小説・文芸の高評価レビュー
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とても読みやすい短編集。吉本ばななさんの素敵な言葉の数々がすっと心に染みる、そんな読書体験ができました。
「生きているだけで息が苦しいくらい幸せなんだ。左足を出す。そして右足を出す。地面を感じる、進んでいく。それだけて嬉しいくらいに。」という一文がとてもお気に入りです。幸せの程度を表すのに苦しいという強い感情を使っているのに、その後が具体的に小さな描写なのがいい。世界が足元に収束している感じが。それだけで嬉しいくらいに。この結びがすごく誠実で、ちょっと切ない。「十分だ」と言い切らず、「くらいに」と余白を残しているから、
読み手の今日の気分がすっと入り込める。
他にも吉本ばななさんの文章は素敵な -
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本作は、喪失の「その後」を描いた物語でありながら、終盤に向かって一気に世界の見え方が変わる作品だった。特にラスト50ページは、それまで積み重ねられてきた静かな時間が一気に意味を持ち、衝撃と感動が同時に押し寄せてきた。悲しみを抱えたまま生きることの苦しさだけでなく、それでも人が前に進もうとする瞬間の強さが、胸に深く残った。
また、舞台となる田舎の人間関係の描写があまりにもリアルで、その生々しさに驚かされた。表向きの優しさや距離の近さの裏にある噂、干渉、無言の圧力が、決して誇張ではなく日常として描かれている。その「グロさ」があるからこそ、登場人物たちの孤独や息苦しさが説得力を持って伝わってきた。閉 -
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本作は、恋愛や友情といった明確な枠組みでは捉えきれない二人の関係性を描いた物語だと感じた。互いに強く依存しているわけでも、常に寄り添っているわけでもない。しかし、それでも確かに「この人がいる」という事実が、登場人物たちの人生を静かに支えている。その距離感の描写がとても繊細で、誰かと生きることの不安定さと温かさの両方が伝わってきた。
物語には残酷さや孤独が多く描かれるが、それらは決して誇張されることなく、淡々とした筆致で語られる。その分、救いもまた控えめで、劇的な変化は訪れない。それでも、暗闇の中に差し込むわずかな光のように、相手の存在そのものが希望として機能している点が印象的だった。「何かをし -
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ネタバレこんな形で、本の題名が回収されるとは。
とても辛い話だった。なにか救われたのだろうか。
一体、どこまでが彼らの心に残った出来事だったのだろうか。
読み進める手が止まってしまうことが多かったけれど、彼らが触れ合った手の温もりを想像せずにはいられなかった。
とにかく描写が細かくて、とても感情移入できたからこそ、辛かったのだと思う。
辛い話だったけど、彼らの世界、存在を覗き見できて良かったと思う。三秋縋さんはすごい。
こんな悲しくて悔しくて、儚い落とし所があるんだ。
2人の中で幸せならそれでいいと思えた。
あとがきにあった「落とし穴の中で幸せそうにしている人」がまさにこの本のことだと思った。そして -
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人間の業を感じた。石見銀山の史実を元にしながらも女性や山や銀掘の関係を生き生きとそして冷静で深く向き合いながら書いている。
夜目がきくウメと山師の喜兵衛は蛇の寝ござを始めとして生い茂る草木を見分け天気の変わり目の空気を感じ生命の息吹たる山の地脈と対話しながら銀掘を使っている。それが貨幣経済に頭を支配されて銀を富としか見ない権力者が管理するようになったら。途端に間歩はぽっかりと冷たく暗い口を開け銀掘たちはその闇に飲まれて黒い血を吐き胸を病んでしまう。それでも営みを続ける者たち。銀を生み出すこと、女であること、命を生み出すこと、血が繋がらなくても伝え繋がっていく者たち。
後半は隼人が血を吐き苦しん -
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ネタバレえ、あの、びっくりするくらいおもしろかった。
元々ラノベ書いてる人だし読みやすさ重視の軽めの文章感なんだろうなとかドドド偏見のもと読み始めたところ、取っ付きやすい読みやすさかつテンポの良さと普通に面白い人物たちのやり取りに全然ページをめくる手が止まらなくなってた。ラノベ感なんて、3人のわたなべくらいなもんな気がする。それくらいちゃんと物語としておもしろかった。
あともうひとつだけ言うとしたら、これは偏見とは関係なく、千葉さん大丈夫かな…ってところ。お母さんに託されたわけではまぁなかった思うけど、お母さんが死んじゃった時鋼太郎はそばにいなくて、千葉さんは一人で大丈夫だったんだろうか。あでもそう -
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長谷川十和(小6)は、母の薦めで塾通いをつづけるも、やる気になれない日々を送っていた。受験、親友、そして家族。それぞれに悩みを抱える中、十和はある決断をする…
「アルプスの母」は高校野球を通した親子の成長物語だったが、本書はその中学受験版。自身の受験生時代を思い出し、やがて来るであろう我が子の受験を想像しながら読んだ。
私も中学生に入ると同時に、半ば強制的に塾に通わされた。将来の夢も無い中での塾通いで当初は戸惑いもあったが、通ううちに志望校も固まり塾内の友人達と切磋琢磨しながら勉強するのが楽しかった。大学受験も然りで、高校及び予備校時代の仲間とは今でも親交が深い。
まさに“目標を定めて、その -
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作者円熟の極致。とにかく読みやすい。画家の孫の生涯と祖母の社会主義者の生涯が交互に語られていく。祖母も孫も、政治、宗教のそれまでの体制と徹底的に対立する。そして、ヨーロッパ中心主義や男性中心主義やブルジョワジーを超えて、どこまでも絶対的な自由や平等=楽園を探し続ける。バルガス=ジョサの作品として新しい。というのも、これまで彼は何かを批判的に描くことはあっても、積極的に何か理想を強く描くことはなかったからだ。もちろん理想=楽園なので、完全に実現されることはなく、孫の生きざまも祖母の生きざまも矛盾に満ちている。でも、それでもかまわないのだ。何の理想もない人生のほうが虚しいのだから。この作品になると
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派遣社員として働くOLが、社内ベンチャー制度に応募して、沖縄産さとうきびを使ったラム酒作りに情熱を捧げていくサクセスストーリー。
様々な困難を、持ち前の真心と行動力、そして周りの人々の支えや応援も得て、ひとつひとつクリアしていく姿に、沖縄の離島に吹くやわらかな風のごとき爽やかさを感じる。
セリフのところどころに登場する沖縄言葉もいい味出している。
「旅屋おかえり」「本日は、お日柄もよく」に並んで、個人的マハさんランキングに入った。
最近、仕事にやりがいを見失いかけてクサクサしてたけど、読んだらなんだかちょっと救われた気分に。
たまたまだけど、このタイミングで読むことができた僥倖に感謝★ -