あらすじ
遠い地で、見知らぬ男と海に消えた恋人――
●一穂ミチ3年ぶりとなる待望の長編
『光のとこにいてね』(島清恋愛文学賞受賞)、
『ツミデミック』(直木賞受賞)、
『恋とか愛とかやさしさなら』(本屋大賞ノミネート)と、
次々と話題作を発表する一穂ミチさん。
3年ぶりの長編となる今作は、
一穂さんが「いつか書きたかった」という、
「不在」と「喪失」の物語となりました。
互いに秘密を抱えながら暮らす
男女に訪れた突然の別れ――。
喪失を通して愛を問う、大人の恋愛小説です。
〔あらすじ〕
タクシー運転手の青吾が仕事を終えて家に帰ると、帰宅しているはずの恋人・多実がいない。
翌日以降も戻る気配がなく焦りを募らせる青吾のもとに、
<多実が見知らぬ男性と五島列島の遠鹿島で海難事故に遭い、
行方不明になった>というしらせが届く。
謎の多い事故の真実を求めて、
男の妻だという沙都子と遠鹿島へ向かう青吾。
多実の人生のかけらを拾い集める旅は、
青吾自身の過去をも照らしながら、
思いも寄らぬ場所へとふたりを導く――。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
最後の頁で涙が溢れて止まりませんでした。
互いに秘密を抱えて暮らす男女に訪れた突然の別れ……。突然失踪した同居女性と夫を探す男女の物語。恋人多実が見知らぬ男性と五島列島で水難事故で行方不明に……。
悲しくて切ない作品てすが、謎解き要素もあって、続きが気になって読むのを止められませんでした。信じたいけど不倫かと思わせるところから、テレカで過去の多実と公衆電話で話す青吾の不思議な現象や、閉鎖的な島と人々の印象。先の読めない展開の末の結末……。
随所にででくる練り上げられた比喩表現の数々
に圧倒されながらも文章力にスルスルと最後まで堪能させていただきました。最後は泣くしか出来なかった。読み応えある一作でした。
Posted by ブクログ
アフター・ユーとは、お先にどうぞ、という意味。つまり、私はあとでいきますから、ということ。
以前、ホテルのエレベーターを降りる時、外国人の男性に順番を譲られて先に降りたことがあります。その時に、手のひらを出して言われました。
大切な人を見送る時、私もあとから逝きますからねと言ってあげてください。あちらでまた会えますからね、と。
愛する人をこの世に残して旅立つ人はもちろん辛いでしょうが、残された人はもっと辛いかもしれません。
何気なく過ごしてきた日常から一緒に居た人が急に居なくなるのは、どれほど辛いことでしょうか。。。
このお話の主人公、川西青吾(かわにし せいご)さんは、都内でタクシーの運転手をしています。デパートの和菓子屋さんで働いている中園多実(なかぞの たみ)さんと一緒に棲んで10年になります。
9月のある日、多実さんは一泊旅行に出かけます。「お土産、楽しみにしてて」という言葉を残して早朝に出かける多実さんを青吾さんは布団の中から半ば眠りながら送り出しました。行き先すら聞いていなかった青吾さんは、翌日には多実さんは帰ってくるものと思っていました。
しかし、多実さんが帰ることはありませんでした。。
多実さんが出かけた先は、長崎県五島列島の遠鹿島(おじかじま)でした。青吾さんは、ある人と遠鹿島へ向かいました。そこには、多実さんの、そして青吾さんの過去にも繋がる悲しい現実がありました。。。
この作品には『光のとこにいてね』のように光が出てきます。そして光は強いほど黒い影を作ります。
また、この作品には『ツミデミック』のように罪が出てきます。傲慢で自分勝手な罪を犯す人がいて、それに翻弄される人もいます。
人の明日のことは分かりません。
だからこそ、今日という日を大切にしたい。
好きな人にはちゃんと好きだと伝えておきたい。
そう思える、わたしにとって大切な作品となりました。
悲しくて切ない作品てすが、謎解き要素もあって、続きが気になって読むのを止められませんでした。
随所にででくる練り上げられた比喩表現の数々も力量高い作者だからこそのもの。
控え目に言って、傑作だと思いました(あくまで個人の感想です)。
みなさまの感想を読むのも楽しみです♡
どうぞ、アフター・ミー♡
Posted by ブクログ
読み終えてすぐ、この感想を書いている。
だから、苦しくて、腹立たしくて、愛おしくて、哀しくて、混沌とした気持ちのままにいる。
ただただ、善い人が幸せになって、悪い人が幸せになれない世界であればいいのに。善い人とか悪い人とか、下手な表現しかできなくて情けないし、主観的で、勝手で、馬鹿みたいだけれど。それでも、何も報われない人もいれば、相応の罰を受けない人もいる世の中は、残酷だ。
二人の命を奪ったのは何だったのか。何かが違っていたら、誰かが手を差し伸べていたら、気持ちに素直でいることができたら、結末は違ったのだろうか。真相に近づくにつれて、切なさで胸が苦しかった。
何も知らずに、頭の中で生きている存在を愛し続ける方が幸せだったのだろうか。答えなんてないし、考えても意味がない。だが、青吾と母との再会は救いになると信じている。最後はただ、これからも生きていく二人が幸せでいられることを願った。
Posted by ブクログ
一穂ミチはどちらともつかない吹っ切れない気持ち、人間であるがゆえの惑い…或いは狡猾さを描くのが上手い。今回は『喪失』をテーマにしており、底の知れない悲しみ苦しみ、そこからどう這い上がっていくのかを、事故の真相を紐解きながら描いている。
東京で暮らしていた青吾。しかし舞台は長崎の五島。自然環境だけでなく人との関わり方まで真逆の舞台。この田舎の狭苦しく逃げ場のない状況は、人に隠れて生きてきた青吾の人生を効果的に浮き上がらせている。
非常に読みやすく、面白い。
展開が気になって読み終わるまで頭から離れない!
Posted by ブクログ
一穂ミチさんの新刊。
今までの作品とはちょっと違う雰囲気のお話だった。
彼女である、多実が旅行から帰ってこなくて、青吾が知らない場所で、知らない男の人と、事故に遭ってそのまま行方不明に‥
最初は不倫か?と読み進めていたが、調べていくうちにどんどん多実の過去のことを知っていく青吾。
青吾は長く多実と一緒に暮らしていたのに、多実の過去のことを全然知らなかった。
もっともっと話をすれば良かった。
一緒にいる時間をもっともっと大切にしていれば良かった。
少し謎解き部分もあり、一気に読んでしまった。
今一緒にいる人を大切にしようと思った。
一緒にいる時間を大切にして、過去のことも今現在のことも、たくさん話して過ごしたいと心から思った。
ーー死んだから会えないのと、生きているのに会えないことはどちらがつらいのだろう、と答えが出るわけもないのに考えた。ーー
2025.11.30(日)
Posted by ブクログ
一穂ミチさんの新作は、これまでの作品とは一味違うミステリータッチの物語だった。「不在と喪失」がテーマだという。
東京でタクシー運転手をしている青吾の恋人・多実が行方不明になる。警察に行方不明者届を出した彼のもとに、海難事故に巻き込まれた可能性があるとの連絡が届き……。
主人公の青吾が隠そうとしている過去が気になる。読み進むうちに多実の行動の理由も明らかになっていき、すべての謎が一つに収斂していく。
うまいなと思う反面、謎解きの過程でこれをやってもいいのかなという疑問も感じた。
Posted by ブクログ
表現が難しいけど、一穂ミチさんの作品って良い意味で、暗いシーンも暗すぎず感じさせない感じがする。
あとは、情景がパッとその色まで思い浮かぶような言葉の選び方がほんとに好きです。
海が凪いでいる時とか。空を仰ぐシーンとか。
タイトルの言葉選びも好き。
電話ボックスだけかなー。非現実的。
SFっぽい要素?はない方が好み。まああの電話があるから、主人公は前に進めたんだろうけど。
Posted by ブクログ
東京のタクシー運転手の40歳ぐらいの男、青吾。
多実と言う女の子と10年ほど同棲している。多実がある日旅行に出かけたが帰って来ず。長崎の遠鹿島で転覆したクルーザーに知らない男、波留彦と乗っていて行方不明とのこと。
男の妻が来て、調査して、二人で遠鹿島に行く。
30年前ぐらい。
青吾の母親は大阪で青吾を育児放棄して遠鹿島に行きスナックをした。
多実は家がトラブって、4年生の時に遠鹿島に転校。ただ都会からなのでハミる。
学級員長タイプの波留彦は仲良くするが、父親が島の主で不倫もやりたい放題。同級生と恋仲になるも、その同級生も不倫の子とバラされ殺意。
多実、波留彦は青吾の母親の源氏名レイカとはみ出し物同士仲良くなり、離島の島で会うなど。
現代の島をnpoで盛り立てており、波留彦の親友の浦は父親が島外から来て、波留彦の父に我が物顔に消費される島がおかしいと思い活動するが、波留彦の父親にヤクザ雇われて海に落とされて殺される。
それを知った浦はヤクザを殺しに東京へ、波留彦に言われてレイカがつけて行き、ヤクザをぶっ殺し損ねた浦を逃してぶっ殺して放火して無期懲役。
多実はレイカの子供の青吾を探し出して一緒に暮らすが打ち明けられず、島に隠していた母子手帳を取りに行く。浦はその罪が発覚するのを恐れ、また島に主人の息子である波留彦が戻ってくると追い出されると感じ、波留彦と多実が乗った船のライフジャケットに細工した。
話し損ねてることは、話しておいた方がいい。突然いつ死ぬかは誰にもわからない。
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――「自分」を決めるのって、自分じゃないんだなって思わない? 誰かと接した瞬間の境界線がそのまま輪郭になるんだと思う。