あらすじ
互いに事情を抱え、母親達の同意を得られぬまま結婚した外山くんとゆき世。新婚旅行先のヘルシンキで、レストランのクロークの男性と見知らぬ老夫婦の言葉が、若いふたりを優しく包み込む(「ミトンとふびん」)。金沢、台北、ローマ、八丈島。いつもと違う街角で、悲しみが小さな幸せに変わるまでを描く極上の6編。第58回谷崎潤一郎賞受賞作。
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Posted by ブクログ
よしもとばななさんの本を読むと山にいる気分になる。
悲しみは自然と降ってくる雨みたいに、そして人との繋がりが雲から垣間見える光のように包まれる感じ。
優しくいてくれてありがとう、と言う気持ち
◼︎自分メモ
人と知り合うって、そんなことから始まるだけのことだ。その小さな印象がだんだん絶えない流れになり、少しずつ無視できない水流を作り、そこにまた大きく気持ちが注がれていく。
自分がいい思い出を持っているという幸せを、目に涙を浮かべながら、綿菓子を食べるみたいにふわふわと確認する、少し甘い感じだった。
私の感情はまだ対策しか動かず(大きく動くとついつい悲しいこともたくさん考えてしまうので、省エネルギーモードで動くように、自然となってしまっていたのだ)、小さい感謝はおいしいふりかけのように私の心全体にぱらぱらと散った。
ちょうど鳥の羽みたいに、ふわふわ飛んでいて、完璧な造形で、見とれるようなもの。羽衣のようなオーロラのようなもの。
自由に風に乗る、余裕のあるもの。
上澄のようなそこにこそ母の本質があった。
失うものがないということがなぜか安心につながっていた。もう死は私に追いついてこない。皮肉なことに、母の死によって、夢の中でも逃げられない、ひとりぼっちになる恐怖から私はやっと解放された。
私は私を信頼できない人に渡してはいけない
赤い目でにっこりと微笑んで私に手渡した。私も精一杯の泣き笑いを返した。生きている人間同士の生きた瞬間。人と人が微笑みを交わす意味そのものがそこにはあった。
ただ常に生活の全てが悲しみの重低音に覆われているという程度だった。
なんとかなる。悲観でも楽観でもない。目盛りはいつでもなるべく真ん中に。なるべく光と水にさらされて。情けは決して捨てず。
いつまでもここでだらだらゴロゴロしていたいですが、重い腰を上げ、過去に別れを告げ、ふりかえらず、でも楽しくのんびりと、はるか遠くに見える次の山に向かって歩んでみます。
Posted by ブクログ
凄く好きだった。旅先で感じる非日常感や、一瞬のきらりとした綺麗な瞬間、そしてそういった記憶を手に取った時に感じる、戻らない時間への寂寥感を思い出させる小説だった。
切ないけど暖かいような、そんな気持ちで読み進めた。きっとまた読み返したくなると思う。
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文章が美しい、この作家さんのことば選びが好き。
そういうことを本当にはわかってなかった私。それがわかった。そう思えた。
30代の今に、じっくりしみるなぁと感じられたことをうれしく思う。
人が亡くなり、その残された時で生きる人たちの思いや営みを書いた短編集。あぁ…そうか、大好きな家族も友達もいつか亡くなるんだ。それは仕方ないけど、残された自分は生きていかなくちゃいけないんだ。その時一体何をするだろう。そして私が亡くなったあと、まわりの人たちは何をして生きていくのだろうな…
命が限りあるからこその尊さに思いを馳せる、静かに良い本だった。
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美しいのと、きめ細かで、叙情的な文章に胸が打たれた。じわじわと確実に心を支配するそれはなんだ。悲しみなのか、寂しさなのか。切なさなのか。読み終わった後には、吉本ばななさんのあとがきを含めて、波みたいな感情がうまれた。いい本だった。良い文章に出会えた。綺麗だった。素直な言葉だった。元彼に会いたくなった。もう会えない人とのお別れは、やっぱり辛いものだと。それでも人は、重い腰を上げて前を見るんだと。また読みたい。こんな文章を書ける人だったんだ。初めて吉本ばななさんの本を読んだけど,他の本も読みたくなった。心がざわざわしてる。
Posted by ブクログ
とても読みやすい短編集。吉本ばななさんの素敵な言葉の数々がすっと心に染みる、そんな読書体験ができました。
「生きているだけで息が苦しいくらい幸せなんだ。左足を出す。そして右足を出す。地面を感じる、進んでいく。それだけて嬉しいくらいに。」という一文がとてもお気に入りです。幸せの程度を表すのに苦しいという強い感情を使っているのに、その後が具体的に小さな描写なのがいい。世界が足元に収束している感じが。それだけで嬉しいくらいに。この結びがすごく誠実で、ちょっと切ない。「十分だ」と言い切らず、「くらいに」と余白を残しているから、
読み手の今日の気分がすっと入り込める。
他にも吉本ばななさんの文章は素敵なものが多く読むのが楽しい一冊でした
Posted by ブクログ
初めて短編集を読みました。
文章も優しい感じでとても読みやすく、
一つ目を読んだ瞬間に凄く引き込まれました。
大切な人の死。
大好きだったはずなのに最近では祖母の事を思い出す事がなかったが昔の事が鮮明に浮かびました。いつ何がおこるかわからない今、残されている人、家族・友人にはもっと会いに行かなきゃ、大切にしなきゃと優しい穏やかな気持ちになりました。
また読み返してみようと思います。
Posted by ブクログ
大切な人を失う悲しみと喪失感の中、時間は止まることなく私たちを未来へ運んでゆく。お正月に数年前に他界した祖父の写真を見て、祖母と「じいちゃんかっこいいねぇ」と話した光景を思い出して、心がぎゅっとなった
今は悲しいより懐かしくて、それを分かち合えることが嬉しい。どの短編も素敵でした。
Posted by ブクログ
2026年の1冊目は吉本ばななさん。
親、恋人、友人、最も大切な人を失う
誰にも認められないような結婚
そんな傷を心に負ったり、
生きづらさを感じている登場人物達が
悲しくて苦しい日々の中で、
自分で前を向くための答えやきっかけに出会い、前を向いていくようなお話。
どの話も想像するだけで悲しくて寂しくて、
だけどもいつかは前を向かないといけないと
葛藤する姿。
この先の何を目標に過ごせばいいのかなとか、
年始早々に発症した外耳炎の痛みで若干参っていたのもあり、普通の人の2倍くらい心に沁みた。
前に読んだ『キッチン』もそうだけど、
人生とは何か、生きるとは何か、
辛い出来事に直面した時に
どう立ち直ればいいのかとか、
誰もがいつか直面するであろう悩みや不安に対しての、言葉での表現の仕方が本当にすごい。
圧倒的に人生経験の足りない自分、
色んなことにモヤモヤと言葉にならない不安を
感じるけど、それを形にしてくれそうな
言葉の数々に虜になりそう。
今年は吉本ばななさんの作品を沢山読みたい。
【印象に残った言葉】
▶︎ 幸せなやりとり、生きている者同士、
肉体があって、同じ時間軸の中に存在していて、
ほんとうにはわかりあえないのに
とにかく気持ちを伝えようといつも一生懸命で。
それが人間同士のはかないつながり。
▶︎積み上げたものをまた失うのはわかっている。
どんなに積み上げたって、死んでしまったら
お別れ、そこでいったん終わるのだ
繊細に積み上げたお城だって、
主のいない廃墟になる
▶︎気をつければ、こんなにすごい温度の中でも
人は生きられる。
まるで毎日があたりまえであるかのように。
備えればいいんだ。それが人間の力なんだ。
▶︎彼はこれから時間をかけてこの苦しみを忘れ、
傷を抱えながら誰かを愛するだろう。
そんなのわかっている。
でも先が見えていることであっても、
人は精一杯味わうしかないのだ。
▶︎だからまだ生きている僕たちは食べたり、
飲んだり、映画を観たり、作品を作ったり、
けんかしたり、
きれいなものや汚いものを見て感想を持ったり。
こうして悲しくも意味のある行動をしたり。
Posted by ブクログ
この本を手に取ってよかった。それが一番の感想。
何らかの痛みを負っていると、仄暗いものが鈍痛を伴いながら長い時間つきまとうものだが、
そういったものと折り合いをつけながら、ちょっぴりの希望を持って少しずつ歩む、そんな短編集ばかりだった。
日常に疲れたときに救いを求めて読むのにも多分良い気がする。
Posted by ブクログ
何を読むか迷っているとき、積読がたまっている時、読みかけの本を読む時間がなくてぼーっとしてしまう時にいつも思い出すミトンとふびん。
低カロリーな優しさしか必要ない時によぎります。
Posted by ブクログ
大切な人の好きなところ、その人が好きなものぜんぶを余さず覚えて居られたらどれだけ良いだろう。忘れたくなくても、記憶しておけることは有限で、どうしても迫りくる日々の波に流されてしまう。でもそういう切なさも引っくるめて、生きていくってことなんだよ、って慰めてくれているような気がした。
Posted by ブクログ
谷崎潤一郎賞とのことで勝手にエロ美しい男女モノを想像していたけれど、大切な人の死で傷ついた男女が旅先で静かに再生していくストーリーの短編集だった。王道のばなな節。
私も当時感銘を受けた「デッドエンドの思い出」以来の二度目の最高峰に到達したーーとあとがきにあったものの、納得できるようなピンとこないような。
著者と一緒に成長できず、自分に残念な読後感。
Posted by ブクログ
何か目立った展開があるわけでもないけど、今自分の周りにいてくれる人たちを大切にしながら生きていこうと思わせてくれる作品でした。
吉本ばななさんの作品は初めて読んだのですが、登場人物の内面描写を加工してない分リアルで、でも終始優しさを感じる不思議な文体で、頭には残らないけど心にはしっかり残ってくれる文章だなと感じました。
Posted by ブクログ
1万円で本を買う密着をされていた朝井リョウさんが、本屋で手に取り、ものすごく大切に話されていたのをみて、僕も手に取ってみた。
奇妙な深みとはよく言ったものだが、僕は多分その深さを正確に感受できていない。
ごく身近な人をなくす悲しみには出会っていないし、どんなに想像を巡らせてもその深さは正確には知り得ないと思う。
だから、等身大で感受できてはいないだろうと思う。
ただ、この本がもつ奇妙さの一端には触れることができた気がする。
何か声をかけるわけでも、何かを変えてくれるわけでもないけど、ただ居てくれる。時にそれはものすごく心強いんだろうなと思う。
心が丈夫であれるのかなと。
10年後か20年後、もっとさきにも読んだ時に何を感じるのかが楽しみな小説。
Posted by ブクログ
ずっとこの世界に浸っていたいなあ、とじんわりした人生の幸せをしみじみ感じる短編集だった。登場人物の人生を通じて、読み手である自分の人生も良きものとして愛おしく感じることができた。すごくさりげなくて透明感があって、だけど死や悲しみの匂いがしている。そんなよしもとばななさんの作品がすごく好き。
Posted by ブクログ
大切な人を亡くした人たちを題材にした短編集。
大切な人を亡くした深い悲しみと、その人たちが残してくれた思い出、それでも続く自分の人生に向き合い、なんとか前を向いて幸せを探す姿に涙しました。まだ自分の周りでは亡くなった人は少ないけれど、もし同じ悲しみが起きた時にまた読もうと思えた本です。素敵な一冊に出会えたと思います。
Posted by ブクログ
状況も相まって、すべて琴線に触れた。
特にお気に入りはSINSIN AND THE MOUSE。
飛行機で読みながら、お母さんへの想いの描写で涙止まらなかった。(気圧の問題?)
あと、八丈島出てきます。
Posted by ブクログ
第58回谷崎潤一郎賞受賞作。特にたいした出来事は起こらないんだけどじんわり沁みてくる感じ。大事な人を失った喪失感の中にいる人にはきっと心の支えになるはず。
Posted by ブクログ
ミーハーながら朝井リョウさんがお勧めしていたので手に取った。じんわり沁みて自然と涙が出てきた。なんて事ない話のようで、全然違うのにどこか自分のことのようで、温かい気持ちになった。
Posted by ブクログ
大切な人を失い、その人との思い出を大事にする人たちの交流を描いている短編が詰まっていて、失った悲しみやもう新しい思い出を作ることができないという切なさに向き合う人たちの人としての弱さやその弱さをも受け入れあう人々の優しさが吉本ばななさんならではの筆致で描かれていて、読んでいるこちらまで癒されました。
朝井リョウさんが「ずっと本棚にいてほしい」とおっしゃったと帯にありましたが、まさしくその通りだなと感じました。
匿名
何も起こらず、それなりに傷を抱えた人が、ただ流れゆく人生を眺めているようなそんな小説を書きたいと大体そんなことを著者あとがきでばななさんが言っていますが、その試みは成功しているように思います。先にある目標を追いかけるのでは無く、日々の移ろいや楽しさあるいは辛さとかマイナスの感情も含めて受け止めて人生を生きていけたらいいんじゃないかと思います。理想としては。
ただ登場人物の男性描写がちょっと苦手、というか女性の妄想チックであまりノれなかった。昔吉本ばななの作品好きだったけどこんな感じだったかなあ?
Posted by ブクログ
はじめまして、吉本ばななさんの作品
私は、『珊瑚のリング』『夢の中』が心に残りました
過去は走馬灯
自分の周りの大切にしている人たちが亡くなったときのことを想像しても、実際は想像以上に苦しいだろうし、心にぽっかり穴が開くんだろうなって…
人間味を感じる一冊でした
Posted by ブクログ
(朝井リョウさんオススメというのを聞いて、読んだ)
心の中に悲しみを抱えた登場人物たちが、旅を通してその悲しみと向き合ったり、少し癒されたりする様が描かれた短編集。
私は”SINSIN AND THE MOUSE”は、終始涙を流しながら読んだ。きっと、私は今身近な人と別れるのをすごく恐れてるんだと思う。
柔らかい文体で、サクサク読もうと思っても読めない。文章が時間をかけてゆっくり読ませてくる、自分の心に深呼吸をさせてくれるような本だった。
Posted by ブクログ
2025/11/19 16
病気でなくなった母親と娘の関係性、本で読むと近すぎる距離があとあと辛くなるよ、とわかるけど実際あるだろうな、と感じた。自分と娘の距離感を考えても難しい。距離感って見本がないから失敗しないとわからない。
Posted by ブクログ
金沢、台湾、香港、ヘルシンキなどなど旅先の話。主に死別を描いているが、他にも恋人との別れ、記憶の忘却や決別など、広い意味での別れを繊細に書いた短編集。相反する感情を自分の中に認めてもいいよと言ってくれているように感じた。Laura day romanceのorange and whiteという曲の歌詞「悲しみの色に染まることなんてできるけど 名前のない気持ちを見失ったりしたくない」を想起した。人の気持ちは言葉で括るにはあまりにも無限過ぎて持て余してしまう。その人だけのものである。
カロンテ
タイからラオスに向かう寝台列車の中で読んだ。ローマが舞台。親友を失った悲しみを何度も自分の中で咀嚼し受け入れていく話。悲しみをそのままに悲しむこと、そして区切りをつけて徐々に忘れていくことは自然なことであると優しく教えてくれる。しじみが持つ喪失感も、真理子が持っていた孤独感に似た、日本や日本人に対する精神的な距離への不安がとてもよくわかった。健一の登場によって物語はドラマチックになる。
情け嶋
ラオスのルアンパバーンの安宿でなんだか眠れないときに読んだ。八丈島行きたい!八丈富士登って、見晴らしの湯に入って、明日葉の天ぷらもラーメンも食べて、朝食には牧場の牛乳を飲むんだ。今年MONO NO AWAREが八丈島でライブするなら絶対行くと決めた。ばななさんは旅をしたくなる文章を書くなぁと思った。派手な写真で溢れた、ありふれた観光ガイドブックよりよっぽど説得力がある旅行本だ。
旅をしながら読んだが、また旅をしたくなった。自分の中では、その本を読んだ場所にも付加価値があると思っている。そういう意味でこの読書は特別なものになった。もう2時、さて寝るか。
Posted by ブクログ
短編集。
大切な人を失うこと、残った側の人生を淡々と過ごすこと。自分の人生を見つめ直すこと。
どれも静かで穏やかで寄り添ってくれる本だった。
カロンテと情け嶋が特に好き。
Posted by ブクログ
世界の見方がちょっと柔らかくなるような短編集。帯にも書いてある通りの「本棚にずっといてほしい」小説です。その時々でより深く刺さる短編もあると思う。
舞台が世界各地なのもまた良くて、いろんな情景を背にして展開される物語は気持ちをゆったりとさせてくれます。