【感想・ネタバレ】アフター・ユーのレビュー

あらすじ

遠い地で、見知らぬ男と海に消えた恋人――

●一穂ミチ3年ぶりとなる待望の長編

『光のとこにいてね』(島清恋愛文学賞受賞)、
『ツミデミック』(直木賞受賞)、
『恋とか愛とかやさしさなら』(本屋大賞ノミネート)と、
次々と話題作を発表する一穂ミチさん。
3年ぶりの長編となる今作は、
一穂さんが「いつか書きたかった」という、
「不在」と「喪失」の物語となりました。

互いに秘密を抱えながら暮らす
男女に訪れた突然の別れ――。
喪失を通して愛を問う、大人の恋愛小説です。

〔あらすじ〕
タクシー運転手の青吾が仕事を終えて家に帰ると、帰宅しているはずの恋人・多実がいない。
翌日以降も戻る気配がなく焦りを募らせる青吾のもとに、
<多実が見知らぬ男性と五島列島の遠鹿島で海難事故に遭い、
行方不明になった>というしらせが届く。
謎の多い事故の真実を求めて、
男の妻だという沙都子と遠鹿島へ向かう青吾。
多実の人生のかけらを拾い集める旅は、
青吾自身の過去をも照らしながら、
思いも寄らぬ場所へとふたりを導く――。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

人は
身近なひとが
側にいなくなって
初めて どうしようもなく
大切な存在だったと気付かされるのかもしれない。

ゆっくりと、ゆっくりと、潮が満ちてくるような
ストーリーの展開だった。
その言葉の運びが、心地よかった。

一穂ミチさんの作品は初めてで、優しく静かに流れるように核心に迫っていく様子は、現実離れしているところもあるけど、不自然さを感じさせなかった。

「人生は手が届かなくなってからしか
答え合わせができない。」

私も思い当たる節がある。
今、目の前にいる人と、もっともっと話しておこう。
いつか、突然、目の前から消えても後悔が残らないように。。。

0
2025年12月21日

Posted by ブクログ

ひきづり込まれるように読んでしまった。圧倒的な筆力を感じた。すごくリアルなのであり得ない(ほどよい)設定も、なんの違和感もなく受け入れてしまう。一穂ミチさんの描く小説はどれも、登場人物がこの世界のどこかで存在するかのように思える。

0
2025年12月16日

Posted by ブクログ

今年一良かった。
ミステリーであり、ラブストーリーであり…
人の心の機微を描くのが上手い。さすがとしか言いようがない。
今一番推せる作家だと思う。

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2025年12月14日

Posted by ブクログ

久々の一穂ミチさん。
泣けます!!

途中まで単調で若干間延びしてる感じがありますが、ラストがとても素晴らしい。一気に感動が押し寄せてきます。恐らく、来年か再来年の本屋大賞にノミネートされるだろうと思います。
そのくらいオススメできる感動作です。

0
2025年12月13日

Posted by ブクログ

とても読みやすく、ミステリーめいていて、面白く読みました。最初から最後まで、どんどん引き込まれました。ネット上の広告に惹かれて、最近は読む気をそそられています、これもその一冊。
間違いない面白さです。

0
2025年12月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

私はすごく本作が好きだ!!と思いました。
恋とか愛とか、ツミデミックももちろん良かったです。しかし本作は終わり方に希望が見えたり、公衆電話にテレホンカードを入れると亡くなったはずの彼女と繋がったりと今までの作品とは少し違うように感じます。
特にテレホンカードのところは、現実的ではないけれどでも物語にとても合っていると思いましたし、お話が柔らかく感じました。
私は少しでも希望がある終わり方が好きであり、本作こそ本屋大賞取れるのでは…!と思います!

また、自分だったら恋人が知らない人と死んだと聞いた時どう思うだろうか。
やはり並々ならぬ関係性を疑ってしまう。
けれど、青吾も沙都子は少し違う。
浮気という可能性は考えているけれど、
絶対に浮気だ!!!と思い込んではいない。
だからこそなぜ死んだのか、と追求しようとしている。
青吾と沙都子は、パートナーのことを心から信じていたからこそ真相を見つけようとした。
実際には浮気ではないけれど、浮気が出てくる物語はどろどろしがち。個人的には、そういうどろどろした作品は好みがすごく分かれると思っています。本作も浮気かもという衝撃から始まるけど、相手を信じているというということに清涼さを感じて凄く読みやすかったです。

そして終わり。
亡くなったところから物語が始まるので、
もちろん恋人が生き返るわけではない。
けれど恋人の生きていた、これからも2人で生きていこうとしていた跡を見つける青吾。
すごく胸が苦しく切なくなりましたが、
やっぱり多実は青吾と生きようとしていたと、
そう青吾が知れてよかったと思いました。
始まりは呆然として悲しむ間もないまま進んだので、ここでやっと悲しみ泣くことができるのだろうなと思います。

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2025年12月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

相手のことを何も知らないままずっと同居し続けられるのは私には難しいと思った。ほとんどのことは言わないと分からないし、嘘をつくこともできる。それでも人を信じるしかないと思う。出会いの本当のことを知らないまま過ごしていたと知らないとしても、それでも大切な人がいなくなってしまうのはとても寂しいこと。まさかの殺人という結末でやるせない気持ちだった。現代でも小さい町や村は噂が広まりやすい地域もあるが、噂を気にせず自分で見たものや聞いたことを信じることのほうが大切だと思った。

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

大好きな一穂ミチさんの新刊!
しかも「光のとこにいてね」以来の長編♪‹‹‪⸜(*ˊᵕˋ* )⸝‬›‹‪⸜( *)⸝‬›‹‪⸜( *ˊᵕˋ*)⸝‬››♪
短編一穂さんも、中編一穂さんも勿論好きだけど、長編一穂さんが一番テンション上がる!

実は私、この作品のWEB掲載が始まった時に、無料で読める箇所だけ読んでいたんです!
続きを読みたかったけれど、サイトの有料会員にならないと読めなくて、月額が結構高かったので諦めたのでした…(。•́•̀。)
なので、刊行のお知らせを見た時は、「続きが読めるー!」と、めちゃくちゃ嬉しかった♪

青吾が仕事を終えて家に帰ると、帰宅しているはずの恋人・多実がいない。
翌日以降も多実は帰らず、焦りを募らせる青吾の元に、「多実が見知らぬ男性と海難事故に遭い、行方不明になった」というしらせが届く。

前作も衝撃的なあらすじだったけれど、今作もなかなか衝撃的なあらすじですね( °_° )

一穂さんの心理描写が巧みすぎて、ずーっと胸が詰まりそうだった。
相手との関係性や経緯の相違などはあるのですが、実は私にも似たような経験があり、読みながらその時の心境を思い出した。
私の場合は75%の方でしたが。

当事者なのに書類上の家族ではないことで、事故について重要な部分には関与させてもらえず、疎外感を感じる青吾。
書類上の家族である康二や沙都子との違いが苦しかったし、青吾の心境を思うとやるせなかった。

絶望の中に一筋の光かのように見える出来事があり、そこから様々な謎が解き明かされていく展開に目が離せなかった。

切ない…。とにかく切ない…。
ラストに向かうにつれ涙が溢れたけれど、読後は不思議と心温まる感じがした。
きっと、青吾と沙都子はこれからも力強く生きていくだろうと希望がもてたから。
青吾と多実の間に大きな愛を感じられたから。

そして、余韻がすごい。
あの時の彼女の言葉の意味とか、あの時の彼の行動についてとか、彼らのことをひたすら考え続けてしまった。

みんないつかは経験する大切な人との別れ。
それに直面した時、後悔がない人なんて、きっといない。
大なり小なり後悔を抱えながら、こんな現実は受け入れられない、耐えられないと思いながら、人生を歩いていかなくてはならない。
その時、自分の心を支え、生きていく力をくれるのは思い出なのかもしれない。

✎︎____________

お客さんが小銭探して手間取ってたりしたら、普段は何とも思わないのに、やけにいらいらする日があって、そういう時は、自分のメンタルが落ちてるんだなって自覚するし、逆に、ちょっとした「ありがとう」ですごくやる気が出る日は、あ、ごきげんじゃん、って思う。快不快とか体調って、案外自分ではわかってなかったりするのかもね。(p.6)

「自分」を決めるのって、自分じゃないんだなって思わない?誰かと接した瞬間の境界線がそのまま輪郭になるんだと思う。島みたいじゃない?
(中略)
そう。潮の満ち引きや天気によって海岸線は全然違うでしょ。それで、ほとんどは海の中。外から見えてる姿なんてほんの一部だけ。(p.6)

大丈夫って、この上なく漠然とした言葉だと思った。気遣いっぽく聞こえるだけで、中身は空っぽだ。(p.28)

なぜ自分が何の疑いもなく「あした」など信じているのか、不意にわからなくなった。眠るために目を閉じ、朝が来たら何事もなく目を開ける保証なんて、誰にも与えられていないのに。(p.32)

希望とは不穏なものだと初めて知った。でも、諦めという平穏には至りたくない。(pp.33~34)

頭はちっとも回っていないのに、刻み込まれた日常の習慣が青吾を動かしてくれている。生活とは、何と強固な生命維持装置だろう。(p.43)

しみじみ振り返るほどでもなかったはずのささやかなやり取りは日常が壊れてしまってから光り輝いて見えるし、後悔はいっそう苦い。(p.103)

簡単とちゃうんや、と思い知った。当たり前に傍にいた人間を喪って、生きていくのは。多実がいなくなっても仕事に支障は出ないし、電車のダイヤも乱れないし、コンビニも閉まらない。でもやっぱり青吾の世界は一変して、慣れるというより心を麻痺させる時間を引き延ばしていくしかない。これからずっとそれが続くのかと想像するだけで絶望的な気分だった。死にたい、じゃなく、消えたい、と願った。骨の一片も残さず、この世に存在した事実ごと消滅してしまいたい。(p.107)

『いたこと』って、みんな、どうやって信じてるんでしょうか(p.119)

わたしがあの人を好きだったようには、あの人はわたしを好きじゃなかったのかもしれない。夫がいない日々が増えていくことは徐々に酸素が薄くなっていくみたいに苦しくて、夫と多実さんのことは、皮一枚の下に埋まった抜けないとげみたいに苦しい。しかもどっちも、回復の手段は時間の流れしかなさそうだなんて(pp.137~138)

死んだから会えないのと、生きているのに会えないことはどちらがつらいのだろう(p.160)

傍にいて当たり前の人間を失った後も生活は続くけれど、ふとしたきっかけで悲しみはたやすく日常の堤防を越水してきて、そのたび自分がぎりぎりの状態だということに気づかされる。これをあと何度繰り返せば楽になれるのだろう。(p.240)

過去はいつも後悔を伴う。(p.240)

「泣いててもお腹は空くし、ときめいててもトイレに行きたくなることはあるし⋯⋯身体ってかっこ悪いですね。頭で思い描く、都合のいいきれいさなんか簡単に吹っ飛ばされて」(中略)「それも生きてるからこその醍醐味だって、そのうちに思えるんでしょうか」(p.241)

答えが出ないままたくさんの可能性を考え続けることが苦しい(pp.249~250)

人生は手が届かなくなってからしか答え合わせができない。(p.277)

人間って、情報に飢えるんですよね。こんな狭い島だと、隣近所のきのうの晩のおかずまでエサになる。都会の人が無関心なのって、いちいち首を突っ込まなくても情報のほうから押し寄せてくるせい。(p.282)

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2025年12月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

一穂ミチ先生の新刊!
同棲していた彼女が、男と離島でクルーザー転覆事故の末、行方不明に…。どんな愛憎劇かと思いきや、五島列島での閉鎖的な人間関係と青吾、多実、波留彦に起きた過去と現在の出来事が絡まっていくミステリー風味、キーとなるテレホンカードで多実の会話を聞くことができるというファンタジー要素のあるエンタメ作品でした。重苦しい要素も一穂先生の軽やかなタッチでスイスイ読ませてくれる、さすが。

主人公の青吾が、なんとも言えない、多分イケメンとは言えないどこにでもいるようなフツーの40代男性で、対して沙都子は多分美人で、かなり強めのキャラクター。バディ的な関係の2人のバランスがとても良かった。

作中に出てくるテレホンカードのシーン。
なんだろ…一穂先生らしいなぁと思いました。
前に思いついたアイデアとインタビューで見たので、その時はどんなお話を考えていたのか、気になる…。

最後の親子シーンはぐっときました。
一穂先生が書きたかったという不在と喪失。
全てのことがキレイさっぱり解決するわけじゃない。けれど向き合って、色々と折り合いをつけてこれからも生きていくんだな。と思いました。



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2025年12月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

家族との確執を抱えた登場人物が目を逸らし続けてきた秘密が他者によって暴かれることにより、そこにある痛みに向き合いながら再生を果たしていくミステリー仕立ての物語。
BLレーベルでの作品から受け継がれ続けてきたお得意のテーマや世界観(オカルト要素が関わってくるあたりはmeet.againとも重なる)はより凄みを増していく。

10年連れ添った恋人である多実と共に失踪した男・波留彦の妻である沙都子のやや突拍子もない行動力に巻き込まれながらも(青吾のラフな関西弁との温度感の違いがおかしみを引き起こすポイント)、五島列島の離島・遠鹿島に降り立った二人は島の人たちが覆い隠してきた秘密に向き合うことになる。

テレフォンカードを使うことにより、断片的に聞こえる過去の多実の声をヒントに彼ら二人の足取りを辿る旅の果てに見つける答えはあまりにも悲痛だ。
どうして、なんで。それでも、どれだけ残された人にできること、しなければいけないことは逃れようのない後悔や痛みの中で生き続けることでしかない。
多層的な人間模様と閉鎖的な島の中で行われてきた様々な事件に結果的に巻き込まれてしまった多実と波留彦はどうしようもなく理不尽だ。
波に囚われて幻のように消えてしまったふたりはもう二度と戻ってこない。おそらく死体が見つかることもない。
(どこかで「ふたりが戻ってくるのでは」と思いながらページを捲り続けるのがとても苦しかった)
とめどない喪失の中にいる青吾は、それでも、自分は確かに愛されていたのだと気づく。

やるせなくて愚かで痛ましく、その美しさに胸を打たれる恋愛物語


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2025年12月01日

Posted by ブクログ

最後の電話のシーン以降ボロ泣き

言葉で映像を浮かべられる表現もすごいけど
感触とかまでリアルに感じ取れる文章には感服

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2025年11月27日

Posted by ブクログ

最後の頁で涙が溢れて止まりませんでした。
互いに秘密を抱えて暮らす男女に訪れた突然の別れ……。突然失踪した同居女性と夫を探す男女の物語。恋人多実が見知らぬ男性と五島列島で水難事故で行方不明に……。

悲しくて切ない作品てすが、謎解き要素もあって、続きが気になって読むのを止められませんでした。信じたいけど不倫かと思わせるところから、テレカで過去の多実と公衆電話で話す青吾の不思議な現象や、閉鎖的な島と人々の印象。先の読めない展開の末の結末……。

随所にででくる練り上げられた比喩表現の数々
に圧倒されながらも文章力にスルスルと最後まで堪能させていただきました。最後は泣くしか出来なかった。読み応えある一作でした。

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2025年11月25日

Posted by ブクログ

 アフター・ユーとは、お先にどうぞ、という意味。つまり、私はあとでいきますから、ということ。
 以前、ホテルのエレベーターを降りる時、外国人の男性に順番を譲られて先に降りたことがあります。その時に、手のひらを出して言われました。

 大切な人を見送る時、私もあとから逝きますからねと言ってあげてください。あちらでまた会えますからね、と。
 愛する人をこの世に残して旅立つ人はもちろん辛いでしょうが、残された人はもっと辛いかもしれません。
 何気なく過ごしてきた日常から一緒に居た人が急に居なくなるのは、どれほど辛いことでしょうか。。。

 このお話の主人公、川西青吾(かわにし せいご)さんは、都内でタクシーの運転手をしています。デパートの和菓子屋さんで働いている中園多実(なかぞの たみ)さんと一緒に棲んで10年になります。
 9月のある日、多実さんは一泊旅行に出かけます。「お土産、楽しみにしてて」という言葉を残して早朝に出かける多実さんを青吾さんは布団の中から半ば眠りながら送り出しました。行き先すら聞いていなかった青吾さんは、翌日には多実さんは帰ってくるものと思っていました。
 しかし、多実さんが帰ることはありませんでした。。

 多実さんが出かけた先は、長崎県五島列島の遠鹿島(おじかじま)でした。青吾さんは、ある人と遠鹿島へ向かいました。そこには、多実さんの、そして青吾さんの過去にも繋がる悲しい現実がありました。。。

 この作品には『光のとこにいてね』のように光が出てきます。そして光は強いほど黒い影を作ります。
 また、この作品には『ツミデミック』のように罪が出てきます。傲慢で自分勝手な罪を犯す人がいて、それに翻弄される人もいます。

 人の明日のことは分かりません。
だからこそ、今日という日を大切にしたい。
 好きな人にはちゃんと好きだと伝えておきたい。
そう思える、わたしにとって大切な作品となりました。

 悲しくて切ない作品てすが、謎解き要素もあって、続きが気になって読むのを止められませんでした。
 随所にででくる練り上げられた比喩表現の数々も力量高い作者だからこそのもの。
 控え目に言って、傑作だと思いました(あくまで個人の感想です)。

 みなさまの感想を読むのも楽しみです♡
どうぞ、アフター・ミー♡

 

 

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2025年11月23日

Posted by ブクログ

海難事故にあった恋人には、どんな秘密があったのか? 大人の恋愛を描いたミステリー #アフター・ユー

■あらすじ
タクシー運転手の青吾が帰宅すると、同棲していた多実がいなくなっていた。数日待ってみるも連絡が取れず不安に思っていると、海難事故の連絡が入る。しかもその時多実は見知らぬ男と一緒だったというのだ。その後、男の妻である沙都子と合流、事故のあった遠鹿島に向かうのだった…

■きっと読みたくなるレビュー
愛ってやつは年を重ねても鮮やかさを失うことはありませんよね。本作はそんな大人の愛を描いた物語です。

ストーリーとしては、行方不明になってしまった恋人や関連する情報を調査すべく、関係者の沙都子と共に、長崎県の五島列島遠鹿島を訪れるというお話。

なぜ遠鹿島に来ていたのか? 一緒にいた男との関係性は? 本当に海難事故にあったのか? 遠鹿島で島民と情報をやり取りするうちに、多実をはじめ様々な人間の過去が明らかになっていくのです。

まずこの境遇がしんどいよ。突然、家族や恋人を亡くしてしまうなんて、考えたくもありません。一穂ミチ先生のさすがの筆致、傷ついた人間の心の深淵を詳らかに描いていくのです。

本作メインの登場人物は主人公青吾と見知らぬ男の妻、沙都子の二人。主人公青吾は静かでおっとりした性格で、沙都子はハキハキ・キビキビした性格。

黄昏気味の青吾をぐいぐい引っ張る沙都子の逞しさったら、もう痺れちゃうよね。彼らの場合は恋人関係ではないんだけど、男女ってやっぱり支え合いなんだと思う。

そして本作では電話を使った幻想的なアプローチもある。ここでは多実の情報や人間性をうかがわせるシーンであると共に、青吾の未練を如実に表現したシーンでもありますよね。近くて遠い距離感に涙がじわっと流れてしまうのです。

物語も後半になると、当初は想像だにしなかった人間関係が浮き彫りになってくる。色んな思惑が交錯していて、誰がどこで選択を間違えたのか、何が正解だったのかよくわからない。しかし青吾と多実の関係性には深く胸を打たれ、これからも生きていかねばならない青吾を応援したくなるのです。

もし何も起きなかったら、関係者たちはどうなっていたんだろう… いや、実は最初からこうなることが決まっていたような気もする。なぜなら愛情ある故の結果だからだ。とても辛く切ないお話ではあったけど、光が差し込んでいるのは間違いない。

■私とこの物語の対話
頭の中では過去の出来事なんて考えても仕方がない、未来を見て前向きに生きよう。突然大切な人を亡くした人には、こんな説教は響かないでしょう。もし私が当事者でも難しいと思います。

しかしいつまでも絶望しているわけにはいかない、乗り越えなくてはならないのです。その時なにが力点となるのか? 例えば責任であり、報いであり、未来であり、許しであり… 色々あると思うんだけど、答えは間違いなく「自分の中」にしかないのです。

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

星は4を付けたけど、3寄りの4かな…。

話の流れは悪くないと感じるが、電話(テレホンカード)の所だけファンタジー感が出て浮いている気がした。

最後は良かったが、全体的に重く感じた。

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2025年12月18日

Posted by ブクログ

失ったものはかえってこないんだと諦めるしかない。その諦めて受け入れていく過程が描かれていて、読んでて辛くなった。
希望がなくて、それでも生きているのだから生きなければならない、そんな気分になった。

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2025年12月13日

Posted by ブクログ

"『自分』を決めるのは、自分じゃないと思わない?
誰かと接した境界線がそのまま輪郭になるんだと思う。"

深く共感した。
自分という像を象るのは、
自分とその外にあるものの間にあるものだから、
自分の意思だけでは線は描けない。

多実はそれを、島みたいだと表現した。
波が押し寄せるときは自分が消えちゃいそうだけど
またいつか波が引いて自分が大きくなったり。
それの正体が例えばモノだったり、コトだったり、誰かだったり。

-

物語は青吾のパートナーである多実が、ある日突然、旅行へ行くといって消息を絶ったところから始まる。
警察に行方不明届を出して、数日後に遥か遠い五島列島の島で海難事故に遭ったと聞かされる。しかし、そのクルーザーにいたのは、多実と、全く見知らぬ男だった。
ちょうどその頃に、男の妻だという沙都子が突然訪ねてきたかと思いきや、二人の関係性を知りたいがために島に行かないかとの提案。
そこからミステリーに近い謎解きの物語が展開していく。

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頭の回転が遅い自分は、なかなかついていけなくて、ミステリー小説は向いてないなあと思った。笑
だけど最後はどうなるんかとドキドキハラハラした体験は普段の読書では得られないから新鮮だった。

あと、物語の筋の部分とは全然違う内容だけど、事実婚って、例えばパートナーがいなくなっても行方不明届がスムーズに出せないとかそんな問題点もあるんだなぁと考えさせられた

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2025年12月03日

Posted by ブクログ

小さな島の中だからこそ起こる人々の複雑な気持ちの交錯。
亡くなった人と話ができる公衆電話、等々不思議な感覚の小説でした。
信仰心が強そうな五島列島だからこそ実在しそうなミステリーですね

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

少しずつ遠鹿島の人間関係や事件の真相が明らかになっていき、読み進める手が止まらなかった。
恋愛小説というよりミステリーのように感じた。映像化されそう。

「傍にいて当たり前の人間を失った後も生活は続くけれど、ふとしたきっかけで悲しみは容易く日常の堤防を越水してきて、そのたび自分がぎりぎりの状態だということに気付かされる。これを後何度繰り返せば楽になれるのだろう。」

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ちょっとダークな一穂作品が大好きだから、毛色の違うストーリーで読むのが大変だった。
少しというか、かなりファンタジー要素が強く、登場人物もごちゃごちゃしていて誰が誰だか混乱してしまった。
「人間は情報に飢えている」というワードは好き。
大切な人を亡くした2人、友人を自らの手で亡くした彼、それぞれのその後のストーリーのほうが気になる。どのように生きていくのだろうか…。

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2025年12月21日

Posted by ブクログ

死んだ妻の死の真相を、死んだはずの妻からの電話にヒントを得ながら解明してゆきます。
真相究明と明らかな超常現象、どちらに重きをおいたとしても中途半端な内容は否めませんでした。
が、バディのキャラには多少救われました。

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2025年12月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2/3くらいまで一気に読んだ。
謎が解けてくる後半がグイグイ行かないのは電話の謎が謎。ここにファンタジー要りますか?
最後は良かったかな。

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2025年12月19日

Posted by ブクログ

タクシー運転手の川西青吾は百貨店の地下の和菓子屋に勤める中園多実と一緒に暮らしていました。

ところが多実が旅行に出掛けて帰ってこなくなり、多実の弟と名乗る人物から「海難事故に巻き込まれた可能性がある」と知らされます。
そして三日前、長崎五島列島で転覆した小型船に乗っていてイデグチ・ハルヒコという青吾の全く知らない男性と一緒だったと聞かされます。

次に出口波留彦の妻であるという出口沙都子が訪ねてきて、出口の出自の話を聞き、青吾は多実との出会いが偶然ではなかったことを知り、沙都子と二人で出口の生まれ故郷の島を訪ねることになりますが、二人は果たしてどういう関係だったのか…?






この作品はちょっと年末で通院などで忙しくて読むのに何日も日をまたいでしまったせいもあり、島の人間の人間関係がよくわからなくなってしまいました。
「えっ!、誰と誰が幼馴染で、誰と誰が兄弟だったの???」という感じです。

使うと昔の会話がきこえてくるテレホンカードが登場するのも確かに切ない感じはしましたが、これ、ミステリー
?恋愛?それともファンタジー???なのとなってしまって、私はよくわかりませんでした。

今、ちらっと他の方のレビューを拝見したら、星5の方が多いようですが、私の読解力不足が悪いのだと思いますが、私は星は3つで。

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2025年12月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

同棲している恋人が旅行に行ったきり帰ってこない主人公。なんと別の男性と一緒にクルーザーでの事故に巻き込まれたらしい。
男性の妻と一緒に現地に手掛かりを探しにいくうちで色々なことが分かってくる。
主人公は人畜無害な控えめな男性。
男性の妻は、わりとぐいぐい進んでいくタイプなので正反対の2人が上手く支え合って悲しみを乗り越えていくといった感じ。
多実と主人公の関係がすごく穏やかなもので、想像するだけでも切なくなった。

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2025年12月12日

Posted by ブクログ

難しい話でしたし、現実的にはありえないことだらけではあったのであくまでもフィクションとして読んでいました。
明るい話ではないので、あまりこの本を読んで楽しいこととかは無かったですけど久しぶりに一穂ミチさんの長編を読めたのは嬉しかったです。

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2025年12月04日

Posted by ブクログ

「不在」と「喪失」の物語という紹介文であったが、喪失部分の心理描写が物足りなく深い悲しみを感じられなかった。
ちょっとファンタジー入るし、ミステリーと呼べるほどの謎解きでもないかな。

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2025年12月03日

Posted by ブクログ

一穂ミチさんの新刊。
今までの作品とはちょっと違う雰囲気のお話だった。
彼女である、多実が旅行から帰ってこなくて、青吾が知らない場所で、知らない男の人と、事故に遭ってそのまま行方不明に‥
最初は不倫か?と読み進めていたが、調べていくうちにどんどん多実の過去のことを知っていく青吾。
青吾は長く多実と一緒に暮らしていたのに、多実の過去のことを全然知らなかった。
もっともっと話をすれば良かった。
一緒にいる時間をもっともっと大切にしていれば良かった。
少し謎解き部分もあり、一気に読んでしまった。

今一緒にいる人を大切にしようと思った。
一緒にいる時間を大切にして、過去のことも今現在のことも、たくさん話して過ごしたいと心から思った。

ーー死んだから会えないのと、生きているのに会えないことはどちらがつらいのだろう、と答えが出るわけもないのに考えた。ーー


2025.11.30(日)

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2025年12月01日

Posted by ブクログ

一穂ミチさんの新作は、これまでの作品とは一味違うミステリータッチの物語だった。「不在と喪失」がテーマだという。
東京でタクシー運転手をしている青吾の恋人・多実が行方不明になる。警察に行方不明者届を出した彼のもとに、海難事故に巻き込まれた可能性があるとの連絡が届き……。
主人公の青吾が隠そうとしている過去が気になる。読み進むうちに多実の行動の理由も明らかになっていき、すべての謎が一つに収斂していく。
うまいなと思う反面、謎解きの過程でこれをやってもいいのかなという疑問も感じた。

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2025年11月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

表現が難しいけど、一穂ミチさんの作品って良い意味で、暗いシーンも暗すぎず感じさせない感じがする。

あとは、情景がパッとその色まで思い浮かぶような言葉の選び方がほんとに好きです。
海が凪いでいる時とか。空を仰ぐシーンとか。

タイトルの言葉選びも好き。

電話ボックスだけかなー。非現実的。
SFっぽい要素?はない方が好み。まああの電話があるから、主人公は前に進めたんだろうけど。

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2025年11月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

東京のタクシー運転手の40歳ぐらいの男、青吾。
多実と言う女の子と10年ほど同棲している。多実がある日旅行に出かけたが帰って来ず。長崎の遠鹿島で転覆したクルーザーに知らない男、波留彦と乗っていて行方不明とのこと。
男の妻が来て、調査して、二人で遠鹿島に行く。

30年前ぐらい。
青吾の母親は大阪で青吾を育児放棄して遠鹿島に行きスナックをした。
多実は家がトラブって、4年生の時に遠鹿島に転校。ただ都会からなのでハミる。
学級員長タイプの波留彦は仲良くするが、父親が島の主で不倫もやりたい放題。同級生と恋仲になるも、その同級生も不倫の子とバラされ殺意。
多実、波留彦は青吾の母親の源氏名レイカとはみ出し物同士仲良くなり、離島の島で会うなど。

現代の島をnpoで盛り立てており、波留彦の親友の浦は父親が島外から来て、波留彦の父に我が物顔に消費される島がおかしいと思い活動するが、波留彦の父親にヤクザ雇われて海に落とされて殺される。
それを知った浦はヤクザを殺しに東京へ、波留彦に言われてレイカがつけて行き、ヤクザをぶっ殺し損ねた浦を逃してぶっ殺して放火して無期懲役。
多実はレイカの子供の青吾を探し出して一緒に暮らすが打ち明けられず、島に隠していた母子手帳を取りに行く。浦はその罪が発覚するのを恐れ、また島に主人の息子である波留彦が戻ってくると追い出されると感じ、波留彦と多実が乗った船のライフジャケットに細工した。

話し損ねてることは、話しておいた方がいい。突然いつ死ぬかは誰にもわからない。

ーーーー

 ――「自分」を決めるのって、自分じゃないんだなって思わない? 誰かと接した瞬間の境界線がそのまま輪郭になるんだと思う。

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2025年11月24日

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