あらすじ
思いがけないきっかけでよみがえる一生に一度の恋、そして、ともには生きられなかったあの人のこと――。大胆な仕掛けを選考委員に絶賛されたR-18文学賞大賞受賞のデビュー作「カメルーンの青い魚」。すり鉢状の小さな街で、理不尽の中でも懸命に成長する少年少女を瑞々しく描いた表題作他3編を収録した、どんな場所でも生きると決めた人々の強さをしなやかに描き出す5編の連作短編集。(解説・吉田伸子)
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Posted by ブクログ
冒頭からグッと心を掴まれ、その先の展開が気になって読む手が止まりませんでした。
リアリティに満ちていて目を覆いたくなるような描写もありましたが、現実を突きつけられた気がしました。
さまざまな登場人物は、水槽を泳ぐ魚として描かれています。
自分の居場所を求めて、今いる場所に留まる魚、旅立っていく魚、戻ってくる魚、死を選ぶ魚。
それぞれが、水槽しか知らない魚たちです。
彼らは悲しみも苦しみも循環し昇華してくれる“海"の存在を知りません。
しかし、人との出会いによってその海の存在を知り、それぞれの幸せを見つけにいく物語で、「自分の居場所」「幸せ」「大切な人」「約束」「生きる」について深く考えさせられました。
各短編小説が絶妙に絡み合う構成もとても素敵でした。
「大切な人」がどこか遠くに離れてしまったとしても、その人は心の中で生き続けます。
自分が離れる側になったとしても、誰かにとってそうであるのかもしれません。
もし別れが訪れると分かっているのなら、後悔する前に「大切な人」であることを、言葉だけでなく態度でもきちんと伝えたいと思いました。
その人の心に残ろうと別れを選ぶくらいなら、そばにいられる道を選びたい。
それでも一緒にいられないのなら、「あなたは大切な人です」と伝えておきたい。
ーーそんな思いを抱きました。
Posted by ブクログ
おおよそ、同じ町を舞台とする5編の短編小説であり、登場人物それぞれが生々しい苦しみを抱いている。
それは過去の悔やみであるものもあれば、生来のもので向き合っていくしかない苦しみもあり、それぞれの渦中で巻き起こっていく。
恥ずかしながら、読んでいくうちに『この物語はどういうふうに他の短編と繋がりがあるのだろう』という好奇心を抑えられないで読む自分がいた。
しかし、最後の短編『海になる』でそれを悔やんだ。
というのも、話の最後に『うみのいりぐち』という助産院が登場し、「この中では世界中の哀しみや苦しみから逃げられる」と言われる。これを受けて、それまで狭まっていた視界が大きく、大海を見下ろすように広まったように感じた。小説内の繋がりのみならず、現実世界の、万人の苦しみと繋がっていたのだ、と思った。
現実世界で苦しむ人々が、この本を読んでそれぞれの思い描くチョコレートグラミーとして、暗い夜空の中で、見えない繋がりと慈愛を思い出せることを願う。
Posted by ブクログ
夜空に泳ぐチョコレートグラミー
町田そのこ
読ませる力が強い。
残酷で、温かい物語たちが、緩やかに、密接につながっている。
希望に満ちてるわけでは決してないけど、優しさはある。
優しさがないと、絶望しか残らない。
ひとから叩かれたら痛い。
だけど同じことができる手のひらを、自分も持ってる。
叩かれるのは、痛いのは嫌だ、だから、叩かないことを選びたい。
Posted by ブクログ
前からタイトルが気になっていて、ようやく読むことができた、町田 そのこさんのデビュー作品で、5編の連作短編集。
『52ヘルツのクジラたち』や『宙ごはん』、『星を掬う』同様に心にズキズキと突き刺すような描写が多いけれども、決して嫌な読後感にならないのが、魅力の作家さんです❗️
また『うつくしが丘の不幸の家』のように、少しずつ物語が繋がっていて、読後にはこう繋がっていたんだと、ちょっと驚いてしまうのも魅力のひとつではないでしょうか⁉️
個人的に好きな話しは、『波間に浮かぶイエロー』と『溺れるスイミー』ですが、特に『波間に浮かぶイエロー』は群を抜いてお気に入りの作品です❗️
時々読み返したいと思える素敵な話しでした。
Posted by ブクログ
やっぱり町田さんの本はすらすら読める。
溺れるスイミーが特にすきだった。なんとなく日頃感じてるモヤモヤを、宇崎くんが撫でてくれるような錯覚になる。終わりは切なかったけど、後味は不思議といい。
読んでよかった。
Posted by ブクログ
とても切なく、儚いストーリーでした
この人といたら絶対に幸せになれるだろうと思う相手と離れ離れになるシーン。とても心惹かれました
私もこんな小説が書きたい!と心から思う1冊でした
ノスタルジックな話が好きな方にはとてもおすすめです
Posted by ブクログ
巻末に描かれていた事、読む中でも感じた「ここではないどこか」と「ここ」を選ぶ事。私はきっと後者なんだろうな、前者になりたいけどなれない自分を見つめて、「ここ」で生きる術を身につけないとなと考えるきっかけになる作品でした。
Posted by ブクログ
全ての短編に引き込まれた。
人生という海をそれぞれの泳ぎ方を見つけたり、選択していく登場人物たち全員に、自分はどう泳いでいくか、どんな魚になっていくのかを考えさせられた。
題名にもなった夜空に泳ぐチョコレートグラミーが好きだった
Posted by ブクログ
なんだこの本は…!!これがデビュー作…!?
衝撃だった。こんなに、人間の言葉にできない感情や行動、意図を言葉で表せることができるなんて。全ての人が、抱えるものへ向き合い、前を向いて生きようともがいている、そんな作品だと感じた。涙が出た。私も、こんなに強く生きられるだろうか。優しさと強さが、最初から最後まで感じられる一冊だった。
Posted by ブクログ
町田そのこさんの本を初めて読んだ。映画は飛行機の中で「52ヘルツのくじらたち」を観たことがあって、きっといい話だろうと期待して読んだ。
短編五篇の連作もの。特に初めの二篇が、単独の作品としても繋がりものとしても、とてもよかった。
一編めのミスリードには、綺麗に合気道の技を貰ったような感覚だ。
二編目の表題作の主人公、晴子さん(小六)が夏休み直前に「孵化」する様が最高だ。
懸命に生きるってやっぱり素敵なことで、ひとを貶めたり侮辱したりする権利なんて、どんなにエラいひとにも、カースト上位の人にも無いのだ、と言う当たり前のことに気付かされる。
辛い場面は多々あるものの、読後感はとてもよいので、別の本も読んでみよう。
Posted by ブクログ
ここではないどこかで生きる誰かと、ここで生きる誰かを繋いでいる愛についてのお話だと思った。絶望の向こうにある希望が切なくて美しい。それぞれのお話の繋がりかたも良くて、連作短編集の魅力が詰まってた。
Posted by ブクログ
生きるということを考える1冊だった。
なんで恋人を置いて自殺したのかとか、愛しているのに一緒に住めないのとか、『なんで』と思うことが多かった。だけど、それは私にとっての普通の感覚がそうさせるのてあつてきっと他の人にはその人にしか分からない生き方があるんだろうなあって思った。
生き方に正解があったら、誰も悩まないしね。でも正解なんてないからみーんな悩んで苦しんで生きてるんだよね。
短編だけど、お話が繋がっててすごくスルスルと読めた。ずっと気になってる作者だったから、この作品を最初に読めて良かったなと思う。
Posted by ブクログ
圧倒的に引き込まれる文章力とサラッとしているのに深い読後感に感動した、、今年一かも
どの短編も良かったけれど個人的にはカメルーンの青い魚が1番好き。構成力というか、文体ならではの仕掛けが組み込まれていて最後は本当に切ない
一匹死んでしまったことがこの先りゅうちゃんとは共生できないことを比喩しているみたいで本当に苦しくなった
Posted by ブクログ
文体が不思議で優しくて、海が好きなわたしにとってはとっても心地よい作品だった
「波間に浮かぶイエロー」の環さんが人間らしくて一番好きな短編
わたし自身も最期は海に散骨してもらいたい、とふと誰かに言ったことを思い出した
あまり好きではない母親と同じ思考で笑ってしまったし、やっぱり最期はみんな海に帰るんだなぁ
Posted by ブクログ
面白かった。
なんだか不思議な読後感が味わえました。
爽快な余韻ではなく、微妙読み終わり。
後書きにも書いてありましたが、書き出しの
引き込まれ具合がよい。でもどこにつながるの?
と期待しながら読む空気感がよかったのですかね。
「波間に浮かぶイエロー」が好きでしたね。
Posted by ブクログ
何回読んでも大好きな本。短編だけど全部繋がってて、私が大好きなタイプの一冊。
チョコレートグラミーっていう魚の名前がまず可愛いけど、飼育は結構難しいらしい。熱帯魚って狭い水槽の中で泳いでて何考えてるかわからないけど、人がそれぞれ必死に生きてるように魚ももヒレ動かして生きようともがいてて、なんだか人も魚も愛おしくなった気がする。人の居場所と生き方って難しいと改めて思った、1人で生きてるわけじゃないから。
他の作品で「死は恋を盛り上げる」的な文があってそれを思い出した。なんとなくサキコとリュウちゃんのお話は、おばあちゃんの死によってより一層生を際立たせているなと思った。啓太の誕生しかり。
とても綺麗な短編連作集でした。どのエピソードも出だしの一行で続きが気になりあっという間に読んでしまいました。そしてラストの胸が暖かくなる光が指すような締め。お見事でした。
匿名
今この瞬間に出逢えてよかった
人には浮き沈みがあるが、ひどく沈んでいる時にこの本に出逢えた。壊れそうなほど生々しく辛い事象達がずらずらと並んでいるのに、最終的には力強く前を向いている。まるで今の私に前の向き方を教えてくれる教科書のようだった。ぜひ読んでください!
匿名
短編集なにの長い長編を読んだみたいでした。
物語の登場人物が繋がってるのでそんな感じがするのかもしれませんが、読み終えた後の感動は凄かったです!
どれも前向で自分の心を強くしてくれた気がします!
夜空に泳ぐチョコレートグラミー
町田そのこ先生の連作短編集。彼女のデビュー作でもあります。
デビュー作?と聞き返したくなるほどの完成度です。
どの短編もぐっと引き込まれる魅力があり、切なくて愛しくなります。
Posted by ブクログ
4.0/5.0
世の中の隅っこで、もがき苦しむように生きている人々にスポットライトを当て、最後は希望を持たせて締めくくる、力強く、優しい物語だった。
Posted by ブクログ
ずっと気になっていた、初読みの作家さん。
連作短編集となっている本作の1篇目は町田さんのデビュー作らしいが、そんなことを思わせないくらい登場人物たちの息苦しさが生々しく伝わってくる。この連作集では、登場人物たちが今いる環境が息苦しくてここではないどこかへ逃げようとするか、その地で必死で息をしようとしている。
晴子のように殻を飛び出して新しい自分と向き合おうとする人もいれば、唯子のように差し伸べられた手を断ってその地に留まる人もいる。どんな選択をしても、それは間違った選択ではなく、それぞれの短編の主人公たちを応援したくなるような結末が待っていたのが救いだった。
Posted by ブクログ
水槽のおおきさは、うまれもって、きめられている。水槽のおおきさで、魚のおおきさも比例していくというけれど、ひともきっとそうなのではないかとおもった。ちいさな街。展望台から見下ろせるくらいの、それはそれは小さな。そこからもがきたいと、広いところを目指すひとや、そのもがき方は違うと自分なりの最善を探し続けるひとや、留まってなにをすることもせず受容するひと。水槽での過ごし方の正解はない。「いつか旅立てると思えるその日まで、私の中にいたらいいんだよ」と、わたしが今過ごしている街にも、そう包んでもらえてる気がした。さいごは海にかえる。そうして、みえないわたしになって、ひろい世界へと広がっていったならば、世の人々を包むなにかに成り行けるのかな。
Posted by ブクログ
町田その子さんの『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』
5つの短編から成っています。登場人物は少しづつ重なっている感じです。
「カメルーンの青い魚」
サキコは、中学生の時に幼馴染のりゅうちゃんのケンカを止めに入り前歯二本を折ってしまう。サキコの前歯は差し歯になった。中学校卒業と同時にりゅうちゃんは町を出るが、ヤクザをやっているとか、悪い噂ばかり入ってきます。しかし、数年後に彼はサキコの祖母の通夜にフラリと帰ってて…。
「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」
ほぼ話の主役は晴子という中学生の少女。晴子は母親とほとんど断絶した関係にあり、祖母・烈子に育てられてきました。クラス内でいじめを受けることが続いた晴子ですが、夏の間新聞配達のアルバイトをしている同級生・啓太と出会い、少しずつ心を開いていきます。ある日、おとなしい晴子はいじめっ子のクラスメートを殴ります。
「波間に浮かぶイエロー」
軽食ブルーリボンのオーナー芙美さんは「おんこ」だ。そんな芙美さんの元に、昔の同僚環さんが転がり込む。環さんは妊娠していました。おそらく不倫している夫には知らせず子供を産むと言います。芙美と従業員沙世と環は共に生活を始めます。芙美さんは、赤ちゃんの啓太の面倒をみたこともあり子供を育てることが手伝えると言います。
「溺れるスイミー」 —
主人公の唯は幼少期に父を失い、以後は母と二人で暮らしてきます。唯は地元のお菓子工場で働いており、同僚との結婚の話が持ち上がるなかで、自身の生き方について迷いが生じます。唯はやがてトラック運転手の宇崎と出会い、父親のような「移動する生き方」に惹かれていきます。
「海になる」
3回の流産のあと子供を死産し、夫に暴力を振るわれるようになった桜子。
貧血で倒れた時、雪が降る中ネグリジェ1枚で夫に外に追い出された時、助けてくれたのは長髪の男性・清音だった。そして今まさに命を絶とうとする桜子の前に清音があらわれます。
どの話にも強い女性が出てきます。1人で子供を育てる、若くして自立を決意する、子供の産めなくなった身体を抱えて生きていこうとする。
町田その子さんの作品はたいてい女性が主役である気がします。
現代という生きづらい世の中で、苦しみながらそれでも立とうとする女性が描かれています。
わたしが好きなのは「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」かな。
「そして初めての世界があの魚にとって優しいものでありますように。生きやすい場所になりますように。」
Posted by ブクログ
町田さんが描かれる人々の、不器用さと優しさが好きです。
短編集だと、のめり込み感が少ないかな?って思ったけど、それぞれの話がちょこっとずつ繋がっていく感じが好きでした◎
また再読して、もっと深めたいと思う1冊です。
ベスト1節 p96
「この水槽の中で哀しい思いをしないように、辛い思いをしないように、私が守ってあげる。焦らなくっていいんだよ。あんたのペースでいい。いつか自分で旅立てると思えるその日まで、私の中にいたらいいんだよ」
Posted by ブクログ
初読みの作家さん
今までずっと合わないと思い込んでいたが一気にファンに。
今いるこの場所「ここ」で生きるのか、「ここではないどこか」へ行き人生を歩むのか。様々な環境に置かれている人たちを描いていた連作短編集
置かれた場所がすべてではなく、あくまで自分がどうするのか。
自分の意志で選択する場合も、置かれた立場からそうせざるをえない場合も、自分のいる場所を足場をどこにするのかどう生きるのか。
生きづらい日常を少しでも呼吸しやすいように、一歩を踏み出せるように寄り添う優しい物語。
Posted by ブクログ
泳ぐ 愛情と友情、生と死、幸福と孤独、親子、夫婦、仲間、色々な中をタイトル通り泳がせてもらいました。夜空に泳ぐチョコレートグラミーも連作短編で輝いていました。生きていこうという活力は貰えませんでしたが、生きていくのだなぁと考えさせられました。溺れるスイミーの時に公園で読んでいましたが、生きづらさに涙してしまいました。さすが、町田そのこさん、デビューからかっ飛ばしていました!
居場所を探して
人との繋がりや家族の在り方に揺れながら小さな水槽の一匹だけのメダカと同じで孤独を感じながらも今とは違う自分の居場所を求め広い世界へ飛び出そうとする登場人物達の姿が大きな水槽でのびのびと泳ぐ熱帯魚達と重なりました。
Posted by ブクログ
うーん。
デビュー作っていうこともあるのかもしれないけど、52ヘルツを読んだ後にこちらを読んだからか、ちょっと物足りなさを感じた。
再読したらまた印象が変わるかもしれない。
Posted by ブクログ
5編からなる短編集。
少しづつ繋がっているけど、どれも出だしでグッとつかまれる。
そしてどの話も主人公が重たい物をかかえている。
目を逸らしてはいけない問題だけど、ちょっと重すぎるかな…
町田さんはどんな思いでこんな重い話を書くのかなぁ?と読みながら考えてしまった。
Posted by ブクログ
章ごとの主人公の置かれている状況が辛くて、
何度か読むのをやめそうになった
絶対的味方だと思える人が1人でもいたら
どんなに辛くても生きていける気がした
1人でも生きていける強さが欲しいけど、
この人となら一緒に生きていきたいなって思える人と出会いたい
Posted by ブクログ
短編集なので読みやすかったが、内容が結構重い感じで読んでいて苦しくばるところもあった。私はちょっと苦手なジャンルかもしれない。
でも表現力がとても素晴らしかったと思う。
また町田さんの違う小説にチャレンジしてみたい!