小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
密かに暮らす人々 いわゆる「超能力」一族という位置付けになるのでしょうね。
彼らは市井に紛れて目立つことなく暮らしている。
故郷を離れ、一族以外の人たちと血を交わらせ、その場所に根付きつつも何かがあれば再び一族は集結する。
彼らは目立つことを好まず、極力表に出ない暮らしをしていて、そのあり方は「淡々と」しすぎているようにも感じます。
多くの人が知らない存在。
けれども、なくてはならない存在なのです。
現実世界にこんな一族がいて、もしかしたら隣に住んでいる人がそうかも、と想像するのも楽しいし、もしかしたらわたし自身が「時が来るまで」封印されているのかもしれないし。
そう想像するのも楽しいもので -
Posted by ブクログ
常識って、普通ってなんだろう 一見すれば、19歳に寄る少女の誘拐・監禁。
多くの人が眉を顰め、少女に同情し、19歳を糾弾するだろう。
しかし、二人の間に何があったのかを知るのは彼らだけ。
周りは憶測と決めつけからしか判断をせず、真実を言いたいのにいえない少女に対して「酷いことをされたから」「傷ついているから」とさらに言いたいことを言わせないよう正義と親切の蓋を被せる。
二人の関係性は二人にしかわからず、憶測と刷り込みから真実を見誤る周りは、その正義感ゆえに発せられた言葉と行動で二人を追い詰めます。
私たちにできることは、自分の思い込みや刷り込み、常識は一旦置いて相手を「よく見る」ことなのだ -
Posted by ブクログ
上橋菜穂子は裏切らない ……なんて偉そうなタイトルをつけてしまいましたが、本当にそうだと思う。獣の奏者しかり、鹿の王しかり。
こちらの小説は「日本っぽい」場所を舞台としたファンタジー小説。どこか懐かしさを感じる景色、描写、温もりを感じ取れるだろう。
そして、読者が予想する展開を少しずつ裏切り、ラストに「そ、そう来るか」と思わず漏れてしまったと同時に、なんと素晴らしい物語かと涙がこぼれ落ちた。
ファンタジーとして読むもよし、死生観を読み取るもよし、はたまた舞台となった場所の生活や文化を楽しみながら読むもよし。
物語の上辺には現れない、層の深さが感じられる物語です。 -
Posted by ブクログ
こんな関係羨ましい すごく好きか、すごく嫌いかで評価が分かれそうだな、と思う。
男女間の友情、というには二人の関係は深い。
それはもう、「ともだち」を超えている気がする。
しかしそこに男女の関係はもちろんないし、お互いに気の置けないあけすけな会話で、自分をよく見せようとか好きで居てもらうために媚びるとか手加減するとかがない。
つまり、本当に「素」を見せて見せられ、かつそれで嫌われるとか離れるとかの不安もないのだ。
普通、人は自分の嫌な部分を晒さない。
相手によく思われたい、嫌われたくないからだ。
神名とハセオは違う。
ありのまま、素のままで互いを受け入れて認めている。
それは、信頼以外の何もの -
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後半部からの畳み掛け 前半はほんの少しだけ入り込めず、客観的に読んでいる自分がいましたが、後半からどんどん引き込まれます。久しぶりに「この先どうなっちゃうの!?どういうことなの!?」とぐいぐい読んでしまいました。
誰もが自分の居場所を探している。
誰もが自分を認めて欲しい。
誰もが自分は他の人と違うと思っている。
ドラえもんのさまざまな道具を各章のテーマとし、生きにくさを持った主人公がそれらの道具と自身の人生の関わりを見出しつつ最後、「自分」としてなりふり構わなくなるのか。
そんなに必死になるはずじゃなかった彼女を変えたのはなんだったのか。
エピローグまで読み終えてからプロローグを再読す -
Posted by ブクログ
それでも生きていく いろんな人がいて、いろんな人生がある。
関わりがないようで関わっていて、みんな互いに助けて助けられている。
この本を読むと、人は1人では生きられないのだと心の底が温まる。
ちょっとした偶然、ちょっとした思いやり、ちょっとした優しい嘘。
そう言うものが歯車を回し、方向を決めていくのだ。
読み終えた後に、言葉にならないものが胸を満たす。
それは満足であり、片鱗であり、わたし自身も誰かに助けられ、誰かを助け、互いに織りなす巨大なタペストリーの一部なのだと気付ける勇気なのだ。
人と関わるには勇気がいる。
この一言が相手を鼓舞し、この一言が相手を失望させる。
わたしたちはなんの -
Posted by ブクログ
若者たちの思いと革命とジレンマと 音楽を志し東ドイツに留学した日本人の若者が、自身の甘さ、覚悟の無さ、才能について、音楽について、仲間について学び、気づき、挫折しては習得してやり直し、進化していく成長の物語。
こう書くと「青春もの」っぽく、たしかに青春ものと言えなくもないのですがそこに東ドイツの当時の状況が重なることで深みが増してくるのです。
青春小説だけれどもそれだけではない。
国、というアイデンティティに縛られた若者たちの苦悩がそこにあり、それはベトナムからの留学生ニェットや北朝鮮からの留学生、李もまた同じなのです。
それでも彼らは音楽を愛して止まず、音楽に苦しめられ、音楽に救われるのです -
Posted by ブクログ
ミステリーという勿れ 人気漫画のタイトルをお借りしました。
ジャンルで言えばミステリー、サスペンスになるのでしょう。ですが、トリッキーな犯罪や犯人逮捕の攻防戦を望むと肩透かしでしょうね。
この小説は、限りなく現実に寄せているのだと思います。派手な演出もみんながあっと驚くようなトリックもない。
でも、だからこそ朴訥な刑事の抱える16年前の事件に対する思い、正義感との狭間で苦しむ様子に共感できるのではないでしょうか。その意味ではヒューマンドラマとも言えると思います。
長年連れ添った妻との絆、娘への愛、旅先での縁、そこから拾い上げるそれぞれの人生。そういったものと相まって、この「神場」という定年退