【感想・ネタバレ】金環日蝕のレビュー

あらすじ

知人の老女がひったくりに遭う瞬間を目にした大学生の春風は、その場に居合わせた高校生の錬とともに咄嗟に犯人を追ったが、間一髪で取り逃がす。犯人の落とし物に心当たりがあった春風は、ひとりで犯人捜しをしようとするが、錬に押し切られて二日間だけの探偵コンビを組むことに。かくして大学で犯人の正体を突き止め、ここですべては終わるはずだったが──いったい春風は何に巻き込まれたのか? 『パラ・スター』『カフネ』の俊英が、〈犯罪と私たち〉を切実に描き上げた、いま読まれるべき傑作長編。/解説=瀧井朝世

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Posted by ブクログ

ネタバレ

読み進めるにつれて、どんどん引き込まれていく内容だった。特に春風にはとても心惹かれる。人には色々な顔があるし、どれだけ近しい人間にも知らない一面はある。置かれた環境によって大きく変わることもある。心に闇や傷を抱えない人も、正義しか持っていない人もきっといないだろう。人が持つ信念なんて弱いもので、すぐ壊れてしまう。それでも、自分自身が胸を張って、前を向いて歩いていけるような生き方をしたい。大切な人に顔向けできないような生き方はしたくない。
綺麗事だけ並べて生きていくことはできないし、人のことを信じることが幸せに繋がるとは全く思わない。でも、どんな環境でも、誰と出会っても、自分で自分を律する。そして、絶望の中にいたとしても、一度裏切られたとしても、人を信じたいという気持ちを決して忘れてはいけない。そして、誰を信じるか、間違えてはならないなと改めて感じさせられた。

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2025年07月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

女子大生と男子高校生がたまたま遭遇した引ったくり事件が予想もつかない一大詐欺事件へと変貌していく。正義感にまつわる探偵ごっこだったのが次第に手に負えない事件へと繋がっていく流れは見事でリーダビリティも高く、半分に差し掛かった時点で事件の概要や主人公との血縁関係もあらかた読めたと思いきや、主人公の隠してた嘘が明らかになるなどストーリーの方向性が急角度で変わったりと意外と読めない部分も多く、中弛みすることなく最後まで楽しく読み終えることができた。

途中に出てくるモブのキャラクターがややラノベチックではあるものの、キャラクターのバックボーンは犯罪加害者遺族に性犯罪被害者と青春ミステリにしては意外と重い。それらの悲痛な過去がしんしんと雪の降り積もる北海道のロケーションと噛み合っており、タイトルである金環日食という輝く闇にも符合しており雰囲気作りも秀逸であったと思う。

最後の幕の引き方は完全解決というわけではないものの、一介の女子大生と男子高校生が取れる行動の限界と落とし所を考えれば納得しかなく、むしろ解決しきったと言えないからこそ、真犯人の語る「あっち側」の世界への適性が嫌な余韻となって残る。それでも登場人物たちの「折り合い」をつける意味ではいい幕引きであると同時に、このビターな読後感こそまさに青春ミステリであると思う。

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2025年10月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトル買い。
何度も訪れた札幌の地名、北大などの名前が出てきてそれだけで身近に感じられて入り込めた。

春風サイドの探偵物語が進んでいくと思いきや、理緒サイドのダークな話が始まって意表を突かれた。

本作は両サイドの繋がりが明示されるのは後の方だけど、こういう一つの出来事を軸に違う視点の話が進んでいくスタイルは結構ワクワクする。

タイトルについて語られる場面は僅かだけど、作品の扱うテーマを暗喩しているようなタイトルも良い。

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2025年10月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『カフカ』で本屋大賞をとった阿部暁子さんの推理小説。

ある日、春風は偶然ひったくり事件に遭遇し、仲居合わせた錬とともに犯人を追いますが、逃げられてしまいます。現場に落とされたストラップを手がかりに、春風と錬は調査を始めます。

二日間だけの“探偵コンビ”結成――春風と錬は「二日間だけ」協力して犯人捜しをすることに合意します。ふたりは大学内・周辺の購入者リストや当日の行動を洗い、ストラップ所有者の聞き取りを一軒ずつ進めていきます。聞き込みを通じて小さな糸口を拾って行きます。
やがて顕になるのは、単なる引ったくりという事件ではなく、大きな詐欺組織、そして社会事象でした。

春風、錬、理緒と言った愛らしい登場人物のそれぞれの過去や苦悩を通じて、犯罪と私たちを描いていきます。

物語の登場人物たちは皆、「闇の中」に生きています。彼らは皆、人生の「太陽」を闇(=罪や嘘、悲しみ)に覆い隠されています。
でも完全な“皆既日食”ではなく、どんなに闇が深くても、わずかに残る光=希望や人間らしさがある。この“消えない光の輪”が、「金環日食」というタイトルに込められている、そんな風に感じました。
ちょっと話は入り組んでいて、わかりづらかったかな。

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2025年10月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

たまたま引ったくりの現場に居合わせ、犯人を追うことになった春風と錬のパートと、家族を支えるために悪の道へと引き込まれる里緒のパートが交互に展開されていく。春風の方が軽妙な分、絶望感漂う里緒の方は胸が痛くなる。その対比が物語により深みを与えている。
二つのパートの温度差と、これがどのように繋がっていくのかが気になりどんどん引き込まれていく。錬の秘密を知るあたりからは特に一気読み。

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2025年09月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

闇バイト・詐欺事件が溢れる昨今で、そのリアルな世界を垣間見れる作品。
真面目な普通の人が、どんな動機でその世界に足を踏み入れ、そして抜け出せなくなっていくのか…。
これだけ詐欺事件の報道があっても騙される人が絶えない。これまでは、「楽して金が手に入るから」「騙される対象(金があって、認知機能が低下)の人が多いから」が主な理由だと漠然と思っていたが、この作品を読んで、『人を騙すのが楽しくて、面白くて、止められない人がいるから』という想いの方が強くなった。

阿部暁子さん、まだ書きたいことが多すぎて、若干空回りしているところも感じたが、洗練されてくると好きな作家さんになりそうで楽しみだ。

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2025年08月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

キャラが濃すぎてアニメチック。
登場人物がごちゃごちゃしてる。
というので、面白いかも〜!と、ちょっと私の好みでないかも、、の振り幅があり評価が難しい、、

ひったくり犯見つける、から詐欺?!にはワクワクしたけど、
お兄ちゃん大好きな男女の双子の中学生登場で、一気に現実味がなくなり。小学生ならわかるけども中学生って。お兄ちゃんの命令は絶対で、直立!と言われたらはい!となる双子とは。すごくアニメっぽい。
あとは加賀谷潤のふりをしたカガヤはかつて「良い子」と言われていた社員のはずなのに、
「謎めいた色男」というあだ名がつけられるという変貌ぶり。頭でうまく思い描けない。。
どんでん返しのためには色々ミスリードが必要なのは分かるけど、ちょっと無理やりすぎてついていけず。

種明かしより、途中までの
こことここが繋がって〜これを追って〜
くらいの時が面白かった!

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2025年11月21日

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