【感想・ネタバレ】対馬の海に沈むのレビュー

あらすじ

2024年 第22回 開高健ノンフィクション賞 受賞作。

JAで「神様」と呼ばれた男の溺死。
執拗な取材の果て、辿り着いたのは、
国境の島に蠢く人間の、深い闇だった。

【あらすじ】
人口わずか3万人の長崎県の離島で、日本一の実績を誇り「JAの神様」と呼ばれた男が、自らが運転する車で海に転落し溺死した。44歳という若さだった。彼には巨額の横領の疑いがあったが、果たしてこれは彼一人の悪事だったのか………? 職員の不可解な死をきっかけに、営業ノルマというJAの構造上の問題と、「金」をめぐる人間模様をえぐりだした、衝撃のノンフィクション。

【選考委員 大絶賛】
ノンフィクションが人間の淋しさを描く器となれた、記念すべき作品である。
――加藤陽子(東京大学教授・歴史学者)

取材の執拗なほどの粘着さと緻密さ、読む者を引き込む力の点で抜きん出ていた。
――姜尚中(政治学者)

徹底した取材と人の内なる声を聞く聴力。受賞作に推す。
――藤沢 周(作家)

地を這う取材と丁寧な資料の読み込みでスクープをものにした。
――堀川惠子(ノンフィクション作家)

圧巻だった。調査報道の見本だ。最優秀な作品として推すことに全く異論はない。
――森 達也(映画監督・作家)

(選評より・五十音順)

【著者プロフィール】
窪田新之助(くぼた しんのすけ)
ノンフィクション作家。1978年福岡県生まれ。明治大学文学部卒業。2004年JAグループの日本農業新聞に入社。国内外で農政や農業生産の現場を取材し、2012年よりフリーに。著書に『データ農業が日本を救う』『農協の闇(くらやみ)』、共著に『誰が農業を殺すのか』『人口減少時代の農業と食』など。

...続きを読む
4.5
Rated 4.5 stars out of 5
Rated 5 stars out of 5
Rated 4 stars out of 5
Rated 3 stars out of 5
Rated 2 stars out of 5
Rated 1 stars out of 5
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

よくありそうな不正についてのドキュメンタリー。
長々と、不確かな証言とそれに基づく推論が続く。
しかもその推論になにか新しい驚きがあるわけでもない。

しかし、終盤。
題材となった事件の原因の掘り下げ方、切り口に心を動かされた。

持って生まれたもの。
時代、国、地域、社会。

自らどうすることもできないものに翻弄されていく人々の姿と、そこに向ける筆者の眼差しがこの本の読みどころ。

前半、中盤は我慢して、最後まで読み通すことを、おすすめしたい。

0
2025年03月28日

Posted by ブクログ

組織の腐敗が発生する条件がいくつかある中で、JA対馬は綺麗にその全てをクリアしていたのだろうと思う。
ちょっと小狡いことをすれば自分が得するようなことはたまに出てくるけども、それをしない自分を好きになるような美学を大事に生きていきたい。

0
2025年03月25日

Posted by ブクログ

2019年2月、長崎県対馬で車が海に転落し、運転者が死亡する事故がありました。死亡したのはJAのトップLA(ライフアドバイザー)西山氏。JAの全国組織において、”LAの甲子園”と呼ばれる業績表彰で常にトップに君臨し続けたカリスマ的なLAとして名を馳せていました。JA対馬の共済事業の総契約数の1/3をたった一人で達成し、歩合給を含めた年収は4000万円を超える”LAの神様”とも呼ばれる程の実績でした。
人口3万人そこそこの対馬を拠点に、なぜ全国一の実績を上げることができたのか。著者の取材で西山氏は損害保険の被害を捏造したり、組合員の印鑑などを自ら所有して数多くの契約を解約・新規契約したりする手口で実績を上積みしていた事が判明します。
これだけを見れば、単に一人のLAによる不祥事という構図に見えますが、この事件の背景には対馬全体を舞台にした、もっと人間のドロドロした背景が存在することが、本書を読み進めると明らかになって行きます。
JAは過酷なノルマを各県レベルの組合に課し、それが各LAにも課されています。西山氏が全国トップレベルの実績を上げることで、同僚LAは西山氏から業績を付け替えてもらう事でノルマを逃れ、県レベルや営業所レベルの幹部は”全国一位のLAが属する”ことで報奨金や各種表彰の恩恵を受けており、西山氏の強引とも言える営業に目をつぶる事で、自らもその甘い汁を受け続けていたのです。
さらに、数千人におよぶ西山氏の保険・共済の契約者も、家屋や家電製品の破損に関して台風被害に見せかけて修理・更新したり、実際の被害額以上の支払いを受けるなど便宜をはかってもらい、西山氏・JAの職員/幹部・契約者の3者にとって西山氏が不正をした結果としての突出した業績を上げることについて、利害関係が完全に一致していたがため、長年発覚することがなかったという構図であったのです。
最終的には不正の発覚を恐れて自殺したであろう西山氏は、”不正をした”という意味では罪を問われる立場であることは確かです。しかし全ての罪を亡くなった西山氏に背負わせて、当時いい思いをした数多くの人が、その事について黙っている状況に、西山氏もある意味では被害者なのではないか、この一連の出来事で、本当に罪を負うべき存在は何なのか、という疑問を突きつけるノンフィクションでした。

0
2025年03月21日

Posted by ブクログ

どの様な組織でも些細な所から不正が始まり広まる。
そしてその当事者は悪いのは当然だが、周囲も同様に罪がある事を考えさせられる。
コンプライアンスとガバナンスは一定大切である事を証明する話。

0
2025年03月16日

Posted by ブクログ

真実は小説よりも奇なり。その言葉の通りのノンフィクション。良質のミステリーを読んでいるときの謎解きよりも震える。

日本の文化的な弱さや農協の組織的な歪さ、ムラ社会の残酷さ、人間の業ともいえる欲深さ、いろんな汚さがひとりの野心的な男を死に追いやった、その記録。

0
2025年03月10日

Posted by ブクログ

 丁寧な取材に基づく、農協の金融事業の闇を暴く労作。
 全体に書きなれていない感があるが、ノンフィクションに必須な地道な事実の積み上げという点では比類がない。
 この本を読んで関係するJAや県連、上部団体は何を思う?

0
2025年03月09日

Posted by ブクログ

友達が面白かったというので読んでみることに。自分では絶対手に取らない本。ただ字面を読んでいるだけだとノンフィクションというのを忘れてしまうほど小説のように感じる。よくよく精査してみればおかしなことばかりなのになぜ表面に出てこないのか。すぐにばれてもいいようなものなのに。優秀なLAとして何度も表彰されているのはなぜなのか。共犯者ばかりではないか。西山が死んで誰も責任を取っていない。
でももし自分が顧客で何でもやってくれて掛け金よよりお金が入ってくるなら任せてしまうかもしれないと怖くなった。
最後に西山に何とも言えない複雑な感情を持った。憐れみというべきか。

0
2025年03月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

対馬の海で溺死した、JAのセールスマン。
界隈では神様や天皇と呼ばれていた彼の行った悪事と、その裏側の真実。

罪は彼本人だけではなく、JAや対馬のムラ社会といった組織にもあった。

この詐欺行為では誰も損していなかったといわれる事もあるが、実際にはいる。
それは、不正に与せず告発した職員や、善良な組合員。

0
2025年03月05日

Posted by ブクログ

ノンフィクションは好きで、見つければ読んでしまう。
この作品は取材のマメで、本当に分かりやすく描かれていた。
驚いたのは、昭和の話ではなく、平成、令和という2000年代の話。
地方あるあるの「ムラ社会」がこうした犯罪を生み、死者に罪を被せて、組織、上司たちは知らぬ顔。

仕事で営業・ノルマと聞くだけで自分には無理と思うが、そうした無理した仕組みも未だ見直されないのは本当に厳しい社会だと思う。

このフィクションはJA職員も含め、多くの人たちに読んでもらいたいと思う。

0
2025年03月02日

Posted by ブクログ

大学のとき、親が会社員のため奨学金を申請出来ずバイトに明け暮れ苦学生だった自分に比べて、友人は実家が農家で奨学生だった。彼女は毎月の仕送りも十分あり、短時間バイトで娯楽費を稼ぎ、年賀状で見た親戚の集合写真の背景に写る立派な床の間、成人式での高額の振袖、免許取得後にハイスペックの新車のプレゼントなど、随分羽振りがいい生活をしていたのが不思議で、奨学金の申請基準の不公平差にずっとモヤモヤしていた。
この本を読むと、彼女の家は代々共済絡みで農協から〇〇な恩恵を受けていたのかも、と思ってしまった。

0
2025年03月01日

Posted by ブクログ

2019年、22億円を横領した嫌疑をかけられていたJAの職員が、対馬の海に飛び込んで自殺した。人口3万足らずの国境の島で、22億円もの大金がどこから生まれ、どこへ消えたのか。そしてなぜ、 20年近くに及んだ横領行為に誰も気がつかなかったのかーー。

...あらすじだけで白飯一杯いけそうであり、内容も言わずもがな。おそらくは調査委員会の出した報告書をプロットし直す構成が続くが、ある人物の証言をきっかけに、吐き気を催すほど醜い真実が浮かび上がる。最後の1ページまで気が抜けない。

こちとら一昨日出た飲み会の内容すら覚えてないのに、10年前の飲み会に誰がいて何が話されたかまで立証する、ひたすら真実を追い求める筆者の(ジャーナリストの)ストイックさに脱帽である。

0
2025年03月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ダレる事なくしっかり導く筆力に脱帽。
序盤では怒りの対象であった犯人に対して読み終わる頃にはむしろ憐れみすら感じるとは…
しかも途中で、じゃあも仮りに自分もうまい汁を吸わされていたとしたら果たして仲間に入らなかったと言い切れるだろうか?と考えるとなんとも言えない気持ちになった
なにはともあれ見事な構成で興味の持続と終着点で味わう感覚まで全てが素晴らしかった。

0
2025年02月27日

Posted by ブクログ

圧巻の取材力。普段はこうしたノンフィクションを読む度、どこかしらに不完全燃焼感があるが、こちらは一切ない。「オススメの本はなに?」と尋ねられたら、即この本を挙げたいレベルに良きです。

0
2025年02月25日

Posted by ブクログ

2024年開高健ノンフィクション賞受賞作

元々は農協の機関紙の記者をしていて現在はフリーランスの方が書いたノンフィクション作品です。

事実は小説より奇なり、と言ったりしますが読後はまさにそんな感想を抱きました。

本作は、JA対馬が生んだ全国トップセールスマンの不審な死についての描写から始まります。この描写がタイトルにもなっています。

対馬は人口3万人弱であり長崎県に属する離島です。そんな狭いマーケットを相手にして、通常では考えられない程の共済の営業実績をあげ続けた人物がいました。それが本作の主人公とも言える故西山義治氏です。(ちなみに共済とは自動車保険、火災保険、生命保険などのことで保険会社でなくJAが販売する保険商品のことは共済と呼びます)

西山氏は圧倒的な成績で毎年、JAの全国大会で最優秀担当者として表彰されるなどしてJAの中では全国的にも有名な人物だったようです。

共済の営業実績に基づく歩合給を含めると年収が4000万とかになっていたようです。

その人物がどのようにして営業実績をあげていたのかが丹念な取材により克明に記されています。
営業活動の過程で大規模な不正が行われており、その不正にJAや関係する組織は西山氏の成績にあやかるために不正に見て見ぬ振りをして来たことも描かれています。

不正の内容は多岐にわたりますが、台風などの自然災害を悪用した共済金(一般には保険金)の不正請求が主たるものです。災害被害の偽造、ねつ造、過大請求のオンパレードです。

JAでは彼の死後に不正は彼一人によるものとして処理したようですが、そんなわけないだろうというのが著者の主張です。

先日、三菱UFJ銀行の貸金庫事件がメディアで大々的に報じられていましたが、それに匹敵するいやそれ以上に大きな問題を孕んでいるように思います。

西山氏による不正で多くの対馬の島民が本来得られるはずのない利益を得て甘い汁を吸って来たはずです。
それらのことがなかったことにされて多数の不正受給者にはお咎めなし。
まさに死人に口なしで、西山氏一人に罪をおっかぶせるのは到底納得できるものではありませんね。

著者の窪田さんの執念の取材には頭が下がります。
本書はたくさんの人に読んでもらいたいと思える一冊です。

0
2025年02月23日

Posted by ブクログ

まず作者の取材力に脱帽。世の中のメディアはこうであってほしい。書かれているJA対馬の闇は想像以上に黒く悪寒を感じた。
JAと同時に「人間」の醜さが顕になっていき虚しくなった。全ての人に読んでほしい。

0
2025年02月22日

Posted by ブクログ

圧巻のノンフィクション作品。真実を求めて執念の取材をする筆者に圧倒された。突きつけられた真実は日本社会に根深く潜む根底の文化までたどり着くところに作品の奥深さを感じた。一読の価値あり。

0
2025年02月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この事件のことを耳にしたことはあったが、真相を全く理解していなかった。
JAで起きた巨額の横領、しかも主犯は自殺、という、対馬でのセンセーショナルな事件についての調査報道。「西山一人が悪い」という世間評になっていたが、調べ尽くされた結果うかびあがるのは、なんの変哲もない田舎町の人間社会の闇。誰もが、自分は悪くない、と、詐欺の自覚すら生まれない程度の「おいしい思い」をしている。あぁ対馬なら起きるだろう、と地元民として妙に納得した。

0
2025年02月04日

Posted by ブクログ

腐敗した組織、厳しいノルマなど今なお続くブラック企業体質を見せつけられた。
人の欲のどす黒さの真相に挑んだ著者の執念の取材姿勢に脱帽です。

0
2025年03月29日

Posted by ブクログ

対馬の農協で長年行われたという不正事件について、丹念な取材に基づいて書かれた本。
書類上は自殺した犯人の単独犯とされているが、調べれば調べるほど組織ぐるみであることが明らかにされていく。
嘘の口座、預けられる印鑑、署名の偽造、あらゆる手段を使って、汚れた金は増え続けた。そして、渦中の人物の周りには軍団とも呼ぶべき甘い汁に集まる面々が。
こういった犯罪を抑止する監査機構も骨抜きにされ、見過ごされていく。さらには不正に気づいた同僚は左遷され、告発は無視される。
農協の闇が暴かれた良書であった。対馬というムラ社会、また日本の同調圧力、事勿れ主義などが全て犯罪の後押しとなっていく。
犯人は本当に犯人と言えるのだろうか、あるいは被害者でもあったのではないだろうか?
日本の恥部を直視しなくてはならない辛さを感じる本であった。

0
2025年03月24日

Posted by ブクログ

骨のあるジャーナリズムだった。組織の悪いところが全部詰まってる。農業やJA関係者はぜひ読むべきだ。そうでない人も

0
2025年03月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

営業という仕事の闇をつくづく感じてきた身だが、これほどまでに個人に頼り、周りは言いなりになり、そして甘い汁をすう。皆がしているから、周りもそうだから、という理由で様々な悪知恵を許していいものでもない。そして、今まで活躍し、お偉いさんとの関わりを多く持って来た人が、突然自死を選ぶとき、それはどういう時なのかということがよく分かる。
JAに限らず、明るみに出ていない多くの闇が日本にはまだまだ存在するんだろう。

組織の上にいる人が思うように会社を動かし、個人を動かし、私腹を肥やしていくのはなんとも変な仕組みだ。

「人として」誠実でありたいと強く思う。

0
2025年03月10日

Posted by ブクログ

ノンフィクションだけど、組織の中での上司と部下、職場仲間、顧客と営業など、人と人との関わりが深く掘り下げられる人間ドラマを描いた読み応えのある本だった。大勢の人に慕われ頼られ支持された西山。彼が苦境に落ちた時に仲間として苦悩を分かち合ってくれる人はいなかった。JAの不正の闇は深く暗い。責任を取るべき人がきちんと自分の罪責に向き合っていない。不祥事を招いた組織の瑕疵も改められていない。ということは、第二第三の西山が生み出される可能性があるということなのだろう。

0
2025年03月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

CL 2025.2.24-2025.2.28
非常に入り組んだ不正の仕組みを丹念な調査で解き明かし、ほぼ全容を明らかにした著者の取材力に感嘆する。
ただ、わたしは全く西山が可哀想とは思わない。そもそも不正に手を染めたきっかけのときにちゃんと善悪の判断がつくような人だったらこんなことにはならなかった。確かに周りの要因も多いのは間違いないし、結局西山ひとりに罪を被せたようになっているのもそのとうりなんだけど、不正の始まりの案件、もしこの時小宮が同じことを頼まれていたら間違いなく断っていたと思う。結局は西山の道徳観念の乏しさがどんどん不正を大きくしていったんだと思う。最後にひとりだけ亡くなってしまったのも追い詰められたと言うより単に逃げただけ。わたしには西山を同情する気には全くなれない。

0
2025年02月28日

Posted by ブクログ

農協といえば、主に農業や農家のための仕事をしていると思われがちであるが、実はその売上げ・利益の大半は金融事業によって賄われており、とくに保険関係の共済事業は総資産約60兆円と国内最大手である。

対馬―日本海に浮かぶ人口3万人の離島に、この共済事業で全国トップの実績を誇るLA(ライフアドバイザー)がいた。西山義治は毎年数億円もの共済商品を販売し、10年以上全国大会で表彰される成果を出していた。西山氏は2019年2月に帰らぬ人となった。その死後、彼が約22億円もの資金を不正に流用していた疑惑が発覚したのだった。

どうして小さな島で全国トップレベルの営業成績を収めることができたのか。また何十億円もの不正蓄財を可能にした手口とはいかなるものだったのか。西山氏個人だけの問題なのか、はたまた組織的な犯行だったのか。調査が進むに連れて西山氏とJA対馬を取り巻く異様な状況が浮かび上がってくる。

JA共済のLAに課せられる厳しいノルマの飴と鞭、田舎ならではのヤンキー的な内輪意識と敵愾心、契約や共済金払い戻し等のプロセスの杜撰さ等々、様々な要因が西山氏のモラルを破壊していく。そして多かれ少なかれ、中央組織と地域の末端におけるヒエラルキー構造の下では起こり得る事件なのだと、公務員や大企業まで含めた組織に内在するリスクとして他山の石とすべき内容となっている。

0
2025年02月18日

Posted by ブクログ

JA対馬元職員・西山は、⾃然災害で契約者宅に被害が出たなどと偽って共済⾦を請求したり、契約者に無断で解約したりするなどの⼿⼝を繰り返し、不正流⽤によって9年間で17億7621万円を得ていたという。本書はその事件を追ったノンフィクション。

なぜ9年間に2,400件にも及ぶ不正があったにも関わらず、その間、西山の所属する組織(JA関連の上部組織を含む)は不正を見抜けなかったのか? 顧客はなぜ西山の言うなりに通帳や印鑑を預けっぱなしにしていたのか? 著者は関係者への取材を通して次第にそれを明らかにしていく。そこには西山個人を超えた「闇」が広がっていた……。

第22回開高健ノンフィクション賞受賞作品。

0
2025年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2日かけて読んだが、1日目中断して就寝したらひどく寝つきが悪かった。
「周囲の人たちが不適切な共済絡みの金を受け取ることが当たり前になっている状況のなかで、一人それを拒むことなどできたのだろうかーー。私には、そんな自信はなかった。」(p.294)
↑ここなんですよね…。私も本当に自信がない。だからこそ本書に登場する小宮さんみたいな人物には尊敬の念を持つし、そのようにありたいということは考える。

0
2025年02月13日

Posted by ブクログ

久しぶりにハードカバーの本を読み切った。
過疎地のJA対馬の職員でありながら、共済商品の圧倒的販売実績で全国一位の座に居座り続けた男が車で海に飛び込んで死んだ。
その男には22億円の横領疑惑が掛けられていたが、その男を生み出した組織の構造・背景には何があったのかを詳らかにする傑作ドキュメント。
面白い。

0
2025年02月05日

Posted by ブクログ

2019年対馬で自殺したとされるJA職員西山は、共済を売りまくり12回も優責表彰された。その裏側には巨大な不正があったとするドキュメント。

面白かった。こんな事件があったことを知らなかった。自分が西山の側にいたとして不正に関与しないと言えるだろうか。保険という商品に付き纏う普遍的な課題なのか?

0
2025年02月03日

Posted by ブクログ

よく調べられている点は面白い。
ドキュメンタリーはこういうものかも知れないが、筆者がやや自己陶酔している書き方に見えてしまったので星3つ

0
2025年03月30日

Posted by ブクログ

すごく期待して読みました。JAというものの正体を知ることができたと思います。
しかしこの不祥事件についての結末がわかりません。
すんなりわかったのではノンフィクションとしての価値が下がるのでしょうか。大きな犯罪がなされたのに司法がどう裁いたのか、誰がどう罪を問われたのか書かれていません。
開高健賞には私の好きな三浦英之の「五色の虹」が選ばれていますし、今回の選考委員の堀川惠子が素晴らしいノンフィクションの書き手であることも知っています。他の委員も納得のメンバーです。
例えばp.207に農林中央金庫の担当者が書類の偽造を「見抜いた」が表沙汰にはしなかった、これが「事実とすれば」といった記述がありますが、こうした曖昧さがいくつも見られます。
全体的にみて感傷的で、事実を知りたい気持ちが削がれてしまいます。小説ならいいのですが。

0
2025年03月03日