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Posted by ブクログ
かつて 僕は 時間というものに関して貧乏性で 何かをあてどもなく待つことや 他人のために自分の時間を差し出すことができない人間だった。だから傷ついた人の傍らでその人の吐露に耳を傾けながら寄り添うとか、月日の経過によって物事が おだやかに収まっていくのを見守るとか そういう大人なスタンスで自分や他人と向き合うこともなかった。こうした生き方が安っぽく奥行きを欠いた、他人を寄せつけない不毛な人生だ、と気づいたのは ずいぶん年を重ねてからのことだ。
大切な人を失った心の傷、喪失感が ささやかなできごとや ふとした出会いの積み重ねによって癒されていく6編の物語。人それぞれ、他の人とちがうスピードで時間が流れていたってかまわないのだ。自分を取り戻すにも、他者の痛みに寄り添うにも、時間の流れに 身をゆだねる鷹揚さが必要だ。
Posted by ブクログ
宝物の一冊になりました。
吉本さんの家族観、恋愛観、死生観…
人生観が丁寧に梱包された本。
親、きょうだい、親友。
大切な人との愛別離苦を覚えた時の、あの頃からずっと胸の中に詰まったような緊張のような苦しさを、そっと解きほぐしてくれ、久しぶりに肺いっぱいに空気を吸えた気がしました。
そして、これからの未来に訪れるであろう別れに対して少しの心構えをさせてくれる物語。
人を思うことや人に思われることこそが、私たちの人生を潤す水分であることに気が付きます。
誰かを思って泣くことがあれば、そんな風に思えるあの人の存在そのものが私の幸せなんですよね。
私の人生に存在してくれる人、してくれた人が、来るべき時に見る走馬灯のように浮かんできます。
私も誰かにとってのその存在だと思うと、自分のことも抱きしめたくなる。
ただの日常が強く、愛しくなる一冊でした。
Posted by ブクログ
2026/09/20
なんて素敵な本。行ったことのない現地の情景や食べ物の味や匂いが、こちらまで伝わってくる。まるで自分もそこにいるような気分になった。きっとそれは、登場人物たちが淡々と生きているからだろうな。決してドラマチックなことは起きないけれど、ちゃんと生きていて、ちゃんと未熟だったり、ちゃんと傷ついていたりしている。
また、そんな登場人物たちの姿を見て、少し救われる部分もあり、気づいたら心が凪いでいた。
三十代の二人の話の中で、「私たちはどこまでも行けるとは思っているけど、気づいたら根を張っていて、もう動けなくなってしまうかもしれない年齢になっている」みたいな部分が、現在の自分とリンクしていて刺さった。最後の情け鳩も良かったな。
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