。
たが目的が変わってからレンへの印象が変わった。捻くれた生意気さも年相応の危うさもちゃんと持ち合わせていた。しっかり手綱を握ってくれたハルカが頼もしくて好感が持てた。
ストーリーはトクリュウを思わせる電話詐欺を軸に指令役に迫る運びになっており、この指令役の冷徹になりきれない人間らしさが味になっている。それが生来のものか過去か憧れの影響かは知れない。善とも悪とも断じることが出来ずリオには苦しいだろうが乗り越えて欲しいなと思った。そしてリオもレンもうまく人を騙せること、それに喜びを感じることは必ずしも悪行に結びつくわけではないことにいつか気付いてくれたら良いと思う。奇術や創作、あるいは日常の小さなことにだって悪行にならない嘘はたくさんあるから。
Posted by ブクログ
老人が家から出てきてすぐ、若者に手にした荷物を引ったくられ突き倒された。
たまたまその瞬間を目にした、近所の大学生がすかさずその男の後を追いかける。
そんなありふれたひったくり事件から始まる。
2025年本屋大賞受賞作「カフネ」の作者が物した犯罪小説。
カフネの優しい雰囲気とは全く異なる、現実の特殊詐欺の姿をリアルに描く。犯罪小説ではあるが、犯罪は本書の主題ではない。
全ての登場人物の背景を克明に描き、なぜそのストーリーが書かれ、紡がれていくかという理由が明確に綴られていく。
いくつかに別れて描かれていくストーリーが、織りこまれ、結末に向かって伏線が丹念に回収されていく。
カフネとは全く違う世界だが、本書もまた面白い。この作家さんの作品はフォローしていきたい。