【感想・ネタバレ】過疎ビジネスのレビュー

あらすじ

福島県のある町で、「企業版ふるさと納税」を財源に不可解な事業が始まろうとしていた。著者の取材から浮かび上がったのは、過疎にあえぐ小さな自治体に近づき公金を食い物にする「過疎ビジネス」と、地域の重要施策を企業に丸投げし、問題が発生すると責任逃れに終始する「限界役場」の実態だった。福島県国見町、宮城県亘理町、北海道むかわ町などへの取材をもとに、著者は「地方創生」の現実を突きつけていく。本書は「新聞労連ジャーナリズム大賞」受賞の河北新報の調査報道をもとに、さらなる追加取材によって新たに構成、「コンサル栄えて、国滅ぶ」実態を暴く。

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Posted by ブクログ

労作。新書形式とシンプルなタイトルからは、ある程度広く浅く問題を紹介する類かと思いきや、おそらくは相当数の事例が潜むであろう、過疎自治体を食い物にする地獄絵図の一端を根気強く追いかけている。未読だが『対馬の海に沈む』の読後感もこんな感じだろうかと思いつつ、公金をないがしろにする本問題のほうが読む動機としては強い。

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

地方自治の現場を長く歩いてきた者として、本書『過疎ビジネス』は胸を締めつけられるほどリアルだった。小規模自治体に人員も専門知識も足りず、複雑な制度の前で思考が止まり、コンサルの提案を十分に吟味できないまま事業が動き始めてしまう——そんな“構造的な弱さ”が、鮮烈であり、痛々しいほど描かれている。

に福島県国見町の救急車リース事業は圧巻だ。合理性が見えないまま突き進む行政、形骸化した議会、常駐できず深掘りしきれない地方メディア。町にとってどんなメリットがあったのか、なぜここまでのめり込んだのか——この「動機の闇」は最後まで完全には解き明かされない。しかし、その“説明不能”こそが地方行政の危うさを逆に照らし出しているように思えた。

一方で、百条委員会で真相に迫ろうとした議員たちの奮闘には胸が熱くなる。ワンテーブル社長に「雑魚」と嘲られた地方議員たちが、最後に意地を見せた姿は、この本の最も人間的で、救いのある場面だった。

地方自治の現場を知る人ほど震えるはずだ。自治体、議会、メディア、そして住民——それぞれの“脆弱さ”と“矜持”が交錯する、重くも欠かせないノンフィクションだと思う。

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2025年11月28日

Posted by ブクログ

非常に良かった
これぞノンフィクション
小さなキッカケから始まった2年間の取材
地方新聞の底力が政府をも動かした
これが本当のジャーナリズムだと思うし
今の日本に失われつつあるものだから
希望を見出せました
ありがとう

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2025年10月16日

Posted by ブクログ

とても面白かった。
これだけの取材をされて、ここまでまとめ上げられていることが素晴らしいと感じた。
嫌な顔をされながらも、真実を求めて取材をされたんだろうなと思う。後ろめたいことがあるから、嫌な顔をするということもありますが。

地方創生は、自治体だけでは完結しない話なのは間違いない。まずは、自治体と民間は違う立場にあるということを互いに理解し、尊重しながらビジネスを進めていく必要があると思う。

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2025年10月03日

Posted by ブクログ

2022年2月、福島県国見町で、寄附額の最大9割が税額控除される企業版ふるさと納税を財源に不可解な事業が始まろうとしていた。
制度をもとに寄附された4億3200万円で高規格救急車を12台購入し、国見町では使わずに他の自治体や消防組合にリースするという何とも理解しがたい地方創生事業だった。
寄附したのはDMM.COMとその傘下の2社。救急車の車両製造はDMM.COM傘下のベルリング。事業は研究開発という位置づけで公募型プロポーザル事業になっており、唯一応募し、受託したワンテーブルという企業は地方創生のコンサルだった。
ワンテーブルはベルリングに車両を発注するということで、救急車の仕様書作成に関与、DMM.COMグループとともに利益を囲い込む出来レースの構図になっていた。
企業版ふるさと納税は、自治体と企業との癒着を防ぐため、自治体から企業への経済的見返りを禁じている。このことに関し、国見町の事業にグレーな臭いを嗅ぎ取った河北新報の記者(著者)がその真相究明に乗り出す。
その過程で、ワンテーブルの島田社長が小さな自治体を虚仮にし、地方議員を雑魚と評するとんでもない男であることがわかる。
島田が目をつけたのは、過疎化が進む地方の自治体にありがちな官民連携の推進、民間コンサルへの丸投げ依存。
地方公務員が減少する中、行政課題が増え、専門的な知識や技術がいる業務も増える中、民間企業に業務の一端を担ってもらわなければ成り立たない自治体、その中でも特に手なずけやすい小さな自治体を島田は狙い打ちした。
著者の熱のこもった取材活動や記事が、国見町の議員を動かす。百条委員会の議員の追及によって、ワンテーブルと癒着のあった町長は失脚、島田もワンテーブルを退職、さらに内閣府も重い腰を上げ、国見町の地方再生計画の認定を取り消した。 
宮城県亘理町、北海道むかわ町などの同様な事例への取材、週刊東洋経済の協力も得ながら著者のエネルギッシュな活躍が公金の浪費や過疎ビジネスの横行に歯止めをかけた。
河北新報、国見町百条委員会の議員の執念に、地方新聞社、地方議員かくあるべしと、強い感動を覚えた。

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2025年09月29日

Posted by ブクログ

シンプルに読み物として素晴らしかったし、この取材を続けた記者の情熱には頭が下がるばかり。マスメディアはまだまだ終わっていないし、こういう取材に魂を込められるメディアがいることに、嬉しさを覚える。

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2025年09月29日

Posted by ブクログ

本書に出てくる「企業版ふるさと納税」を活用(悪用)したスキームは、私の地元である北海道でも、本書に出てくる以外の自治体で似たような事例を見たことがあり、非常に不信感を持っていたところだったので、とても興味深く本書を読ませていただいた。

私自身が、地方自治体や公共団体等を相手にしたITコンサルティングを生業としているので、本書に出てきたようなコンサル会社が地方から日本をダメにし、コンサル業界の評判も下げていることに強い憤りを覚える。

常々、助成金ありきの事業や、経営コンサルという名の補助金コンサル、ふるさと納税コンサル、デジ田交付金コンサルなどは、すべて消え去るべきだと思っている。

私は以前に本書にも出てきた東洋経済の寄稿記事を読んでいたので、本書で取り上げている概要は把握していたが、本書で詳細な状況などを読むことで、まったく他人事ではないと感じた。

特に「企業版ふるさと納税」については、ワンテーブルの事例は完全な黒だが、完全な黒とまではいえず、倫理的にはNGだが、制度的にはOK(100%のOKではなく、網の目をかいくぐって)というかなりグレーな事例が横行していると認識している。

この状況に反対しようにも、個人の力では弱いのと、直接的に関わっているわけでもないので、どうしようもない状況があった。

なので、こういった地方創生を食い物にする「コンサル」が取り沙汰されて、少しでもガバナンスやコンプライアンスが向上する地方自治体が増えてくれる機会として、本書は社会課題への貢献度が非常に高いものだと思う。

社会にとって害悪でしかないようなコンサル企業を駆逐していかないと、コンサル栄えて国滅ぶどころか、それ以前にコンサル業界自体が潰れかねないと思っている。

公共組織を相手にビジネスを行っているコンサルタントの一人として、悪い事例として本書で取りあげられるようなことがないよう、社会を少しでもよりよくするために貢献できるよう、肝に銘じて頑張っていきたい。

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2025年09月27日

Posted by ブクログ

私自身もコンサルという職業に身を置いている。日々、お客さんと課題を整理してその解決に励んでいるつもりだが、最近、「あー。コンサルなんですね。虚業ですねー。」とか、「コンサルは信用できないし口だけですよねー。」といった辛辣な言葉を浴びせられる。この本を読むと確かにコンサルが信用できない理由が理解できる。(自分はこうならないという戒めも込めて。)

日本は衰退の一途だと長らく指摘されている。政治もずっと混乱してるし、社会自体も安定を欠き始め、暗い気持ちに覆われることが増えている。たしかに目も当てられないほどの課題が山ほどあるけれど、この本は日本が民主主義国家であることの希望を感じさせてくれる。癒着や利権に甘える人もいる一方で、深刻な課題に直面して覚醒する人もいる。きっと日本の強みは課題に直面した時の修正力なんだろう。ただし、スパッとは変わらず、ぬるーっと変わるから時間もかかる。でも善意のある有権者と議員がいることで遅くとも修正の可能性があることは救いなんだと思うし、そう信じたい。

自分も地域を良くするために「雑魚でも生きよう」。

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2025年09月18日

Posted by ブクログ

寄付金の最大9割が法人税などから控除される制度である企業版ふるさと納税を活用し、匿名企業(後にDMM.com及びそのグループと判明)から福島県国見町が受けた43,000万円の企業版ふるさと納税を財源に、地方創生コンサルタントのワンテーブルによって実施された、地方創生事業を悪用した環流ビジネスを追った河北新報の報道の書籍化。本の帯の通り、正に「コンサル栄えて国滅ぶ」。寄付を受けるために地域再生計画を策定したいが、その能力も人員も覚悟もガバナンスもない自治体、チェック機能を放棄した議会、その状況を看破して付け入るコンサルという日本の地方の何処にでも起きていそうな話なだけに根深い。たまたま国見町幹部の給与問題の取材で目にした議会議事録から本件を掘り起こした著者のジャーナリスト魂に脱帽させられる。企業版ふるさと納税の問題だけでなく、公益通報した役場職員が懲戒処分を受けるなどの公益通報の問題、地方に目を向けないジャーナリズムへの自戒や少子化などにも警笛を鳴らす。実際には複雑な人間関係や時系列があるのだろうが、現役の新聞記者らしく非常に分かりやすく書かれているだけでなく、スピード感のある展開で一気に読んでしまった。性善説に立っているとしか思われない国の制度設計と甘い検証、地方自治体と議会の在り方など、将来の日本と地方について考えさせられた。

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2025年09月19日

Posted by ブクログ

国見町という小さな町での出来事が話の中心ですが、起こったことはこの国の根深い社会構造に紐づくものです。うちの地元にもありそうな話でゾワゾワします。

昨今はオールドメディアなんていわれてますが、新聞記者はやっぱりすごい。グイグイ読ませる構成と取材力に痺れました。

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2025年09月12日

Posted by ブクログ

過疎の村や限界集落を対象とした取材だが、既に政令指定都市の首長も政策をコンサル、代理店に書かせてるっていう現実にゾッとする。

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2025年08月26日

Posted by ブクログ

フィクションのようなノンフィクション。今後映像化しても面白そう。
仕様書作成の件とかは、結構似たようなことやってる人いそうだよな〜と思いながら拝読しました。

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2025年11月24日

Posted by ブクログ

ヒリヒリした。
ワンテーブルの件は、はっきりとした言質が取れてしまっているからこそ言い逃れできなくなっているが、こんなことが横行してしまっているんだろうなと思う。
個人的には企業版に限らず、一般のふるさと納税に関しても社会的なロスだと思っているので見直してほしいところだ。
メインの話題が強烈な分、北海道の事例の弱さに肩透かしをくらった気分。恐竜博物館にシアター入れて何が悪いの?万博とか見ても展示施設に映像を取り入れるのはスタンダードじゃないのか。
ソリューションが似通ってくるのも人的資源の限界でしょう。
そうなってくると、本書でも結びで述べていたように国の地方創生政策が無責任で有効じゃないということだ。我々が向き合っているのは暗い暗い現実だ。

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2025年11月24日

Posted by ブクログ

企業版ふるさと納税で収益を上げようという話。
財政力指数0.5以下をターゲットに。
仕様書や要項へアドバイス。

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2025年11月23日

Posted by ブクログ

過疎で町議会、村議会議員が無投票で決まるような自治体に、法人のふるさと納税制度を使って寄付。その寄付金を使って行う事業で美味しい受注をする。
簡単に言うとそういうからくり。
そりゃ、生き馬の目を抜く都会のビジネスマンが本気で田舎の議員さん、役場の職員を騙そうと思ったら、簡単でしょうねえ。

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2025年11月06日

Posted by ブクログ

気骨あるジャーナリストだと感心した。
こんな問題があったのかとYouTubeで調べたら「雑魚だから」発言までちゃんとアップされてて笑った。

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2025年10月22日

Posted by ブクログ

小さい自治体を狙った企業版ふるさと納税で利益を上げる企業と事業を進めようとする自治体

制度も変だし自治体も企業もどっちもどっちという感じ

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2025年10月22日

Posted by ブクログ

ふるさと納税の制度の裏を突いたコンサル会社の事例について取材を重ね、自治体側の問題点についても丁寧に言及。
筆者の文体もあり新書であるが、ドラマや映画を観ているような感覚になり、一気に読むことができた。
「過疎ビジネス」というタイトルはややインパクト重視の感はあった(ノンフィクション小説ではなく、新書として取り扱うならもう少しテーマを一般化する必要はあった気がする)が、今後の地方自治体のあり方について問題意識を投げかける意味では必要だったのかも。

コンサル=悪、みたいな短絡的な解釈をする人が増えないことは願いたい……。

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2025年10月12日

Posted by ブクログ

人からノンフィクションで面白いものを読みたいと言われたらまず勧める一冊。

企業が自治体に向けて寄付できる「企業版ふるさと納税」という仕組みがあり、寄付側は控除を受けられるメリットがある。しかしもし寄付を受けた自治体がそれを事業として、寄付元に支払ってしまえば企業は寄付した資金をさらに回収してしまえる。
もちろん原則では禁止されているこのスキームを「コンサル」が自治体と企業をコントロールすることで可能にしていく。

地方の目の届きづらい自治体で行われていた巧妙な不正が、調査により明らかになっていく過程は点と点が結び続けるミステリー小説のようだった。徹底した調査による話なのに(だからこそ)、読む側を引き込む展開の連続がある。

登場する人物も多様で素晴らしい。
筆者をはじめとする不正を追い詰める側の鋭さ。
不正をすすめ、それを認めてようとしない町役場、コンサルの醜さ。一度はコンサルに侮られたが失態を挽回すべく奮闘する議員らの闘志。
事実の告発だけでなく、この騒動に関わった人々の顔が見える文章は、足を運び目で見ることを重んじる筆者にしか書けない。

地方自治をあり方に関心が湧いたし、コンサルのような問題を自身で解決することなく処理するということのリスクを自覚しようとも思った。

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2025年10月12日

Posted by ブクログ

企業版ふるさと納税を通じて自治体に納められた税収を原資に、高規格救急車を12台購入してそれを自ら使うのではなくなぜか他の自治体に貸し出すという、聞けば誰もが首を傾げるような不可解な事業を進めていた福島県国見町の事例から始まり、それが一つの自治体で起きている特異的な事象ではなく、各地で根を広げていることを明らかにしていく調査報道が主軸。

地方議会を見下すコンサル、言いなりになる自治体、チェック機能が働いていない議会・メディア、制度欠陥を放置する国、そして欠陥を確信犯的に利用する企業。謝ったら死ぬ病気にでも罹っているのか、誤りを決して認めようとしない自治体の風土にも辟易としつつ、自治体職員の業務領域が広がっている中で、対症療法的に無思考でコンサルに依存していく現状を変えるには、元の構造的な要因(需要側=職員の肩に乗ってくる業務の量と質の改革、供給側=職員自体の量と質の改善等)を解決しないと本当の解決にならないと感じた。

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2025年10月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 「無視されるちっちゃい自治体」「誰も気にしない自治体」を食い物にするコンサルの実態について、福島県国見町で実際に起こった「企業版ふるさと納税」を悪用したスキームを追うことで明らかにしていく。国民の税金を食いものにする醜悪なコンサルと、それでも構わないかのような「限界役場とも言えそうな自治体行政の機能不全」の状況は絶望的ある。

 この事実が明るみに出たのは、著者をはじめとする河北新報の記者の調査報道による。
「行政監視はマスメディアの重要な役割の一つで、中でも新聞社の役割は大きい。」「報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条が保証するものとされ、民主主義の根幹をなす「知る権利」に奉仕するものと考えられているためだ。」「その役割を報道機関が全国津々浦々で十分に果たせているとは、もはや言えないだろう」と著者は嘆く。


 実際にインターネットの普及に伴って紙の新聞の売上は激減し、アメリカなどでは地方紙の大量廃刊によって地方議会への住民によるチェック機能が働かなくなり、汚職の増加や陰謀論の拡散を招く土壌となる状況が現実になっています。日本でも同様で、廃刊にならずとも人員は削減され、求められるチェック機能を果たせなくなってきています。本書には「福島県の地元紙の福島民報と福島民友・・・・図ったように国見町執行部の言い分しか報じず、私としては心底幻滅していた」あります。「大本営発表」を「報道」するしかない「限界メディア」が増えているのでしょう。ここにも、絶望しかない。

 新聞がなくなった時、民主主義は崩壊する。権力は腐敗まみれになる。ジワジワと地方から始まってるようです。

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2025年09月29日

Posted by ブクログ

グレーゾーンのさらにギリギリの倫理的には完全アウトの悪事をはたらき儲けようとするコンサルと腐りきった小規模自治体の話。
地方再生における問題点についても述べられています。

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2025年09月16日

Posted by ブクログ

地方の町役場の腐敗度合いに空いた口が塞がらない。また企業版ふるさと納税の抜け道は素人が見ても明らかで、なぜ問題になるまでこの制度が通用すると思っていたのか甚だ疑問である。
兵庫県で話題になった百条委員会とはなんたるかも勉強になった(そこまで強靭な力があるとは知らなかった)
著者のジャーナリズム精神と取材に協力した人々に敬意を示したい。

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2025年08月27日

Posted by ブクログ

福島の町で12台の救急車を購入し他自治体へリースするという、そんな謎の事業は、企業版ふるさと納税の制度を悪用した手法だった。
抜け穴を狙う企業もさることながら、自治体側の弱さ、そして真面目にやるなら地方公務員や地方議員が都心の大企業と対等に渡り合わなければならない難しさ。
事件自体は珍しくジャーナリストがよくやった事例と東洋経済で扱われたので周知かもしれない。
地方行政や公金搾取が注目される昨今に光る一冊。

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2025年11月27日

Posted by ブクログ

悪い人いっぱいいるなと思いました。一部、これは作者の思い込みでは?と思う部分もありました。全体的に新聞記者の書いた文、という感じで、地場に根付いたメディアって本当に大事だよな、と思いました。

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2025年11月20日

Posted by ブクログ

本著は地方自治体が人員減少による人手不足により公共事業をコンサルへ丸投げするという現象が挙げており、公金流出や横領、不透明な資金の流れが起きておりお金(税金)だけ用意してコンサルへ丸投げし成功した事業は現時点(2025)では無い。国レベルでも起きているので、根本的で本質的な問題は地方自治体だけでは無いだろう。
さて、本著では「過疎ビジネス」という公的資金でコンサルへ丸投げすることを厳しく批判し問題提起をしている。アウトソーシング(外部委託)と言えば聞こえはいいが、実際には公共事業の放棄であり、成功の有無問わず「やったという公共事業として努力した表現」として残念な結果として問題となっている。
だが、コンサルだけが悪いのだろうか。私はそうは思わない。公的資金を預かり運用し活用に失敗した自治体の責任が大きいだろう。コンサルはあくまでコンサルなので本来は自由に公的資金を扱える立場と権利は無い。なかなかの汚職や腐敗も進む公共事業をする自治体もあれば、必至に町おこしをするために尽力し官民一体となって周囲の自治体を巻き込みコンサルに丸投げではなく協力者として一緒に走り住民も参加型にした地方再生や創生で成功した自治体もあることを忘れてはならない。コンサルに頼らず少ない資金で独自で尽力している自治体も多い。
これから田舎は過疎化が進むのだろうと思われる。インフラも福祉も持たない自治体が出て来る可能性もあるだろう。だが、国も自治体も何もしないわけではなく必至で地方創生へ動いている官民の職員が走っていることを知らなければならない。
国や自治体レベルでもこうなのだ、お金があれば全て上手くというわけではない証明をしている。これは個人にも当てはまるだろう。地方創生や再生は私たち個人から意識を変え社会参加をしていく一つの切っ掛けと解釈を提案する内容であろう。

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2025年10月02日

Posted by ブクログ

地方創生の名の下に企業版ふるさと納税制度が悪用され、コンサル会社に税金が食い荒らされる。福島県の国見町で起こった事件を通じて、倫理観の欠如した企業、ガバナンス不全の自治体、地方への無関心といった、この国の宿痾を見る。地方の実情を度外視して予算をばら撒き、杜撰過ぎる制度設計を放置した国の責任は重いが、それは我々国民の責任でもある。

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2025年09月26日

Posted by ブクログ

福島県国見町で起きた株式会社ワンテーブルやdmm、ベルリンクらが引き起こした企業版ふるさと納税を使って、不当な競争にならない公募仕様書作成した公金を使った住民のためにならない事業。

意図的に公金を巻き上げたワンテーブルは言うまでもなく悪い。

が、やはり闇が深いのは国見町役場。全く自浄作用も学習意欲もなく、倫理観もない。

こういう制度を悪用する人が出てくると、制度が緩いのが悪いと厳しく成り、結局使われなくなっていく。

企業版ふるさと納税も、基礎自治体の公正入札機能を信じて制度に自由性を与えたはずだが、このような事態になればルールを厳しくせざるを得ない。

結果、9割の正当にビジネスや官民連携を進めている企業や自治体が割を食う。いい加減にして欲しい…

これだけの不正と不誠実な対応をした町長の再選挙でまだ4割票が入るのには残念で仕方ない…

河北新報の取材はお疲れ様と言いたいが、罪を暴く正義のような視点の書き方は、やや公平性をかく。真実を暴きにかかる文だからこそ、冷静にかつ多様な視点を織り交ぜる冷静さは欲しかった。

良い例が内製化したオガールだけでいくと、よく知らない人は官民連携全体が「過疎ビジネス」と勘違いして、変な世論を作ってしまう。

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2025年08月30日

Posted by ブクログ

福島県国見町で起こった、企業版ふるさと納税を使った寄付金の還付スキームを暴いた河北新報記者によるまとめ的内容。ただ自治体を食い物にする悪徳コンサルといった勧善懲悪のみならず、地方創生政策全体をみた構造的課題についても言及されている。

個人的には少なからず見知った分野でもあり、また聞いたことのある企業や登場人物たちが出てくるので臨場感を持って読み進めた。とくに地方自治体のリソースが限られる中で、マイナンバー対応やコロナ対策、インバウンド需要といった国からの業務負担が矢継ぎ早に発生し、地方創生という半ば義務的にやらされる感の施策をコンサルに丸投げしたいという誘惑は、小さい自治体ほど抗えないだろう。

一方でこのやり方のすべてがマズかったかといえば、現状の民間企業が自治体業務に携わる上でのプロセスの煩雑さが目の前に横たわる。公平性の原理によって仕様書を出して競争入札とするような従来のやり方が参入障壁となり、ワンテーブルのような悪用を画策する企業が跋扈する隙ができている。結果として、何か革新的なことをするイノベーションが生じない構造となり、ノウハウを持つ自治体コンサルがコピペで提案するような事業が大半となっている。

実際に逆プロポのような仕組みで、企業版ふるさと納税を使って実証実験できる自治体を探す企業も出てきている。どこまでが寄付金でどこまでが利益誘導なのか、線引が難しいお金の流れの中で、過疎と呼ばれる地域はどのように生き残っていくのか。ただ悪徳コンサルけしからん!と正義を発露するだけでは、構造的課題は解決しないだろう。

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2025年08月24日

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