あらすじ
互いに事情を抱え、母親達の同意を得られぬまま結婚した外山くんとゆき世。新婚旅行先のヘルシンキで、レストランのクロークの男性と見知らぬ老夫婦の言葉が、若いふたりを優しく包み込む(「ミトンとふびん」)。金沢、台北、ローマ、八丈島。いつもと違う街角で、悲しみが小さな幸せに変わるまでを描く極上の6編。第58回谷崎潤一郎賞受賞作。
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Posted by ブクログ
久しぶりに手に取ったよしもとばななさんの小説。
「久しぶり」になったことで、自分の日常のせかせか具合に気づく。
死について。おそらく、考えないようにして、不安とか怖さから気を紛らわしながら生活を保つことが多い。
だけど、この小説は、死と向き合うことで生を確かめるような小説。
そのための旅。
怖くないし重くない。悲しみの気配はありながら、だけど、軽やかで温かい。そのことが、物凄く尊い。
物語の主人公たちのように、丁寧に慎重に感情が拾えたらなぁと思う。どの主人公も、自分の足場をよく捉えている。だから、突飛な行動も安心して読める。いまここは、安定なのか不安定なのか、不安定ならば、何を受け付けて何を受け付けないか、なにが必要かどこに行くべきか。すべて分かった上での関係性や行動力。単純なようで、とても難しい。
いま、このタイミングで読めてよかった本。
Posted by ブクログ
吉本ばななさんの文章はすごく柔らかくて綺麗だと思った。人を失っても再び前を向こうとする。切ないけど救われる物語に心が温まった。
心温まる話がある中で、特に良かったのがSINSIN AND THE MOUSEでした。母が亡くなってしまい悲しみに暮れていたけど、過去の母に対する思い出を語る。死んでしまった事が重要なんじゃない、生きていた事、この世に存在していた事が素晴らしかったという事が描かれていて胸に響いた。自分はまだ母を亡くしていないが、その時は絶対に訪れる。そんな時は母がこの世にいてくれて良かった事を子供達に語っていきたいと思った。
人生に寄り添う本ってこう言う本なのかなと思った。もし大切な人が亡くなって、立ち直れなくなった時はこの本を思い出そうと思う。