小説・文芸の高評価レビュー
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重厚長大。漢くさい、骨太な小説。それでいて、四十男の女々しさみたいなものもよく描かれていて、どこにも隙がない印象。だからと言って「詰め込み過ぎ」感は全く無く、所々栞替わりに挟まれる心象描写でふっとスピードを緩めて一息つける感じも用意されている。が、それが逆に次の頂を高く感じさせる効果があり、本当に抜かりがない。
基本的には、一昔から二昔前の、仕事に命をかけてる男たちの群像劇。御巣鷹山の日光ジャンボ機墜落事故が「降って湧いた」、群馬の地方紙出版社が舞台で、そこに同じ会社の「山仲間」やその家族、主人公が「自殺に追い込んでしまった」後輩とその親族、さらに日航機事故の遺族や主人公親子の確執などが複雑 -
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木暮荘に住まう住民と、それを巡る人たちの物語。
第1話 ある日、3年前に付き合っていた元彼が繭子の家に現れた。繭子にはすでに半年前からつきあっている彼がいるのに、元彼がお金がないという理由で部屋に居座ってしまう。
第2話 木暮荘大家の木暮の友達が死んだ。妻にセックスさせてくれと言ったら断られたそうだ。それをきいてから、死ぬまでにセックスしたいと木暮は考え始める。
第3話 美彌は木暮荘の前を毎日通って職場に通う犬のトリマーだ。ひょんなことからヤクザの前田さんと仲良くなる。
第4話 繭の勤務先のフラワーショップは、隣に喫茶店を併設している。店長の佐伯の夫がやっているのだが、最近佐伯の妻は夫 -
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時代物が読みたくなったら、今村さん!
と言うことで、今村省吾氏の「じんかん」です。
松永久秀の半生が綴られています。
生きた時代が、織田信長の父か祖父でも良いくらい。なんと豪華なことに、一世代くらい下になる織田信長が、松永久秀の物語を語ります。
生涯、少年の心を持ちながら国を憂いた松永久秀と、織田信長は気持ちで通じるところがあったらしい。
この当りの設定の巧さも、今村さんらしい感じ。あとがきで、北方謙三氏が今村さんの情景描写について、「どうも生まれながらに持ち合わせていた資質と見えた。」と言っておられますが、本当に上手です。
詳しくは書きませんが、これで大河ドラマ出来るのでは? -
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壮大な人間ドラマを読み終えて、この作品に出会えて本当に良かったなと思いました。
ご都合主義と言われてしまう展開も、全く気にならないぐらい感情移入して一気読みでした。
途中、読むのが苦しくて苦しくて、どうしょうもない箇所があり、「もうやめてあげて」と思わずつぶやいていました。
ビリアードのブレイクショットのように、手球がぶつかって、お互いの球が干渉していくように、物語も数珠つなぎのように繋がっていくさまは、流石でした。
今年の読んだ中でもベスト3に入る小説でした。
・追伸
直木賞、獲って欲しかった。非常に残念でした。
ブレイクショットに関わった人たちが必ず不幸になるので、映像化する際の車選びに -
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ネタバレもう一気食い、あ、しまった、タイトルに引っ張られてしまった、一気読みでした。
面白い。なんと巧みな構造。
あ、以下、ネタバレしますので、未読の方はご遠慮ください。
恋愛関係にも依存関係にもないけれど、互恵関係にある小鳩君と小山内さんの高校二年生の夏の出来事。
二人は今日も今日とてこの不可思議な関係を維持して、小市民を目指すべく日々を穏便に送っていく・・・はずだった。
なのに、はじめっから違和感が。
第一章の「シャルロットだけはぼくのもの」は二人の腕試しのような可愛らしいエピソードでしたが、違和感。
・なぜ小山内さんは急に行けなくなったと連絡してきて小鳩くんにおつかいを頼んだのか
・なぜ小 -
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史実とフィクションを掛け合わせることで、まるでその当時、その場所で、確かに彼らが出会い、物語を紡いでいたと、錯覚してしまうような没入感で、胸に込み上げてくるものがあった。
フィンセントとテオの互いを思いやる気持ち、苦悩と葛藤、すれ違う姿に心が苦しくなる。
もっとも大切な人であり、お互いがお互いの全てであり、まるで呼応するかのように生きていた。
1番理解したいと思い、それでいて理解しきれないもどかしさ。
幸せな場面が描かれれば、かえって切なさや孤独を感じてしまう。
生きている間、世の中に理解されなかったフィンセント。それでも、周りの人々が彼の才覚を感じとり、渾身的に支え、来るべき時、次世代に -
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ネタバレ「月の満ち欠け」「鳩の撃退法」が合わなくて、もういいかなぁと思ってた佐藤正午。え、ムッサオモロい…いや凄いやん、とビックりした。
最後の最後まで上記偏見を持って読んでたのが良かったのか?、熟柿の意味が心にジーンって染み渡る。再会とその後の千葉駅での電話のシーンがもうグイグイと心に沁み込んでくる。
親の愛とは、贖罪とは…。主人公みたいな罪を犯すことは滅多にない(あってはいけない)事だけど、生きてきた中で小さな失敗や自分でつけてしまった汚点はあるもの。それを背負って生きていくことの覚悟、覆い隠す行為の辛さ醜さ、親としての矜持と覚悟、そして子供としての向き合い方…もう色々と身につまされることが多