小説・文芸の高評価レビュー
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Posted by ブクログ
こちらもまた初読みの作者さん。
時々レビューで見かける「アルバトロスは羽ばたかない」が面白そうで、その前の巻から買ってみた。
様々な事情を抱えた子どもたちが暮らす児童養護施設・七海学園で起こる不思議な出来事の謎を、主人公の保育士・北沢春菜と児童相談所の児童福祉司・海王が解き明かしていくお話。
と書いてしまったが、いわゆる“日常の謎”系の話ではあるのだが、謎解きだけでなく、それに絡んで語られる施設の子どもたちの生活や行動がしっかり書き込まれていて、それらが興味深く読めるところが良い。
暗かったり辛かったりする話も多いが、幼い頃から一緒に育ったメンバーが互いに相手を気遣う第五話をはじめとして、そ -
Posted by ブクログ
語り手の「ぼく」を通して、彼が生きていくうえで必要な存在としてのスミレ、そしてスミレが愛するミュウという二人の女性が描かれる物語だった。
スミレは性欲を含めた全存在としてミュウを求めるが、ミュウは過去に身体的欲望を自らから切り離す選択をしており、その思いに応えることができない。
ミュウはそうして自分の一部を封印することで生き延びてきたが、その代償として内的な人生の道標を失っている。
一方で「ぼく」は、スミレから性的対象として見られることはなく、痛みを抱え続けながらも、その痛みを含めてスミレとの関係を大切にし続けることで、人生を前へ進めている。
自分の一部を失ったミュウと、そんなミュウを愛す -
Posted by ブクログ
立場の異なる二人の女性の友情とすれ違いの物語。
相手を理解したいという思いや努力が、むしろ理解できない現実を浮かび上がらせ、相手とつながれない関係(=自己防衛)になる様子を上手に描いている。
高校生の頃、葵は当時の友人のナオコと深い関係にあった。しかし、ナオコは相手が変わってしまって、「以前のようには話せないかも」と恐れるがあまり、葵と再びつながる関係にはなれなかった。
大人になってから、仕事で仲のよい関係となった小夜子とは一度は同様につながれない関係となるが、再度一緒にいるようになる。
無理に理解しあおうとせずとも、存在を無視しあわないことが、最終的な人間関係として自然な状態である様 -
Posted by ブクログ
ネタバレ店頭で見つけて、パラパラめくって即購入。めちゃくちゃ面白かった。ありのままの自分でいるってこういうことだと思う。
1つ気づきがあった。自分は、安定志向だと思っていた。しかし、よくよく考えてみると、夢中になってもすぐ飽きるし、やりたいことがいくつも浮かぶタイプだった。
なぜ勘違いしていたか。おそらく、私が本来求めていたものが「心理的安全性」だからだと思う。幼少期は、親の思い通りに振る舞い、抑圧されるままに過ごしていた。自分を解放することと、安全な時間を過ごしたいという欲求を、混同してしまっていた。その結果、「自分は安定志向だ」という誤認に繋がっていた。
その後、色々あって、心理的安全性が満たされ -
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続けてドイツ人作家の小説。本作の著者フェルディナント・フォン・シーラッハは、ナチ青少年最高指導者の孫だと云う。そんなの関係ねー!と思いつつ、不穏感が湧いてくるのが正直なところ…。
著者は弁護士の傍ら小説を書き始め、デビュー作の本作でドイツのクライスト賞、日本で2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位を受賞。11篇の連作短編集ですが、それぞれにつながりはありません。
タイトル通り、罪を犯した人々の物語です。著者が実際に携わった刑事事件から着想を得たそうで、まるで11の刑事事件の実録?というほどリアルな印象です。しかし、ただの事件の羅列ではなく、描かれるのは人間の挫折・罪・素晴らしさです