あらすじ
本屋大賞作家の新境地となるサスペンス巨編!
声なき声が届くなら、今度こそ記者を諦めない。
『52ヘルツのクジラたち』で2021年本屋大賞を受賞後、『星を掬う』『宙ごはん』で同賞に3年連続ノミネート。人間ドラマを中心に執筆してきた町田そのこさん、初のサスペンス巨編!
北九州市の高蔵山で一部が白骨化した遺体が発見された。地元のタウン誌でライターとして働く飯塚みちるは、元上司で週刊誌編集者の堂本宗次郎の連絡でそのニュースを知る。
遺体と一緒に花束らしきものが埋めれられており、死因は不明だが大きな外傷はなかった。警察は、遺体を埋葬するお金のない者が埋めたのではないかと考えているという。
遺体の着衣のポケットの中には、メモが入っていた。部分的に読めるその紙には『ありがとう、ごめんね。みちる』と書かれていた。
遺体の背景を追って記事にできないかという宗次郎の依頼を、みちるは断る。みちるには、ある事件の記事を書いたことがきっかけで、週刊誌の記者を辞めた過去があった。
自分と同じ「みちる」という名前、中学生のころから憧れ、頑張り続けた記者の仕事。すべてから逃げたままの自分でいいのか。みちるは、この事件を追うことを決めた──。
感情タグBEST3
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山中で見つかった死体。埋めた加害者は被害者でもあり…。雑誌記者の飯塚みちるは事件を追ううち、自身の学生時代のつながりに気づいていく。
加害者と被害者の境界が曖昧になるというか、被害者に同情の余地があるというべきか。犯罪を犯す経緯心情について考えさせられる話になっている。感情移入しやすく、読みやすいと思う。
Posted by ブクログ
アマリリスはおしゃべり
月は冒頭で美散がみた満月か?
井口が性同一性障害って設定は必要だった?
読んで、あぁ、町田そのこだって感じ。
映画化しそう。
自分の書いたいじめの犯人記事で犯人のひとり(被害者でもあった)を自殺未遂においこんてしまった。そこから記者をやめた。
しかし、もう一度、他の事件について記事をかく。今度は犯人に真摯に記事を書いていく。犯人のひとりが小中の同級生だった。
ネタバレ
ばーさんを埋めるシーンからはじまる。3人で。その1人“私(美散みちる)”が満月をみる。
主人公、飯塚みちる。福岡県北九州市を中心としたタウン誌のフリー取材ライター。実家。
元彼、堂本宗次郎から電話があり、仕事を依頼される。冒頭の事件を追ってほしい。二日前、高蔵山で遺体が発見された。遺体のスウェットのズボンのポケットに『ありがとう、ごめんね。みちる』と書いてあったから。
ゴミ出しで、近所の男性井口に会う。井口は認知症の母を施設に入れて一人暮らし。
飯塚は十カ月前までは『鶴翼社』の週刊ツバサに所属する記者として働いていた。
小学生高学年のころ、いじめにあっていた。
飯塚は神奈川県平塚市の私立中学校で2年女生徒、吉高真希が首つり自殺した、事件を追う。遺書があり、いじめがあったことが発覚。それはSNSに裸の写真を投稿されるもの。取材で犯人5人を、つきとめ記事にする。しかし、そのうちひとり“西”は記事が出た4日後、4階自宅ベランダから飛び降り自殺する。命はたすかったが、両親が遺書を公開。西も裸の写真をとられ脅されていじめに参加していたのだった。飯塚は自分の記事が西を追い詰めてしまったことで、記事が書けなくなって北九州の実家に帰った。宗次郎とは恋人でもあったがわかれた。
宗次郎の大学時代の友人、丸山佑が警察官で協力してくれる。
遺体とともに花が埋まっていから、葬儀のお金がない貧困家庭の人間が埋めたという見解だった。
ばさあんのポケットに入っていたメモは和菓子屋の包装紙だったから、そこから手がかりを探していく。
途中、詐欺のじいさんに騙される。情報あるといって食事をおごらされる。そういう人が集まってきてしまう。
そんな中、ストリップショーをみて感動する。井口に見られていて協力してくれることになる。井口は10歳くらい年上。
40歳くらいの女性から情報提供もらう。ばあさんの名前が“スミさん”だとわかる。スミさんの住んでたアパートがわかり、大家の“長野かるた”にたどり着く。スミの部屋には若い女性の遺体があった。絞殺体。“菅野茂美”
飯塚は親に仕事を反対される。
井口が自分はトランスジェンダーだと告白。認知症の母が施設に入所する日「今までごめん、好きなように生きてくれって言えんでごめんね」といわれた。
親はきっといつか、子どものことを理解してくれる。という励まし。
結局、兄・潮が親を説得してくれる。まだまだ、女は嫁になるのが幸せ、という土地。
丸山から高蔵山の遺体が吉屋スミと確定。スミの部屋では4人が生活していたこと。事件が連続殺人遺棄事件になった。
茂美は風俗店で働いていた。
家族を取材にいく。遺体の発見者として兄嫁・知依ちえが話をしてくれる。茂美の兄・保志やすし。
茂美は恋愛依存だった。高校も中退。18で出てった。たぶん頭もわるい。
知依が茂美にお金を貸したと両親には内緒で教えてくれた。中絶費用。たいては“タカハラ”と名乗った。
風俗店に聞き取りにいく。源氏名は乃愛。10月4日から無断欠勤していた。その日は高蔵山で遺体が発見された日。
飯塚は街で偶然、同級生の吉永に声をかけられる。自分をいじめてたやつ。
小学生同級生の話になり、学年一可愛かった伊東の名前を出すと、彼女もみちるという名前だったとしる。美散。気になって美散の行方をさがす。
茂美の同級生・宇部真麻に取材。最近、こわい夢ばかりみる。助けて。と7月10日にメッセージをもらっていた。
真麻は茂美のお世話係をさせられていた。
吉永から住所を聞いて美散の実家を訪ねる。何年も音信不通だった。美散の実母は3歳で事故死。後妻の子供は5歳で小児がんになり、8歳で死亡。
近所の大平鶴代というおばさあさんは美散が家族から外されていることを見ていた。美散の逃げ場だった。白いダイフクという猫を飼っていた。美散が拾ってきた。
美散の働いていた飲み屋がわかり、取材に。寿退社したという。相手は高校の同級生タカハラ。
吉永に卒アルみせてもらってタカハラをさがす。家原崇のあだ名がタカハラだった。タカハラは家原崇。
小学生のとき、飯塚は無意識に言葉で吉永を傷つけていた。だからいじめられた。
丸山に家原崇のことを報告すると、今朝、腹を刺されて自分で救急車を呼んだという。女に刺された。刺したのは美散。家原は“邑地和彦むらじかすひこ”という偽名で、独居老人を狙った詐欺事件を複数起こしていた。スミもその被害者。
美散は逃げている。逃げるならどこだ?と考え、実母の実家、ようは祖父母の家を思いつき、そこにいく。もうじいさんだけだったけど、美散はいた。
吉永が小学生のときにやったアマリリス会の話をする。女子会のようなもの。お菓子を持ち寄っておしゃべりした。大人になってもそういうの必要。美散と話したい。美散にアマリリス会しよ。ってつつたえて。
美散の祖父の家がわかったのは鶴代が年賀状さがしてくれたから。
飯塚は友人として、美散の心を開かせることに成功。手記を書く。
その記事が本編にそのまま出てくる。
美散の店に、偶然を装って家原が現れた。すぐ交際に。腹に根性焼きでたかしと名前をいれられる。家原も自分の父親に入れ墨で父親の名前を入れられていた。
家原に詐欺事件の捜査の手が伸びていて、スミの家に2人で引っ越す。美散は便利屋のようなもの。老人を助けている。と誤魔化すが、美散はなにかおかしいと思うがすでに共依存になってて、抜けだせない。そこに家原が恋人として、茂美を連れて帰ってきた。美散は“姉”と紹介された。家原は茂美はただのATMだと言う。
スミが老衰だか病気で死ぬ。スミは、外出させてもらえなかった。女2人を妹と思っていた。
遺体を埋めにいく。
美散は茂美に「逃げたら?」というが、茂美は家原に「逃げたら実家に火をつける。兄ちゃんの奥さんを風俗におとす」と脅されていた。のちに、茂美家族が記事でそのことを知り、少しは救われる。10月4日、高蔵山で遺体が発見されると茂美は警察に行くと言い出した。家原に首を絞められ殺される。死ぬ間際、美散と目が合い「助けて」ではなく「逃げて」と言った。だから逃げれなくなった。茂美を家の中で埋めようとするがうまくいかず、放置してつぎの老人の家に。
通報や出頭しなかったのはこれまでのつらかった時間や2人の命が無駄になってしまうから。スミの息子の遺骨を遺族に返したかった。ケガをさせておけば簡単に追いかけてこないと思って家原を刺して逃げた。
美散は懲役6年。
飯塚は美散の記事を書ききり、記者をやめて犯罪加害者家族の支援施設で働く決心をしていた。しかし、『義父から性的暴行を受け続けたという告発の遺書を残して小六女児自殺』のニュース報道を見て、まだ真実を書き続けるしかないと鶴翼社に戻る。
美散の記事はWEB連載だったが、書籍として出版された。
井口は長野とともに、コミニティカフェを運営する計画を立てていた。地域の高齢者やこども、ひとり親とか、一人暮らしの若者とこいろんな人が気軽に集まれる場所をつくりたい。
ひととひとを繋いで、孤独なひとを生まないようにする。辛さを引き出せる場所をつくる。
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私にとっては、町田そのこさんの2冊目の本。
登場人物など、よくあるような状況だなって、読み始めはおもったけど、全然そんなことなかった。
描き方のレベルが違った。
登場人物それぞれの気持ちが読みながら迫ってきて、何度も涙を流しながら読んでいた。
元々は歴史小説が好きだったのだが、これまで読んだことのなかった小説家の本を今年になってからずっと読んでいた。
サスペンス小説を読むのは、そろそろ飽きたなと思っていたところに、この本を読み、町田そのこさんの本をもうちょっと読んでみようと思った。
Posted by ブクログ
アマリリスの花言葉は「おしゃべり」
人が良い道に行くのも悪い道に行くのも周りにいる人次第。私たちがお互いを理解するために必要なのは対話、つまり話すこと。何回も何十回もおしゃべりを重ねる。
誰かに傷つけられたこと、誰かを傷つけたこと。それを丸ごと受け入れてただ私の話を聞いてほしい。
そうやって人は前に進み続けるということを教えてくれる。
Posted by ブクログ
自分の心に向き合い1番自分を大切にする。
背けたくなるくらい辛いこともあるけど、
決して自分の心から逃げてはいけない。
そうすれば、受け止めなくていい痛みは受け止める必要なんてないと気づけるはず。
そうすることで周りへ優しくできる。
周りの人のありがたみがわかるようになる。
痛みは共有できないけど繋がり合うことはできる。
そうやって人は支え合って生きていき強くなれる。
その強さから来る輝きが誰かに勇気を与えたり、
助けになるかもしれない。
そんな大切なことを教えてくれた一冊。
私も昔すごく辛いことがあって当時の自分ではどうにもできなくて塞ぎ込んでしまった時代があった。
だけど、こんなにも辛い思いをずっと持ち続ける時間はもったいない、もっと楽しいことがあるはずだと教えてくれた人がいた。
辛いことは受け止め続けることをやめて、
新たなスタートを切ることができた。
そのおかげで、今では一般的に見れば羨んでもらえるようか社会的な生き方をできるようになった。
改めて、自分の心に常に向き合い大切に生きていくことで、周りに力を与えられるような人になりたいと思った。
⬛︎心に残ったフレーズ⬛︎
目を閉じても思い出せるくらい、描きたいものを観察しなさい
わからないまま自分の多分で描くのはほんとうを描いたことにはならない。本当を、見失ってしまう。
何回も試してほんとうのかたちを探す。
人と関わり合うこおの幸せや楽しさ
近くで見守ってくれる存在のありがたみ
正しいことは応援してくれて
間違ったことは否定してくれる
受け止めなくていい痛みを受け止める理由を無理やりつけて我慢することはない
あなたの感じている痛みはおかしい
寂しそうな人を見たらこうして歌ってあげなさい
人は誰も子供みたいに泣いて眠りたい時があるものだから
そんな時間さえあればよかったのかもしれない
誰しもがそれぞれの弱さを抱えている
その弱さを攻撃されたときのダメージもまたそれぞれ。
自分だったらと寄り添おうとするのは間違いではないが、自分のものさしで人の苦しみを測っている危険性もある。
痛みや苦しみは完全に共有できないが、彼女たちを繋いだ何かは生きている全ての人に通じ、共有できるもの
誰でもなく自分こそが自分自身を深く愛し守れば心を研ぎすませれば、ひとは誰もが強くうつくしくなれる。
そんな強さに人は心を奮い立たされ
そうして得た強さこそが他者に優しく寄り添うことができる。
ひとは歪む。その歪みをどこまで拒めるかが自分自身の力。ひとによって歪められることもあれば、まっすぐになることもできる。強さから輝きを分けてもらい自分の糧として立ち上がることができる。
人生の幕が下りる時、誰かの強さで奮い立たされて、自分も強く生き輝き、誰かの糧になっていたい
Posted by ブクログ
言葉一つ一つが重く
だけどアマリリスがタイトルに含まれているのが
その理由のように
女子の繋がりの物語だと思った。
尊敬したり
逃がそうとしたり
女子同士で子守唄を歌い合ったり
女子で集まったり
女性が女性に感動の涙を流したり
うん、、
宗次郎、頑張って。
Posted by ブクログ
被害妄想ってしちゃうよね
してるつもりなくてもさ。
「私の悪口をいっている」とか「私を見て笑ってきた」とかそういうのじゃなくて
例えば「あの子はアイドルが好きだから話しかけたらめんどくさい」とか。
偏見 とも言うのかな?
でもそれって相手のことを考えていっているのかもしれない。
「あの子はアイドルが好きだから私と喋ると気まずそう」とかね。
そういうのなくなったらいいのに。
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月とアマリリスは一瞬で読み終わるくらい面白くて、何日間も読み続けていたような脳に響く本だったと感じています。
ぜひ読み始めたら止まらないので読んでみてほしい一冊です。
今作に出会えた御縁に感謝します。
Posted by ブクログ
ヒューマン小説
主に女性に焦点を当てた物語であった。北九州市が舞台となっており、方言や実際の土地や建物がより一層リアリティを増していた。
男尊女卑、発達障害、虐待、共依存など、さまざまな問題が浮き彫りになっており、残虐な事件が多い現代の課題提唱をしている物語であった。
家庭の形、愛情表現は様々であるが、やはり歪んだ価値観の犠牲になるのは子ども。そして循環してしまう現実。その歪みに、一声かけられる周囲との繋がりがいかに大事であるかをひしひしと感じた。 人との関わることは必ずしも素敵なことばかりでなく、傷付け、傷つかれ、しんどい事もあるけど、結局救うのも人。
Posted by ブクログ
読んでいて一番印象に残ったのは、自分の「多分」で描くのは「ほんとう」を見失ってしまうという言葉だった。その言葉がこの小説の芯を食っているんじゃないかと思った。偏見や妄想は邪魔でしかない。
人と関わる、人と向き合うと痛みを伴う瞬間がある。けれど誠実に向き合えば自分を人として成長させてくれる。前を向かせてくれる。あるいは深みのある人生を送ることができることを思い出させてくれた。
Posted by ブクログ
初めは上滑りするように、それからどんどん剥がれていくそれぞれの心情と事情。こんなはずじゃなかった。そんな声が聞こえてきそうな小説。本当に自分のことを思い、心から愛してくれる人の元に間違わないで辿り着けたらこんな思いはいなくていいのに。でも現実はそうはいかない。みんな間違えながら、それでも幸せになりたくて手を伸ばす。この小説は、主人公である記者のように最後までとても丁寧に書かれていると感じた。
Posted by ブクログ
プロローグがどのような場面であったのか、彼らがどのような関係で、なぜこのようなことになってしまったのか。主人公のみちるが事実に近づき、いろいろなことが一つに繋がっていく流れが読みやすく、ページを繰る手が止められなくなった。
同時に、この事件に関わった人物たちの心が明かされるにつれ、なんとも言えない気持ちにもなった。
その人の特性などによる生きづらさ、家庭環境などによって得られ難かった愛を求める心、無自覚に人を傷つける残酷さなど、おそらく誰しもが持つ弱さや脆さに繋がるところを突きつけられて、胸が苦しくなりながら読み進めるところもあったが、最後はある種の救いも感じられる結末で、読後感はすっきり。
人との繋がり方を考えさせられる一冊でした。
Posted by ブクログ
サスペンス巨編とのことですが、町田その子さんらしいヒューマン小説でした。
しかし、重い。
今日もどこかで人を支配する人される人、逃げる人逃げられない人がいるんだろうな。
町田その子さんの重めの本を2冊連続で読んだので、癒しが欲しい。フェロ店長とツギさんを欲してます。
Posted by ブクログ
町田さんのとてもやさしい表現力にとても引き込まれました。ミステリーでありながら、事件の謎を解くばかりでないストーリーがとても新鮮でした。事件はとても辛く、目を背けたくなるものばかりであったけど、それをみちるがちゃんと取材する姿に感銘をおぼえました。みちるの記者としての成長ぶりがとてもよかった。
また再読したい1冊となりました。
匿名
酷く残酷な事件で胸が苦しくなりました。事件によって人の心に及ぼす苦しみが伝わってきました。悪によって人の心を摂取する人間にはなりたくない。人の心は弱いから、そこにつけ込んでくる人間て常にどこかにいるんだと思う。そんな人に巻き込まれそうな人を助けれる人達が増えるのが少しでも救いになるのを祈ってます。絶望の中にも光を与えてくれる。そんな作品でした。
町田そのこ先生の初のサスペンスということで刊行を楽しみにしていました。北九州を舞台に繰り広げられる死体遺棄事件を追う女性ライターの物語です。
イタリアンレストランでのみちると同級生との会話が非常に印象に残っています。相手を羨んで嫉妬したり、実は自分も加害者だった気づいたり、何か気付かされることが多いシーンでした。
読後前向きな気持ちになれる素敵な作品です。
Posted by ブクログ
町田その子さん、好きだから読めてよかった。
結構辛い描写も多いけど、でも自分が今こうして生きていられる奇跡を痛感させられた。
世の中、変な人も多いけど、それもひっくるめて人類であって、私の役割はなんだろうなと今だに見出せずにいる。みちるちゃんもみんなも頑張れ!続編希望〜
Posted by ブクログ
重い内容だったけれど、最後まで一気読み。同級生が事件に巻き込まれたり、卓球のラリーのくだりといい偶然重なり過ぎじゃないとツッコミたくなるけれどそれも含めて丁寧に纏まっている。加害者と被害者のどちらにもスポットが当たり、それは紙一重なのかもと思ってしまった。美散を抱きしめるおじいちゃんのところが最高に泣けた。このあとの邂逅も読み応えあったし、ラストもとてもよかった。
Posted by ブクログ
どこかで本の装丁を見た時に、何だか惹かれて読んでみました。
町田そのこさんの作品は今回が初めましてでした。
初めましてにしては、なかなか重めの作品だったかなと個人的に感じました。
ただ、内容はよく読むと重めなんだけど
文章はスッと入る文章で
ミステリー要素もあってで
続きが気になり、中盤から一気に読み終わりました。
あらすじは...
北九州の山中である日、老婆の白骨が発見される。
同じ北九州でグルメ情報紙の仕事をしていた、元事件記者のみちるはこの事件を追うことになる...
あらすじだけ読むと、普通の事件かなと思うけれども
途中から歪んだ「愛情」や「愛情」不足から起きた事件だということが分かっていて...そこが個人的には重めでした。
そして最後の加害者にして被害者のみちるのことを書いている部分はなんか心にくるものがあって、みちるみたいな人って決して小説の中だけの人物じゃないよな...っと。
最後の方はざーーっと読んでいったからかもしれないけれども、タイトルの「月」はなんで「月」なんだろう?とまだ謎のままです・笑
Posted by ブクログ
手を伸ばしても、届かない何かがある。欲しいけれど、取ってはいけない。だから、あがく。足掻き方をはじめは知らないからこそ、苦しい。苦しみの果てにある、何かに触れることができた気がするお話。
Posted by ブクログ
「ひとと対等に生き、ひとを信じて生きるというのは、うつくしくも醜く、強くも頼りない」
町田そのこさんの作品としては、これまでで一番ミステリ色が強いが、トリックとか何とかではない、とにかくひとの心が、思いもかけない悪を、そして善を、ねじれあいながら悲劇を生み出してしまうミステリ。
ひいいいい……!と心の中で叫びながら、止められない。
探偵役で主役のみちるも、大きなトラウマを抱えた女性のはずなのに、彼女が軽薄に見えるほどの、事件を起こした側の、殊に乃愛に加えられた容赦ない傷といったら……
あまりのインパクトに、感想を書きそびれてたので、今はもうこのくらいしか書けない。「52ヘルツのくじらたち」に悪意と殺意を足して、一層の破壊力だった。
Posted by ブクログ
かつて事件記者をしていた飯塚ミチルは、自分の記事で自殺者を出してしまい、精神を壊してしまう。それからタウン誌の仕事をしていたのだが、元カレの堂本から事件の取材記事を依頼されたことをきっかけに、殺人事件を追うことになる。近所に住むタクシードラーバーの井口といっしょに、死んだおばあさんが誰なのかを調べていくなかで20代女性の死体を発見する。
胸糞ですが、すごく面白かったです。人を救うことで救われるってあるよね。出てくる女性たちがとても可哀想で、痛々しくて読んでいて辛かったんですが、いちばん心にキたのは、母親の本心を知ってしまう井口さんのエピソードかもしれない。辛すぎる……。
Posted by ブクログ
読んでいる間、何度も本を閉じた。
気分が悪くて。
いたたまれなくて。
こんな、人を利用することを何とも思わない質の悪い人間がいるのか。
とても重い話だった。
「ひとはひとで歪む」
その通りかもしれない。
ただ、歪んだ親が、子どもにその歪みをそのまま押し付けてしまったら、その子どもは歪みをどう直していったらいいのか。
この「クズ」は到底許せないが、なんとも暗い気持ちになった。
だからこそ、共通点のない利用された3人が、共同生活の中で心を許していく場面に救いを感じた。
町田さんの丁寧な文章だから、こんなにも心が揺さぶられたのだろうなと思った。
Posted by ブクログ
近所の男性が、なんで熱心に協力してくれるのか?怪しんでたけど何でもなく、理由がよくわからなかった...心が女性というのも取ってつけたような。
とはいえ人間ドラマにはとても読み応えがあって一気読みしました。
町田そのこさんハズレが無いなぁ(今のところ)
Posted by ブクログ
吉永さんよかったなぁ
やった方は覚えてない的な?と最初は不快に思ったが、自分の気持ちをあんなにストレートに話してくれるって印象がガラッと変わった
昔の思い出って結構自分の中で自分本位に作り替えてたりする
自分のやったことを認めながらも丁寧に説明してくれる吉永さんが私の中でとても印象的だった
事件はイヤな事件だったけれど 町田さんらしいそれぞれの登場人物の描き方とかすごく良かった
Posted by ブクログ
どうしようもない男 男が女がと言うこと自体が憚られる時代ですが、男の浅はかさ惨たらしさ狡賢さ、女の苦悩、優しさ、弱さがよく描かれているなと思いました。
共依存にもきっかけがあると思います。それを作る側は男なんだろうなと思います。そしてそうならないようにしなくてはいけないと深く思いました。
小学生の時に部落問題の授業の後にアンケートがあり、こんな授業が無ければ知ることもなかったので、無ければ良いと書いた事を思い出しました。今は向き合わないといけないと感じています。
月はどこに
「52ヘルツのクジラたち」もそうでしたが、人の痛みの輪郭をくっきりと見せて、そこに寄り添って進む物語に今回も引きごまれました。
読みながら幼い頃の楽しかっこと、罪悪感…色々と思いだしました。
間違ってもやり直せる。
心から願うことで誰かと繋がることができる。
そんな勇気をもらいました。
Posted by ブクログ
いじめ事件を週刊誌で取り上げた際に、加害者と思った人物が被害者であることを知らずに掲載したことにより、自殺に追い込んだことで記者を離れた主人公。
地元でおこった事件から自身をも見つめなおしていく。
今回も、ネグレクト、虐待、詐欺、DV、マイノリティなどたくさんのテーマが含まれている。
事件を追うごとで読んでいる側も早く真相が知りたいとページをめくる手が止まらなかった。
当事者ではなく、記者としての視点で物語が進んでいくところが印象的。
主人公のみちるを取り巻く人たちもよかった。
一つの事件を掘り下げて、同じ境遇の人たちにも伝わってほしい。
でも1回だけではすべての人には伝わらないし、伝えきれない。
何回でも悲劇は繰り返される。声がかれるまでラリーを続けて声をきき、同じ境遇の人へ苦しんでいる人に伝えたい。周囲の人たちの支えで、また形はどうであれ助けたい。それが自分の使命なのだと。この部分が強く響いた。
自分にも少しでもそのことができるだろうか。考えさせられる。
今回は、事件の謎解きをするかのように読んでしまったので、もう一度落ち着いて読み直したい。
一気に読めました
どう話が繋がっていくのか、続きが気になって1日で読んでしまいました。
面白かったです!
どんどん謎がとけてきて、内容重いですが、あっそういうことなんだ!と爽快感もありました。
Posted by ブクログ
話としては悪くないです。被害者と加害者の両方にスポットを当てて、殺人事件の裏を追うライターの話です。町田さんは一貫してマイノリティの人たちの気持ちを汲みながら展開していらっしゃることに、敬意を払います。
でも、あえて言わせてもらうなら、ルポでしかない。ライターの過去の過ちからの脱却物語でもあるのですが、そこに文学性を感じることはできません。じゃあ、文学とは何かといわれると感覚としか言えない自分が情けないのですが、読んだときにどれだけ心に染み入るのかが、表層をなぞるだけの文章との違いだと思っています。
もう少し深く潜ってほしい。そう願います。
Posted by ブクログ
読みやすいし内容も興味深い。
印象に残ったフレーズもある。
〜《強さ》に甘えて依存する心があった。
信じるといううつくしい言葉の陰に、思考を委ねる弱さがあった。
相手の《強さ》を信じ過ぎてしまうと、自分で考えて行動することをしなくなってしまう。あの人がそう言うならという《正しさ》とよく似た危険な逃避と自己責任。誰もが経験あるだろう。
〜前向きに呪おう。
いいね!私もやってみよ。
〜人は人で歪むんよ。
あの人がなぜ??なにがあったの???私が知ってるあの人はそんな人じゃなかった。
そんな思いを持つ人は少なくないだろう。良くも悪くも。
愛着障害。共依存。
一歩間違えれば取り返しがつかなくなるのに当事者は異常な状態だと気づかない。内容はDVや虐待なのに。
主人公は(嫌なやつでも悪いやつでもないんだけど)都合よく記憶を曖昧だったり自分自身が無意識に相手を傷つけてきたことを(それなりの年齢になっているのに)無自覚だったりそれでいて被害者意識が強くて、現実にいたら自分はカチンとくるタイプ。
そんな彼女が自分自身と向き合うことができたのは井口さんのおかげ。
被害者でもある加害者。
人の心を忘れなかったのが救い。
同級生だった吉永さんがよかった。
やっぱ人次第だね。
人生はどんな人と関わったかで決まる。
Posted by ブクログ
町田そのこさんの本を読むと、いつも人の心の奥深さを感じる。
自分は大切に人を理解したいし寄り添いたいけれども、きっと私は表面しか見れていないし鈍い人間なんだろうなと思う。
Posted by ブクログ
罪を犯した人をただ糾弾するのではなくて、なぜその罪を犯すに至ったのか、事件の背景には何があったのか。記者はそれを明らかにし、世間に考えさせることができる職業だが、その分大きな責任と痛みが伴うのだろうと思った。
「自分の多分で描くのは、ほんとうを見失ってしまう。何回も試して、ほんとうのかたちを探す」というしみちるの姪っ子の言葉が印象深い。
ほんのちょっと何か支えになるものがあれば、力になれる人がいれば、こんなことにならなかったのに…ということは世界中たくさんあるんだろう。自分なりに過去の過ちを悔い、そんな人たちを救う道をみつけた主人公を力強く感じて希望が持てる結末だった。
Posted by ブクログ
虐待をはじめとするシリアスなテーマを主題とする作家というイメージで、これまで手に取る機会がなかった。今回、サスペンス・ミステリーと云うことで、読み始めると予想していたような手軽なエンターテインメント作品ではないと気づいた。
物語は、元週刊誌記者の主人公がある属性のドライバー役と事件を追うバディものとして進んでいき、クライムノベルとしての展開の面白さもあるが、地方に暮らす女性の立場や家族や親との関係などこの作者ならではの視点で犯罪とともに明らかにされていく犯人たちの愛情に飢えた共依存と支配関係が、さらにその過去の…
「人は人で歪む」という悲しさ、恐ろしさ…
でも、「ひとはひとによって、まっすぐになることもできる。強さから輝きを分けてもらい、自分の糧として立ち上がることができる」
ラストの主人公の選択で心が救われた。